タニガワモクメキリガ ~春に会いたいステキな蛾~

2025.03.22
体調がイマイチだったためギリギリまで悩みましたが、この日は奥秩父まで採集に出かけました。
今回の目的は、春に現れるキリガの仲間であるタニガワモクメキリガです。
タニガワモクメキリガ
3年前のタニガワモクメキリガ
本種の採集は3年前の2022年にも行っていて、その時は1♂を採集することができました。
採集記も書いています↓

4月上旬の奥秩父で越冬中のオサムシと早春の蛾類を一緒に狙ってみました

4月上旬の奥秩父で越冬中のオサムシと早春の蛾類を一緒に狙ってみました

2022.04.09久々に遠方に採集に出られそうなタイミングが来ました。この数週間、親の車が借りられる日と天気の都合が合わず採集に出れていませんでした。というか、日中晴れてても夜に少し雨マークとかついてるだけで行く気が失せてしまっていた……

あれから3年がたち、今度はもっとベストな時期に採集にチャレンジして多くの個体を見たい! という気持ちが高まっていました。
ということで今回も前回と同じエリアを目指しました。
本当は別のポイントを開拓したかったのですが、数日前に雪が降ったばかりで林道が大変なことになっているのが容易に想像できたため諦めました。
今回も朝から現地に入って、野鳥を見たり他の昆虫を探したりしていきます!

まあそうだよね
事前に調べて、道中の車道の雪が解けているのは確認していたのですが、車道から外れた道にはバッチリ雪が積もっていました
積雪は長靴の丈ギリギリくらいまで……というか歩いてたら雪が長靴に侵入してきてあっという間にビチャビチャになりました(笑)
雪道をがんばって歩きながら野鳥の姿を探しました。

コガラ Poecile montanus restrictus (Hellmayr, 1900)
一番多かったのはコガラでした。
本州では標高が高い山地に生息する鳥で、喉元に蝶ネクタイのような黒い斑があるのが特徴です。
ちなみにここは標高1,000 m以上あります。

ツガ? によく集まっていた
よく動き回るので撮影は難しく……こんな写真しか撮れませんでした。
ほかにはシジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラも見られて、本州で一般的なシジュウカラ科の4種は制覇できました。
野鳥編ですが……以上です
歩いたわりに成果はありませんでした。前回はゴジュウカラとかイカルとかにも出会えていたのに!
ここからは沢沿いに移動して、石起こしでナガゴミムシ類を狙ってみました。
雪の都合もあってあまり奥まで攻められないので、ギリギリ歩ける範囲でやるしかありません。

礫多めの場所を掘ってみる
上に雪が積もっているような場所は直下の土中もビショビショになっていてなんか違う感。
雪が積もってなくていい感じの場所を探すのも地味に大変でした。

普段はあんまりこういうとこ掘らないけど
逆に新しいものも出るだろうか、という気持ちで掘りましたが……

出た甲虫はこの3種のみでした
タカオヒメナガゴミムシ(左)と、モリヒラタゴミムシの何か(Colpodes属)、ナガハネカクシの何か(Lathrobium属)。
けっこう深めに掘りましたが、虫が出たのは表層に近いところだけでした。
最近こういう掘りやらなくなってたから、感覚も鈍ってしまったかな……

ガロアムシの仲間の幼虫
一応、ガロアムシの仲間は数頭出すことができました。
幼虫なので同定はできないような気がしますが、埼玉県産の標本を採ってない気がしたため一応しっかり採集しておく。
積もった瓦礫を起こしても成果が期待できなかったため、瓦礫交じりの斜面掘りにシフトしていきました。
それでも虫は全然でないのですが、ここで1回限りの奇跡が起きた__

ナガゴミ……? いや、オサムシだ!!
偶然、土中で越冬していた小さなオサムシを引き当てたようです。
何だか見慣れない形をしているこのオサムシの正体は、もしかして……
オクタマアルマンオサムシ
ホソヒメクロオサムシ奥秩父亜種
Carabus (Pentacarabus) harmandi okutamaensis Ishikawa, 1966

アルマンだ!!
アルマンだよね!?
ホソヒメクロオサムシ奥秩父亜種、通称「オクタマアルマンオサムシ」は埼玉県の秩父山地から山梨県の御坂山地にかけて分布するオサムシです。
本種は標高1,000 m近い山奥の沢沿いなどに生息しているとされ、生息環境へのアプローチが物理的に困難であることから採りづらい種です。
生息地でトラップかければちゃんと採れるらしいですが、本種をまともに狙おうと思ったら、トラップの設置と回収で2回登山をしなきゃいけないですからね(笑)
当然私は未採集で、憧れの虫の一つでした。
シーズン中にトラップ設置&回収する覚悟はなかったし、採集は半ばあきらめていた……
まさかこんな形で出会えるとは思いませんでした。
ここでトラップやれば採れるのかあ~ 初夏に仕掛けに来るのもあり……かも!?

