トンボ類における標本の作り方と色残しの方法に関するあれこれ

はじめに


トンボの仲間は、チョウのように美しい種を多く含む魅力的なグループです。
採集も楽しい(重要)。
しかしながら、その美しさを維持したまま標本を作るのは難しいと言われます。

普通に乾燥させただけのギンヤンマ
普通に乾燥させるだけでは綺麗な複眼は黒や茶色に変色し、胸部や腹部のストライプ模様も濁ってしまいます。
ただし標本作成の過程でいくつかの点に注意すると、多少なり色を残すことができます
ギンヤンマ色残し標本
色残しを試みたギンヤンマ
少しでもきれいに色を残すため……方法は開発され続けており、書籍やネット上の記事、SNS等で紹介されることも徐々に増えつつあります。
私自身も情報収集と試行錯誤を繰り返す中で分かったことや考えられたことがいくつかあるので、本記事で標本作成方法を紹介するついでに色残しに関する情報もまとめてみました。(事実に基づかない憶測の記述が多いので要注意

トンボ類の標本作成の流れ

まずはトンボ類の標本作成において大抵共通する一般的な手法を紹介します。
ベースとしてこの流れがあり、ここにさらに手を加えたものが色残しにつながる方法となっています。

糞出し


採集したトンボはチャック袋や三角紙などで保管し、餓死させます。
トンボは体内の消化物を全て出してから死ぬので、こうすることで標本の腐敗を防ぐ効果があります。
(腐敗するものを体の中から減らすということ)
後々話しますが、トンボ類の色を残す上でも腐敗は最大の敵です。
餓死させる時は完全な暗所に置くと複眼の退色が早まることがあるので、直射日光の当たらない明るい場所に置くようにするとよいです。
種により変動しますが、およそ2~3日で餓死かそれに近い状態になります。
重要なのが餓死を確認したらすぐに、次の工程に移ることです。
トンボは死後急速に腐敗するため、タイミングが遅いと身体がバラバラになってしまうことがあります。
餓死のタイミングに合わせられない場合は餓死寸前の段階で〆て次の工程に移った方が良いです。
あるいは、採集して帰った後すぐに薬品で〆た上で内臓の取り出しを行いましょう。

芯を通す


トンボのように細長い腹部を持つ昆虫は、乾燥させると腹部が曲がったり縮んだりします。
そこで、トンボ標本には芯を身体にあらかじめ通しておくのです。
よく使われるのが乾燥させたイネ科植物の茎。軽くて細く、まっすぐな素材なら別のものでもOK。
このような芯を胸部から腹部に向けて刺し込み、腹部の形が崩れないようにします。
※イトトンボ類など体が細い種にはプラ製ミニほうきやブラシなどから芯を調達する。
貫通はさせず、芯が腹端に到達したら適当な長さにカットして体内に芯が隠れるようにします。

整形する

その後は横向きで整形し、乾燥させて完成です。複眼は頭頂部が側面に来る向きで固定します。
トンボの仲間は多種との違いが側面や頭部の模様に出ることが多いため、下写真のような形で標本にするのが一般的なのだそうです。
虫体に直接昆虫針を刺すとバランスが悪く標本が回転しやすいため、写真のように台紙に張り付ける形にするか裏側から針の周囲をボンド等で固定してしまうのがよいです。

すごい退色したコヤマトンボ
ラベルをつければ標本としての最低ラインは満たせますが、生時と比較してかなり退色してしまいます。
したがってこれ以降は、色を残すための方法の話です。
内容があまり初心者向けではないのですが、やり方は本当にいろいろあるようなので自身で無理なく出来そうなことを模索しましょう。

変色の原因と対策

具体的な方法を述べる前に、前提として知っておきたいのが『変色の原因』
トンボ類の変色は筋肉や内臓などの腐敗が主な原因と考えられます。
(厳密には違ったような気がするが)
また、肉食性で油の出やすい昆虫であるトンボ類は、死後急速に腐敗するとともに体から油が滲み出て体色を失わせてしまいます。
すなわち、色残しをする上で意識すべき点は以下の2つです。

・腐敗させずに素早く乾燥させる
・体内の油を除去する

一度完全に乾燥させてしまえばほとんど腐敗は起こらなくなり、体色を維持することが可能になります。
※管理状況による。湿気が多いと腐敗し退色するかも。
※経年により油が染み出す場合もある…..

