今年のゴールデンウィークは花すくいでたくさんカミキリムシを採ろう。
長野に来てから3年目の春を迎える今年。
過去2年連続でゴールデンウィークは実家に帰省しており、長野県での採集を行うことができませんでした。今年はその反省を活かしてちゃんと長野でカエデの花をすくうのだ……そんな思いを抱いていた2019年4月。
今年は4月に入ってからも雪が降るなど寒い日は続き、季節の進行は去年より遅れていたようでした。
予想と異なる開花状況に振り回されながら、たくさん花をすくった春先の話です。
2019.04.26
ゴールデンウィークの前日のこと。
各種の樹木が少しずつ葉を出し始めているこの時期、さりげなく花を咲かせる樹木があります。

それがこちら……コクサギです。
葉から独特の臭いを放つミカン科の落葉低木で、沢沿いの林縁でよく見かけます。
コクサギ-ケヤキ群集というものがあるように、ケヤキの混じる林の周縁部にあることが多いです。
そしてこのコクサギは、カエデの花が咲くよりも早い時期から花をたくさんつけています。
緑色で遠目に見ても目立たない花ですが、わりと虫が集まってくることを去年初めて知りました。
2018.04.22大学周辺の樹木が葉を出し始め、夜回りで見られる虫も大きく変化しました。もうそろそろ、タマムシが出始めるはず…ちょっと気が早いとは思いましたが、タマムシ採集欲にいい加減耐えきれなくなってきたので…今シーズン初のスウィーピング採集に出ることにしました。…
まだカエデの花が咲いていない今なら、発生を始めたカミキリがこの花に集中しているはず。
そんな期待を抱きながら網で丁寧に花をすくっていきます。
ちなみに去年の採集で70cm枠を破壊してしまったため、今年は60cm枠をメインで使っています。奈良で壊した時に父親が買ってくれた結構いいやつなのでそれなりに長持ちしそう。柄はこれまで通り9mの玉の柄を使用しています。(軽い採集の時は2.2mを使うこともある)

左: トゲヒゲトラカミキリ
Demonax transilis Bates, 1884
右: タテジマカネコメツキ
Limoniscus imitans (Lewis, 1894)
とりあえず思惑どおり花に来るカミキリが入ってくれました。
この他にはヒナルリハナカミキリや各種の甲虫も確認。しかし他にカミキリはいませんでした。

シロオビナカボソタマムシ
Coraebus quadriundulatus Motschulsky, 1866
林縁のクマシデの葉上にはシロオビナカボソタマムシが。今季初見です。
本来はクマイチゴなどキイチゴ類につく種類ですが、この時はまだクマイチゴの葉っぱが十分に出ていなかったような。フライング個体でしょうか……
リンネセイボウ
Chrysis ignita (Linnaeus, 1758)
日当たりのいいガードレールに止まっていたリンネセイボウ。ドロバチ科のハチに寄生するとか。
セイボウの仲間は寄主となる他のグループのハチが巣を作るような環境(人工物であったり、倒木であったりさまざま)で見つかることが多いようです。真面目に探したことないから全然見つけられないけど……(本種も初採集)
近場にちょこっと出かけただけだったのでこの日はこのくらいで終了。
2019.04.28
翌日。この日は去年の採集でも散々お世話になったポイントへ向かいました。
ここにもコクサギはたくさん生えていて、去年はヤマトシロオビトラカミキリやコボトケヒゲナガコバネカミキリなどが採れました。

ヒナルリハナカミキリ
Dinoptera minuta (Gebler, 1832)
コクサギの花も咲いていますが……カミキリはヒナルリハナカミキリの他に確認できませんでした。
ここで今年は季節の進行が遅れていることをはっきり理解しました。(むしろ去年が早かっただけっぽい)
去年はほぼ同じタイミング(ゴールデンウィーク直前)でクロヒメヒラタタマムシも出てましたが今年はまだ出ていないようでした。


