「生き物の飼育はやらないの?」
どんな形であれ、生き物を相手にする趣味を持っている以上、
「飼育はしないのか?」
と聞かれる事は少なくありません。
幼い頃から虫とりばかりやってきた私ですが、昆虫やその他の野生生物の飼育をやっていた時期も勿論ありました。小学生の頃は野外で採ってきたクワガタやコオロギは毎年のように飼育していました。
外国産のカブト・クワガタは飼育したことないけど……。
(買ってもらえなかったのか、外国産昆虫アンチだったのか……どうだっけ、忘れた)
昆虫以外だとトカゲなどの爬虫類が特に好きで、小学生〜中学生くらいの時までよく飼ってました。
(近所で普通にみられたニホンカナヘビ、ニホントカゲの2種に限る)
しかし当時の自分には飼育に必要な知識や物資を揃えられるお金はなく、適切な飼育環境を整えてあげられなかったこともあり長続きしない飼育ばかりでした。
冬眠には失敗する、卵は孵化しない。など……
また、目標のない同じ生き物の飼育は徐々にマンネリ化し、管理が適当になっていきます。
そんな事を何度も繰り返していくうち、いつからか「可哀想だ」と思うようになり、飼育もやらなくなってしまいました……。
日頃から単なる趣味で昆虫採集をやって、多くの虫の命を奪っている以上、生き物に注げる愛情なんて何処からも湧き得ないんじゃないか、その感情は偽物ではないか……とか思うことも。
___いや、違う。
本当は昆虫採集やってるかどうかなんて関係なくて、ただ自分が生き物に対してまともな向き合い方が出来ない、愛のない人間だっただけの事のように思います。
そんなこんなで、ペットとしての生き物飼育を長い間避けてきた私ですが……
それがいつからで、何がきっかけだったのかは覚えていません。
もし今度何か飼育するとしたらニホンヤモリが良いと思うようになりました。
ニホンヤモリはニホントカゲやニホンカナヘビと違って夜行性のため、日中の探索では基本出会えない生き物です。
小中学生時代にはほとんど見たことがなく、飼育したことも一度もない爬虫類でした。
飼育に興味はあったものの、前述したようなモヤモヤを払拭することはできなかったので、自分からわざわざ探しに行く事はしませんでした。
少なくとも就職して、生活が安定してきたら、
近所で出会ったら、
(ダメだった時逃がせるため)
その時まだ気持ちが冷めていなければ、
___そんな風に思って、決断を先延ばしにしていました。
そして。
2021.11.13
虫屋的にはまだまだ秋ですが、もう多くの生き物は越冬準備に入るような肌寒い季節です。
ニホンヤモリ
Gekko japonicus(Duméril & Bibron, 1836)
すべての条件が整った2021年冬目前、その時は来た。
この日の夜、糖蜜採集兼街灯巡りで近所の公園のトイレをチェックしていた時、壁に張り付いているこの個体を見つけました。まだ小さい、幼体のニホンヤモリです。
「うわ、どうしよ……。」
とりあえず確保して、その場で少し考えることに。
正直飼育したい気持ちもかなりあったけど、感じる不安はその比ではなかった……。
餌の確保はできるのか?
飼育環境の整備や掃除をちゃんとやれるのか?
そもそもこの段階で私はニホンヤモリの飼育方法を何一つ知りません。
一度持ち帰ってから調べ、ダメなら逃がしにくればいいが……。
「いや、やっぱり……やめよう。」
覚悟は決まらなかった。
一度捕まえたヤモリを林床にそっと放して見送ります。
ヤモリは枯れ葉を踏む音を立てながら、少しずつ落ち葉の下へ隠れていく。
これで……良かったはずだ。
半端な気持ちで関わっても、自分も生き物も辛いだけになる___
それなのに私はまだ、落ち葉の更に下に潜っていくヤモリから目を背けることができずにいた。
___ここで引いたら、今後生き物を飼育する事はないんじゃないか?
あーーー!!何だよもう!!!!
情けないと思わないのか!!?
ヤモリ1匹さえ、まともに面倒見られないのか……!?
いや、飼育は決して簡単ではないんだろうけどさ……!
飼い方は帰ってからじっくり調べればいいし、めちゃくちゃ高価なものでなければ必要な設備も十分用意してあげられるはずだ。
もう難しく考えるのはやめる!
