黄色と黒のシマシマ
こんな毛虫を見たことはありませんか?

シンジュキノカワガの幼虫
この毛虫はコブガ科のシンジュキノカワガ/Eligma narcissus narcissus (Cramer, 1775)というガの幼虫です。
成虫になると以下のような派手な見た目のガになります。

シンジュキノカワガの成虫
シンジュキノカワガは幼虫にも成虫にも毒はありません。
本種は日本に元からいる在来種ではありませんが、外来種でもなく……中国原産の偶産種であるとの見方が強いです。
偶産種というのは、海外から自力で飛翔して国内にやって来る種のことで、人の手によって持ち込まれる外来種とは異なります。
毎年中国大陸からそれなりの数が飛んできているようで、日本国内では北海道から九州にかけての各地で記録されています。
そんなシンジュキノカワガ幼虫のエサとなる植物はニガキ科のニワウルシ(シンジュ)です。
ニワウルシは各地に生育する外来種の木本植物で、これを利用して国内でも発生します(シンジュキノカワガは多化性)。
ただし国内で冬を越しているかどうかははっきりしておらず、同じ場所で何度も出会えるとは限らない……ちょっと珍しいガという印象でした。2024年までは。
各地でシンジュキノカワガが大発生した2024年
2024年は日本各地でシンジュキノカワガの成虫・幼虫が大量発生した年で、SNSを中心に大きな話題になりました。
月刊むしに掲載された埼玉県産シンジュキノカワガの短報
矢口ら, 2024. 埼玉県におけるシンジュキノカワガ(幼虫)の記録. 月刊むし (646):37.
この年に私も家の近所(埼玉県)でもシンジュキノカワガの幼虫や蛹を見つけることができ、飼育羽化させることに成功しました。
幼虫で採集した個体もすぐに蛹化したため、エサを与えることはほぼありませんでした。
もし、持ち帰った幼虫がまだ若くてエサが必要な場合、ニワウルシの葉を調達して与える必要があります。
ニワウルシはなかなか持ちが悪いため、毎日エサ替えを行える体制を確保した方がよいです。
シンジュキノカワガ幼虫が繭を作る様子
飼育ケージの壁面が発泡スチロールだったため、それを削って素材にしてくれました。
繭を作るための素材はティッシュペーパーとかでもいいらしく、育った幼虫を何かの素材と合わせて入れておけば簡単に蛹化してくれます。
繭を作って壁と同化した
ちなみに野外では寄主植物のニワウルシや周辺の樹木などの幹で繭を作って蛹になります。

ニワウルシに作られた繭
繭の中には以下のような蛹が入っています。
シンジュキノカワガの蛹
この蛹は繭を外からつついたときなどに動くのですが、その際「シャカシャカ」と大きな音を立てます。
刺激すると音を出すシンジュキノカワガの蛹 pic.twitter.com/tQEA3nDzeD
— 執虫 (@syutyu_064) November 6, 2024
この音のひみつは繭の内側に作られるヤスリ状の構造にあります。ここに体を擦り付けることで大きな音を出しているのです。
硬い糸で段差を作ってある
繭を作ってから羽化までの期間はその時期(気温)に左右されるとは思いますが、早いと2週間くらいで2カ月ほどかかった個体もいました。
幼虫の段階で採集し、自分で繭を作らせた場合は羽化も成功しやすいのですが……繭の状態で採集した個体は羽化不全を起こすことがあります(蛹をむき出しで管理するのはあんまりよくないのかもしれない)。
脱出に失敗した個体
これは上手くいったとき
羽化した成虫
シンジュキノカワガ成虫のエサとしては水分(砂糖水やカルピスなど)が使えるようです。
成虫を飼育する場合はアゲハチョウなどと同じやり方が通用すると思います。
お腹側がとってもきれい
2025年も継続して発生しています
2024年、近所では一度きりの出会いになると思っていたシンジュキノカワガですが……2025年も埼玉県の近所で発生しています。ただし数は去年よりずっと少ないです。

9月6日に発見した幼虫
本種は国内においても2月や3月に成虫や生きた蛹が発見されていることから、国内で冬を越している個体がいるとの見方が強まりつつあります。
そのうち完全に定着して、偶産種と呼ばれることもなくなるかもしれませんね。
シンジュキノカワガが食べるニワウルシは先述したように外来種の植物ですので、本種が大量発生してニワウルシが丸裸にされたとしても、景観を損ねる以外の害はないように思います。
したがって現時点では、本種の駆除などは検討しなくても良さそうです。

今後身近な昆虫のひとつになっていくかもしれないシンジュキノカワガ。
あなたの家の近くでも発生しているかもしれません。
ニワウルシがあったら、幼虫や繭がないか注意して見てみましょう。

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