アオマダラタマムシとの再会

2018.02.07

埼玉に帰って真っ先に向かったのは…図書館でした。
県の昆虫誌や月刊むしから色々な情報を集めていたら無性に採集がしたくなって、帰りに公園などによって樹皮めくりしました。
初めて見るフユシャク♀(クロテンフユシャクかな…?)の他、多数のチビタマムシが出て来ました。
前々から感じていた事ですが、山や河川敷での樹皮めくりと比較して公園などの樹皮めくりでは出て来るチビタマムシの個体数が明らかに多いように感じています。
ケヤキの本数が限られる分、一つの木に多く集中するのかもしれません。
長野の河川敷での採集で、ほんの数キロ場所を変えるだけでも見られるゴミムシが全く変わって来る事を強く感じました。
情報収集の結果をふまえても…採集に行くべき場所があるようです。
湿地のゴミムシもそうですが、それ以上に気になっている事もあります。
アオマダラタマムシは実家から自転車で行ける場所にも生息地がある。
この事実自体は結構前から知っていたのですが、そのポイントは正直言って採集者が入れるような場所では無く、材割りなど出来るはずも無いのです。
そう考えて諦めていました、が…
ポイントの近くの林を一つ一つ見ていけばアオハダがあるかもしれない、と今更思い直し(汗)
今回はアオハダがあるかどうか調べるとともに、近くのまだ訪れた事のない湿地にも行ってみることにしました。
はっきり言って期待はしていませんが、次に繋がるものが得られたらいいなと。


2018.02.08
201802111653070b0.jpeg
結構回るポイントが多くなりそうなので早めに出るつもりだったのですが…がっつり寝坊して一つ目のポイントに着いたのは9:30頃になりました(汗)
まずは片っ端から林に突っ込んで行き、アオハダを探しま______


アオハダ?
Ilex macropoda Miq.


やっぱりケヤキな気がしてきた…
「これアオハダじゃねえか…!!」
開始からわずか数秒、一つ目の林に入ってすぐにアオハダと思われる木が立っていました…
この辺りにアオハダが混じる林は、やっぱり一箇所だけじゃなかったんだ。
周囲を調べると、それらしい枝も落ちていました。

そしてそれらしい脱出孔も…
今回から新しく導入した道具である、鉈(ナタ)で材の表面を削っていきますが…手がかりは得られませんでした。

買ったのはマスコットナタとかいう…いかにもショボそうなやつ(1800円くらい)。
普通に材を割るならもう少ししっかりしたものの方が良いとは思いましたが、削って虫を出すことを考えたら力加減の調節や細い材相手でも使いやすそうな小さめのものがいいのかなと思いました。
決して一番安かったからコレにしたわけではない(笑)
今日一日の材割りで不便に感じた事は特になかったです。
大きさ的にもちょうど良くて、私的にはこれよりデカイやつだと手が疲れたり思うように削れないかもしれないと思いました。
今までの材割り道具では全く歯が立たないような硬い材でもすんなり削れることに感動してしまった…
そんなわけで鉈を駆使しながら周囲の材を削っていきますが、アオハダのいい枝は無いようで…何も得られませんでした。
一応アオハダの場所をしっかりと記憶して、さらに林の奥へ進んでいきます。
やはり最初の一本のような大きめなアオハダは他には無いようで、林内を見渡しても全く見当たりません。
しかし視線を落とした時に気づきました。

そうだそうだ…これだよ、アオハダの材は!
青白く薄い樹皮が垂直平行に剥がれている感じ。
記憶が若干怪しくなっていて材を見落としてしまうのではないかと思っていましたが、見たら一発で思い出せました。

材の表面には見覚えのある脱出孔が1つだけありました。
もしかすると本当にここで採れてしまうかもしれない…
鉈で材の表面をひたすら削っていきます。
しかし材はかなり湿っていてボロボロになっている部分も多く…アオマダラが入っていそうな硬い部分はごく僅かしか残っていませんでした。
15分ほどで硬い部分の表面をほぼ削りきってしまい…さすがにダメだと判断しました。
鉈をしまって散らばった材を片付け始めた時、違和感のある物体が視界に入ってきました…

アオマダラタマムシ
Nipponobuprestis (Nipponobuprestis) amabilis (Voollenhoven, 1864)
「いた……本当にいた!!!!」
菌に巻かれて死亡しており、取り出してもバラバラになるような個体ですがギリギリ標本にできそう、何より貴重な個体なので持ち帰ります。
やはりアオマダラが採れるポイントは一つだけじゃなかった…しかしまさか本当に採れるとは思わなかった(汗)
こんなに太いアオハダの材があるということは周囲に大きな木があるはず…ということで周囲を見渡しますが、それらしい木が見当たりません。

真後ろに一本、小さめの木が生えていました。
幹自体は細めなのですが、先の部分が丸ごと無くなっていたのでおそらくさっきまで削っていた材がこの木の先の部分だったのだと思われます。
念のため他にも枝がないか周辺を探していると、腕ぐらいの太さのそれらしい枝が落ちていました。
こちらはほとんど朽ちていないようで、もしアオハダだとすればかなり期待できそうな感じです。
脱出孔がないか調べようと材を持ち上げてみると、材の表面にある不自然な突起が目にとまりました。