ちゃんと向き合えば、自分の感じる不安は全部払拭できるはずだ……!
(これでも簡略化してるけど30分くらい夜の公園でガチで悩んでました)
で、結局家まで持って帰ってきてしまいました。
しばらくやってみて、上手に飼えないと判断した場合は潔く逃しにいくと決めています。
この日のうちに飼育方法を必死で調べました。
さすがは身近な爬虫類。YouTubeやwebサイトだけでも情報は豊富にあって、必要な設備と飼育のポイントを一通り把握することができた気がします。
いくつか不安要素はあるが……しばらく頑張ってみよう!
ニホンヤモリ飼育に必要な要素
ヤモリを拾った翌日から必要物資を集め始めます。
設備関連
まずは飼育ケージ。
樹上性であるニホンヤモリの飼育に求められるのは高さだそうで、縦長のケージか縦置きした虫かごで飼育するのが一般的なようです。
家には傷だらけの虫カゴしかなかったので爬虫類用の飼育ケージを買ってみました。
EXO TERRA (エキゾテラ) グラステラリウム ナノ PT2601 フロントドア 爬虫類飼育ケージ W21.5×D21.5×H33cm
上面は金網で下部にも通気口があるため通気性が良いです。
側面に扉が付いているためメンテナンスもやりやすい構造。
なによりガラス製なので中が綺麗に見えて観察も楽しいものでした。
昆虫類にも活用できそうです。
さらにパネルヒーターとカルシウム剤も購入。
GEX EXOTERRA レプタイルヒートXS 爬虫類用シートヒーター 6W 耐久性 均一に暖まる PTCパネルヒーター 幅20~30cmケージ用
GEX EXOTERRA カルシウム+ビタミンD3 90g PT1856 粉末カルシウム・ビタミンD3 昼行性爬虫類に最適
ニホンヤモリは野外では冬眠を行いますが、飼育下での冬眠は難しい上に失敗すると死亡リスクもあるとのことで冬場は加温して眠らせずに過ごす方が長生きするのだそうです。
(飼育下では良い環境なら10年程度生きるらしい。そんなに長生きなのか……!)
冬の保温に必須なのがパネルヒーター。ケージ底に敷いて使うものと思っていたのですが壁面に貼って使うこともできると最近になって知りました。(そっちの方が効果は得られるみたい?)
カルシウム+ビタミンD₃剤は餌となる生物にまぶして使います。
単調な餌を与えがちなニホンヤモリ飼育ではカルシウム不足に陥りやすく、それに伴いクル病という病気を発症することが非常に多いそう。発症すると骨格に異常が生じ、ガラス面などを登れなくなってしまうなどの症状がみられるようです。
また、ビタミンD₃はカルシウムの吸収を助けます。
夜行性のニホンヤモリですが、ビタミンDを体内合成するには日光浴が必要らしく……こちらもまた不足しがちな栄養素なんだとか。
ニホンヤモリ飼育で『あった方がいい』を挙げればキリがなさそうなのですが、無いと命にかかわるレベルの必須アイテムは上述の2点で、あとは多少融通が利くのかなと思っています。
日々のお世話
自然下でニホンヤモリは生きた昆虫類などを主に食べています。
野生のヤモリは様々な種類の昆虫を食べる中でカルシウムも補給できるそう。
天然のカルシウム昆虫って何だろ、鱗翅目とかかな?
