アオマダラタマムシ / Nipponobuprestis (Nipponobuprestis) amabilis (Voollenhoven, 1864)

タマムシ科

葉上に降り立った(2023.05.21 埼玉県)

アオマダラタマムシは国内では本州・四国・九州と対馬に分布する、タマムシ科の甲虫です。
タマムシの仲間としては大型で、大きさは16-29mmほど。
翅のまだら模様がたいへん美しいことが特徴のタマムシです。

地域によってはやや珍しい昆虫で、埼玉県や千葉県、石川県、高知県、長崎県など12の県でレッドリスト(レッドデータブック)に掲載されています。
(2024年6月現在)

本記事ではそんなアオマダラタマムシについて、生態や探し方、飼育方法をまとめました。

アオマダラタマムシの生態

アオマダラタマムシは一般的なタマムシと同様に植物を食べます。ただし、幼虫期と成虫期で食べる植物が変わります。

立ち枯れに来たアオマダラタマムシ
アオハダの立ち枯れに来たアオマダラタマムシ

幼虫は主にアオハダやソヨゴ、イヌツゲなどのモチノキ科の樹木の材部を食べ、成虫も産卵・交尾のために雌雄問わずモチノキ科の立ち枯れや衰弱木によく集まります。

しかし、成虫はモチノキ科を食べません。
成虫の食べ物はサクラ類の葉っぱで、ヤマザクラやソメイヨシノ、カスミザクラなどを食べます。

サクラ類ならなんでもいいわけではなく、ウワミズザクラやイヌザクラなど食べないサクラもあるようです。

undefined
ソメイヨシノを餌として飼育することができる(後述)

アオマダラタマムシ成虫の活動時期は5~8月にかけてです。
ただし、秋頃に羽化して材内で成虫越冬するため、冬季の材割でも観察できます。

undefined
冬季に材から出した個体

undefined
初夏の個体。黄色い粉は活動期に出る

初夏に野外で活動する個体には黄色い粉が出るほか、活動期の後半に差し掛かるにつれ青みがかった個体が多くなります。
本来の美しさを知るには夏季の観察がオススメです!

近縁種のクロマダラタマムシはとても珍しい

アオマダラタマムシによく似た種として、クロマダラタマムシという種がいます。

クロマダラタマムシとアオマダラタマムシは模様や色が違い、簡単に見分けることができます。

undefined
アオマダラは斑紋がポイント

アオマダラタマムシには上翅に2対の目立つ斑紋があります。
クロマダラタマムシにはこれがなく、一様なまだら模様になっています。

クロマダラタマムシは、エノキの大木を利用するとても珍しいタマムシです。
ふつうに出会うものはアオマダラタマムシだと思っていいでしょう。

アオマダラタマムシの採集方法

ここからは、アオマダラタマムシに出会うために知っておきたい情報をまとめました。

まず確認しておきたいのが、分布域です。
アオマダラタマムシの分布は本州から九州にかけてです。
分布の北限は日本海側では山形県、太平洋側では宮城県まで知られています(北海道や沖縄にはいません)。

