2025.04.19
2週間前、県内の山に初めての地中トラップを設置しに行きました。
この日はその回収に向かいました。が……
ハエしか入ってないんだけど
がんばって埋めた10個のトラップにはゴミムシどころか一切の甲虫が入らず、わずかなハエとクモ、1頭のガロアムシが入っていただけでした……
ウッキウキで地中トラップの作製から設置までの記事を既に書いていたのですが、こんな成果では、とても記事を上げられない……(笑)
完成は先送りにします
トラップはまた少し違う場所に埋めて、次は2カ月くらい放置する予定です。
正直すっかり自信を無くしてしまい、どこに埋めたらうまくいくのか分からなくなりました。
一応、ちゃんとナガゴミムシ類の記録がある場所でやったつもりだったのですが……もっと山奥にした方が良いのかもしれませんね。秋は違う場所でやろうかな。
とまあ、そんなことがあり、わりと落ち込んでいました。
しかし、トラップの回収を終えたら夜はそのまま山でライトトラップです。この日は現地も最高気温が24℃まで上がるたいへん暖かい日。
月齢は20.7(半月強くらい)。風も弱く今夜のライトトラップには期待がかかります。
落葉広葉樹林が広がる路肩でやってみました。
標高はおよそ650 m。
目標は春の三大蛾のエゾヨツメとイボタガです。
特にイボタガはまだ県内で出会えていない種なので、これが飛んで来てくれたらとってもうれしい。
そのうちライトに使っている機材とかもまとめて紹介したいですね
2週間前、地中トラップの設置の時もまったく同じ場所でライトトラップをやっています。
その時は気温が10℃から7℃くらいまで落ち込んでしまい、イボタガやエゾヨツメの飛来はありませんでした。
(トビモンオオエダシャクだけはいっぱい来た)
しかし今回は……
日没後でも18℃以上ある!
この暖かさならいろいろ飛んできてくれるはず!
期待を胸に抱きながら、蛾類の飛来を待ってみます。
序盤はネグロケンモンとムラサキエダシャクがやたらと飛来してきました。

ネグロケンモンはモコモコ度が高いケンモンヤガですね。夏にもよく見ます。

ムラサキエダシャクは最初から最後までずっと飛来が続いていたような気がする
19:15。早速エゾヨツメが来ました!
網の中にエゾヨツメが入っています
エゾヨツメは日没から比較的早い時間に飛来する傾向があると言われます。
この日の日没は18:19。1頭目の飛来は日没からちょうど1時間くらいですね。

ちょっとボロいけど、青い眼状紋が美しい!
エゾヨツメは埼玉県内の別の場所で過去に採集したことがありますが、その時も日没から1時間以内に2頭が飛来して、それっきり全く来ませんでした。
早期決着型の蛾なのでエゾヨツメの採集では遅くまで粘らなくて良いのですが……イボタガが遅い(だいたい22:00以降とか言われる)ので、気長に待つ必要があります。
19:21。5分ほどたった頃、再びライトトラップに大きな蛾が飛んできました。
2頭目! すぐ確保しないとどこかへ行ってしまうので、証拠写真だけ……
2頭目のエゾヨツメが来ました!
飛来が始まった感じですね。もっと飛んできてくれてもいいぞ……

今度のはきれいな個体でした。鮮烈なブルーアイズ!
19:35。また大型蛾が飛んできましたが、今度はスズメガでした。

ハネナガブドウスズメ
Acosmeryx naga (Moore, 1858)
大きなハネナガブドウスズメの飛来は迫力がありました。
これもとってもきれいな個体で、鈍い金色に輝いていました。
19:39。3頭目のエゾヨツメが来ました。
出始めではないんだろうけどきれいな個体がまだちゃんと採れる時期みたいです
エゾヨツメはかなり好きな蛾なので、喜んで採っていきます。
中型の蛾類もいろいろ飛来していますが、ここまでネグロケンモンを採集したのみです。
19:45。オレンジ色が目立つ中型の蛾が飛んできていて、なんだろうと思い近づいてみると__

ウスベニキリガ
Orthosia cedermarki (Bryk, 1948)
マジで!? ウスベニキリガだ!!
本種は『日本の冬夜蛾』で珍品度★★★★と評価されている局地的な種で、私は初めて見るキリガでした。
クリやソメイヨシノで飼育され、里山的な環境に細々と生息していると考えられますが……これが県内で採れたのはかなり幸運な気がします。
地中トラップの爆死も、このウスベニキリガに免じて許そうという気になれました(笑)
19:55。4頭目のエゾヨツメが飛来しました。