爬虫類の飼育で一般に用いられるのはコオロギまたはゴキブリで、どちらも栄養価に優れ養殖も容易などのメリットがあります。
足りない栄養素を前述の添加剤により補うことで、単一の餌でも飼育が可能になります。
で、私が最初に選んだ餌は……。
モリチャバネゴキブリ
Blattella nipponica Asahina, 1963
モリチャバネゴキブリです。
そもそも飼育が順調にいくか分からない以上、いきなり餌だけガッツリ購入は気が引けます。
まずは野生下のヤモリもよく食べてそうなモリチャバネ幼虫を使って様子を見ることにしました。
先述のカルシウム添加剤を入れた容器に餌生物を投入し、よく振って馴染ませます(この作業をダスティングというらしい)。
この餌をケージに投入しておくと勝手に食べてくれるそうです。
いずれはピンセットから直接餌を食べてくれるようにもなるみたいですが、野生のヤモリは警戒心が非常に強いので慣れるまでには時間がかかりそうです……。
ケージにモリチャバネを投入してから発覚した問題がありました……。
めっちゃ普通に脱走してる
爬虫類飼育において利用される餌生物(デュビア、イエコオロギ等)はそもそもガラスなどツルツルした壁を登れない種であることが多いようで、ケージも餌生物の脱走対策はガバガバだったのです。
餌としてモリチャバネゴキブリが採用されない理由はこれだったのか、とその時初めて気が付きます。
また、ケージ内には朝晩2回(最低でも晩1回)、霧吹きで水分を与えます。
ニホンヤモリは器から水は飲まず、壁についた水滴をなめることで水分補給するため壁面にたっぷり水を吹き付ける必要があるのだそうです。
飼育のスタート
「なんかこう……センスが、足りない……」
拾ってきた朽木や樹皮等々を追加して最初の飼育環境が出来ました。
とりあえず最初はストレスを最小限にするために隠れ家の多い環境にすることを意識しました。見た目よりヤモリさんの居心地を重視するのは当然です。
床材については家に余ってたピートモスをとりあえず投入。
ニホンヤモリは樹上性のため床材は割と何でもOK。ただし地表にいる餌生物と一緒に床材を誤食することがあるのでピートモスみたいな尖った植物片の混ざる床材は推奨されていません。
(飼育が軌道に乗ったら変えるつもりで使っています)
床材をキッチンペーパーにすると掃除が楽でいいって意見もありました。
手入れが楽なのでシンプルなレイアウトに、というある方はキッチンペーパーに登り木一本みたいな飼育環境でした。
ヤモリが隠れられる場所はほとんどなかった。
楽をしたいとかいう発想が生まれるなら、
そもそも飼わなきゃいいんじゃないの?
ってそういうの見る度に思ってしまいました……。
何人もの飼育者の動画やブログを見ていくうちに、個々人の生物に対する姿勢とか、餌生物の扱い方とか見てると飼育屋も標本屋も人によっては大きな差はないのかもしれない、と気づかされました。
どちらの世界にも生物を美術品とか鑑賞品とかそういうものとしか思っていないような人間は少数存在している……いや、やっぱりその程度は両者で差があると思う。
でも客観的にみたら「お前だろそれは」って言われちゃいますね。
そうでしょう。私の飼育は生き物ファーストではなく、自分ファーストに行われるものなのだから……
生き物の命をもてあそんだみんな、一緒に地獄へ落ちましょう……。
無かったことにはできない
準備が整った飼育ケージに、満を持してニホンヤモリを投入します。
しばらくケージ内を徘徊し、ようやく落ち着ける場所が見つかったみたい。
朽木に空いた穴がちょうどよかったらしく、穴から顔をのぞかせています。
ここからはニホンヤモリが環境に慣れてくれることを祈る期間です。
環境変化に対する適応能力には個体差があり、すべての個体が飼育できるとは限らないのです。
何日か経過してもヤモリが餌を全く食べない場合、飼育は諦めて逃がしてあげた方が良いとされます。
ケージに投入したモリチャバネゴキブリの個体数は、1日経っても、2日経っても変わりませんでした。
3日目に一頭減ったものの脱走の可能性も考えられ、判断に悩む状況。
飼育可能かの判断は3日程度ですべきという人もいれば一週間程度待つという人もいて、かなり悩みました。
ヤモリ自体の様子についても、私が部屋を開けているときに少し動いて、私が部屋に戻ってくると定位置の穴か、樹皮裏に隠れる、というような行動の繰り返し。明らかに人に慣れていないのです。