どちらかといえば生息地は暖地に多い傾向があり、北限に近い東北地方では難易度が上がります。 

分布域を確認したら、次は生息地を見つけましょう。

生息地を見つける

アオマダラタマムシの生息地を見つける上で最も大切なことは、彼らがやって来る寄主植物をしっかり覚えておくことです。

関東地方ではアオハダを利用する個体が多いかと思います。
アオハダは公園や雑木林に生えていることが多く、平野部から低山地でよく見かけます。

アオハダの葉
アオハダの葉

アオハダの葉は浅い鋸歯があり、互生。
葉は葉脈が浮き出た明るい黄緑色であることが多いです。

アオハダの樹皮下は緑色

アオハダ以外では、公園や神社などにありがちなイヌツゲも狙い目です。

undefined
イヌツゲの葉

イヌツゲは都市部でも生け垣や庭木などでよく植栽されている木です。
ツゲ(ツゲ科)に似ていますが、グループは異なりアオハダと同じモチノキ科です。

undefined
荒れたイヌツゲの樹幹

大きなイヌツゲはあまりないですが、発生木として認識しておくと思いがけないところでアオマダラを見つけられる可能性があります。

西日本は特にソヨゴがいいでしょう。山に多く生えています。
ソヨゴは常緑のモチノキ科で、葉縁が波打っていて分かりやすい木です。

ソヨゴの葉
ソヨゴの葉

undefined
脱出孔が空いたソヨゴの倒木

モチノキの葉undefined
もちろん、ただの「モチノキ」でもOK

何らかのモチノキ科植物を見つけたら、アオマダラタマムシが残す「痕跡」を探しましょう。
彼らの生息地には必ず、成虫の脱出孔が空いた木があります。

undefined
アオハダに空いた脱出孔

アオハダの落ち枝に空いた脱出孔

脱出孔は直径7mmほどの楕円形で枯れ木に多いですが、生木でも枯死部や枯れ枝に空いていることがあります。
これが確認できれば近辺の生息は間違いありません。

見つけ採り(夏季)

アオマダラの発生ピークである6~7月頃、天気のいい暑い日に生息地を訪れれば、樹幹をはうアオマダラタマムシがきっと観察できます。
立ち枯れや衰弱木を探しましょう。


絶好のアオマダラポイント(アオハダ)

undefined
アオハダの立ち枯れで出会う2頭

日が当たっている木の方がいいと思いがちですが、案外日陰の木にもいます。

イヌツゲ衰弱木に来たアオマダラタマムシ
ここには3頭います(樹種はイヌツゲ)

5mくらいの長い網があれば安心ですが、多い場所では根元付近までたくさん付いていることもあるため、手の届く高さで観察・採集できることも珍しくありません。

アオマダラタマムシ
近距離で写真撮影できることもあるが、輝き過ぎるがゆえにいつも苦戦する……

材割採集(冬季)

私の経験では早いと11月16日に成虫を出しています。
この頃から既に材割での採集が可能です。

寄主植物のひとつ、アオハダは黄色く紅葉する

アオハダの太い落ち枝。既に脱出孔があっても出る。

アオマダラが入るモチノキ科の材は硬いものが多く、割るのはかなりのパワーが要ります。
そのため、私はナタなどで少しずつ削っていく方が楽で安全かなと思います。
(過度な材割はせず、節度を守りましょう。)

undefinedundefined
蛹室から顔を出したアオマダラタマムシを取り出す

材を持ち帰って羽化させるのもアリです

アオマダラの材割採集は採集記があるので、こちらもご覧ください。

埼玉県↓

奈良県↓

アオマダラタマムシの飼育

アオマダラタマムシの成虫には、餌としてソメイヨシノやヤマザクラなどのサクラ類の葉を与えることで飼育することができます。
ただし、あまり葉を食べないので観察する楽しみは少ないかもしれません……

undefined
ソメイヨシノの葉

葉はふつうに硬いものでも問題なく食べてくれますが、選り好みするかもしれません。
私の場合、初日に与えた葉は全く食べてくれず、2日目に別の場所で採った葉に変えたらすぐ食べてくれました。

冬季採集(材採集)のアオマダラタマムシは粉が出ていないので、飼育して成熟させるのもいいですね。

産卵させるにはモチノキ科の太い枯れ木が必要で、少し難しいと思いますがやっている方もいます。

undefined
私も今年、飼ってみることにしました

サクラの葉は手に入りやすいので、手軽に飼育できていいですよね。
アオマダラタマムシに出会ったら、ひと夏のパートナーとして迎え入れてみてはいかがでしょうか。
(上手に飼育すると、9月まで生きることもあるようです)

コメント

タイトルとURLをコピーしました