「あれ?」

「いや、まさか……」

「アオハダですね…間違いなく。」

アオマダラタマムシ
Nipponobuprestis (Nipponobuprestis) amabilis (Voollenhoven, 1864)
傷つけないように指でつまんでそっと取り出してみると、脚も全て揃った綺麗なアオマダラタマムシが出てきました。
こんな真冬に羽化してくるはずもなく…当然死亡個体です。
おそらく、去年の夏に脱出に失敗して引っかかったまま死亡し、そのまま奇跡的に捕食されたり腐敗したりせずに今までこの状態で残っていたものと思われます。
こんな事ってあるのか…(汗)
とりあえずこの材がアオハダ、しかもアオマダラが入っている事が分かったので気合を入れて削っていきます。


数分後、一頭目のアオマダラタマムシが出てきましたが…死骸でした。
生きてる個体はいないのか…?


そう思い始めた頃に、ようやく生きているアオマダラタマムシが出てくれました。
触角が何故か欠けてしまっていますが綺麗です。
やはり死亡個体が多いようで、ボロボロになってとても標本にできそうにない個体や、羽の一部なども出てきました。
ある時は蛹室が見えたものの中に真っ白な塊が見えて…これは確実に死亡個体だろうなと思って引っ張り出してみると、

なんと…生きてました(汗)
この個体が本日唯一の完品個体でした。
よく生きていてくれたものです…
この個体もあのまま材の中にいたら菌に巻かれて死亡し、羽化することは出来ないのでしょう…

最後に出てきたこの個体はボロボロすぎて標本にもできそうにありませんでした。

アオマダラと思われるタマムシ幼虫も出てきましたが…クラッシュしてしまいました。

最終的にこの場所では死骸も含めて5頭のアオマダラタマムシを採集する事が出来ました。
菌に巻かれて死亡している個体が多いのは材が湿っているからではないかとの事です。
幼虫は普通に生きているのでやはり成虫で越冬→脱出まででかなりの個体が死亡してしまうのだと思います。
成虫は湿度に弱いのではないか…とのことです。
逆に言えば生息地の乾燥化が進めば個体数は爆発的に増えそうな気もします。
材の中でこれだけ死亡個体が見つかるんだから、これがちゃんと羽化していれば数はもっと増えるはず。
後は脱出孔のある湿った材を狙って割ることで季節や種類に関係なくタマムシ成虫(死骸)を得ることが出来るのではないかとか…思いました(笑)
一つ目のポイントで本日の目標…というかダメ元のつもりだったのですがアオマダラタマムシが採れてしまったので後は軽く流す感じで他の林も見ていきました。
最初の一本ほど大きな木ではないにしても、アオハダ自体は各地の林に少ないながら自生していました。


アオハダの枝?

これも何だかケヤキな気がしてきた…本当に分からない(汗)
新しく伸びる枝は芋虫みたいに奇妙な形をしているのが特徴です。
下から見上げれば奇妙な短枝が目に付くので、これも冬場にアオハダを見つける上で分かりやすいポイントの一つです。
今回の探索で見つけたアオハダの木を夏場に訪れたら幹に飛来するアオマダラタマムシの活動個体に会えるのでしょうか…
活動期の個体は材割りで得られる個体と違った雰囲気になるようなので一度は見に来たいです。
時期的に間に合うかどうかかなり微妙なのですが…
時間が少なくなってきたので今日の二つ目の目的である未採集のゴミムシを求めて湿地へ向かいます。

この辺りかな、と思ったところへ進んでいくとそこには確かにかなりいい感じの湿地がありました。
自転車で流していると全く気づけませんが、地図で見ると確かに湿地らしきものがあるのが確認できます。
正確にこの湿地なのかは分かりませんがこの周辺で未採集の良いゴミムシが色々と採れているようなので、それを探していきたいのですが…材が見当たらない(汗)
いや、別にいいのか。
材が無いなら…枯れ草を起こせば良いじゃないか。

いつかそうしたように、枯れ草の破片が積もっている場所を適当にかき分けてみると…ゴミムシが出てきました。
いつものアシミゾナガ…じゃない(汗)
コガシラにしては小さい。
なんとなく見覚えがあるこのゴミムシは、もしやアレではないか………?