糞も最初に持ち帰った日以降は3日目までで一度もしておらず、よく言われるストレスからの拒食状態にあると考えられました。
今更ながら、初心者にはハードルの高い条件下で飼育を始めてしまったなと思います。
冬だから加温必須だし、幼体だから餌も頻繁に必要、だが確保は夏ほど容易ではない……。
結局、信じて待ってあげたいという思いで一週間は様子を見ました。
6日目か7日目あたりで、本当に少しずつですが隠れずに見える位置に出ることが増えてきました。
そんな中。
2022.11.20
ヤモリと出会ったあの公園へ、再び街灯巡りへ訪れました。
関東平野では夜間に採集すると、越冬中のウラギンシジミに出会うことが非常に多い。
常緑の少ない長野ではほとんど見なかった光景だなーと思いつつ眺めていると違和感に気づく。
「マジかよ……」
そこにはまたしてもニホンヤモリの姿が。
しかも今回は1頭ではなく……
同じ木に何頭もついていました。
中には今までに見たことないくらい大型の個体(2枚目)も。
ニホンヤモリの成体は大きいものでは14cmほどになるそうで、そのレベルだったかもしれません。
思わず大型個体を手に取って……気が付いたことが。
「全然逃げないんだな、この子は……。」
その個体は野生にも関わらず、手のひらに乗せても堂々としていました。
現在飼育中の個体では絶対にありえないシチュエーションを目の当たりにして、ふと思ってしまったのです。
「飼うならこっちの方が良くないか?」
正直、現在飼っている個体は全然心を開いてくれなくて、こちらとしても辛いものがある。
それに成体の方が丈夫で飼育ハードルも低い。
最初からこんなに物怖じしない個体がいるなら、飼育する上で楽しいのはこちらの方……
「いや、それはないでしょ。」
そんなあっさりチェンジとかやってしまったら、あの日の決意は何だったんだということになってしまう。
今飼育中のヤモリは少しずつだけど着実に心を開き始めている。
ここまでの飼育をなかったことにはできないだろ。ならせめて……。
1頭、仲間を増やそう(迷走)。
1頭目の飼育すら上手くいってる感がないのに2頭目(またしても幼体)を連れ帰るという無計画さ。
ただ、ケージの広さ的に今の1頭だけでは寂しそうだった(?)し、単独の飼育では分からないこと(性格の個体差)を知れるとも思ったので……ここから2頭飼いに挑戦することにしました。
(成体と幼体を同時に飼うと共食いの恐れがあるというので体格の近い個体にしました)
ターニングポイント
2頭目もやはり序盤は1頭目同様に隠れてじっとしていました。
隠れる位置は両者で違っていて、2頭目はパネルヒーターの真上に当たる流木の下を好んでいました。
1頭目はというと、2頭での飼育を開始した翌日頃から、私の前でも隠れずに動くことが格段に増えました。
餌を食べている瞬間こそ見れないものの、糞や餌の減りもこの頃から確実に確認できるようになりました。
2頭目についても5日目あたりで同様な“慣れ”を確認できました。
こうして、ようやく最初の大きな壁を越えたのでした……。
2021.11.28
1頭目の飼育開始から2週間が過ぎた頃。
外の寒さも厳しくなってきて、2頭のヤモリはパネルヒーター付近の流木下でじっとしている時間がだんだん長くなります。
「もしかして……寒いのか?」
正直ケージ内の保温に関してそんなに効果を感じられていないパネルヒーター。
パネルヒーターより強力な、次なる保温器具を導入することで何か変わるかもしれない。
ちょうど資格試験で電車移動だったので、帰りに爬虫類ショップに寄り道して買ってきました。
ゼンスイ マイクロインフラレッド マイクロンセット 40W
保温球とよばれるもので、熱でケージ内をかなり温めてくれます。
クワガタ探す時とかにも用いられる赤色光はヤモリなど爬虫類にも見えないとされていて、夜間ケージ内を明るく照らしていても問題ないようです。
この保温球の導入によって、ヤモリたちの活性は一気に上がりました。
この飼育環境に最も足りなかったのは「保温」だった。そう確信できるほどに導入後はヤモリたちがケージ内をよく歩き回るようになりました。
こちらが大きな音をたてたりのぞき込んだりしなければ、2頭とも頻繁に普通に見える位置に出てきてくれるようになりました。
そうだ、これだよ……。
やっと求めていたニホンヤモリ飼育に近づきつつある気がする……!
