ムシャクロツバメシジミ 埼玉県で発見【外来種】

外来種のチョウ、ムシャクロツバメシジミ

ムシャクロツバメシジミは台湾や中国を原産とする外来種のチョウで、日本国内では2013年に愛知県名古屋市で発見されました。
現在は愛知県だけではなく九州(福岡県や佐賀県)でも確認されており、関東地方でも2021年から神奈川県に定着して分布を広げています。
ムシャクロツバメシジミ
ムシャクロツバメシジミ(裏面、表はほとんど全体が黒色)
そんな本種は2024年以降、東京都でも見つかり始めていますが……なんと2025年に埼玉県でも発見されました。というか私が発見しました。
永井修,2025.ムシャクロツバメシジミを埼玉県上尾市で採集.月刊むし(660):53-54.
本記事では発見時の状況などについてまとめます。

ムシャクロツバメシジミとクロツバメシジミの違い

日本には在来のクロツバメシジミというチョウがいますが、ムシャクロはこれとよく似ています。
残念ながら筆者はクロツバメシジミの標本を持っていないので比較できないのですが、ムシャクロツバメシジミには翅裏の基部に目立つ斑紋が出ることでクロツバメシジミと見分けられます。
(こんど標本買ってきますね……)

丸で囲った斑紋はクロツバメシジミでは無いか、ほとんど目立たない
この部分は止まった時は後ろ翅に隠れて見えにくいことも多いので注意が必要です。

ムシャクロツバメシジミの食草はマンネングサ属

ムシャクロツバメシジミの食草はベンケイソウ科マンネングサ属(Sedum属)の多肉植物です。園芸種や、路傍によく生えているツルマンネングサなどいくつかの植物を利用するようです。


モリムラマンネングサ? 住宅地にふつうに生えている
一方で在来のクロツバメシジミの食草は同じくベンケイソウ科のツメレンゲやマルバマンネングサなどで、ムシャクロツバメシジミと食草が重複します。
現にクロツバメシジミの生息地にムシャクロツバメシジミが侵入している地域もあるようで、競合や交雑が心配されています。
福岡県や神奈川県で実際に両種が混生している地域では、両種の特徴を有する中間型も既に報告されており、交雑が起こっている可能性が高いです。

関東地方における分布拡大の状況

先述の通り、2021年以降神奈川県で定着が確認されているムシャクロツバメシジミですが、そこからは神奈川との県境に近い東京都(八王子市など)や山梨県上野原市で拡大してきたと思われる個体がポツポツ見つかり始めています。

私が拾えた範囲での文献記録と今回の埼玉県での発見地を載せてみました。
(このほか、国立市で記録があるらしい? iNatには日野市、港区での写真も投稿されている)
注目すべきなのが、埼玉県の発見地が上図のように既知の確認地からかなり離れていることです。神奈川から連続的に分布を拡大してきたものとはどうやら由来が違いそうな雰囲気です。

ムシャクロツバメシジミ発見地(埼玉県)の状況

そもそも何でこのチョウを発見することになったのかというと、私は2025年3月より休日に散歩がてら近所でチョウのモニタリング調査をやっておりまして、ムシャクロツバメシジミはその際に発見されたのが最初でした。

ここで採れました
採集したのは秋もかなり深まった10月19日。
ヤマトシジミも低温期型のブルーの個体が多くなってきた中、珍しく表面が真っ黒なシジミチョウがいたので気になって追いかけてみたら……それが初めて見るムシャクロツバメシジミでした。

採集したムシャクロツバメシジミ
採れた場所の周囲にマンネングサ属は見当たらず、たまたま飛来した個体だったようです。
その後の何度かモニタリング調査で同じ場所を見ていますが、ここでは再発見されませんでした。
そう、ここでは……
10月28日、この日は天気が良かったので重点的に近所を調べようと思い、散歩に出かけました。
すると今度はもっと家に近い場所でムシャクロツバメシジミが採れました。

しかもすごいきれいな個体。やはり近所で発生しているのか……?
周囲を調べてみると、食草になりそうなマンネングサ属の植物がありました。

このマンネングサで発生しているのか?
ということでこの日は路傍のマンネングサ属を凝視したり、人んちのツメレンゲみたいなやつを眺めたり、ホームセンターでセダムのコーナーを見たりしましたが……幼虫や食痕らしきものは確認できませんでした。
というか幼虫は相当小さいと思うので、探しても見つけられそうにないですけどね……。
という感じで発生の手がかりは得られないながらも、2個体の成虫を採集することができました。
このあと追加を得ることはなかったため、ここまでの内容をまとめて月刊むしに投稿したという訳です。

ムシャクロツバメシジミの今後

ムシャクロツバメシジミは幼虫(または蛹)で越冬しますが、すでに神奈川県に定着していることを考えれば埼玉県で冬を越えることは容易でしょう。
来春以降、近所でふつうに見られるチョウになっていくのか、それとも短期的な発生に収まるのか……注視していきたいと思います。
今回私は自分の家の近くしか調査していませんが、県内の他地域にも同じように入っている可能性は十分に考えられます。

ツバメシジミは形や大きさが似るが斑紋は小さく目立たない
既に「いる」つもりで身近な環境のシジミチョウを見るようにしましょう。
報告や本記事が新しい発生地の発見や本種を注視する人の増加につながってくれれば良いなと思います。
報告の詳細を見たい方は月刊むし2026年2月号(660号)をお買い求めください。
永井修,2025.ムシャクロツバメシジミを埼玉県上尾市で採集.月刊むし(660):53-54.

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