2022.06.25
今日は県内、山奥の方に行きます。
2021年の秋に一度訪れた場所で、その際に
「ここは6,7月ぐらいに絶対再訪しなきゃ」
と思ったのを覚えています。
なぜそう思ったのか、具体的にどんな環境があったのかは忘れてしまったけど(記録しとけよ……)。
実際に行ってみて、どんな環境か確かめるのが今回の目的です。
この日も出張明けでだいぶ疲れていたので、現地着は9:30とかそのくらいにした気がします。
(道中ほんと眠すぎて、定期的に唸り声を上げながら限界運転してた気がする……)
昨秋に来た時は一台も車が無かったのに、今日は4、5台ほどの車が停まっていました(山登り?)。
これはシオジ(だったはず)
林道沿いはヤシャブシやサワグルミが多い環境で、シオジなどトネリコ類も混じって多少生えていました。
未だにサワグルミとシオジを間違えてしまうことが多くて、この日もシオジのつもりでスウィーピングしたらキモンカミキリが落ちててサワグルミと気づく、という事がありました(笑)
ユクノキ(マメ科)
段々と思い出してきた……この場所はユクノキが結構生えていた気がする。
ユクノキ自体あまり多くない樹木のようですが、県西部の山奥ではポツポツと見かけます。
この樹木を寄主とする珍しいナガタマムシがいますが、発生に適していそうな太めの木は滅多に見つかりません。
ユクノキを見かける度にスウィーピングを続けていますが、手応えはこれまで全く無しです。
風通しも日当たりも絶好なユクノキを発見
なんだか長野でエサキキンヘリが居た環境に似ている場所に、いい感じのユクノキがありました。
こんな木から、採れてくれないものだろうか。
少し掬って、網の中を確認。
そこには見慣れないサイズ感のナガタマムシの姿が___
ホソクロナガタマムシ
Agrilus kawarai Y. Kurosawa, 1963
「ちょっと待って、マジ!?」
「マジだよな、これ!!??」
地面に寝転がりながら撮った
「やったぁ……!! ガチで嬉しい…」
こんなにうれしいの久しぶりかも。
仰向けになって地面に転がりながら、しばらく喜びを噛み締めていた……(笑)
ホソクロナガタマムシはマメ科のユクノキとフジキという木本植物から得られるタマムシですが、どちらも少ない植物でありホソクロナガも本州〜九州の限られた場所でしか得られていないようです。
日本産タマムシ大図鑑での珍品度は★★★★★(稀)。
自身としては2種類目のLEVEL.5となりました。
とはいえ埼玉県にはホソクロナガタマムシの既知の産地があるので、まだ狙いやすい相手ではあったと思うけど……
この後も丁寧にスウィーピングしましたが、追加は得られず。
採れた木の幹の太さを見た感じ発生木にはなり得ない印象で、直近に発生木があってそこから溢れてきた個体ではないかと思われました。
しかしそれらしい衰弱木などは発見できず。崖下とかにあったら分からないしな……
ホソクロナガタマムシの追加は帰りにまた狙うことにして、先に進みます。
沢を渡る橋の上にありがちなギャップ
こういう環境には比較的低い位置でミドリシジミの仲間が止まっている(テリ張りしている)ことがあるので自然と目線が上がります。
まさしくこの場所に張っている個体がいました。
多分既採集の種なんですが、勉強不足で現地では種が何なのかは分からない。
この手の蝶は種ごとに活動時間が決まっており、こういう場合そこから種を絞り込む事も出来ます。
(どれが何時とか、まったく覚えてないけど……)
メスアカミドリシジミ
Chrysozephyrus smaragdinus (Bremer, 1861)
正体はメスアカミドリシジミでした。裏面の紋がポイントで、表だと後翅の周縁の暗色部が他種より太いようです。
ヤマザクラなどサクラ類を寄主とする種で、長野でも1頭だけ採集しています。
埼玉では真ミドリシジミ以外の緑色のシジミが______
採れていないので、何であれうれしいです。
本種の活動時間は10〜12時頃との事で、ちゃんと時間通りに動いている個体でしたね。(11:30頃の採集)
道を塞ぐ向きに倒れ、切られた木
シデ系っぽく見えた倒木の上に、ナガタマムシのシルエットを確認して全身が凍る。
絶対に逃がさないように慎重に近づきつつ、その正体を確認___
あ、これは……
ケヤキナガタマムシ
Agrilus spinipennis Lewis, 1893
ケヤキナガだ……なんかデカいと思ったよ(ガチで焦った)
倒木もよく見たら、ちゃんと小さなケヤキの葉がついてました。
ケヤキナガタマムシは普通種(のはず)ですが、埼玉県内では未だに出会えていなかった虫でした。
※最近減ったという話を聞く、多かった時代を私は知りません。
長野県では里山の伐採地などでよく見る印象だったので、埼玉の低地でもこれまで似たような環境をいくつか見てきたのですが……発見には至っていません。(いるにはいると思う)
後日同じような場面に遭遇した
これはこの採集の少し後、7月9日に同じく埼玉の山奥でケヤキナガを発見した時の環境です。
かなり細い衰弱木についてました。
山奥のケヤキナガ達はこういうちょっとしたケヤキで細々と世代を繋いでいるのでしょうか。
ミドリツヤナガタマムシ
Agrilus sibiricus fukushimensis Jendek, 1994
さっきのケヤキナガの展足写真の下の方に見切れていたこちらはミドリツヤナガタマムシです。
山の方でカエデ類を掬っていれば割とちゃんと採れる種ですが、埼玉県内ではこの日が初採集でした。
(カエデ、そもそもあんまりちゃんと掬えてない)
ひたすら林道を歩いていたらいつのまにか昼を過ぎていたので、適当な木陰で休憩。
すると、目の前にミドリシジミの仲間が飛来。
知らない裏面ですね
……これは初見のような気がする!