(白い点が糞)
相変わらず捕食シーンは見れていませんが、ケージ内の糞の量や体形に変化が見られないことから2頭とも問題なく餌を摂っているみたいです。
ライトトラップで得た蛾類などを数頭投入すると消滅していたので、餌ゴキブリ脱走の線もなさそう。
(この頃にはほとんどの脱出口を特定して埋めてました)
2頭のその後
ケージ内の掃除は2~3週間に一度のペースで行っています。
設置物を洗い、糞を除去して床材を追加。ガラス面も拭きます。
ヤモリたちは一時退避。
左上が1頭目。右下の少し大きい方が2頭目です。
上:1頭目 下:2頭目
2頭目は少し大きく尾の先端が僅かに欠けていること、淡い体色になっていることが多いことが特徴です。
(ヤモリの飼育始めるまで彼らが体色を変えられることを知りませんでした……。)
写真に写ってますが、彼らはワラジムシには全く興味を示しませんでした。
入手しやすく、カルシウム分として優秀みたいなので食べてくれたらよかったんですが……。
(ケージ内に入れておいてもいつまでもワラジムシだけは生き残っていました。)
この頃(4週間経過)にはピンセットで近づけるエサにも興味を示すようになりました。
しかし未だに私の前でエサを食べるのは嫌なようでした……。

2頭目の方。偶然手の上に乗ってくれましたがこの日だけの気まぐれでした。
野生のニホンヤモリに”慣れ”はあっても“懐く”はないといわれます。
過度なスキンシップはヤモリたちのストレスになるだけなので避けなければなりませんが、何もしなければそれはそれで永遠に慣れてくれないのだとか。
隠れ家も多すぎると表に出ることに慣れずに引き篭もるのだという……。
求められるのは丁度いい匙加減。
ケージ内の隠れ場所は使用状況などの様子を見ながら少しずつ減らしていきました。
ようやく待ち望んだ瞬間に立ち会う。
飼育開始から1ヶ月以上が経過した12/14前後、遂にエサを捕食する現場を押さえました。
さすがにこれだけの期間飼育して異常がないのでちゃんと食ってると確信はしていたものの、実際に確認できたことで本当に安心しました。
さらに12/17にはピンセットからの給餌に初めて成功しました。
(写真は後日撮った)
以降は2頭ともピンセットからしっかりエサを食べてくれるようになりました。
やっと心を開いてくれた、そんな気がしました。
時間はかかったけど、ここまで待って本当によかったです。
それから2頭とも何度か脱皮を行い、着実に成長していきました。
ケージ内が乾燥していると脱皮不全を起こす事があるので、水飲み用として不要でも水を張った器は入れておいた方がいいそうです。
ちゃんと入れて置いた甲斐あって脱皮不全は今のところなしです。
今ではモリチャバネゴキブリの成虫を食べられるくらいには大きくなりました。
だいぶ慣れてきたとはいってもやはりデリケートな生き物だなと感じる場面は多々あります。
ある時はケージ掃除の際に別容器に移るのを嫌がったのでそのまま掃除したら、3日ほど拒食になりました。
彼らはストレスがかかっているときケージから脱走を試みるようで、ガラス面の隅に頭をこすりつける動作を繰り返すようになります。
他に、エサをピンセットから食べる時に上手く食べれなかったり、エサを近づけすぎたりしてもストレスになるようで.……上述の脱走行動と軽微な拒食がセットで1~2日続きます。
本来生餌しか食べないニホンヤモリですが、しばらくエサを食べていないとピンセットで死骸のエサを与えても食べてくれる事があります。
でも何回も続けて死骸を与えるとピンセットを信用しなくなり、ピンセットを無視して自分でエサを捕るようになります。
1頭目は警戒心が強いためかピンセットからエサを捕るのがかなり下手です。
自分で失敗してるくせに、ピンセットに対する信頼度すぐ下がる(すぐストレス拒食状態になる)ので割と気難しい子です(笑)
一方で2頭目はガンガンピンセットにかじりついてきます。
最近はエサが死んでても食いつく率が上がったような気がします。
エサ死なせずに管理しろよというのはごもっともです……。
腐植を食べるモリチャバネゴキブリは採集地のリターなどと一緒に入れておけば生きられますが、乾燥には弱いようなので保湿できる環境で保管しないと簡単に死亡してしまいます。
最初のころは大丈夫だったのですが、寒さが厳しくなってから死亡率が上がりました……。
(採集地の湿った土をちゃんと入れてあげると死亡率が下がる気がする)
ちなみにレオパゲルという人工飼料も個体により食べるそうで試したこともあるのですが、一回与えた時なんかすごいまずそうにしてたのでそれっきり与えていません。
