キリガを採集する3月18の日

※長野にいた頃の採集記です(あともう一記事くらい書く予定)。


3月18日になり、私は23歳になりました。
自分にとって、この日に採集し作った標本は何気ない虫でも特別に思えるものです。
しかし、せっかくならなにか新しい虫の採集に挑戦してみたいと思うもの。
しかしこの時期に出来る採集は限られています……

誕生日にタマムシが採りたい

2018.03.18_04:43 a.m.アラームが鳴る3分前に目が覚めた。今日はやる気がある。今日は3月18日…一年に一度やってくる特別な日。誕生日に自分の好きな虫を採りたい。標本を作っている人ならきっと誰もがやりたくなる(であろう)誕生日ラベルというものがあります…

2018年は埼玉でクロチビタマムシを狙いました。
採れなかったけど僅かに他種のタマムシに出会えました。
2019年は帰省の帰宅日と被ってしまい(自業自得)、街灯でアトジロエダシャクとホソバキリガを採ったのみ。

2020年はトンネルでアヤモクメキリガを拾ったり、コルリアトキリゴミムシを採集したりしていました。
(夕方からバイトがあったのだろうか、この日は糖蜜採集をやっていなかった)
そんな具合で……なかなか思うようにいかない事が多いこの日
3月も半ばを過ぎれば冬の採集は一通りやった後で、かつ春の虫も出てなくて……花粉が飛び交うばかりのつまらない時期だと思っていました。
しかし冬夜蛾の採集をやり始めてからは3月18日でも、だからこそ狙える虫はたくさんいると思えるようになりました。
そして迎えた2021年3月18日。
何とは言わないが思いっきり被っちゃった(宿命か……)ので、1日フルで採集に出ることは出来なくなってしまいました(元々そこまでやるつもりは無かったけど)。
しかし夕方以降は時間が作れるので、糖蜜採集はできる。
そして去年と一番違うのは……

ライトトラップができる。
(写真は2020年の初夏のもの)
簡易的ではあるものの、ライトトラップの機材を2020年に揃えてから、何度か灯火採集を行っていました。
(紫外線LEDライト+ポータブル電源+100均のカーテン)
これらを駆使しつつ、その日の気象条件を考慮ながらこの日に狙うものを考えました。
日中気温が上がったことで夜間の気温もやや高め……だが湿度は低い。
糖蜜はあんましだけど灯火で狙える虫なら何とかなりそうな感じだ。


2021.03.18

(例によって写真を撮り忘れたので、以前ここに来た時の写真で代用しています)
↑夕方からの蛾類採集では暗くなる前に環境写真を撮るの忘れがち
今日は自分が気軽に来れる範囲で最もモミが多く生えているポイントに来ました。この場所は以前の採集でも訪れていた場所で、これといって面白いものは得られていなかったと思っていましたが……
(採集記はお蔵入りになった)

この回でたまたま採集していたオオヒラタカメムシはモミの樹皮下で生活する半翅目でありました(専好性があったかどうかは忘れた)。
つまり、他のモミ食の虫……半翅目より高い移動能力を有するモミ食の鱗翅目が採れる可能性の高い場所と考えられました。
オビグロスズメやムツキボシツツハムシ、ヒゲナガカミキリなどモミを食べる虫はもっと近所で採集した経験があり、今回の本命も過去に近所で採集された記録があるのは知っているのですが……かなりの運が必要そうな感じでした。
彼らの寄主となるモミがまとまって生えている場所は自転車で行ける範囲には少なく、狙って採るなら今回の場所かなと思ってここに来ました。
まずは糖蜜を撒いていきます。
糖蜜採集は初めて行う場所だったので、仕掛ける場所に少し悩みましたが、モミを中心とする針葉樹林を抜けるとクヌギやアカマツを主とする里山林があり、沢沿いにはヤナギやオニグルミなども生えていたのでその辺りを中心に糖蜜を撒きました。
ライトトラップは糖蜜ルートの端に位置するようにし、糖蜜採集の開始(市民薄明の終了)とともに点灯。
以降は往復毎に様子を見るという戦法で糖蜜とライトの二刀流採集を行いました。
本命のキリガは多分ほとんど糖蜜に来ないタイプの虫なので、ライトトラップが本命。
今回の糖蜜はオマケです。

(ライトトラップ地点の真上。葉っぱがついてるのがモミの木です)
モミ林と広葉樹林の間くらいのやや開けた場所でライトを点灯し、仕掛けた糖蜜を見に行きます。
ホシオビキリガやテンスジキリガといったConistra属のキリガが来ていますが、やはり数は少なめな印象でした。
これは敗北か……と思っていましたが、一際目立つ蛾が一頭。