フジミドリシジミ
Sibataniozephyrus fujisanus (Matsumura, 1910)
正体は初見のフジミドリシジミでした。
裏面の模様が独特で他種と区別しやすい、日本固有種のゼフィルスです。
寄主はブナやイヌブナで、埼玉では標高700m以上のブナ林にみられるようです。
※県RDB:準絶滅危惧1型(NT1)
雌だったので採卵飼育も一瞬頭をよぎったのですが、ブナ食いとなると寄主の確保に苦労しそうなのでやめました(採卵も難しいっぽい?)。
良さげなオニグルミだけどカミキリしか採れなかった
再び歩き出して採集を再開。
時折、シナノキやユクノキがありスウィーピングを行いましたが何も採れず。
ここまでひたすら林道を歩いてきましたが、時間的にも体力的にも限界かなと思い引き返します。
ふと、足元にあった糞が気になりました。
シカの糞はたくさん転がっていたけど、ここのはちょっと雰囲気が違うような?
(糞画像そのまんまにつき注意)
詰まり気味のシカ糞はこんな感じになるらしい
結局シカ糞のようだったのですが、崩して調べたりしていると中に糞虫が入っていることに気がつきました。
糞の中に潜っている糞虫。何種類かいそう。
しばらく周辺の糞を漁って、最終的に3種類の糞虫を得ました。
左: トゲクロツヤマグソコガネ
Aphodius (Acrossus) superatratus Nomura & Nakane, 1951
右上: ニッコウコエンマコガネ
Caccobius (Caccophilus) nikkoensis (Lewis, 1895)
右下: マルツヤマグソコガネ
Aphodius (Sinodiapterna) troitzkyi Jacobson, 1897
この中ではニッコウコエンマコガネが初採集でした。
残りの2種は長野県でも何らかの大型哺乳類の糞から得ています。
マルツヤマグソコガネは珍しい種のようで、シカ糞に見られることが多いとか。
ただし最近は増えているという話もどこかで聞いた気がします。
「日本産コガネムシ上科図説」では★★★★(稀種)となっています。
ここのシカ糞ではツヤエンマコガネに次いで個体数の多い種でした。
意外と時間に余裕がなさそう(日が暮れそう)だったので、帰り道は気になった木だけスウィーピングしていきます。
“いけそう”な雰囲気を感じるヤシャブシ
ヤシャブシは無数に生えているので、全部は掬わずこういう太めの枯れ枝を伴うものを選んでスウィーピングするようにしています。
そういう木を好むタマムシがいるのでね……
ルイスナカボソタマムシ
Coraebus rusticanus rusticanus Lewis, 1893
ここでは狙い通りにルイスナカボソタマムシが採れました。ヤシャブシやヤマハンノキの類で得られる格好良いタマムシです。
埼玉県内ではこれが初めての遭遇でした。やっと会えたぁ……
本種に関しては闇雲なスウィーピング、というよりしっかりと「採れそう」という意識を持って狙って採れるように段々なりつつある、と思う。
以前より少しはルイスナカボソの理解者になれてきただろうか……?
これは普通に「ヤシャブシ」でいいよね。
※ルイスナカボソタマムシはオオバヤシャブシからでも、ヒメヤシャブシからでも得ることができます。
これ以降は特に何もなく、最初のホソクロナガタマムシが採れたポイントに戻ってきました。
もう一回スウィーピングしていこう。
……何も採れませんでした。
やっぱり偶然の1頭だったんだろうか……?
発生木は一体どこに___
樹皮がなんというか……バリバリしている
「あ!! これでは……!?」
採集した木から50m程度離れた斜面の下方にさりげなくユクノキが生えていました。
樹木自体は生きてますが、この樹皮の荒れ具合を見るに……ナガタマの発生木になっている可能性は高そうです。
残念なことに、この木には網が届かずスウィーピングが出来ませんでした。
双眼鏡で樹幹を見るも何かが歩いている様子はなし。
この時点で17時を回っており、薄暗くなっていました。昼間の時点で気付けていれば……!