そんな感じで……しばらくの飼育を経て彼らの性格や気持ちが少しづつ分かるようになったような気がしています。
それから……現在へ。
早いもので飼育開始から3ヶ月が経ちました。
エサ生物は未だにモリチャバネゴキブリを使っています。
(エサ取り時に一緒に蛾類の蛹ガチャが出るので持ち帰っていくつか保管している)
モリチャバネは近所でかなり多く採れる場所が見つかったので、1時間程度あれば2週間分くらいのエサは確保できます。
(ただし最近は行くたびに発見難易度が高くなってて、春まで持つか不安になってきた)
余裕があるうちはできるだけ自分で採ってきてあげたいけど、場合によってはレッドローチ等の導入を検討しなければなりません。
ニホンヤモリの飼育による大きな功績の一つとして、ゴキブリに対する苦手意識が相当克服できたことが挙げられます(笑)
私的にゴキブリはどちらかと言えば苦手な部類で、汚くないと分かっていても素手で触るの結構キツかったんですが、最近はかなり大丈夫になりました。
(大型で屋内性の奴はやっぱまだ、無理です…)
現在の飼育環境はこんな感じ。
つい最近になって観葉植物を(パキラとTillandsia ionantha)導入してみました。どちらも直射日光が不要で乾燥にも強いものなので、そんな簡単には枯れないと思っていますが……。(しばらく様子見てダメそうならやめる)
やはり生の植物があった方が生き生きした雰囲気になっていいですね。
何日かおいてみて、イオナンタは保温球にダイレクトに当たるとダメなことが分かりました。(光が当たった葉先部分が枯れた)
今は陰の部分に置いてます。
床材は爬虫類用のものに変えました。うっかりヤモリが誤食しても無害な素材だそう。
マルカン ジオソイル 1kg
ピートモス時代にケージ内で捕食されずに放置されていたワラジムシが繁殖してしまったので、その時丸ごと交換しました。
土中から無数のワラジムシベビーが現れたときは中々恐ろしいものでした。蛆虫と何ら変わりなかった。
(ワラジムシちょっと苦手になってしまった)
床材を変えたことで全体的にかなりスッキリした印象になった気がします。
初期から入れている朽木と樹皮は維持。2頭とも樹皮裏がお好きなようで大抵その裏にいますが、たまに保温球の下に温まりに来ています。
2頭の仲
1頭目の方が体格は小さいのですが臆病なようで攻撃的で、2頭目に対して威嚇(尾を立ててクネクネさせる)や攻撃を行う場面をみることがあります。
一方で2頭目は好奇心旺盛で、攻撃されても1頭目に積極的に接近していきます(2から1への威嚇はなく、敵意はないみたい)。
2頭の仲は悪い(というか1が拒絶的)なのかなと思っていたのですが、最近上の写真のように並んでいたりすることも少しずつ増えてきました。
同じ樹皮裏にいることも多いですし……これもまた一つの“慣れ”なのでしょうか……。
ニホンヤモリの多頭飼育はペア個体でない限りはストレスにしかならないのでやめるべきと仰る方もいました。
2頭の性別はまだ確信をもって判断できる段階になく(幼体での性判別は難しい)、このまま2頭で飼い続けていてよいのか悩ましい状態にあります。
普通に考えればもう一個ケージを準備して隣で同じように飼う、で解決することなのですが……私はそれをやるくらいなら片方を元いた場所に帰すべきかなと思っています。
(今の私では、1ケースを超えるとしっかり面倒をみられる自信がない。)
逃がしに行くにしても、もう少し気温が上がって春になってからにしようとは思っています。
ニホンヤモリとのこれから
生き物の面倒を3ヶ月ちゃんとみられた事なんて今まであっただろうか。
現時点での率直な感想を述べると、彼らは私の日常生活に多大な癒しを与えてくれています。
お世話についても今のところ面倒だとか負担だとか感じる部分はなく、上手くやっていけていると思っています。
(されどたかだか3ヶ月、今後状況が変わる可能性も十分ある……。)
どうして今までこういう飼育が出来なかったのだろう。
ここまでの飼育記録を書いた後、何日か考えていました。
答えは冒頭でも軽く述べていた……以前までの私には愛情がありませんでした。
そう思いこんでるだけだろって、自分でもそりゃ思いましたけど……最初から無かったんだなあと思った方がスッキリする事があります。
幼いころの自分は生き物をむやみに殺すことに抵抗がなかった。
成長してから、「可哀想」に思い悩むことがあったのは自分の中の倫理観に起因するもので、心からそう思っているわけではない。
可哀想だと思うから苦しいのではなく、可哀想と言われるから苦しいのではないか____
でなければ、なぜ未だに昆虫採集を続けているのだ?