スギタニキリガ
Perigrapha hoenei Püngeler, 1914
春に羽化する大型のキリガで、今シーズンは初見でした。
過去に採集済みですが、出始めの綺麗な個体は採ったこと無かったので割とうれしい。
スギタニキリガは懐中電灯の明かりに非常に敏感で、飛来して間もなくの場合は照らすとすぐに逃げてしまう印象があります。
(2020年の春も糖蜜で出会っていたけど、ことごとく逃げられてしまった記憶がある)

しかし……この日この場所ではスギタニキリガが優占種となっていて、糖蜜にも灯火にも何頭も来てくれました。

あまり変異幅の大きい種ではないですが、時折わずかに青みを帯びるカッコイイ個体がいたのでこちらは採集していきました(写真だと分かりづらい)。
その他、

ミスジキリガ
Jodia sericea (Butler, 1878)
クヌギ林があったのでやはりミスジキリガが来ました。
わりと綺麗な個体だったけど、もう何頭も採集しているので今回は採集せず。

カタハリキリガ
Lithophane rosinae (Püngeler, 1906)
ヤナギ類を寄主としているため沢沿いで出会うことが多いカタハリキリガも何頭か来ました。
このように周辺の植生を考えれば来るかなと思っていた種がちゃんと来てくれました。
他、スモモキリガやホソバキリガ、ゴマダラキリガなど……思ってたよりいろいろ来てくれるなという印象でしたが、『当たり』の感じはなく19:30くらいには見回りを終了してライトトラップに専念しました。
ライトにはスギタニキリガの他にカバキリガやホソバキリガ、オカモトトゲエダシャクも来ていて、ホソウスバフユシャクなど小さめの蛾類も何頭か。
悪くなさそうな感じです。
本命の飛来する時間帯はよく知りませんが、『点灯直後に飛来した〜』というようなブログ記事も見受けられたので早い時間にくる、もう既に来ててもおかしくはないはず。
しかし幕の周辺を探しても見当たらない……
とりあえず21時くらいまでは粘ってみるつもり。
飛来があったり無かったりを繰り返しながら20時をまわりました。
待ってるだけだと退屈なので、飛来したスギタニキリガの写真撮影などをやっていると……一頭のヤガが幕に飛来しました。
紛れもなくヤガの形をしているそれは、今まで見たどんなキリガよりも小さく……!!!
「あ!来た!!」
スッと立ち上がり、迎える体勢に。
カメラに手をかけるが、その蛾が落ち着く様子が全くない……
小さい蛾なので、幕から少し離れるだけでも見失う危険性が高い。
冷静に……まず確保して、動きを鈍らせてから写真を撮ればいいんだ。
毒瓶を使って捕獲し、弱らせた上でその姿を拝む。
それはまさしく私が憧れていた、今日の本命……!!
エグリキリガ
エグリキリガ
Teratoglaea pacifica Sugi, 1958

独特な翅形とカッコイイ模様が魅力的な良いキリガでした。
翅の色は黒褐色のものと茶褐色のものが主に知られており、今回得られた個体は茶褐色のもののようです。
本種の幼虫はマツ科モミ属のトドマツやモミ(飼育下)の他ヒマラヤスギ(飼育下)の葉を食べ、成虫は秋に羽化してそのまま越冬します。
越冬後の春の個体の方が得やすい種のようです。
(『日本の冬夜蛾』における珍品度は★★ですが、多いわけではなく★★★が妥当ではという声もよく聞く)

『小さい』とよく聞くキリガですが、実物はこんなにも小さいのかというのが最初の感想でした。
スギタニキリガと比較すればこんな感じ。展翅難しかった……
日本の冬夜蛾の中では一番小型の種になるのだろうか?
この後も21時までライトトラップを続けましたがエグリキリガの追加は得られませんでした。

トビモンオオエダシャク
Biston robusta robusta Butler, 1879
しかし今季初のトビモンオオエダシャクが飛来しました。飛来した2頭のうち綺麗な方を採集していく。


最終的にはこのような感じになりました。
周辺に散らばった個体を拾い集めて一か所に集めているので不自然な写真になっています……
実はこの一週間ぐらい前にも同じ場所でライトトラップをやっていたのですが、その時は気温が5℃とかで寒すぎてホソバキリガが数頭来たのみでした……
それを考えると今晩は良く来てくれた方かなと思います。
なんにせよ、しっかりと狙い通りにエグリキリガと出会うことができました。
今年はいい3/18採集になって良かった……!

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