斜面を少し下れば樹幹をしっかり確認できそうなのですが、掴まれる木の少ない急な斜面だったのでやめました。
(下り急斜面に関するトラウマは未だ健在です……)
ホソクロナガタマムシの追加はありませんでしたが、この場所ではちょっとうれしい出会いも。
クジャクチョウ
Inachis io geisha (Stichel, 1908)
埼玉県では初遭遇となるクジャクチョウがいました。
長野県では自転車で行けるくらいの所でもみられる虫でしたが、埼玉に来てからはご無沙汰でした。
各種のイラクサ類、カラハナソウ、ハルニレなどが寄主で、本州では標高のやや高い山地にみられますが北海道では低地にも多くみられます。(先日出張で北海道行きましたが、本州山奥の環境がちょっとした山にあり感覚がバグりました……)
オオトラフコガネ
Paratrichius doenitzi (Harold, 1879)
下草にはオオトラフコガネが止まっていました。6-7月頃に見られる美しいハナムグリの仲間です。
山を歩いていると目立つところに止まっている個体を見ることがあります。
埼玉では確か今回が初遭遇だったと思います。
こんな具合によく目立つところにいる(2022.07.09)
ちなみにこの日↑は葉っぱのスウィーピングでも本種が入りました。
過去にはノリウツギの花から採れたこともありますが、これまでに出会った個体は全て雄で、雌は未だに一度もお目にかかれていません。
昼の部はこれで終了。
車まで戻ったら少し移動して見晴らしのいい場所へ。今日は好調なのでこの勢いでライトトラップもやっていきます。
特に狙いがあるわけでもないけど……
気象コンディションも周りの環境も悪くなさそうです
周囲にオニグルミが多少生えているので、以前から敗北し続けているあの蛾が来てくれたらうれしい。
(わざわざこんな山奥で狙うものでもないが)
19:30頃から点灯。すぐにアカアシクワガタが飛来しました。
___願いが通じたのか、20:00を過ぎたころ。
幕から少し離れた場所に中型の蛾類のシルエットを確認。この雰囲気は……もしかして。
「やっぱりだ……!!!!!」
ムラサキシャチホコ
Uropyia meticulodina (Oberthür, 1884)
「ずっと待ってたぜ、お前を……!!」
ライトトラップの道具をそろえた2020年。本種の存在はずっと頭の中にあり、いつもオニグルミの近くで焚くようにしていました。
しかし長野ではまさかの一度も出会えず敗北。
2021年、埼玉に来てからも近所河川敷のオニグルミ林を探して焚きましたがモンホソバスズメが来たのみ。
というわけでライトラ3年目にして、ようやく擬態の名手ムラサキシャチホコに出会うことが出来ました。
翅を開いていると逆に違和感がスゴイ
この日はうれしいことに4頭ほどムラサキシャチホコの飛来がありました。

巻いた枯葉の影部分が”ムラサキ”の語源?
かすかに赤紫色に見えなくもない
オニグルミを寄主とするムラサキシャチホコの成虫はその枯葉が丸まったものを忠実に再現した姿をしており、色の濃淡によって自然な影を錯覚させ天敵の目を欺きます。
左上:ニッコウケンモン
Craniophora praeclara (Graeser, 1890)
右上:イボタケンモン
Craniophora ligustri (Denis & Schiffermüller, 1775)
左下:シロオビドクガ本土亜種
Numenes albofascia albofascia (Leech, [1889])
右下:フトオビホソバスズメ
Ambulyx japonica japonica Rothschild, 1894
今晩はムラサキシャチホコ以外にもいろいろな蛾の飛来がありました。
写真下側の2種はどちらもイヌシデやクマシデなどシデ類を寄主としており、当地の植生を反映した結果だったなと後になって思いました(どちらも初採集でした)。
今晩のライトトラップ飛来状況(撤収直前)
全体的に大型の蛾が多くて楽しめました。
ライトの電源が切れた23時過ぎ頃に採集を終え、帰宅しました。
iPhoneで確認したらこの日は27379歩歩いてました。
めっちゃ疲れた。
(帰りもやっぱり限界運転だった)
長野県というチート地域での採集に甘んじてきた私にとって、昨年から始めた埼玉(とくに山間部)でのタマムシ採集は正直なかなか思い通りにいっていませんでした。
しかしこの日はようやく一つの大きな成果_ホソクロナガタマムシに辿り着けて、今までの頑張りが報われた気がしました。
まだまだ、県内で出会えるはずのタマムシや見つけ出したいタマムシは居ます。
これからも県内の可能性を追い続けていきます……!!
(など言いながら、最近県外行ってばかりな気がする……)

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