それを行うに相応しいのが”自分でない”ことを理解しながら、なぜ殺し続けるのか?
愛の無さは、昆虫採集を続ける上では役立つ素質なのかもしれませんね(笑、えない)
さらにそこの折り合いを上手くつけられた人間が、ヒトとも上手に付き合っていけるんですね……。
話を戻して、
自分の中に、持て余す新しい感情を覚え始めたのは本当に最近(2021年以降)のことで、それが「愛情」と呼べるものだったのかもしれません。
まだまだ未熟なもので、供給力の限界値は虫かご一個分くらいしかありません(体感)。
それよりも大きな規模になると簡単に枯れてしまうけど、注ぐ対象が無いと自分の手には余るというか、なんかそういうものだと感覚的に分かるのです。
今の私のニホンヤモリ飼育は、自分が持てあました小さな感情を昇華させるために規模的にも丁度良くて、結果的に精神にいい効果をもたらしてくれているのかもしれません。
むしろ自分が育てられているような気さえする。もう少し愛情の限界値(と自分の部屋のスペース)が広がれば、2つ目のケージなり別の生き物飼育なりに手を伸ばせるくらいの余裕が生まれるかもしれません。
もちろん生態観察とか羽化標本とか明確な目的があればさらなる飼育はできます(これらが愛のない飼育とか言ってるみたいでアレだけど)。
ただ今回のニホンヤモリみたく、”大事にする飼育”はやっぱり少数でやっていきたいかなと思います。
器用じゃないから、数が増えると平等な飼育は出来ないような気がするんです。
自分が崩れないレベルでの愛情を注いでいても、飼育者としては不十分なものかもしれません。
常に生き物にとっての最善を尽くせるわけではないでしょう。
そもそも何が生き物にとっての最善なのかさえ分からないし、「可哀想」だとかそういうのは人間の価値観だけで決めつけてはならないと思います。
けど、飼育する以上はせめて彼らと私が双方苦しまずに一緒に居られるような状態を維持していきたいと思っています。
どうしてもそれが叶わなくなりそうなときは、彼らを元いた場所に帰しにいきます。
変な責任感に駆られて地獄のような飼育環境になるくらいなら、そうした方がいいと思うから……
(後日談)
2022.05.28、196日目をもってこの飼育は終わりを迎えました。
事の顛末や感じたことをちゃんと記しておきたいのですが、どうあがいてもネガティブ全振り文章になってしまうので書けずにいます。
もしかしたらずっと書けないかも知れません。

コメント
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すてきな記事でした。ヤモちゃん、幸せだったと思いますよ。
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コメント返信遅くなり、すみませんでした。
最後まで面倒を見ることができなくなり、挫折していまいましたが……生き物への理解を深めて飼育を真剣にやることの難しさを、身をもって学べるいい機会だったと思います。
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ゴキに対する免疫力もUPできてヤモさんに感謝ですね!
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最後は元の場所に帰したのかネガティブなら土に返したのか気になります…
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最後は元いた場所に戻しました(生体)
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東京都多摩地域に住んでいます。いま10月半ばの夜、室内にヤモリがいました、幼体です。床に動かないので危うく踏みそうでした。気温が下がっているせいか、動きが少し鈍いみたいでした。タオルで包んでタオルごと体温で温めてみました。可愛いので(こんな子飼えるのかな)とネット検索して、この飼育エピソードを拝見しました。しっかりと小さな命に向き合った記録を興味深く読ませていただきました。
私のところのヤモリは動き始めたので、手に乗せて窓を開けたら、自分から勢いよく庭に飛び出していきました。微かなでも確かなキックの感触が手に残りました。
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この時期は冬越しのために建物の周りをうろつくので出会いやすいのかもしれないですね。
野外ではたくましく生きているヤモリでも、室内で上手に飼うのは難しいのだなと感じた次第です。