冬の間、昆虫はどこにいる?
木々の葉が落ち、草花もほとんどが枯れてしまう冬。
昆虫たちのエサが少なくなるこの季節は、彼らの姿をほとんど見かけなくなりますよね。

カマキリは卵で冬を越し、春に幼虫が生まれてくる
しかし、昆虫たちはいろいろな姿で寒い冬を乗り越えています。
その中には成虫で冬越しをする昆虫ももちろんいます。
彼らのいる場所を知り、しっかり探してみれば……きっとその姿を見ることができるはずです。
本記事では、主に成虫で冬を越す昆虫をまとめて紹介します。
冬の昆虫採集や昆虫観察の参考になれば幸いです。
カメムシは冬になると樹皮などの隙間に潜る
クワガタは枯れ木の中で冬眠する
オサムシは土中や朽木の中で眠る
冷たい川の中にいるトンボのヤゴ
チョウやトンボの一部は成虫でも冬を越す
冬でも活動しているキリガの仲間
フユシャクの成虫は真冬に現れる
雪の上で活動するセッケイカワゲラ
冬の昆虫観察に出かけよう
カメムシは冬になると樹皮などの隙間に潜る
秋が深まってくると、家のベランダや玄関周りにカメムシの姿を見ることが多くなりませんか?
カメムシの仲間は成虫で冬越しをする種が多くいて、彼らは越冬場所として建物や木の皮の隙間を好みます。
秋に家の周りでカメムシを見る機会が多くなるのは、彼らが人の住む家の隙間を越冬場所に選びやすいからです。

樹皮の下に潜んでいたチャバネアオカメムシとクサギカメムシ
建物の少ない山林ではカメムシはめくれた木の皮の裏などに潜って冬を越します。
木の皮の裏は雨風がしのげるうえに温度も安定していて、昆虫たちにとって絶好の越冬スポットです。
カメムシのほかに、テントウムシやタマムシの仲間が見つかることもあります。

ケヤキの樹皮下に集まっていたナミテントウ。もっと大きな集団になることもある。
カメムシと同じく、テントウムシも冬は建物の隙間や樹皮の下に集まって冬越しをします。
大きな集団になっている写真を見たことがあるかもしれませんが、ああいうのは最近だとなかなか見られない光景になりました。

樹皮下で越冬するヒシモンナガタマムシ。地味ですがこれでもタマムシの仲間です。
タマムシといえば夏の虫ですが、中には本種のように成虫で冬を越しているものもいます。
ほかにもハムシの仲間やゾウムシの仲間など、樹皮下ではさまざまなコウチュウ類の姿を見ることができます。
クワガタは枯れ木の中で冬眠する
夏のスター的な昆虫であるクワガタですが、実は冬でも成虫を観察する方法があります。
その方法は枯れ木を割ってみること__材割りです。

1月に朽ち木を割ったら中から出てきたコクワガタのオス。たいてい幼虫も一緒に出てきます。
クワガタの成虫は数年間生き続けるため、冬でも朽ち木の中などで見つけることができます。
枯れ木の新しい部分を割ると、前の夏の終わりに成虫になったクワガタが出てくることが多いです。
朽ち木の中もまた、多くの昆虫に好まれる越冬場所です。
たとえば、スズメバチの女王蜂は冬越しの場所として朽ち木をよく利用します。

朽ち木の中にいたコガタスズメバチの女王蜂。
スズメバチの集団は秋の終わりに誕生する新しい女王蜂を残して、全てがその生涯を終えます。
残された女王蜂だけが、こうして朽ち木などの中で冬越しをして翌春を待つのです。
意外に思うかもしれませんが、コオロギの仲間が朽ち木から出てくることもあります。

朽ち木から出てきたコオロギの仲間。厳密にはヒバリモドキ科なんだけど……
コオロギの仲間は卵で冬越しをするものが多いですが、中には幼虫の状態で越冬するものもいます。
冬越しスタイルは昆虫の種類によってもさまざまで、一概に「○○ムシは全て卵で越冬する」とか言えないのです。
オサムシは土中や朽木の中で眠る
オサムシは地上を徘徊するきれいな甲虫の仲間です。
オサムシの仲間はほとんどが成虫越冬で、土中や朽ち木の中から見つかります。
冬にオサムシの仲間を狙って地面や朽ち木を掘る採集方法は、虫好きの間では「オサ堀り」なんて呼ばれます。
オサ堀りは冬の昆虫採集としては定番の手法です。

土中で越冬していたオオオサムシ。光沢が美しいオサムシの仲間は人気が高い。
オサ堀りを成功させるには少し慣れが必要です。
オサムシが潜る崖などの条件をある程度勉強する必要があるためです。
オサ堀りを行う上で参考にできる記事として、以下を挙げておきます。
(もう少しちゃんとした解説をいずれ書く予定)

冷たい川の中にいるトンボのヤゴ
多くの陸上の昆虫は雨風をしのげる場所で冬越しをしますが、水生昆虫ではどうだと思いますか?
水が凍らない川の中では、トンボのヤゴやカワゲラ、カゲロウなどの幼虫を始めとする多くの水生昆虫が冬でも変わりなく過ごしています。