エゾヨツメ
Aglia japonica Leech, [1889]
触角がちょっとかけてるけど、翅はきれいなエゾヨツメの♂でした。
これと同時にもう1頭エゾヨツメが飛んできていましたが、確保する前にどこかに行ってしまいました。
この日のエゾヨツメの飛来はこれで最後でした。日没から2時間以内で終了、という感じでしたね。
ちなみに、飛来が遅い日は21時頃になっても飛んでくることがあるようです。
ライトに飛んでくるエゾヨツメは♂の方が多く、♀に出会うのは少し難しいようです。
♀に出会えたら、採卵して幼虫飼育とかもできるかもしれません……いつかやってみたいですね。
ほかに飛んできた蛾をいくつか紹介します。

キンイロキリガ
Clavipalpula aurariae aurariae (Oberthür, 1880)
金色の模様が美しいキンイロキリガが来ました。
本種は学生時代に長野県で採集していましたが、埼玉では何気に初遭遇でした。ずいぶん久しぶりで、なつかしい気持ちになりました。

ムラサキミツボシキリガ
Eupsilia unipuncta Scriba, 1919
大きめのキリガが飛んできたと思ったらムラサキミツボシキリガでした。いわゆる越冬キリガですが、まだ生き残りがいるとは……
このくらいの標高の山地帯には広くいるのでしょうかね。県内でもあちこちで出会っています。
個人的に大好きな蛾が来ました。

マエグロシラオビアカガネヨトウ
Phlogophora albovittata (Moore, 1867)
私は本種が含まれる「アカガネヨトウ族」が本当に好きで、何が来てもうれしくなります。
マエグロシラオビアカガネヨトウはこの辺の仲間では一番身近な種類で、平地の糖蜜でも出会うことがあります。
真冬に出会うこともある本種ですが、今の時期にいる個体は成虫で冬を越したのかな……?
(その割にはきれいすぎるので、ふつうに最近発生した個体かなと)

クロスジキリガ
Xylopolia bella bella (Butler, 1881)
かっこいいクロスジキリガも数頭飛来しました。
埼玉県ではシラカシなどのカシ類は案外山の方によく生えているので、本種やナワキリガ、クロテンキリガなどの常緑樹食いの蛾類に山の中で出会うこともそう珍しくありません。
23:35。だいぶ夜も深まってきたところでウスベニキリガに匹敵するほどうれしい種の飛来が……!

ウスズミケンモン
Acronicta carbonaria (Graeser, 1889)
それがこのウスズミケンモンです。本種も局地的な蛾として知られていて、初遭遇でした。
地味な色合いの前翅からチラ見えしている純白の後翅がたいへん美しく映えるヤガです。
本種はクヌギを寄主とするので近所の河川敷界隈でもいそうですが、出会えていません(というか時期に全然ライトトラップやってない)。
ウスベニキリガと近いイメージで、良好な里山環境などで細々と生きている蛾のような気がしています。
本種は環境省のレッドリスト掲載種でもあり、準絶滅危惧種(NT)です。
結局0:30くらいまでやっても本命のイボタガは来なかったのですが、ウスズミケンモンが来てくれたことで遅くまで粘った甲斐がありました。

撤収間際に飛来したノヒラトビモンシャチホコ
イボタガと同時期に出ると言われているノヒラトビモンシャチホコは、スレたのが1頭だけ来ました。
もしかしたらこの場所でイボタガを狙うには時期がやや遅かったかも?
あと1週間早く来ていたら違う結果があったかなあ……

マエモンシデムシ
Nicrophorus maculifrons (Kraatz, 1877)
甲虫の飛来も多少あり、マエモンシデムシやオオモモブトシデムシも飛んできていました。
どんどんライトトラップが楽しい季節になっていきますね。
結局イボタガ来なかったけど、エゾヨツメはしっかり来てくれたし、ウスベニキリガやウスズミケンモンなど良い蛾が来てくれて幸せな夜でした。
終了時の気温は14℃ほどでした。
0:30になってもまだ飛来は続きそうでしたが、翌日も予定があったため撤退……

エゾヨツメの食草(食樹)はクリやコナラなどのブナ科のほかハンノキやカエデなどです。
関東地方では、山地の落葉広葉樹林で4月頃にライトトラップや街灯巡りを行うことで出会うことができます。
本種の生息が知られる場所としては高尾山が有名ですが、別に高尾山まで行かなくても山地の広葉樹林があれば狙って出会うことは十分可能です。
自分で目を付けた場所で出会えれば喜びもより大きいものになるでしょう。
エゾヨツメ以外にも魅力的な蛾がたくさん出現する春。
良蛾を求めてライトトラップや街灯巡りを楽しみましょう!
エゾヨツメと春の良蛾たち
採集記・記録+鱗翅目(チョウ目)
コメント