そもそも腐敗という現象には、細菌類などの微生物の活動が関係しています。
腐敗を防ぐことが変色を防ぐことに繋がるのであれば、我々が戦うべき相手は細菌類ということになります。
例えば、食品の腐敗を引き起こすような微生物の活動は……

・水分活性
・pH
・酸化還元電位
・栄養素もしくは発育阻害物質の有無
・温度及びガス置換(包装条件)

といった要因に影響を受けるとされます。
これらの条件を、細菌類の活動が鈍る方向に整えることで腐敗を阻止し、色を残すことを可能にするのです。
そして、もう一つ……非常に重要なのが鮮度です。
トンボは羽化直後から未成熟な状態でしばらく過ごし、餌を摂って成熟し、生殖活動を終えた後もしばらく生きる種が多いです。
この期間のどの段階で採集したかによって、色の残り方はかなり変化します。
端的に言えば、未成熟個体は淡く色が褪せ、老熟個体はくすむような色の褪せ方をする傾向があります。
色が残りやすいのは成熟した個体で、かつ翅が傷んだり濁ったりしていない程度のちょうどいい具合の個体であると考えられますが、そんな個体にばかり出会えるとも限らない……
色の残りやすさに個体差があるが故に、方法ごとの色の残りやすさが比較できず……トンボ屋ではない私にはベストな色残し方法が何なのかやっぱりまだ分からずにいます。
なお種やグループによる差もあって、例えばサナエトンボ類は色残しが難しいですが、アカネトンボ類は比較的残ります。
そのあたりの特性を理解した上で、自身の色残しがちゃんと効いているか判断せねばならず……(この話はもう終わりにします)

色残しの手法紹介

ここからは、各種色残しの方法を紹介します。
全部が全部自分で考えたものではなくて、いろいろなところから拾った情報の寄せ集めです。

内臓抜きは基本?

最も腐敗しやすい腹部の色残しのためには、糞を排出させるのが従来の基本的な方法でしたが、そもそも糞出しをさせずに普通に薬品で〆て内臓ごと取り除いてしまうという方法もあり、色残しをガチで頑張る上では必須ともいわれます。
退色は死後すぐに、もしくは直前から始まるのでやはり完全に死亡する前に処理を開始できる方が理想的です。
しかし、トンボの細長い腹部を切り開き、体内を傷つけずに内臓を取り除くのは容易ではありません。
2022年、Twitter上で腹を切り開かないお手軽な内臓抜きの方法が紹介↓されていて、私も最近これに倣ってようやく内臓抜きができるようになりました。

分解も辞さない


多くのトンボ類において最も変色が著しいのは複眼です。
複眼は腐敗の有無という単純な要素だけで色が残るかが決まるわけではないようで、油分などの別要素が深く関係しているように思います。
複眼の色を残すためには、頭部を取り外して胴体と別の処理を行うのが有効です。
頭部の取り外しの際に消化器官(と未消化の物質)が取り出せる場合があるので胴体の色を残す上でも役立ちます。

シリカゲルを用いた乾燥


色残しをする上でほぼ確実にお世話になるのが、シリカゲルと呼ばれる乾燥剤です。
食品用に市販されているものが100均などで簡単に手に入りますし、電子レンジ等で加熱して水分を飛ばすことで複数回繰り返し使用することができます。
トンボ以外の標本についても乾燥剤として使えるので、私は大容量のもの↓をAmazonで買いました。

坂本石灰工業所 シリカゲル乾燥剤「なんでも除湿シリカゲル」20g×20個入り

坂本石灰工業所 シリカゲル乾燥剤「なんでも除湿シリカゲル」20g×20個入り

お菓子の袋や靴の中、たんすの引き出しなど様々なところでお使い頂けるシリカゲル乾燥剤です。直接水につけなければ、どこにでもお使い頂けます。除湿、乾燥させたいところに使用して下さい。ブルーの粒がピンクに変わったら、電子レンジで加熱して下さい。ブルーに戻れば再び使用できます。…