左: ミヤマセセリ
Erynnis montana montana (Bremer, 1861)
右: スギタニルリシジミ本州・四国亜種
Celastrina sugitanii sugitanii (Matsumura, 1919)
春先に出現する蝶も何種か見られました。
去年はコツバメもたくさんいた気がするけど、そういえば今年は1頭もしっかり確認しないまま発生シーズンを終えてしまった……
シロオビナカボソタマムシ
Coraebus quadriundulatus Motschulsky, 1866
あまりにも何もいないので、14時頃に切り上げて帰ろうとしたら朝いなかった場所にシロオビナカボソタマムシがいました。気温が上がって出てきたようです。
この写真は数日後の5/5に同所で撮ったものですが、こんな感じにまとまって見られることもあります。
初期の頃は羽化して間もないと思われる、体表に土の着いた個体も多く見られます。幼虫はクマイチゴ等の根を食べるため、羽化後成虫は土の中から出て来ていると思われます。
頑張れば成虫が土の中から顔を出す瞬間とか見られるのかなあ……
まだまだ続きます。
2019.05.02
山の方での採集はまだ、と考えたこの日は標高を下げて河川敷や伐採地の方面に向かいました。
下の方ではコナラの葉もそこそこ出ていて、今季初のナガタマムシとなるアサギナガタマムシも1頭だけ採れましたがこの後逃げられた……
伐採地の方も思いのほか何にもいなくて、ほぼ成果ゼロ(河川敷でミズギワゴミムシ採ったくらい)でした。
しかしこの回で夏場の採集につながる重要な手かがりを発見できたのです……もう少ししたら訪れます。
2019.05.03

あらためてコクサギの花をすくいへ。
咲きかけだった花もしっかり開いて、今が満開という感じ。
すくってみるとようやくカミキリがそこそこ入ってくれるようになったのですが……

ヤマトシロオビトラカミキリ
Kazuoclytus lautoides (Hayashi, 1950)
ヤマトシロオビトラばっかりだった……(汗)
シロトラとか、キンケトラとかいろいろ入ってくれる訳ではなく、ヒメクロトラすらもごくわずかにしか入らず……
入ってくるカミキリの大多数がこのヤマトシロオビトラカミキリでした。
モミを寄主とし、やや局地的に分布する種との事ですが……この日はヒナルリハナを差し置いてコクサギに最も多く飛来していたカミキリでした。
ちなみに、カエデの花よりもコクサギの方が好みのようで、後日カエデの花をすくった時はそんなに採れませんでした。
他のトラカミキリより早めに出現しているような感じもしました。後日あらためてコクサギの花をすくうとちゃんと他のトラカミキリ類も採れてくれましたが、ヤマトシロオビトラが最も多かったのはこの日(5/3)でした。

ヒナルリハナカミキリ
Dinoptera minuta (Gebler, 1832)
ヒナルリハナの方は紫色の個体がいたので採ったり。
色彩変異が豊富でちょくちょく採りたくなる虫です。

シロトラカミキリ
Paraclytus excultus Bates, 1884
個人的に好きなシロトラカミキリも採れましたが、この個体はウワミズザクラの花から。
ウワミズザクラも虫をよく集める花ですが、今年はあんまりすくえなかったなあ……


クロヒメヒラタタマムシ
Anthaxia (Melanthaxia) reticulata shinano Y. Kurosawa, 1963
クロヒメヒラタタマムシもようやく出ていてホッとしました。(2枚目は5/5撮影。)
写真撮影に協力的な数少ないタマムシなので、今年は去年よりもさらに気合い入れてめちゃくちゃ写真を撮りました。
2枚目の写真が一番綺麗に撮れたと思ったのですが、交尾写真は安易にLINEのトプ画とかスマホの待ち受けとかにできないから困る(汗)
自分自身は「ああー交尾してんなあ」くらいにしか思わなくても他人の目にどう映るかは考えた方がいい……
厳密にいえば交尾していないけど、問題はそこではない(汗)

コブスジサビカミキリ
Atimura japonica Bates, 1873
写真中央に転がっている木片みたいなやつがコブスジサビカミキリです(笑)
この個体はクサボケのスウィーピングをしていた時にたまたま入ったものですが、クズなどの枯れツルをたたくと落ちることが結構あります。
今年はビーティングもそこそこやっているので、この後も何度かこのカミキリには出会えています。
スウィーピングでは落ちないのかというとそうでもなく、タゾエナガタマムシを狙おうとクズをすくったら4頭くらい落ちたこともありました(ついこの間の話)。

カエデの花はまだ咲かない。
これはオオモミジですが、オオモミジより葉を早く出しているイロハモミジは花が咲くのもより早い時期でした(この時点ではまだ)。
同じオオモミジであっても標高、日当たり、同じ場所でも隣同士のカエデの開花状況が全然違っていたりとバラバラで、いつ再訪すればピークに当たるのか全く読めませんでした。おかげさまでこのゴールデンウィークは散々振り回されました……
そしてゴールデンウィークは終盤へ。
2019.05.05
この日が2019年ゴールデンウィーク最後の探索となりますが、現時点でカエデがほとんど咲いていない状況なのでどうしようもなく、とりあえずいつものポイントへ向かいました。最悪地下に逃げるつもりで……