カジムラヒメナガゴミムシ
Pterostichus kajimurai Habu et Tanaka, 1957
ちょっと待て…こんなの聞いてないぞ!?
期待していたゴミムシとは全く違うのだけど…これはこれで結構貴重なのではないか(汗)
栃木県某所以外ではほぼ採れないやつなんじゃないかと思ってましたが…一応埼玉県内がタイプロカリティーでRDBには載ってないので思ってたほど貴重ではないのかも知れない…(汗)
(ちなみにこの後2頭追加が得られた)
さらに枯れ草をかき分けると、見覚えのあるゴミムシの腹面が見えました。

本州でこんな見た目のゴミムシはあの一種しか思い浮かばない。

クロモンヒラナガゴミムシ
Hexagonia insignis (Bates, 1883)
聞いてない(2回目)
こちらは県のRDBでⅡ類。県内では本当に少ない虫だと思われる…
もちろん埼玉では初めて見ました。
予想していた以上にこの湿地はヤバそうなので、ここから徹底的に枯れ草をかき分けていきました。

キイロテントウゴミムシダマシ
Leiochrodes masidai Nakane, 1963
湿地性のテントウムシかと一瞬期待しましたが触角がテントウムシしてないので違う…
栃木の某所ではめっちゃいますが、そういえばいつもの河川敷でも見た事が無い虫でした。
採集してなかったのでこの機会に採っておく。(奥に写っているのはムネアカマメゴモクムシ)

セスジゲンゴロウ
Copelatus japonicus Sharp, 1884
このゲンゴロウは初めて見る虫でした。
この辺りの水はそんなに汚くなさそうなので水生昆虫やトンボも色々と採れそうな感じがします。
水生昆虫ではこの他にヒメガムシも数頭出てきました。
あとはオオヒラタシデムシが出る事もあって、この枯れ草の下がゴミムシ以外の色んな虫の越冬場所として利用されているのが分かります。


アオヘリホソゴミムシ
Drypta japonica Bates, 1873
根返りの土を掘っていたらアオヘリホソゴミムシやヒメキベリアオゴミムシも出てきました。
ヒメキベリはボロかったのでスルー。
根返りの堀りに夢中になっていたら湿地に片足を沈めてしまい…結局少しだけしか掘れませんでした(汗)

どんな枯れ草の下でもゴミムシがいるわけでは無いようです。
堆積している枯れ草にそこそこの厚みがあり、かつ地面としっかり接していること。
他には地面の水気が多すぎない事などがポイントなのかなと思いました。
写真の場所は地面との隙間が空きすぎていてゴミムシが潜るスペースが無さそう?に感じました。(ゴミムシは何も出なかった)
最初にカジムラヒメナガゴミムシを出した所が一番いい場所…というかこの日の枯れ草起こしでまともにゴミムシが出せた唯一の場所で、他の場所では何故か既に活動していたトックリナガゴミムシくらいしか見つかりませんでした。
その後は少し移動して樹木の多い場所で見つけた朽木を割っていました。


カントウアオオサムシ
Carabus (Ohomopterus) insulicola kantoensis Ishikawa et Ujiie, 2000
上の個体は倒木の上に溜まった土から出てきました。
下の個体は樹皮下から出ましたが死亡していました…
河川敷のアオオサもなんかお馴染みになってきた…(汗)
材からは大量のアオゴミムシの他、ヒメキベリアオゴミムシやヒメホソナガゴミムシなどやはり湿地系のゴミムシがちょくちょく出てきましたが…初採集のゴミムシはなく、この日の採集はここまでとなりました。

この湿地もまだまだ未探索部分が多く、きっとまだまだ良いゴミムシがいると思うのでまた来たいです。
自転車で全然来れる場所なので、ベイトとかもやってみたいですね。
近辺で未採集のナガタマムシが記録されていたりもしますし、この付近に訪れることは今後確実に増えるでしょうね…(笑)
【結果】 ※色付きは自己初採集
アオマダラタマムシ
Nipponobuprestis (Nipponobuprestis) amabilis (Voollenhoven, 1864)
2exs.+死骸3exs.
ヤノナミガタチビタマムシ
Trachys yanoi Y. Kurosawa, 1959
1ex.
カントウアオオサムシ
Carabus (Ohomopterus) insulicola kantoensis Ishikawa et Ujiie, 2000
1ex.
キンナガゴミムシ
Pterostichus planicollis (Motschulsky, 1860)
2exs.
カジムラヒメナガゴミムシ
Pterostichus kajimurai Habu et Tanaka, 1957
3exs.
ヒメホソナガゴミムシ
Pterostichus rotundangulus Morawitz, 1862
1ex.
オオマルガタゴミムシ
Amara gigantea (Motschulsky, 1844)
1ex.
ゴミムシ
Anisodactylus signatus (Panzer, 1797)
2exs.
ヒメキベリアオゴミムシ
Chlaenius inops Chaudoir, 1856
1ex.
クロモンヒラナガゴミムシ
Hexagonia insignis (Bates, 1883)
1ex.
アオヘリホソゴミムシ
Drypta japonica Bates, 1873
1ex.
セスジゲンゴロウ
Copelatus japonicus Sharp, 1884
1ex.
シバオサゾウムシ
Sphenophorus venatus vestitus Chittenden, 1904
1ex.
キイロテントウゴミムシダマシ
Leiochrodes masidai Nakane, 1963
1ex.
タデマルカメムシ
Coptosoma parvipictum Montandon, 1893
1ex.
未同定フンバエ
1ex.


2018.02.07の分
ヤノナミガタチビタマムシ
Trachys yanoi Y. Kurosawa, 1959
8exs.
ナミガタチビタマムシ
Trachys griseofasciata E. Saunders, 1873
1ex.
キイロクビナガハムシ
Lilioceris rugata (Baly, 1865)
1ex.

フユシャクの一種
1ex.

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