北海道~四国でみられるチビタマムシ図鑑(18種類のTrachys属を検索)

タマムシ科

日本国内からはこれまでに20種のチビタマムシ属(Trachys)が見つかっています。
私はこれまでにタマムシ採集を頑張って、このうち18種までを集めることができました。

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ヤノナミガタチビタマムシ。冬季の樹皮めくりではおなじみ。

北海道・本州・四国に分布する種としては、UMAのクサビチビタマムシを除いた全種が手元にそろっています。
せっかくなので、集めた標本の写真を使って各種を比較してみました。

※本記事は日本産タマムシ大図鑑(大桃・福富,2013)タマムシハンドブック(福富ほか,2022)を参考に作成しています。

チビタマムシ属(Trachys)と スジチビタマムシ属(Habroloma)

日本のチビタマムシには、

  • チビタマムシ属(Trachys
  • スジチビタマムシ属(Habroloma

の2属があります。

本記事では、チビタマムシ属の種をメインに紹介します。
スジチビタマムシ属との違いをまず確認しましょう。

チビタマムシ属とスジチビタマムシ属の違い
前胸背の形と上翅の縦隆線がポイント

スジチビタマムシ属(Habroloma)には上翅に目立つスジ(縦隆線)が出ます
また、UMAのスジチビタマムシ以外はParahabroloma亜属に属し、前胸背が広く平たい形になることもポイントです。

スジチビタマムシ属は記事の後半で北海道~四国に分布する種をおまけ程度に紹介しています。
北海道~四国に分布するスジチビタマムシ属の5種

北海道~四国に分布するチビタマムシ属の18種

ここから、北海道~四国に分布するチビタマムシ属(Trachys)の18種を紹介します。

まずは一発で分かるダンダラチビタマムシT. variolarisとサシゲチビタマムシT. robustaを紹介し、それ以外は体色でざっくり分けたうえで似た種を並べ、比較しています。

すぐわかるダンダラとサシゲ

まずは、模様を見るだけですぐ同定できるダンダラチビタマムシとサシゲチビタマムシを確認しましょう。

ダンダラチビタマムシとサシゲチビタマムシ
分かりやすい2種

どちらも大型でがっしりした印象のチビタマムシで、複数の色の毛からなる特徴的な模様を持っています。
ダンダラは黒っぽく、サシゲでは褐色っぽい色です。この2種を見分けるのは難しくないと思います。

ダンダラはクヌギやコナラなどブナ科につき、サシゲはスダジイにつきます。
九州以南にはサシゲによく似たオオダンダラチビタマムシが出現することに注意です。

上の2種に当てはまらない場合、体色を見て以下のどれに近いかを見極めてください。

本記事では褐色系、黒色系、紫色系の3パターンに分類しました。
個体変異やスレ度合いにより難しかったり、2系統にまたがる場合もありますが……これでおおよそあたりをつけてみてください。

褐色のチビタマムシ
黒色のチビタマムシ
紫色のチビタマムシ

褐色のチビタマムシ

褐色系は最もスタンダードなチビタマムシの色彩といえます。
まず、全てのチビタマムシの中で最も遭遇機会の多いナミガタ2種の可能性を疑う所から始めましょう。

ヤノナミガタチビタマムシとナミガタチビタマムシ
ヤノナミガタチビタマムシとナミガタチビタマムシ

ヤノナミガタチビタマムシT. yanoiとナミガタチビタマムシT. griseofasciataは、一般的にこのような姿をしています。
擦れて模様がはげたり、不鮮明になる個体も多く出るため注意が必要ですが、慣れれば体形からこの2択に絞ることができます

模様が不鮮明なナミガタチビタマムシ
模様がわかりにくいナミガタチビタマムシの例

不鮮明でも上翅の後半に出る二波の形を覚えましょう。

2種はつく植物が異なっていてヤノナミガタはケヤキに、ナミガタはムクノキ・エノキにつきます。
ただしよく混生するため、正確に見分けるには頭部を確認する必要があります。

