ゴミムシの中のゴミムシ
ゴミムシの仲間にはまさしく「ゴミムシ」という和名の種が存在します。

ゴミムシ
Anisodactylus (Pseudanisodactylus) signatus (Panzer, 1796)
見た目はゴモクムシの仲間とそっくりですが、本種はゴミムシ族という別族に所属しています。
中でもゴミムシが属するAnisodactylus属は日本に4種が知られ、どの種も比較的よく出会えます。
本記事では4種+旧Anisodactylus属の5種を見分けるポイントを紹介していきます。
ゴミムシ族とゴモクムシ族の違いは、ゴモクムシの見分け方記事をご参照ください。
(主に本州でみられるゴモクムシ26種の同定【Harpalus属】)
ゴミムシ族には複数の属が含まれますが、ここでは本州でふつうに見られるAnisodactylus属のみを紹介します。
その他の属は原色日本甲虫図鑑II(上野ほか,1985)をご参照ください。ほとんど南方系で、本州にはホンシュウフトゴモクムシしかいません。
旧Anisodactylus属
まずは脚と触角の色を見ます。
黄褐色か黒色か
脚や触角が黄褐色の場合、タナカツヤハネゴミムシまたはツヤハネゴミムシです。
タナカツヤハネゴミムシ Harpalomimetes fukiensis (Jedlička, 1957)
タナカツヤハネゴミムシは旧Anisodactylus属のゴミムシで、体長は11-12 mm。本州以南に分布します。
栃木県産
見るからにゴモクムシ(Harpalus)という感じの見た目ですが、ゴミムシ族の仲間です。
現在は属が変わっていますが、かつては狭義のゴミムシと同じAnisodactylus属でした。
西日本を中心に分布する種で、関東辺りでは珍しいようです。環境省のレッドリストで情報不足(DD)となっています。
上翅に虹色光沢があり、前胸背後角は丸い種。基本的に採れたらラッキーです。
なお、ツヤハネゴミムシは四国または奄美大島に分布する種で、頭部に不明瞭な赤斑があります。
Anisodactylus属の4種
脚や触角が黒色の場合、次は頭頂を確認します。
ヒメゴミムシとそれ以外の識別
頭頂に赤斑がなければヒメゴミムシ、あればその他で先に進みます。
ヒメゴミムシ基亜種 Anisodactylus (Anisodactylus) tricuspidatus tricuspidatus Morawitz, 1863
体長は10-13.5 mm。基亜種は北海道から九州にかけて分布し、奄美大島に奄美亜種が分布します。
長野県産
先述のタナカツヤハネゴミムシとともに頭頂に赤斑がない種で、全体的に黒色です。
前胸背の前縁は他種よりも明瞭に湾入することが特徴です。前胸背後角は角ばります。
何気に埼玉県では出会ったことがないゴミムシで、私は長野県で得ているのみです。
勝手に山の方の虫だと思っていますが、実際どうなのでしょう……?
残りは頭頂に赤斑がある3種です。
まずは前胸背後角の形を見て狭義のゴミムシを見分けましょう。
ゴミムシとそれ以外の違い(前胸背後角)
狭義のゴミムシでは前胸背後角が丸いですが、(オオ)ホシボシゴミムシでは角ばります。
ゴミムシ Anisodactylus (Pseudanisodactylus) signatus (Panzer, 1796)
体長は11-13.5 mm。北海道から九州にかけて分布します。
埼玉県産
全体的に黒色ですが、上翅は弱い緑銅色あるいは褐色を帯びることがあります。
畑地や河川敷などでよく出会う、その名の通り代表的なゴミムシです。
頭頂の赤斑を見落とさなければゴモクムシと間違うことはありません。
残りはホシボシゴミムシとオオホシボシゴミムシです。
ここは私も昔から苦手なところでした。前胸背後角を見ましょう。

ホシボシゴミムシとオオホシボシゴミムシの違い(前胸背後角)
ご覧のように後角の尖り方が異なりますが、差はわずかなのでかなり拡大して見ないと悩むかもしれません。
コンデジTG-4で拡大するだけだとキツかった思い出があります……
ホシボシゴミムシ Anisodactylus (Pseudanisodactylus) punctatipennis Morawitz, 1862
体長は11-12 mm。北海道から九州にかけて分布します。
埼玉県産
ごくふつうに見られるゴミムシで、前胸背は基方に強く狭まるのが特徴です。
この前胸背の形と頭部の赤斑を覚えていれば、野外でも「ホシボシかオオホシボシかのどっちか」までは絞れます。
前胸背後角は野外で確認するのが難しいため、基本的にどっちか分からない状態で採集することになります。
オオホシボシゴミムシ Anisodactylus (Pseudanisodactylus) sadoensis Schauberger, 1932
体長は10-12 mm。北海道から九州にかけて分布します。
埼玉県産
ホシボシゴミムシと非常に似たゴミムシです。体長も生息環境も重複します。
ただホシボシよりちょっと少ないかなという印象で、私が持っている標本の数はホシボシよりも少ないです。
上翅基縁と肩の会合角や交尾器にも違いが出るようなのですが、違いが微妙そうだったので取り上げません。
前胸背後角の違いを覚えましょう。
お馴染みのメンツ
ということで、簡単ながらゴミムシ属(Anisodactylus)の紹介でした。
ゴモクムシ属(Harpalus)とゴミムシ属はいっしょに採れることも多いので、たくさん採って見分け方を体で覚えていきましょう。

タナカツヤハネゴミムシ
ゴミムシ属は種類が少ないので、個別に覚えていけばわざわざ毎回ゴモクムシ族との識別を行う必要もなくなります。
魅力に乏しいゴミムシたちですが、身近な存在ですので気にかけてやってください……。
参考
・土生, 1973. Fauna Japonica Carabidae:Harpalini(日本動物誌 昆虫網 オサムシ科ゴモクムシ族)
・上野ほか, 1985. 原色日本甲虫図鑑(II)
・東京大学, 2014. 関東を中心とした地表徘徊性甲虫
https://hyoka.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/ground_beetle_zukan/search_table/point1/
(2026年1月3日確認)
・日本列島の甲虫全種目録 (2025年) ゴモクムシ亜科
https://japanesebeetles.jimdofree.com/%E7%9B%AE%E9%8C%B2/6-%E3%82%AA%E3%82%B5%E3%83%A0%E3%82%B7%E7%A7%91/6-13-%E3%82%B4%E3%83%A2%E3%82%AF%E3%83%A0%E3%82%B7%E4%BA%9C%E7%A7%91/
(2026年1月3日確認)

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