主に本州でみられるゴモクムシ26種の同定【Harpalus属】

オサムシ科

春~秋の夜長、街灯の周りにはさまざまなゴモクムシの仲間が集まってきます。

ケウスゴモクムシ
ケウスゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) griseus (Panzer, 1796)

上翅に毛が生えていて、体は黒色で、脚は黄褐色で……
そんな典型的なゴモクムシの仲間を含むHarpalus属(ゴモクムシ属)は、国内に32種が知られ、そのうち27種が本州に分布しています。

身近な環境にもさまざまな種が生息していて、地表徘徊性のためピットフォールなどのトラップに落ちることも多いこの仲間。
その見た目は似通っていて、同定に悩むことも多いはずです。

原色日本甲虫図鑑(II)関東を中心とした地表徘徊性甲虫など、Web上で確認できる資料も多いですが、前者には検索表がなく、後者で取り上げられているものはごく普通な種に限られています。

ということで本記事では、より広く本州でみられるHarpalus属を取り上げて各種を見分けるポイントを順番に解説していきます。

まずはゴミムシ族を除外しよう

本題に入る前に、ゴモクムシ族と間違えやすいゴミムシ族との見分け方を記しておきます。
もっとも簡単な見分け方から紹介します。

ゴミムシ族の特徴
もし頭頂に赤斑があれば、それはゴモクムシではありません

頭頂部に赤い斑紋がある場合、ゴミムシ族です。
まずここを確認して、一部のゴミムシ族を確実に除外しましょう。

注意すべき点として、頭頂部に赤斑がないゴミムシ族もいます。
これらを見分けるためには別の場所を見る必要があります。

♂の場合は簡単です。跗節の裏を見ましょう。

ゴミムシ族とゴモクムシ族の違い
ゴミムシ族とゴモクムシ族の違い(♂跗節裏)

毛の生え方が両族でまったく異なるため、ここをみれば一発で同定できます。
♀の場合はどうするかというと、頭部を腹面から見て下唇基節を確認しましょう。

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下唇基節を横断する会合線と、亜基節の剛毛を見る(やや難)

下唇基節を横切る隆線が不完全なものはゴミムシ族です。
写真からは分かりませんが、剛毛の本数も異なります。

ここまででゴミムシ族を除外できたら、ゴモクムシ族の可能性が高まります。
ゴミムシ族に行き着いた場合、以下の記事に従って各種を見分けてください。

ゴモクムシ族には複数の属が含まれますが、これ以降では代表的なHarpalus属の話をします。
この属まではなんとか頑張って辿り着いてください。

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典型的なHarpalus属の例

上翅に虹色光沢を欠くことや、毛で覆われる種を含むことなどがこの属の特徴です。

本記事は『Fauna Japonica Carabidae:Harpalini(日本動物誌 昆虫網 オサムシ科ゴモクムシ族)』(土生, 1973)と、『原色日本甲虫図鑑(II)』(上野ほか, 1985)『関東を中心とした地表徘徊性甲虫』(東京大学)などを参考に作成しています。