私が掘ったことで崖っぽくなっていますが、元は斜面地です
こんな場所から出ました。朽ち木越冬のイメージでしたが、土中にも入るのですね。
オクタマアルマンオサムシが採れたことですっかり満足してしまい、まだ14:00だというのに日中の採集を終わりにしてしまいました。
沢は日陰でさすがに寒かったのと、探索すべき範囲が狭くて調べ尽くした感もあったので……まあ後は夜に託そうかなという気持ちでした。
いったん車に戻って、ここから日没までは車内でダラダラ過ごしました。
~日没後~

雪山に向かってライトを当てればいいんだよね
活動中の虫がいるとはとても思えない、雪が積もった斜面に向けてライトトラップを準備します。
糖蜜も簡単にまいて準備OK! 点灯だ!!
ふと、後ろを振り返ると不自然な高さにライトが点いていることに気が付く。
あれ、あんなのいつからあったんだ!? 
同業者……だよね?
「場所被っちゃった……(泣)」
さすがにこのまま(同業者の目の前で)ライトトラップを続行する度胸はなく、速やかに片づけて静かにその場を立ち去ることに__
するとちょうど、同業者と思われる二人組を見つけました。
うん、せめて声はかけていこう。
「こんばんは!」
やはり私と同じくタニガワモクメキリガ狙いの虫屋さんでした。
しかも私もよく見ているYouTuberの「ふぇーくん」さんと、一緒によく動画にでている「あ」さんの二人でした。
大変ありがたいことに、私も二人の隣でライトトラップをやらせていただける事になりました。
3人分のライトを一カ所に集めて、タニガワモクメキリガの飛来を待つ作戦です。
ライトを再び組み直して、さっきまいた糖蜜を見に行ってみました。
ヨスジノコメキリガ
ヨスジノコメキリガ(左)、テンスジキリガ(右)
糖蜜にはヨスジノコメキリガが1頭来ていたほか、複数のテンスジキリガが来ていました。
テンスジキリガは当地では最優占種という感じで、このあとライトにも度々飛んできました。
時刻は18:55頃。
ライトの設置位置を3人で話し合って、移動とかしていた時__ライトの目の前に滑り込むように1頭の蛾が降りてきました
タニガワモクメキリガ
タニガワモクメキリガ
Brachionycha permixta Sugi, 1970

「もう来たのか!」
本種の飛来のピークは19時から20時頃と言われており、時刻を確認してみれば確かにそんな時間になっていました。

このモコモコが見たくてここまで来たんだ……
3年ぶりのタニガワモクメキリガ。
既採集の蛾を採るために片道2時間以上運転してくる、なんてことは多分初めてやりました。
でも本種に関してはそれだけのことをしてでも会いに来たくなる、特別な魅力を感じます。

19:00時点のコンディション
ちなみに飛来直後の気温は6℃くらいで、風速は3 m/s弱でした。
少し風がある夜で、飛んできた蛾類がそのまま風に流されていく場面も多く見られました。
気温的には5℃を下回っても飛来すると言われているタニガワモクメキリガなので、このコンディションなら大丈夫でしょう!
ちなみに今出した風速計ですが、最近新しく購入したものです。

風速だけでなく、気温と湿度も計測できる。4000円くらい。
前はもっと安いやつを使っていたのですが、明らかに気温の表示がおかしかったので買い換えました。
今回のは信頼できそうです。
ライトトラップや糖蜜採集では気象条件の考慮も重要になってくるので、こういうアイテムを活用していきたいです。
(この日はあんまり活用できなかった感あるが……)

TopTes 風速計 TS-301 ハンディ風量計

大画面液晶 高精度 操作簡単電子風速計 6つの測定単位 ドローンの飛行に適用 セーリング、ゴルフ、サーフィンなどのアウトドアスポーツの風速の測定 家庭用 HVAC ベントの気流を確認する 温度、湿度の測定 MAX/MIN/AVG機能搭載 羽根が多く、回転が滑らかで、風力が測りやすい(英語と日本語取扱説明書付き)- オレンジ


3人のライトが集結!
いよいよ飛来のピークタイムとなり、ここからは3人でタニガワモクメキリガを待ちます。
この日の2個体目(だったかな?)が来たのは19:15頃でした。