ミヤマルリハナカミキリ
Kanekoa azumensis (Matsushita et Tamanuki, 1942)
去年は全く気付きませんでしたが、新しいオオモミジの木を見つけました。
谷に沿うように生えていて、陽当たりも良さそう。下からたくさんのカミキリが吹き上がって来て集まりそうな条件の木です。
現時点で少しだけ咲いていたのですくってみると、ミヤマルリハナカミキリが採れました。
スギを寄主とするカミキリで、中信ではおぞましい数が網に入ったこともありましたが南信に来てからはたまにしか採れない虫になりました。なのでちょっとうれしい。

これはイロハモミジ。ちょっとだけ花が咲いているがヒナルリハナカミキリしか来ていなかった……
他にも複数地点で存在を認識していなかったカエデの木を発見。どれも花は咲いていませんが後々に訪れれば何かが採れそうな予感のする、日当たり良好な木でした。

結局のところ次につなげるポイント開拓のみとなり、網をしまって靴を長靴に履き替えました。
前にも一度来た場所で、あんまり虫は採れなかったけど環境は良さそうな場所です。(→前回の採集記)
源頭部で2時間半くらい掘り……

ムナビロナガゴミムシ
Pterostichus (Lianoe) abaciformis Straneo, 1955
前回は採れなかった大型のナガゴミムシ、ムナビロナガゴミムシが採れました。
他にもオオガロアムシやキバナガゴミムシなどは前回同様に出たものの、チビゴミムシが出ることはなく……

ムナビロナガゴミムシが出たのはこんな環境でした。源流のすぐそばは土が流されて(なのか?)大きな礫だけが詰まってるような環境で、なんか違う感じがしました(実際そういう場所からはなんも出なかった……)。
チビゴミムシの環境がまたよく分からなくなってきたな……
とりあえず、この時期の掘りは天気次第では暑くてしんどい事が分かりました(汗)
曇りの日とかにやろう。

フデリンドウ
Gentiana zollingeri Fawc.
フデリンドウ。春先に林床でひっそりと綺麗な花を咲かせる。
林床にそっと置かれた小さな花束のようです。なんでこんな悲しい例えしかできないのかな……(無力)
こうして今年の、
私の10連休のゴールデンウィークは終わったのでした……
【結果】 ※色付きは自己初採集
2019.04.26
シロオビナカボソタマムシ
Coraebus quadriundulatus Motschulsky, 1866
1ex.
フタホシアトキリゴミムシ
Lebia (Poecilothais) bifenestrata Morawitz, 1862
1ex.
トゲヒゲトラカミキリ
Demonax transilis Bates, 1884
1ex.
タテジマカネコメツキ
Limoniscus imitans (Lewis, 1894)
1ex.
リンネセイボウ
Chrysis ignita (Linnaeus, 1758)
1ex.
2019.04.28
シロオビナカボソタマムシ
Coraebus quadriundulatus Motschulsky, 1866
1ex.
イタドリハムシ
Gallerucida bifasciata Motschulsky, 1861
1ex.
ミヤマセセリ
Erynnis montana montana (Bremer, 1861)
1ex.
2019.05.02
未同定ミズギワゴミムシ
2exs.
2019.05.03
シロオビナカボソタマムシ
Coraebus quadriundulatus Motschulsky, 1866
1ex.
クロヒメヒラタタマムシ
Anthaxia (Melanthaxia) reticulata shinano Y. Kurosawa, 1963
3exs.
ヒナルリハナカミキリ
Dinoptera minuta (Gebler, 1832)
4exs.
ヤマトシロオビトラカミキリ
Kazuoclytus lautoides (Hayashi, 1950)
6exs.
シロトラカミキリ
Paraclytus excultus Bates, 1884
1ex.
コブスジサビカミキリ
Atimura japonica Bates, 1873
1ex.
ウンモンテントウ
Anatis halonis Lewis, 1896
1ex.
未同定マグソコガネ
1ex.
ツマキチョウ
Anthocharis scolymus scolymus Butler, 1866
1ex.
2019.05.05
アカガネチビタマムシ
Trachys tsushimae Obenberger, 1922
1ex.
ムナビロナガゴミムシ
Pterostichus (Lianoe) abaciformis Straneo, 1955
1ex.
ヒナルリハナカミキリ
Dinoptera minuta (Gebler, 1832)
2exs.
ミヤマルリハナカミキリ
Kanekoa azumensis (Matsushita et Tamanuki, 1942)
1ex.
未同定チビシデムシ
1ex.
トラフシジミ
Rapala arata (Bremer, 1861)
1ex.


コメント
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中学生です。一つ言わせてください…
わかりやすいし面白い!
これからも頑張ってください!
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中学生です。一つ言わせてください…
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これからも頑張ってください!
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ありがとうございます。
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