分類体系などは『日本列島の甲虫全種目録(2025年)』に従いました。

  1. まずはゴミムシ族を除外しよう
  2. ゴモクムシ属(Harpalus)から亜属への検索
    1. ヒラタゴモクムシ Harpalus (Loboharpalus) platynotus Bates, 1873
    2. ハコダテゴモクムシ Nipponoharpalus discrepans (Morawitz, 1862)
  3. Harpalus亜属6種+ほか1種の紹介
    1. ツヤアオゴモクムシ Harpalus (Harpalus) chalcentus Bates, 1873
    2. チョウセンゴモクムシ Harpalus (Harpalus) crates Bates, 1883
    3. ヒロゴモクムシ Harpalus (Harpalus) corporosus (Motschulsky, 1861)
    4. ミヤマゴモクムシ Harpalus (Harpalus) solitaris Dejean, 1829
    5. アイヌゴモクムシ Harpalus (Harpalus) laevipes Zetterstedt, 1828
    6. マルゴモクムシ Harpalus (Harpalus) bungii Chaudoir, 1844
    7. アカアシマルガタゴモクムシ Harpalus (Zangoharpalus) tinctulus tinctulus Bates, 1873
  4. Pseudoophonus亜属17種の識別
    1. オオゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) capito Morawitz, 1862
    2. トゲアシゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) calceatus (Duftschmidt, 1812)
  5. 上翅が毛で覆われる7種
    1. ケゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) ussuriensis vicarius Harold, 1878
    2. ミカゲゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus)roninus Bates, 1873
    3. オオズケゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) eous Tschitschérine, 1901
    4. ニセケブカゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) aenigma (Tschitschérine, 1897)
    5. ケブカゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) pseudophonoides Schaubérger, 1930
    6. ケウスゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) griseus (Panzer, 1796)
    7. ヒメケゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) jureceki (Jedlička, 1928)
  6. 上翅がほとんど毛で覆われない8種
    1. コゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) tridens Morawitz, 1862
    2. クロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) pastor niigatanus Schaubérger, 1929
    3. ニセクロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) simplicidens Schauberger, 1929
    4. アシグロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) davidi Tschitschérine, 1897
    5. ウスアカクロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) sinicus Hope, 1845
  7. ゴモクムシを調べる楽しみ
  8. 参考

ゴモクムシ属(Harpalus)から亜属への検索

まずは亜属までの検索です。Harpalus属は国内に4つの亜属が分布しています。

Fauna Japonicaの時点と今とで一部の種の所属が変わっていますが、今回はそのまま昔の流れに沿って見分けていきます。
最初に確認するのは前脛節の先端です。

ヒラタゴモクムシの識別
ヒラタゴモクムシかそれ以外か

ヒラタゴモクムシを含むLoboharpalus亜属は前脛節先端が広がり、外縁部のトゲが多いことが特徴です。

ヒラタゴモクムシ Harpalus (Loboharpalus) platynotus Bates, 1873

体長は9-16 mm。名前の通り体が幅広く平たい印象を受けるゴモクムシです。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

ヒラタゴモクムシ
海岸の砂地で(2025.06.26 秋田県)

砂地を好む種のようで、主に海岸や河川敷などで採集されているようです。

本亜属にはもう1種、アカゴモクムシ H. (L.) rubefactus rubefactus Bates, 1873という種が国内から知られています。本種は兵庫県から記載されたあと再発見されていない幻のゴモクムシのようです。
赤褐色で前胸は基方へ狭まらないなどの特徴で区別されます。


ヒラタゴモクムシでない場合は、次に跗節や体背面の毛の有無を確認しましょう。

Harpalus亜属とPseudoophonus亜属の区別
Harpalus亜属とPseudoophonus亜属の区別

ともに無毛であれば、ツヤアオゴモクムシなどの属するHarpalus亜属か、ハコダテゴモクムシです。
どちらかに毛があればケウスゴモクムシなどのPseudoophonus亜属です。

Pseudoophonus亜属

ここで、無毛のHarpalus亜属などの方に進むともう一つ分岐があります。
頭部と後腿節を見ます。

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Harpalus亜属とNipponoharpalus属の区別

ハコダテゴモクムシを含むNipponoharpalus属(昔は亜属だった)を見分けるポイントです。
頭部にある横溝が眼の方に向かっていて、後腿節の剛毛の本数が2本であればNipponoharpalus属です。

本属にはハコダテゴモクムシ1種のみが知られているようです。

ハコダテゴモクムシ Nipponoharpalus discrepans (Morawitz, 1862)

体長は10.5-12 mm。若干小さめでやや幅広い体形が特徴的な、黒色のゴモクムシです。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

ハコダテゴモクムシ
大学のキャンパス内で(2018.04.04 長野県)