ヤノナミガタチビタマムシとナミガタチビタマムシの違い
ヤノナミガタチビタマムシとナミガタチビタマムシの頭楯比較

触角の間にある板状の構造、「頭楯」に2種の違いがあります。

ヤノナミガタでは図で示した幅は長さの約1.5倍になるのに対し、ナミガタでは約2倍です。
つまり、ナミガタの方が頭楯は横長の形であるということです。

ここについては私の写真が悪く分かりづらいと思います(すみません)。
微妙な個体も多く、慣れも必要です。

KOH16さんの「ナミガタ&ヤノナミガタチビタマムシの同定」で鮮明な頭部写真が紹介されていますので、こちらの方がわかりやすいと思います。

ヤノナミガタ、ナミガタのどちらでもない場合、ほかに疑われる種は5種います。
まずはマメ系2種。マメ系は黄色い毛が目立つ小さめのチビタマムシです。

マメチビタマムシとヌスビトハギチビタマムシの違い
マメチビタマムシとヌスビトハギチビタマムシ

マメチビタマムシT. reitteri とヌスビトハギチビタマムシT. tokyoensisは互いによく似ていますが、小楯板の大きさが違います

腹面の前胸腹板突起にも違いがあり、マメでは両側ほぼ平行ですがヌスビトハギでは後方に向かって広がる形をしています。

マメチビタマムシとヌスビトハギチビタマムシの前胸腹板突起
厳密には前胸腹板突起の縦隆線の形が異なる

マメチビタマムシはヤブマメやクズなどマメ科に、ヌスビトハギチビタマムシはヌスビトハギにつきます。
マメチビタマムシの方が各地でよくみられる印象です。

この2種でもなければあと3種の候補があります。

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褐色系の3種

アカガネチビタマムシT. tsushimaeは暗色の毛が多く、あまり模様が目立ちません。赤銅色の光沢が特徴です。

マルガタチビタマムシT. ineditaは黄色い毛が特に多いチビタマムシで、アカガネより複眼が大きく見えます。

コウゾチビタマムシT. broussonetiaeは褐色の毛が目立ちます。前胸側縁の狭まりが強い種で、前2種よりもクサビ形の印象です。

それぞれよく似ていますがつく植物はやはり異なります。
アカガネはウツギ類につくため、平地よりも山地に多いです。
マルガタはムクノキ、コウゾはコウゾやカジノキにつくため低地でもみられます。

また、アカガネチビタマムシはウメチビタマムシT. inconspicuaともやや似ています。
どちらも銅色の光沢があるチビタマムシです。

ウメチビタマムシとアカガネチビタマムシ
ウメチビタマムシとアカガネチビタマムシ

ウメチビタマムシは表面の点刻が粗い点で見分けることが出来そうです。
本種はウメにつくため、アカガネと一緒に採れることは多くありません。

黒色のチビタマムシ

ここからは黒色系のチビタマムシを紹介します。

まずは代表的な黒色系チビタマであるクズノチビタマムシT. auricollisと似た種を見てみましょう。

黒色系の大型3種

クズノチビタマムシとズミチビタマムシT. toringoiはともにクサビ形の体形でよく似ています。
この2種は白毛による波状帯の振れ幅や、頭胸部の毛の色で見分けることができます。

ソーンダーズチビタマムシT. saundersiは2種よりも細長い体形で、頭胸部の毛の色は褐色です。

クズにつくクズノチビタマムシは低地を中心に広くみられますが、ウツギにつくソーンダーズはやや山地性です。
ズミチビタマムシはクサボケやズミ、ナナカマドなどにつき、おもに山地でみられる珍しい種です。

未採集のため紹介できませんが、ここで挙げた3種に似るクサビチビタマムシT. cuneiferaという種が存在します。福島県と長野県で採集されているだけの伝説上の生き物です。

より小型の黒色系チビタマとして、さらに3種が挙げられます。

ヤナギチビタマムシとウメチビタマムシとクロチビタマムシ
黒色系の小型3種

この3種については模様の違いなどは乏しく、説明に困るところです。
クロチビタマムシT. pseudoscrobiculataは粗い点刻で覆われているため分かりやすいですが、残り2種は色合いと採れた植物がキーとなります。

名前の通り、ヤナギチビタマムシT. minuta salicisはヤナギに、ウメチビタマムシはウメにつきます。
クロチビタマムシはスミレにつき、地をはうように真剣に探さないとまず出会えません。

紫色のチビタマムシ

紫色系のチビタマムシは少数派です。
ここにたどりついたら最初に、ヤノナミガタチビタマムシの可能性を疑ってください。

紫色のヤノナミガタチビタマムシ
紫色のヤノナミガタチビタマムシ

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青っぽいのもいる

発生条件は不明ですが、山地で春に採れるヤノナミガタチビタマムシにはこういう紫色や青色の個体が混じることがけっこうあります。
後述のドウイロチビと雰囲気が似ますが、やはり体形が異なるので見分けはつきます。

変色ヤノナミガタでなければ……おめでとうございます! 残りはどれも簡単には得られない”良い”チビタマムシです。
元から紫色の地色を持つ、美しいチビタマムシの3種は以下のように見分けます。

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紫色系のチビタマムシ3種

シナノキチビタマムシT. aurifluus日本最大のチビタマムシで、大きい個体は5mmに達します
ほかの2種とは波状帯の振れ幅が大きいことで見分けられます。
シナノキやオオバボダイジュにつく珍しい種です。