落ち着きのない♀
この個体は触角が糸状に細い、♀のタニガワモクメキリガでした。
♀の飛来数は少なく採りづらいとされます。確かにこの1頭しか来ませんでした。
隙を見て、糖蜜の巡回にも行ってみました。
モンハイイロキリガ
モンハイイロキリガ
Lithophane (Lithophane) plumbealis Matsumura, 1926

さっきはテンスジキリガしか来ていなかった糖蜜には、なんと初見のモンハイイロキリガが来ていました。
本種はシナノキを食べるため基本的に山奥に生息し、あまり多くは見られないキリガです(図説では★★★)。
これはマジでうれしい!!
憧れのキリガでした。
アメイロホソキリガ
アメイロホソキリガをもらいました
なお、ふぇーくんさんたちの方の糖蜜ではアメイロホソキリガが採れたようで、採集個体を譲ってもらいました。
私はアメイロホソキリガ未採集だったので、大変ありがたいです。
ナカグロホソキリガも採っていつか比べてみたいですね。
19:40頃。
飛来する大きめの蛾のシルエットが見えて3人で盛り上がっていたら……

トビモンオオエダシャク屋久島以北亜種
Biston robusta robusta Butler, 1879
トビモンオオエダシャクでした。
でもこれもきれいだな、と思って私が採集させていただきました。
(埼玉県産のトビモンオオエダシャクをまだ採っていなかった)
飛んでくる蛾は褐色で小さめのテンスジキリガか、銀色で大きめのタニガワモクメキリガかという状況だったので……新しい蛾が来る度に騙されました(笑)
オカモトトゲエダシャク
オカモトトゲエダシャク
Apochima juglansiaria (Graeser, 1889)
後にオカモトトゲエダシャクも来ました。
これも私が採集させてもらいました。
(埼玉県産のオカモトトゲエダシャクをまだ採っていなかった)
トビモンオオエダシャクやオカモトトゲエダシャク以外だと、2頭飛来したスギタニキリガは紛らわしかったですね。
タニガワモクメキリガはライトに向かって真っすぐ飛んできて、そのまま地面に着地することがほとんどでした。
つまり、飛んでくる瞬間を見落としてしまうと地面に紛れて見失ってしまうのです。
そんな状況なので、3人で飛んでくる蛾を片っ端から確認していく作業が続けられました。
それから20:30頃までに3♂の飛来がありました。
3人で分けよう、となって私も1頭をいただくことに。せっかくなのでアレをやっておきましょう……!

雪上に降り立つ春キリガの王
タニガワモクメキリガが採れる時期には周囲に雪が残っていることが多いため、このように雪×タニガワモクメキリガの写真を撮ることができます。
でもあんまりいい写真じゃないなこれ……難しい。

20:55頃に私の幕の付近で発見された♂
飛んでくる瞬間を見落とさないように3人で見張っていても、いつの間にか飛んできてる! っていう場面が数回ありました。
「あ」さんの全方位ライトが強力で、正面からだけじゃなく後ろからも来ているような感じだったため見落としがあったのだと思います。
気が付かなくて見落としたものもあわせたら、トータルはもっと伸びたかもしれません。
この後、21:28に1♂、21:43に1♂の飛来がありました。
さらに22:26にはいつのまにか飛来してすっかり落ち着いている♂が発見され……ここまでで全体の飛来数は10♂1♀となりました。

22:30頃のコンディション。気温は下がったが、風は弱まった。
ふぇーくんさんと、あさんは22:00過ぎには撤収され、最後は23:00まで私一人で粘ってみました。
(前回、2022年のライトトラップではこの時間にエゾモクメの波があったため)
結局のところ、わずかなテンスジキリガが飛来したくらいで、タニガワモクメキリガの追加や新しいキリガの飛来はありませんでした。これでこの日の採集は終了です。
タニガワモクメキリガ
タニガワモクメキリガはトータルで10♂1♀。私はうち4♂をいただきました。
厳密に自分のライトに来たのは何頭だったのか、分かりませんが……(ほぼおこぼれをもらった感じだった気がする)
最初はライトトラップの場所が被ってどうしようかと思いましたが、勇気を出して声をかけたことで結果的に楽しい時間を過ごせました。
全員で複数頭ずつ採れたので本当によかったです。
あと、複数人でやるライトトラップはやはりいいですね。
普段は一人でライトトラップやって待ってる時間とか退屈で仕方ないのですが、この日は3人で話しながら待っていたので時間が過ぎるのがあっという間だった気がします。
ご一緒させてくださったふぇーくんさんと、あさんには本当に感謝です。
どうもありがとうございました。またご縁がありましたら一緒に採集しましょう!
ふぇーくんさんの動画はコチラ↓
(私もちょっとだけ声で出演しています)

コメント

タイトルとURLをコピーしました