草地よりは雑木林の中で出会う印象があります。
出会うのは春が圧倒的に多いです(秋は少ない)。

Harpalus亜属6種+ほか1種の紹介

ハコダテゴモクムシでなければHarpalus亜属です。
本亜属は国内に13種が知られますが、その多くは北方系で「アイヌ」とか「リシリ」とか名前につく種が多いです。

本州には10種が分布しています。ここで紹介できるのは、うち6種までです。
検索表に従って紹介しても持っていない種が多いため、この亜属は各種の紹介をするだけに止めます
(標本が増えてきたら別途紹介記事を作るかもしれません。)

ツヤアオゴモクムシ Harpalus (Harpalus) chalcentus Bates, 1873

体長は11-14.5 mm。緑銅色の光沢が強いことが特徴的なゴモクムシです。
国内では本州から九州にかけて分布します。

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芝生上で交尾中のペア(2023.04.04 岐阜県)

とにかく「芝生」とセットで見られる虫、という印象が強いです。春の夜に芝生のある公園や河川沿いを歩けば必ず見ることができるようなゴモクムシです。

チョウセンゴモクムシ Harpalus (Harpalus) crates Bates, 1883

体長は12-16 mm。大型のゴモクムシで、上翅には弱い銅光沢がある個体が多いです。
国内では本州と九州、屋久島に分布し、環境省のレッドリスト(2020)では絶滅危惧II類(VU)となっているやや少ない種です。

チョウセンゴモクムシ
河川敷の草地で(2020.03.26 埼玉県)

本種はエサとしてマメ科のメドハギに依存している可能性が報告されています。
メドハギが多く生える荒れ地のような環境で見つかることが多い種です。

ヒロゴモクムシ Harpalus (Harpalus) corporosus (Motschulsky, 1861)

体長は11-15.5 mm。こちらも大型のゴモクムシで、チョウセンゴモクムシとよく似ています。
国内では北海道から本州にかけて分布します。

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草地のそばで見つけた(2025.10.18 埼玉県)

夜間も活動していますが、意外と昼間にも出会うことが多い印象のゴモクムシです。
たくさん見る機会はなかなかないですが、家の近所にも生息していたくらいには身近な種です。

チョウセンゴモクムシとの識別には、前胸背板の後角を見ます。

チョウセンゴモクムシとヒロゴモクムシの違い
チョウセンゴモクムシとヒロゴモクムシの違い

後角が完全に丸ければチョウセン、角ばりがあればヒロです。
ヒロゴモクムシにはチョウセンゴモクムシのような銅色光沢は出ないので、そこもポイントです。
(チョウセンゴモクムシにも黒いやつがいることに注意)

ミヤマゴモクムシ Harpalus (Harpalus) solitaris Dejean, 1829

体長は9-11 mm。小さめのゴモクムシで、名前の通り本州では山地にみられる種です。
国内では北海道と本州に分布します。

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長野県産

小型のわりに頭部が大きく、脛節は先端部が暗色になるなどの特徴を持ちます。
採集したのは標高1000 mを越すような高原地帯で、石起こしで得られました。

アイヌゴモクムシ Harpalus (Harpalus) laevipes Zetterstedt, 1828

体長は8.6-11.3 mm。オスには強い光沢が出る種です。
国内では北海道と本州に分布します。

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北海道産

自分で採集したものではないので詳しい採集状況などは不明です。
里山のゴミムシ』をみると北海道でも山地の樹林やその周りで得られているような印象です。本州ではかなり標高上げないと出会えなさそうですね。

マルゴモクムシ Harpalus (Harpalus) bungii Chaudoir, 1844

体長は6.5-8.5 mm。小さなゴモクムシで、元は「マルガタゴモクムシ」という和名でした。丸みの強い体形が特徴的です。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

マルゴモクムシ

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畑地の隅の乾いた地表にいた(2025.10.18 埼玉県)

ニセマルゴモクムシという種もいます。前胸背の基部が後方にしっかり狭まるとか、基部の凹みがごく浅いとか……その辺りで見分けるのでしょうか、情報が少なくはっきり分かりません。