個体やパーツをシリカゲルの中に埋め込んだり、容器の底に敷き詰めたりして使います。
密閉した容器と乾燥剤を組み合わせれば、通常乾燥よりはるかに早く乾燥させることができます。
乾燥剤の面白い代替案として、海苔の吸湿能力はシリカゲルを上回るなんて話もあります。
試したいけど、まだ出来てない……。 

アセトンを用いた脱脂・脱水


脱脂する上で役立つのが、有機溶媒として利用されるアセトンです。
高い揮発性と引火性を持つ危険な液体なので取り扱いには厳重注意ですが、未成年でもホームセンターなどで普通に購入でき、入手は容易です。(塗料のコーナーとかにローラー洗浄用として置いてあることがある)
近所のホームセンターにも以前は置いてありましたが、最近はなくなってしまったのでネットで買ってます。
Amazonでは↓のものなどあります。

アセトン 500mL 富士一級(富士純薬) ネイルリムーバー ジェルネイルリムーバー 除光液 脱脂洗浄 インク・塗料の洗浄

アセトン 500mL 富士一級(富士純薬) ネイルリムーバー ジェルネイルリムーバー 除光液 脱脂洗浄 インク・塗料の洗浄

純度99.5wt%以上の富士一級アセトンです。 ネイルリムーバー、除光液として使えるほか、アセトンは脱脂、樹脂溶解力があり乾燥が早いため、部品の脱脂洗浄、樹脂類(塗料、インク、接着剤)の洗浄に使用することができます。

トンボ標本以外の油抜き(オサムシなど)にも使えるので、昆虫標本を作るなら持っておいて損はないでしょう。
アセトンには脱水能力もあり、数日間浸しておけば大抵のトンボは完全に乾燥します。
脱脂のみの場合は数十分~数時間程度の範囲で行う方が多いように思います。
注意点としては、複眼は数時間浸すだけでも変色するのでそもそもアセトン利用が推奨されません。

何も考えずに複眼をアセトンに漬け込むとこういう仕上がりになります(リスアカネ)
胴部についても長期間アセトンに浸すことで稀に色褪せ・色抜けを起こす事があるので相性に注意。
また、アセトンはシオカラトンボ等粉で覆われたトンボ類には利用できません。

真っ黒になったオオシオカラトンボ
このように滲み出た油で体が真っ黒になります。
アセトンの代わりに衣類用の漂白剤(手間なしブライト等)でも脱脂は可能です。
ただし漂白剤に脱水能力はないので、脱脂後の乾燥が別途必要です。

真空(減圧)条件での乾燥

いかに早く乾燥させるか、というのは最も重要ですが……変色(腐敗)というのは乾燥するまでのほんの僅かな時間でも起こるもの
そこで、腐敗が起こりにくい条件下で乾燥させるための手法として、真空条件や低温条件を組み合わせる方法があります。
これらは腐敗に関連する『温度及びガス置換(包装条件)』という項目からの攻め方になります。
乾燥時に容器などに密閉し、容器内を真空(≒無酸素)に近づけることで腐敗を防ぎます。

お手軽な例として、食パンを保存する際に用いられる真空容器などがありますが……
これを利用すると真空状態で乾燥できる……というわけではないらしい!?
私も使ってみたのですが完全な真空状態にはなっていない感があり、細菌を敵に回していることを考えると気休めかなと思いました。
個人的には密閉できる小さな袋に入れて酸化防止剤を投入する方が効果的かなと思っていますが、十分な検証ができていません。
(酸化防止剤は密閉容器内の酸素を吸収し、無酸素状態に近づけてくれるアイテム)

そんな酸化防止剤はカイロで代用……たぶん代用できます!
密閉する容器の材質も気にするなら、オススメはアルミ製のチャック袋です。
(ラミジップ、という名前で市販されているもの)

写真のものは確かメルカリで買ったものですが、最近はダイソーなど100円ショップでもアルミのチャック付き袋を見かけるようになりました。
(お菓子のラッピングとかのコーナーにあったような)
物質には酸素透過性というものがあり、プラスチック製(PP)のチャック袋は見かけ上は密閉していても微量の酸素を通してしまいます。一方でアルミは酸素をほぼ通さず、遮光効果もあるバリア性に優れた素材、だそうです。
レトルト食品の包装にアルミがよく使われているのも、腐敗を防ぐという目的に適した素材である故でしょう。
色残しの方法について考える際に参考にさせていただいたページには以下のように書かれていました。(食品の保存に関連する話です)