ムカシトンボのヤゴ。成虫になるまでの7年ほどを渓流の水中で過ごす。
冬の川の中には春に向けて大きく育った水生昆虫の幼虫が多く、観察にも適しています。
チョウやトンボの一部は成虫でも冬を越す
ミドリシジミなどは卵で越冬し、オオムラサキなどは幼虫で越冬します。トンボはヤゴ(幼虫)の状態で冬を越すものが多いですね。
しかし彼らの越冬スタイルも種によって異なり、中には成虫のまま冬越しをするものもいます。

1月に見つけたキタキチョウ。暖かい日には少し飛ぶこともある。
キタキチョウは成虫で冬越しをするチョウの一つで、冬の間は草木の陰に身を潜めています。
この他にもルリタテハやキタテハ、ムラサキシジミなどが成虫で越冬しますが、みんな上手に隠れていて冬の間にその姿を見つけるのはなかなか難しいです。
トンボの仲間にも成虫で冬越しをする種がいます。
沖縄など一年中トンボが見られる地域を除けば、国内ではイトトンボの仲間の3種だけが成虫で冬を越します。

倒木の樹皮の下に隠れていたオツネントンボ
オツネントンボ、ホソミオツネントンボ、ホソミイトトンボの3種は成虫で冬越しを行い、木の枝につかまったり樹皮の下に潜ったりして冬をやり過ごします。
冬の間は地味な色をしている上に小さいため、目立つ枝に止まっていても見つけづらいです。
さらに、バッタの仲間にも成虫で冬越しをするものがいます。
ツチイナゴやクビキリギスが有名なところです。

12月末。民家の壁に止まっていたツチイナゴ。
ツチイナゴやクビキリギスは枯れ草の根元などに隠れて冬越しをします。
暖かい日は表に出てくることもあり、早春の草むらではよく見つかります。
冬でも活動しているキリガの仲間
ここまで、冬の間は活動を止めて休んでいる昆虫を紹介してきました。
しかし、昆虫の中には寒い冬でも動き続けるものもいます。キリガ(冬夜蛾)の仲間はその代表格ともいえるでしょう。

ミツボシキリガ。冬の夜に活動する蛾の仲間です。
キリガの仲間は成虫で冬越しを行うだけでなく、夜間に飛び回り樹液やツバキなどの花を訪れます。
樹液に似せた甘い液体を作り、夕方に林の周りに撒いておくことでこの仲間を呼び寄せることができます。これを利用した採集方法が糖蜜採集です。
糖蜜採集のやり方もまだ解説が書けていませんが、以下の記事などが参考にできます。

糖蜜採集が当たった日
本ブログで糖蜜採集に関する話は全然してきませんでしたが……2019年の晩秋頃に初めて糖蜜採集をやってからというもの、その楽しさと奥の深さにすっかりハマってしまいました…
フユシャクの成虫は真冬に現れる
先述のキリガの仲間は、晩秋に羽化して成虫で春まで生きるものが多いです。
しかし、同じ蛾の仲間であるフユシャクの仲間は真冬である12月や1月に出現し、冬の間に姿を消します。
冬を越すのではなく、あえて冬に成虫になる昆虫ということです。

交尾するウスバフユシャク。左がメスで右がオスです。
フユシャクの仲間は天敵の少ない冬に出現することで繁殖の成功率を高めていると考えられています。
メスには翅がない代わりに腹部が大きく、たくさん産卵して子孫を残すことに特化した姿をしています。
雪の上で活動するセッケイカワゲラ
雪が積もった山の中ではさすがに虫もいないだろう、と思っていませんか。
雪の上をよく見ていると見つかる昆虫もいます。代表的なものがセッケイカワゲラの仲間です。

セッケイカワゲラの仲間。翅を持たず、ひたすら雪の上を歩き続ける。
セッケイカワゲラの仲間は冬に羽化し、雪に含まれる微生物などを食べながら産卵場所である川の上流に向かって歩いていきます。
このため水の流れがある場所の近くでは特に見つかりやすいです。スキーに出かけた時などに、足元を気にしていると見つかるかもしれません。

クモガタガガンボの仲間もまた、雪の上を歩いている。
雪の上で見つかる昆虫として、もう一つ例を挙げておきます。クモガタガガンボの仲間です。
クモガタガガンボの仲間も翅を持たず、名前の通りクモのような姿をしています。
雪山での散策は危険を伴うため注意が必要ですが、運がよければ上述したような雪の上を歩くたくましい昆虫の姿を見ることができるでしょう。
冬の昆虫観察に出かけよう
ということで今回は冬に出会える昆虫たちをご紹介しました。
今回紹介したもののほかにも、冬でも観察できる昆虫は多くいます。
夏の昆虫探しとは一味違って、「探す」大変さがありますが、寒い冬に立派な昆虫を見つけた時にはうれしくなります。

中でもフユシャクやセッケイカワゲラの仲間などの観察は基本的に冬にしかできません。
季節限定の生き物の観察を楽しんでいれば、春はあっという間にやってきます!
なお……昆虫以外の生き物にも目を向ける余裕があれば、真冬でも1日で100種類以上の生き物と出会うことができます(以下の記事を参照)。

冬に一日かけて本気で生き物観察したら何種類に出会えるのか!?
「本気」の数字が見たいYouTuberの鷹切美鶴さんを知っていますか?彼は直翅類などを中心とした昆虫類や両生・爬虫類の採集、観察動画をよく上げている…
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