似たようなサイズ感のゴモクムシとして他にアカアシマルガタゴモクムシがいますが、あちらと比較するとマルゴモクはやや少ない? 印象です。採集環境は畑地の周りとかそんな感じの場所が多いです。

ついでなのでアカアシマルガタゴモクムシも紹介します。
本種は別亜属(Zangoharpalus)です。

アカアシマルガタゴモクムシ Harpalus (Zangoharpalus) tinctulus tinctulus Bates, 1873

体長は6.5-8 mm。よく見かける小型のゴモクムシです。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

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栃木県産

マルゴモクムシと比較すると細身で、前胸背板は四角形に近いです。
オスの上翅は弱い緑銅色を帯びます。

Harpalus亜属の紹介はここまで。
以降は本記事のメイン、Pseudoophonus亜属の紹介です。

Pseudoophonus亜属17種の識別

ここからはPseudoophonus亜属の識別点を紹介していきます。
上翅に毛を持つ種が含まれる、もっとも身近なゴモクムシのグループです。

まず初めにオオゴモクムシを見分けましょう。
オオゴモクムシはぱっと見の大きさや形で十分見分けられる種です。

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オオゴモクムシとその他のゴモクムシ

  • 体長が20 mmを超える場合がある
  • 前胸背の後縁部より大きい頭部

この辺りが確認できれば確実です。体長が被っていて似ている種は写真で示したケゴモクムシくらいなので、前胸背の形なども気にすれば問題なく同定できるでしょう。
(上翅の毛の生え方にも違いが出るそうなのですが、正直よく分からなかった)

オオゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) capito Morawitz, 1862

体長は17-24 mm。国内のゴモクムシではもっとも大型の種です。かつては別亜属に分けられていました。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

オオゴモクムシ
河原の砂地にいた(2025.10.13 埼玉県)

河川敷や湿地の周辺、草地などでポツポツと見つかる種です。
大型でナガゴミムシの仲間を思わせる迫力がありますが、脚は黄褐色なのでやっぱりゴモクムシだと分かります。


次はトゲアシゴモクムシの可能性を検討します。
脚の跗節を顕微鏡で確認しましょう。

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トゲアシゴモクムシとそれ以外の識別

跗節の第5節(末端節)を腹面から見て、トゲがあればトゲアシゴモクムシです。
トゲがなく剛毛のみがある場合はその他の種として先に進みます。

トゲアシゴモクムシがどうしても採れなくて……資料がありません。

トゲアシゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) calceatus (Duftschmidt, 1812)

体長は12.5-14.5 mm。この亜属は多くの種で脚が褐色ですが、本種は脚も含めて全体が黒色のゴモクムシです。本種も昔は別の亜属でした。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

兵庫県のゴモクムシ類 (1)』でも「産地や個体数の少ない種」と述べられているくらいで……あまり多くない種なのだと思っています。

チョウセンゴモクムシのように何らかの植物や環境に依存している? のかと思いきや「河川敷や耕作地で普通」と言っている方もいるのでよく分からない存在です。
どこを探せばいいのやら……


トゲアシゴモクムシの可能性を外したら、ここからは昔からのPseudoophonus亜属たちです。
まずは、上翅に毛があるかないかで大きく分かれます。

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毛がある種とない種

上翅は全体が毛に覆われているパターンと、少なくとも中央部は毛がないパターンの2通りがあります。
脱落しやすい毛ではないので、しっかり見れば分かるはずです。

まずは毛のある種から順番に紹介していきます

少なくとも中央部に毛がない種

上翅が毛で覆われる7種

ここではまず、前胸背の点刻度合いと体長を確認します。

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毛があるゴモクムシの識別ポイント(1)

ケゴモクムシやミカゲゴモクムシは15 mm以上ある大型種で、前胸背は密な点刻で覆われます。
その他の小型種は前胸背の中央は点刻が少なくツヤが目立ちます。

大型のケゴモクムシとミカゲゴモクムシは、脚の色だけで識別できます。

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ケゴモクムシとミカゲゴモクムシの違い

ケゴモクムシの脚は褐色で、ミカゲゴモクムシは脚を含め全体が黒色です。

ケゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) ussuriensis vicarius Harold, 1878

体長は15-18 mm。大型で上翅が毛に覆われるゴモクムシです。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

ケゴモクムシ

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雑木林にいた(2025.10.18 埼玉県)

採集経験は2度だけで、一回目は長野県の里山環境でベイトトラップにより得ています。
二回目はごく最近で、近所の雑木林で得ました。樹林環境を好むゴモクムシなのかな?

ミカゲゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus)roninus Bates, 1873

体長は17-19 mm。大型で黒色、なおかつ上翅に毛が生えているという特徴を持つHarpalus属でも唯一無二の存在です。
国内では北海道から九州にかけて分布しますが、かなり珍しい種だと思います。

ミカゲゴモクムシ
長野県産

こちらも採集経験は1度だけで、山間部のダムにある灯りに夜間来ていた個体です。
山麓地帯での採集記録があり、そういう自然度の高い環境に生息する虫かなという印象です。


続いて小型種の紹介です。よく出会う種を含むので、この辺の同定は暗記するつもりでいきましょう。

まずは前胸背側縁部を見ます。剛毛の本数が多いものがオオズケゴモクムシです。

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オオズケゴモクムシとその他の種の違い

オオズケゴモクムシの前胸背側縁部には2~3本の剛毛があります。
その他の種は1本だけなので、ここを見ればオオズケゴモクムシの同定は容易です。

オオズケゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) eous Tschitschérine, 1901

体長は12.5-15mm。大きな個体はケゴモクムシと迷うかもしれませんが、前胸背の中央はツヤがあり異なります。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

オオズケゴモクムシ
埼玉県産

河川敷のオープンな草地環境などでちょこちょこ見つかる種で、冬季採集でコケや枯れ草の下から出した経験が多いです。

名前の通り頭部は大きめですが、これだけを決め手に判断するのは慣れが必要です。
後述のケウスゴモクムシなどよりは大型になりがちなので、体長や頭部が少し大きめの個体を拾っていけば当たるはず!


オオズケゴモクムシでない場合、次はケブカゴモクムシ・ニセケブカゴモクムシの可能性を検討します。

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毛があるゴモクムシの識別ポイント(2)

ケブカゴモクムシ(またはニセケブカゴモクムシ)の前胸背後角は角ばりますが、ケウスゴモクムシなどでは丸みを帯びます。
ケブカゴモクムシ系の方は毛が少なく、上翅にやや光沢があることもポイントです。

ケブカゴモクムシとニセケゴモクムシを確実に見分けるには、交尾器を見るのが一番です。

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ニセケブカゴモクムシとケブカゴモクムシの交尾器

ケブカゴモクムシは未採集のため、ニセケブカだけ示します。
ニセケブカゴモクムシには交尾器の内部に黒ずんだものが見えますが、ケブカゴモクムシにはそれがないそうです。
(黒ずんでいるものはトゲの束らしいです)

交尾器のほかには頭部の大きさや前胸背にも違いがあります。

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ニセケブカゴモクムシとケブカゴモクムシの頭胸部

ニセケブカゴモクムシは頭部が大きく、前胸背はより強く湾曲します。
後角は歯状にとがるのもポイント。後述するクロ/ニセクロの区別とほぼ同じ感じです。

ニセケブカゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) aenigma (Tschitschérine, 1897)

体長は(情報なし)。
これまでニセケゴモクムシと呼ばれてきた種には2種が混在していることが分かり、それぞれに新しい和名が与えられたという経緯があります。
国内では本州と九州に分布します。

ニセケブカゴモクムシ
長野県産

典型的な山地のゴモクムシという印象です。枯れ沢で石起こししたら出てきたり、高尾山で夜間ルッキングしてたら出会ったり……山の中で会うゴモクムシはこの類が多いです。

上翅は毛で覆われるもののかなりまばらで、「どこがケブカなんじゃ」という感じです。
毛が薄いことに加え、上翅の光沢も他種より強いため野外でも「これは旧ニセケ」と気づきやすいと思います。

ケブカゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) pseudophonoides Schaubérger, 1930

体長は11-16 mm。
こっちが真のニセケゴモクムシで、和名はケブカゴモクムシに改められました。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

(筆者未採集のため写真なし)


ケブカゴモクムシ類でなければ、残りはケウスゴモクムシかヒメケゴモクムシです。
この2種(特にケウス)はごくふつうにみられる種で、識別する機会も多いです。

よく見ればすぐ判断できるので、以下のポイントを押さえましょう。

ケウスゴモクムシとヒメケゴモクムシの違い
ケウスゴモクムシとヒメケゴモクムシの違い

この2種の違いは頭部に出ます。頭楯の前縁には1対の目立つ剛毛がありますが、ヒメケではさらに複数本の剛毛が追加されます。
頭楯のさらに先にあるのは上唇で、ここの毛と間違えないように注意が必要です。
頭楯の位置をしっかり覚えておけば、剛毛は野外でもギリギリ見えるので識別可能です。

ケウスゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) griseus (Panzer, 1796)

体長は9-12.5 mm。毛の薄さとかは特に感じない、むしろびっちり生えている印象のゴモクムシです。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

ケウスゴモクムシ

ケウスゴモクムシ
夜間、田んぼの近くで歩いていた(2025.10.18 埼玉県)

後述のウスアカクロゴモクムシと肩を並べるくらいの最普通種で、とくに田畑の周りなどの草地では優占します。
慣れれば本種か、ヒメケゴモクのどちらかという所までは野外でも分かりますが、この2種の同定はぱっと見では不可能で……頭楯の毛をチェックしないことには同定できません。

少なくとも埼玉県のご近所界隈では圧倒的にケウスゴモクムシの方が多く、その中に少数のヒメケゴモクムシが混ざるような状況です。
地域や環境によっては状況が違うこともあるのでしょうか?

ヒメケゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) jureceki (Jedlička, 1928)

体長は10-12.6 mm。外見上はケウスゴモクムシと何ら変わりありません。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

ヒメケゴモクムシ
埼玉県産

出会ったケウスゴモクムシを全て拾い上げ、1個体ずつ丁寧に見ていくと少数混じっている__そんな印象の種です。
生息環境も特にケウスゴモクムシと違う感じはしませんでした。


ここまでで「毛のあるゴモクムシ」は終了です。ここから先は上翅にほとんど毛がないグループです。

上翅がほとんど毛で覆われない8種

ここからは上翅がほぼ毛で覆われない種を紹介します。
まずは前胸背の後角を見て、角ばるものと丸みを帯びるものを分けます。

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毛がないゴモクムシの識別ポイント(1)

ここで後角が角ばっている3種(コ、クロ、ニセクロ)とそれ以外に分かれます。
続いては角ばるグループの中で唯一、側縁と翅端が細毛で覆われるコゴモクムシを見ましょう。

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コゴモクムシとそれ以外の違い

毛の生え方のほかに、矢印で示した前脛節先端の突起の形状も異なります。コゴモクムシには大きなえぐれがあるのです。

また、本属で上翅の側縁に沿って細毛があるのはコゴモクムシとババゴモクムシの2種だけです。
ババゴモクムシ(後述)は前胸背後角が丸みを帯びるため、この2点を確認できればコゴモクムシの同定は容易です。

ただし、この側縁の細毛はけっこう見えにくいので注意です。
標本写真撮っても分からないけど、顕微鏡で見たら分かるみたいな絶妙な生え方をしています。

おかげさまで上翅無毛と勘違いし、後述のクロゴモクムシと誤同定された標本がいっぱい発掘されました(笑)

コゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) tridens Morawitz, 1862

体長は9-14 mm。言うほど小さくもないゴモクムシで、後述のクロゴモクムシに似ています。
国内では北海道から九州にかけて分布します。

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埼玉県産

背面から写真を撮るとご覧のように側縁の細毛が全然見えません。
したがってぱっと見の印象はクロゴモクムシとほとんど変わりません(体長も重複する)。

河川敷で採集したクロゴモクムシ(と思っていたやつ)がほとんど本種に落ちたので、河川敷に多い種? という印象を持っています。
識別点を理解した上で近所のルッキングを行っていますが、2回やって1頭を見たのみです。
クロゴモクムシとかと比べると少ない種なのかもしれません。


続いてはクロゴモクムシとニセクロゴモクムシです。
ここの2種の識別には昔から苦労させられた思い出があります。

クロゴモクムシとニセクロゴモクムシの違い(1)
クロゴモクムシとニセクロゴモクムシの違い(1)

どちらも前胸背後角は角ばっていて、その角ばり方の違いで見分けます。
非常~に微妙な差なのですが、クロゴモクムシは後角の直前で側縁のカーブがカクっと曲がり側方へ反る……ような形です。

さらに、前胸背の最大幅を取る位置も異なっています。
クロでは中央あたりですが、ニセクロは明らかに前よりです。

これ以外に上翅肩部にも違いが出るので、自信がなければこちら↓も要チェックです!

クロゴモクムシとニセクロゴモクムシの違い(2)
クロゴモクムシとニセクロゴモクムシの違い(2)

上翅肩部の角度はクロでほぼ直角、ニセクロでは鈍角とされています。
微妙ですよね。確かにニセの方がわずかに角度は大きいですが……

なお、背面の全体的な光沢はクロで弱く、ニセクロで強いという違いもあります。
写真で示したのはより光沢が弱いクロ♀と、より強いニセクロ♂なので光沢の違いがはっきり見てとれると思います。

クロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) pastor niigatanus Schaubérger, 1929

体長は9.5-14.5 mm。よくみられるゴモクムシです。
日本固有の亜種で、北海道から沖縄にかけて分布します。

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埼玉県産

田畑の周りや河川敷でふつうに見つかるゴモクムシです。
前胸背後角の形と前胸背の形状(最大幅)に注意していれば野外でもなんとなく分かる……気がします。

ニセクロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) simplicidens Schauberger, 1929

体長は10.3-13 mm。クロゴモクムシに混ざって少数得られるようなゴモクムシです。
国内では北海道から沖縄にかけて分布します。

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埼玉県産

生息環境は前種と同じで、田畑の周りや河川敷などです。

先述の通り、ニセクロの前胸背後角は側方へ反らないのですが……これはむしろウスアカクロゴモクムシとかあっちの(後角丸みを帯びる)グループとの違いが分からなくなりがちです。後角が角ばってるのか角ばってないのかのラインが微妙なのです。

ニセクロゴモクムシとウスアカクロゴモクムシの比較
ニセクロゴモクムシとウスアカクロゴモクムシの比較

ウスアカクロゴモクムシなどとは後角の状態よりも前胸背の全体的な形が異なる(基方への狭まりが強い)点で見分ける方が確実かなと思っています。


これ以降は上翅にほとんど毛がなく、前胸背後角が丸みを帯びる種の紹介です。
ここまで来たらいよいよラストスパートです!

ここから先の種は筆者未見の種が含まれるので、文章での解説を中心に進めます。

まずはアズマゴモクムシH. (P.) azumai Habu, 1968です。
本種は体長10-11 mmのゴモクムシで、南西諸島に分布します。

上翅が全体的に点刻をもつことで他種と区別される種です。

続いてはアオガシマゴモクムシH. (P.) aogashimensis (Habu, 1957)
本種は体長10.2-11 mmのゴモクムシで、伊豆諸島の青ヶ島にのみ分布する日本固有種です。

「前胸背板基部の点刻域が平滑部によって途切れる」という特徴を持ちます。
ここが途切れない、ウスアカクロゴモクムシの写真を以下に示します。

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前胸背板基部の点刻域が途切れない(ウスアカクロ)

さらにアシグロゴモクムシを紹介します。これは標本持ってます!

アシグロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) davidi Tschitschérine, 1897

体長は11.5-12.5 mm。腿節と脛節は暗褐色か黒色……つまり全体的に黒いゴモクムシです。
国内では本州、九州と対馬に分布します。

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西日本に多いらしい

一見するとトゲアシゴモクムシなのですが、跗節の腹面にトゲはありません。
脚が黒いPseudoophonus亜属は本種とミカゲ、トゲアシの3種のみです。

いずれも簡単には採れない、くせ者たちですね……


あとはババゴモクムシと、ウスアカクロゴモクムシを残すのみです。
ババゴモクムシH. (P.) babai Habu, 1973は体長12-12.5 mm。
国内では本州で採集されていますが、情報は少ないです。

私もそうですが、多くの方はウスアカクロゴモクムシと区別がついていないのではないかと思います。
ババゴモクムシとウスアカクロゴモクムシの分かりやすい違いは以下の2点!

  • 前胸背板の側縁が黒色(ババ)、褐色(ウスアカクロ)
  • 上翅の側縁部と末端部に密な短毛を持つ(ババ)、ほぼない(ウスアカクロ)

前胸背側縁の色は野外でも十分確認できるため、ウスアカクロっぽいものを見かけたら、拾い上げて側縁の色を見る習慣をつけましょう。そうすればババゴモクムシを拾える日が来るかも……
(茨城県や千葉県には採集記録があるため、関東のその辺で採れても不思議ではありません)

また先述の通り、ババゴモクムシにはコゴモクムシのような側縁に沿った密な短毛が生えているので、ここがともに確認できれば確実な同定ができます。

では最後の1種、ウスアカクロゴモクムシの紹介です。

ウスアカクロゴモクムシ Harpalus (Pseudoophonus) sinicus Hope, 1845

体長は10.5-15.5 mm。けっこう大型になるゴモクムシで、代表的な無毛種です。
国内では北海道から南西諸島まで幅広く分布しています。

ウスアカクロゴモクムシ
埼玉県産

Harpalus属における最普通種は本種かな、と思っています。
樹林地以外の環境ではどこでも多く見つかる虫です。

前胸背後角の丸みを帯びる形とともに基方にあまり狭まらないことを覚えましょう。
ここに注意していれば、ニセクロゴモクムシなどとは野外でも十分区別できます。

ゴモクムシを調べる楽しみ

だいぶ長い記事になってしまいました。思い通りに同定できそうでしょうか。
先日、ノリと勢いに任せて『Fauna Japonica』(77000円)を買ってしまったので、何か活用しよう! と思ってこんなまとめを作ってみました。

ニセクロゴモクムシ
ニセクロゴモクムシ

おかげさまで長らく冷めていたゴモクムシへの熱が再燃し、夜間ルッキングをやり始めています。
ゴモクムシの採集は10月でもまだまだできますし、越冬個体を狙うなら冬の間でもできます!

近所でもババゴモクムシのような情報の少ない種が見つけられる可能性もあるので、私もこれからはしっかり見ていきたいグループになりました。

あなたは何種のゴモクムシに出会えていますか?
この記事を、まだ見ぬゴモクムシと出会うための取っ掛かりにしていただけたらうれしく思います。

参考

・土生, 1973. Fauna Japonica Carabidae:Harpalini(日本動物誌 昆虫網 オサムシ科ゴモクムシ族)

・上野ほか, 1985. 原色日本甲虫図鑑(II)

・東京大学, 2014. 関東を中心とした地表徘徊性甲虫
https://hyoka.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/ground_beetle_zukan/(2025年10月18日確認)

・日本産環境指標ゴミムシ類データベース作成グループ, 2017. 日本産環境指標ゴミムシ類データベース里山のゴミムシ.
https://www.biwahaku.jp/study/gomimushi/ (2025年10月18日確認)

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