フイルムを透過してきた酸素も吸収する脱酸素剤封入包装、あるいは、脱酸素剤封入包装とガス充填との併用が最も効果が大きい。またアルミ箔、アルミ蒸着フイルム、印刷での遮光包装も重要で、酸化防止、変退色防止、香気保存などで効果がある。 
引用元: http://sanko-shoji.jp/PACK/oil.htm(リンク切れ)

ここまで書くと絶対にアルミの袋を使った方がいいみたいに見えますが、実際PPチャック袋とかタッパーできれいに色を残す方もいるので、ここは私の好みですね……(持ってるから使うだけ)

低温条件での乾燥(冷凍・冷蔵)

例えば食品で腐敗を防ごうと思ったら、まずは冷蔵か冷凍を考えるはず。
標本作成においても腐敗を防ぐためのお手軽な方法として、低温条件下での乾燥があります。
(直翅目では冷蔵乾燥の効果がかなり大きく出る)
しかし冷蔵(冷凍)庫に虫を入れることが嫌がられる、禁じられる環境で生活している方もいると思います。
その場合の対策は

・クーラーボックスを利用する
・虫専用の冷凍庫を買う
・清潔な容器を用意して、食べ物っぽい感じで入れておく(?)

この辺りになるでしょうか……(笑)
私は一時100均の発泡スチロール保冷箱と保冷剤の組み合わせで標本を作っていましたが、それでもわりと色が残っていたので、冷蔵庫が封じられても低コストでやれないことではありません。
複眼は冷凍環境下で白く濁ってしまうため、冷蔵乾燥の方がオススメです。

複眼のシリコンオイル処理

ここまで、腐敗を防ごうという趣旨の話を中心にしてきましたが、これはさらにその先の話。
複眼の場合は特に、変色を起こす要因は腐敗だけではなさそうです。
例えば、
・冷凍庫に入れると複眼は白くなってしまう。
→油を凍らせると白く濁ります。
・複眼は処理を行わなければ次第に黒く濁っていく。
→油は酸化するとより濃い色に濁っていきます。
油の酸化による『油の変色』もまた、標本の退色に影響しているのかもしれません。
油は酸素や温度、水分だけではなく、光の影響も受けて酸化するようです。
油の酸化が複眼を濁らせたり、暗い色にする原因の一つだという可能性も十分あります。
また、油にはいくつかの種類があり、
酸化しやすい油、酸化しにくい油というのがあります。
色残しの非常に上手な方が使っていたのがシリコンオイルでした。
それこそまさしく非常に高い酸化耐性がある、透明な油。
複眼の処理として、一度アセトンに浸けた後にシリコンオイルを染み込ませるって方法があるみたいなんです。
一度、トンボの複眼の油を抜いた上で、別の油を染み込ませて酸化しにくい別の油に『置き換える』ということなのでしょう。
シリコンオイルはネット通販等で入手できるので、気になった方は使ってみてはどうでしょうか?
私は標本に本来存在しない物質を投入するのは何か問題ある気がして、そこには手を出さずにいます。
(内臓抜いて綿詰めるのと同じと思えば同じなんだけど)

色残し標本の作り方(2022年版)

ここからは筆者がトンボ類の色残しを目的とした標本を作る際の手順を紹介します。
やり方は改善を重ねながらなので、定期的に内容が変わると思いますがご容赦ください。
今の私のやり方はお手軽さ最重視です。
真似しようと思った方が簡単に真似して標本を作れるレベルを維持しつつ、生時の色がちゃんと分かる程度に色を残す方法を模索中です。

【必要なもの】
・シリカゲル
・アセトン
・半紙
・芯(イネ科植物などの茎を乾燥させたもの)
ほか、チャック付き袋、ピンセットなど

〆る~複眼の処理

まずは標本の退色≒腐敗の根本的な原因である内臓等の処理です。
しばらく置いて排出させる(餓死を待つ)場合と内臓を取り出す場合の2つあります。
※私は技術的な問題で小型種やカワトンボ類では餓死を待って標本を作っています。
【注意】以降、センシティブな画像が続きます。

