スゲドクガの幼虫が採れたので飼育して成虫を羽化させました

2024.08.24
ことの発端は、とある日の採集で。

このようなオギの多い河川敷でスウィーピングをしていた時のことです。
何やら見覚えのある毛虫が網に入っていました。
スゲドクガの幼虫
この黄色い毛虫は……スゲドクガ Laelia coenosa sangaica Moore, 1877ですね。
スゲドクガはドクガ科に属しますが幼虫・成虫とも無毒なガです。
幼虫は湿地環境に生えるスゲ類(カヤツリグサ科)のほか、ガマ科、ヨシやオギなどのイネ科の葉を食べます。
湿地の減少に伴い生息地が減ったためか、環境省のレッドリストでも準絶滅危惧(NT)となっています。
私はこれまで河川敷のヨシ原周辺で何度もライトトラップを行ってきましたが、なかなか縁がなくスゲドクガの成虫にはまだ出会ったことがありませんでした。
せっかく幼虫が採れたので、今回は飼育に挑戦してみました。
河川敷でヨシの葉を少し摘んできて、幼虫とともに持ち帰ります。
ちなみに幼虫は2頭得られたので、2頭で飼育をスタートしました。
スゲドクガの飼育環境
飼育環境はこんな感じ
例によって爬虫類用の飼育ケージを利用し、エサとしてはヨシだけを使いました
ヨシは近所の川にも生えていて入手しやすいのと、葉っぱが硬いのでオギやスゲ類より長持ちするかなと思ったためです。

近所のヨシ群落
毎日水替えをし続ければ1週間弱はもつ感じでした。
週末に散歩のついでにエサを確保しに行けたので、特に問題ありませんでした。
幼虫の食いつきも悪くなく、積極的に食べてくれていました。
ヨシを食べるスゲドクガ
先端部からかじることが多い

食痕が残る葉と幼虫
そういえば、スゲドクガによく似たスゲオオドクガ Laelia gigantea Butler, 1885という種もいます。
幼虫の見た目としては色が異なっています。
スゲドクガの幼虫は写真のように「黄色」ですが、スゲオオドクガでは「淡い褐色」をしているようです。(小学館の図鑑NEO イモムシとケムシに両種が並んで掲載されています)
スゲオオドクガもスゲドクガと食草が重複しますが、山地性の傾向があるようです。
ちょっと待って、ミヤノスゲドクガ Laelia miyanoi Kishida, 2010 というのもいるのか。
こちらは幼虫で見分けることはできない感じですね(愛知県、岐阜県で得られている)。

スゲドクガ幼虫の顔。かわいいというよりはグロテスク寄りかも……
基本的には葉っぱをかじっていることが多いですが、葉裏にとどまって動かない日が2日ほど続くこともありました。
最初は心配になりましたが、こういう時は大抵脱皮のタイミングでした。

毛虫なので、脱皮すると毛の塊が落ちる

頭部の殻はちょっとかわいい
2頭の幼虫のうち、大きい方は2回ほどの脱皮で終齢幼虫になっていたと思います。
スゲドクガは寄主の葉裏にマユを作って蛹になるので、土の用意は必要ありません。
エサ交換を繰り返しながら、蛹になるのを待つのみです。
2024.09.06
飼育開始から2週間ほど。
大きい方の幼虫が葉裏で大人しくなり、頭部を盛んに動かしていました。

どうやらマユを作り始めたようです。
翌朝見るとマユは無事完成していて、なんとか蛹化まではいけたようでした。

完成したマユ。右に古い脱皮殻が残っている。
スゲドクガの越冬形態については情報が見つけられなかったのですが、おそらく卵での越冬だと思います。
本種は年2化で初夏と秋に出現するとされているため、今回の飼育個体は秋のうちに羽化するはずです。
なお、小さかった方の幼虫については蛹化直前でなぜか動かなくなってしまい、そのまま死亡してしまいました。
そのかわり……

9月21日に前とは異なる場所で新たにスゲドクガの幼虫を採集できました
この個体も持ち帰り、一緒に飼育することに。
新しい個体は既にかなり大型で、1週間もしないうちに蛹になりました。
(蛹化日をちゃんと記録していなかった……)
とりあえず、これで幼虫の飼育は終了です。
ケージの中に2個体の蛹を残して、羽化を待ちます。

エサを取り除き、羽化待ちモードへ
2024.10.04
仕事から帰宅してケージを除くと、そこには初めて見るガの姿がありました。
スゲドクガの成虫
スゲドクガ
Laelia coenosa sangaica Moore, 1877

真っ白な翅と黄色い脚が特徴的なスゲドクガの♀が羽化していました。
成虫になるとスゲオオドクガのほかにも似ているドクガは何種類かいるのですが、他種はほとんど木本食なので飼育していれば迷うことは基本ありません。
得られる環境や出現時期も異なります。
スゲドクガも♂はもう少し褐色がかる個体が出て、そのような個体であればかなり見分けやすそうです。
ところで、羽化した個体は9月6日に(先に)蛹化した方の個体だと思っていたのですが、実際に確認したら新しい方のマユに脱出の痕跡がみられました
実は、羽化したのは1週間前くらいに蛹になったばかりの個体の方だったのです。
じゃあ前から蛹になっている個体はどうなったんだ……?
ということで、慎重にマユを切って中身を暴いてみました。

ああ~~(泣)
先に蛹になった方の個体は、羽化していたものの脱出に失敗してマユの中で死亡していました。
ということで、今回飼育した3頭のうち無事に成虫までたどり着けたのは1頭のみでした。
1頭だけでも、しっかり羽化してくれてよかったです。
スゲドクガの成虫
という感じで、今回はスゲドクガの幼虫を飼育して成虫羽化までやってみました。
本種が属するLaelia属は本州に3種いて、互いによく似ています。
いつか手元にそろえて比較したいですね。
♂の方が特徴がよく出るので、今後はスゲドクガの♂を目指してライトトラップを行っていく所存です。
採れなかったら、また幼虫飼育かなあ……(笑)

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