キタドウイロチビタマムシT. pecirkaiはドウイロチビタマムシT. cupricolorに似ますが、より濃い紫色であることと、上翅の側縁が強く鋸歯状(ギザギザ)になる点で見分けられます。

キタドウイロはハルニレにつき、ドウイロはケヤキにつきます。どちらも山地性のチビタマムシです。

北海道~四国に分布するスジチビタマムシ属の5種

北海道~四国には8種のスジチビタマムシ属(Habrolomaが分布します。
私が持っているのは5種で、スジチビタマムシとヒメヒラタチビタマムシ、ツマキヒラタチビタマムシは未見です。

参考までに持っている5種を紹介します。なお彼らの同定難易度はチビタマムシ属(Trachys)よりも高いです。

そんなスジチビタマムシ属の中にも、模様が特徴的で一発で分かる種がいます。
ハイイロヒラタチビタマムシと、ルイスヒラタチビタマムシです。
(ツマキヒラタチビタマムシも分かりやすい)

ハイイロヒラタチビタマムシとルイスヒラタチビタマムシ
良心的Habroloma属の2種

ハイイロヒラタチビタマムシH. (P.) griseonigrumはアラカシやアカガシなどのブナ科につき、フォルクスワーゲンみたいな模様で容易に他種と見分けられます。

ルイスヒラタチビタマムシH. (P.) lewisiiはノイバラにつく種で、特に西日本に多くみられます。青色に輝き、日本産チビタマムシの中でも随一の美しさを持つ種です。

これ以外の種はいずれも非常によく似ており、採集せずに同定するのはやめておいた方がいいかもしれません。

ナガヒラタチビタマムシとヒラタチビタマムシとシロウズヒラタチビタマムシ
難解なヒラタチビタマムシの3種

もっともよくみられるのはヒラタチビタマムシH. (P.) subbicorneです。ナワシロイチゴやナガバモミジイチゴなどのキイチゴ類によくみられます。

ナガヒラタチビタマムシH. (P.) yuasaiは少し長めの印象がある種で、ノグルミにつくとされますが私はノグルミがないところでも採集しています。
もしかしたらオニグルミやサワグルミにもつくのかもしれません。

シロウズヒラタチビタマムシH. (P.) marginicolleは全体的に丸みが強い種で、ホウロクイチゴにつきます。
南方系の種で、本州では三重県と山口県で見つかっているだけです。

他の2種では前胸背にある1対の孔(くぼみ)が目立ちますが、シロウズではこれがないか、ごく小さいです。

ここで紹介しないヒメヒラタチビタマムシはヒラタチビによく似ており、キイチゴ類につきます。
ヒメヒラタチビは前胸背板後縁の幅が上翅基部より広いことで区別できるとされますが、かなり微妙な違いで悩ましいです。
(ヒラタチビの個体変異に過ぎないのではと思ってしまうほど)

まとめ:ついていた植物を覚えておこう

ということで、日本産チビタマムシ属の18種とスジチビタマムシ属の5種を比較しながら紹介しました。
チビタマムシの同定のためにこの記事にたどり着いた方、この中に合致するものがちゃんとあったでしょうか。

記事中ではそれぞれの種が何の植物につくかも書くようにしました。
ついていた植物の情報が、彼らを同定する上で最も頼りになるヒントだからです。
(ときおりミスリードにもなるけど……)

何の葉っぱについていたか、採集した場所にどんな植物が生えていたか。
これらも現場でしっかり記録して持ち帰れば、同定の助けになってくれるはずです。

また、タマムシハンドブック(福富ほか,2022)にはクサビとキタドウイロ、クロを除く17種のチビタマムシ属が掲載されており、鮮明な標本写真とともに解説されています。
(本記事では載せられなかった腹面の写真も載っています)

絶版の日本産タマムシ大図鑑よりはるかに手に取りやすい文献なので、ぜひハンドブックも駆使してチビタマムシの同定に挑戦してみてください。

なお、上級者向けの同定方法ですが♂交尾器を見るという方法もあります。
チビタマムシ属の交尾器は「石黒・西田,2018. 日本産チビタマムシ類の♂交尾器の形態. 月刊むし (566): 28-37.」で紹介されており、この文献を使えば♂は確実に同定できます。

また、チビタマムシの同定には安物でも顕微鏡があった方がいいです。私は以下のものを使っていました。

チビタマムシの仲間はちょうど今くらいの時期(晩夏~秋)に新成虫が出現します
ということで……これからがチビタマシーズンです!

ヤナギチビタマムシサシゲチビタマムシ
ヌスビトハギチビタマムシアカガネチビタマムシ
いろいろなチビタマムシ

この秋はチビタマムシを探して、じっくり調べてみませんか?

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