内臓を抜く場合はチャック付き袋にいれて酢酸エチル(除光液)等で〆ます。生きたままの処理は心的にハードルが高いのと、〆る工程を挟んでもさほど最終結果は変わらないと思うので〆ています。
餓死を待つ場合でも十分に排泄し衰弱が認められた段階で〆ています。
(必ずしも死後すぐに作業に取り掛かれるとは限らないので、放置して腐敗させないための見極めが大事です)
動かなくなったら取り出して、まずは頭部を外します。
複眼の色残しのため、胴部とは分けて処理を行います。
※小型のイトトンボ類などは複眼を外さずにそのまま胴と同じ処理をすることが多いです。

胴体を抑えて頭部を数回転させ、ゆっくりと引っ張って取り外します。
すると、頭部に付随する消化器官の一部が一緒に引き出されます。

臓器部分は取り外して、頭部はシリカゲルに埋めてチャック付き袋へ密閉します。
私はこれをさらにラミジップ(アルミ製チャック付き袋)に入れて、冷蔵庫へいれています(ラミジップは必須ではない)。
頭部はこのまま1週間~2週間程度、冷蔵乾燥させます。
続いて胴部。

胴部の処理


胴部は腹端付近にピンセットで穴をあけ、そこから臓器を引き抜きます。
こちらもゆっくり、慎重に……

きれいに取り出せました。このやり方なら不器用な私でもなんとかできそうです。
あんまり先端が鋭くないピンセットの方がやりやすいかもしれません
(今回は上手くいったが、他種でやった際に何度か途中で切れて失敗している)
取り出した臓器は捨てています。
乾燥標本にしている時点で遺伝解析用のサンプルにはなり得ませんが、下記のような方法もあります。(pdf参照)
(他の生物のDNAが混ざってそうな臓器を残すより素直に脚を取るべき……?)

遺伝情報を長期保存できる昆虫標本の作製方法を新たに開発―「遺伝資源」としての昆虫標本を次世代に―

自然史博物館などに収蔵されている昆虫標本は、その昆虫が生きていた当時のすがたや遺伝子の情報を含むことから、過去の情報を現在にのこす、いわば「タイムカプセル」とも言えます。これらの昆虫標本から遺伝解析をすることで、過去の昆虫が持っていた遺伝的多様性 (※2) や機能遺伝子 (※3) の変化などがわかるため、自然科学の様々な分野に応用できることが期待されています…

小さなチューブに保存液(プロピレングリコール)とともに体の一部を封入し、標本と一緒に刺して保管する方法です。
全部でこれをやるのはかなり大変だけど、今後本当に重要そうな標本を作るときにいつでも出来るように備えておく必要はあるかもしれない……(トンボに限らず)
無事に内臓を除去できたら、次は整形です。
トンボの標本は乾燥によって腹部が曲がることがあるため、体に芯を通します。

中脚の間辺りを狙って芯(乾燥したイネ科植物の茎。小型種ではプラスチックのブラシなどで代用)を刺します。
一度腹端に当たるまで刺して、長さを調節しつつ完全に体内に納めます。(長さ調節、けっこう苦手なんですよね)
芯が通ったら、体の固定に進みます。

固定~乾燥

半紙などを四角くカットして、対角線上を折ります。

ここにトンボを挟みつつ整形します。
前脚は胸部の前面に、中後脚は腹面に沿わせて整えます

乾燥の上で、吸水性の高い素材の方が良いと思うので三角紙(パラフィン紙)の利用は避けています。
また、光に透かして見える方が整形しやすいため半紙を使っています。
(タトウに使うので、大抵持て余している)

腹部の角度を透かして確認しながら調節し、整えたらホッチキスで周辺をとめて体を固定します。
また、左右の翅も重なるようにピンセットで位置を合わせます。(鋭利でないピンセットの方ががやりやすい)
翅の高さ(どのくらい持ち上げるか)については、特に決まりはなさそうです。
図鑑だと後翅の下端(根元付近)が腹部と重なるか、少し上に来るくらいが多いです。
前翅は後翅にガッツリ重ならない程度に並べて、周囲を同じくホッチキスでとめて固定します。
とめ方が甘いと乾燥後に翅が開いたりするので、根元と先端部が押さえられるようにとめましょう。
固定の方法はホッチキス以外にもクリップを用いたり、翅にテープを巻いたりするなど様々なやり方があります。
固定出来たら半紙の余白はカット。このままアセトンか、シリカゲルに埋めます。

アセトンが使える種の場合、身体全体が浸るように注意していれます。
気泡が入っていたら極力出しましょう。
アセトンにつけたまま1~2週間置き、完全に脱脂・脱水させます。
アセトンのような劇物中ではさすがに腐敗は進まない(と思う)ので、温度とかも気にせず放っておくだけで胴体の色がある程度残せます。
以前はアセトンで処理した後シリカゲル乾燥の手順を踏んでいたのですが、お手軽なので最近はずっとこうしています。
(油の抜き過ぎでの退色はそんなに気にならない……気にしてないだけかも)
アセトンを使わない場合は複眼と同様に、シリカゲルに埋めてチャック付き袋に密閉。冷蔵乾燥させます。
気分次第で酸化防止剤のカイロをラミジップに同梱することもありますが、正直効果を感じられていません。お守り要素です。
理想としてはアルミ(ラミジップ)が外部からの光と酸素を遮断し、カイロが袋の内部の酸素を吸収して無酸素に近い状態を作り出している…というようなイメージです。実際そうなっているかは不明……(笑)
ここまでで乾燥の準備は完了です。
ここから最低でも1週間以上は乾燥の期間をおきます。

合体、そして標本の完成へ

複眼と胴部を取り出したらボンドで接着。
シリカゲルに埋めた頭部の取り出し時に触角を折ることが非常に、もう非常~に多いので要注意です。
台紙に貼って、ラベルを通せば標本の出来上がりです。

マルタンヤンマ色残し標本
虫体に直接針を刺すと、回転することが多々あったため私は基本台紙に貼っています。
(大型種の台紙貼りはあまり一般的な手法ではない)

おわりに

以下、紹介したものと同様の方法での作例です。

ムカシトンボ。かなりよく残ってくれたと思う。

ギンヤンマ♂型♀。和名由来の銀色はほとんど残らない。

カトリヤンマ♂。しっかり成熟した個体を選ばないといけない……
ヤブヤンマ色残し標本
ヤブヤンマ♂。これ結構うまくいった方だと思う。

セスジイトトンボ。複眼は外さずにまるごとシリカゲル冷蔵乾燥。

モートンイトトンボ。このやり方だと小型種は整形が激ムズです。

アオサナエ♂。なんでも満足に色が残るわけではない……
数年前と比べるとかなり無駄な作業が削ぎ落されて、なおかつ色の残りも自分的には許せるレベルで安定しつつあります。
(たまに失敗するけど)
しかしもっときれいに色を残している方はいて、私もまだまだ高みを目指せる領域かもしれません。
ただ、今よりきれいに色が残せたからといって何が変わるという事もないような気がしています。
コレクションとしての価値は上がるかもしれないけど、自分が標本で伸ばしたいのはそういう方向の価値ではなかったはずで……
手間をかけるなら、もっと別方向にかけるべきか?
色残すことにこだわるのって、展足とか展翅の美しさにこだわるのとあまり変わらない? ですよね……
自分が作りたい標本には多分そこまで求められてない要素なんじゃね?、そう思ってしまったらそれまでの___自己満です。
標本の質を上げること以外にも目的はある、あるのだが……
ほんとは細かい時間の調整とか、シリコンオイルの利用とかまだまだやってない事も多いですが、現状にわりと満足してしまっている以上はこれ以上の進展をあまり期待することが出来ません。
この記事を見てくれたやる気のある誰かが、より良い色残しの方法を開発したり広めたりしてくれることを願っています。
色残しの方法がもっと広まれば、トンボに目を向ける採集者ももっともっと増えるはず。
そうすれば、私が色残しを頑張り始めた最初の目的が果たされる日も来るかもしれない___

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