晩秋の昆虫採集を楽しむ

この夏も結局あまり採集には出られませんでした。
7月くらいまでは大丈夫だった体調は再び下降に向かい始めたため、病院を変えて通院を再開しています。
(もともと勝手に通院をやめたのが悪いのですが……)
生物分類技能検定の試験も無事(?)終わって、体調も安定してきたと思ったらもう10月です。
この時期になっても楽しめるジャンルは限られてきますが、家にこもってばかりで退屈だったため気晴らしに採集に行くことにしました。


2025.10.12
まずは休日の日課である朝のお散歩へ。
チョウのモニタリングも並行して行いつつ、見つけた虫をたまに拾っています。

ウチダハラナガツチバチ
Megacampsomeris uchidai (Betrem,1940)
よく虫が来ているニラの花に今日はウチダハラナガツチバチの♀が来ていました。
これは採集して同定したので分かっていますが、外見のみで本種とキンケハラナガツチバチを識別することはできません
キタテハ
キタテハ
Polygonia c-aureum c-aureum (Linnaeus, 1758)
秋が深まるにつれてキタテハの個体数が多くなってきました。最近はヤマトシジミに次いで多い種ですね。
センダングサ類の花にたくさん集まってきます。
今日のモニタリングでの確認種は11種152個体でした。6割はヤマトシジミです。
今年の調査が一段落したら、まとめて調査レポートみたいな記事を書く予定です。Rとか使ってなんらか解析できたら面白いなと思っています。
お散歩モニタリングはこんなところで、帰宅後お昼を挟んで午後から採集に出ることにしました。

いつもの
いつものように河川敷に来ました。このポイントはジガバチモドキ類の採集実績がそこそこある場所です。
「いつかコウノスジガバチモドキが採れるかも」という淡すぎる期待を抱きながら、この数年は秋になるといつもここでスウィーピングをしています。
時期的に終盤ではありますが、ジガバチモドキはまだ楽しめるはずです。
スウィーピングし始めて間もなく、足元のミミズの死骸から飛び立つハエの姿が目につきました。
これも今日、期待していたメンバーですね……!

ニセミヤマキンバエ
Lucilia bazini Séguy, 1934
ミヤマってつくけど別に山地に限らずいる、ニセミヤマキンバエでした。
ニセがつかないミヤマキンバエという種もいて、そちらは近所のお散歩コースでよく見かけるのですが、河川敷にいたのはほとんどがニセミヤマキンバエでした。
最近はこのキンバエの仲間も勉強中です。Fauna Japonica(クロバエ科)も買ってしまったので……やるしかありません。
ぱっと見では何の仲間か分からないハエが多い中でも、キンバエ類は瞬時に「これはキンバエの仲間」と分かるので、まだとっつきやすいグループなのかなと思っています。
多くの種の標本が集まったら、またいつもみたいな同定資料記事を書きたいです。
いろんな人に見てもらえる以上に、自分が同定の時に使いやすいという究極のメリットがあるので、あれ系の記事はどんどん作っていきたいですね。
路傍の草をスウィーピングしていると、ニクバエの仲間がやたらと目につきました。

シリグロニクバエ
Sarcophaga melanura Meigen, 1826
ここで無数にいたニクバエを4♂♂持ち帰りましたが全てシリグロでした。ニクバエ界ではふつうな種? でしょうか。

♂交尾器
ニクバエの同定には♂交尾器の確認が欠かせません。
交尾器を『みんなで作る双翅目図鑑』の画像と照らし合わせれば簡易的に同定できますが……最近サイトが閉鎖しました(絶望)
リンク先はアーカイブで、重いですが10月23日現在まだちゃんと見られています。
このサイトが完全に見られなくなったらせっかくニクバエを採っても同定する気になれないな……
(一応検索表はあるけど→https://www.jstage.jst.go.jp/article/mez/66/4/66_167/_article/-char/ja/

ヨツモンカメノコハムシ
Laccoptera nepalensis Boheman, 1855
マメアサガオか何かの葉上にはヨツモンカメノコハムシもいました。河川敷界隈ではたぶん初めて見ます。
もともとは沖縄本島以南に分布していた種でしたが、最近は分布をどんどん北上させています。
埼玉県に侵入したのは4年前の2021年ですが、2023年頃から近所でも見かけるようになりました。
今となってはヒルガオやノアサガオでふつうに見つかる虫になっていますが……サツマイモの葉を食害する害虫なので被害が出ていないか心配ですね。

サッポロヒゲナガハナアブ
Chrysotoxum sapporense Matsumura, 1916
サッポロヒゲナガハナアブが立て続けに2頭採れました。格好いい大型のハナアブです。
翅に目立つ暗色班があるものはとりあえず本種ということにしていますが、実際はそんなに簡単に同定できるグループではないような気がしています……
林縁のクワの木には、どこかで見たような物体がぶら下がっていました。

もしかして、トリノフンダマシ類の卵のう?
そう思いながら葉裏に注意して歩いていると、存在感のあるクモがいました___


オオトリノフンダマシ
Cyrtarachne inaequalis Thorell, 1895
先ほどの卵のうを作ったのはこの、オオトリノフンダマシでしょう。
本種は埼玉県RDB(2018)において準絶滅危惧(NT1)となっています。
埼玉県のレッド載ってる種だし、ちゃんと採集しておこうかと思ったのですが何となく気が進まなくて採集しませんでした
クモの標本づくりってエタノールにポチャんして終わりだし、後々見返すとかないし……何かつまんないんですよね。
でもきっと標本を残していくのは必要だもんなーなんて思ったりして、今更ちょっと後悔しています。
また出会えますように!
放棄水田にはセイタカアワダチソウが茂っていて、ちょうど花が咲いていました。
この花にはオオハラナガツチバチ(埼玉NT1)を始めとしていろいろな昆虫が集まっていました。
そんな中に集めているキンバエの姿もありました。

ホホグロオビキンバエ
Chrysomya pinguis (Walker, 1858)
これまで採集してきたキンバエ(キンバエ属)とは見た目が異なるなと思ったら、オビキンバエ属のホホグロオビキンバエでした。初採集です。
花に来ていたものではないですが、近くでふつうのキンバエも採れました。

キンバエ
Lucilia caesar (Linnaeus, 1758)
これで今日だけで3種のキンバエを得ることができました。着実に標本が集まってきていていい感じです。
しかしキンバエに限らずハエの仲間は野外で写真を撮ってくるのが難しいです。すぐ飛んで逃げてしまうし……
セイタカアワダチソウの花にはハナアブも来ていました。

Epistrophe属?
大型で分かりやすいかなーなんて思って採ってみたものですが、ふたを開ければ難解なオビヒラタアブ属? で種までは分かりませんでした。
これが同定できる資料はネット上には存在しないかな__
ん? そういえば。
ハナアブ科にもFauna Japonicaがあったような気がする。
……

お買い得2冊セット、買うー!
今の私はまともに採集活動などできないので、こういう形でしかお金の使い道がありません。
これがあれば難解なハナアブとも少しは戦っていけるはずだ……!
その後はスウィーピングを続けていたら、珍しく草からヒゲナガゾウムシの仲間が採れました。

ワタミヒゲナガゾウムシ
Araecerus coffeae (Fabricius, 1801)
ワタミヒゲナガゾウムシのワタミはたぶん(綿実)。綿花やトウモロコシ、コーヒーなどの害虫で、種子や穀類から発生するようです。ヒゲナガゾウムシとしては珍しく? 草本で発生できる虫ですね。
草地のスウィーピングで採れたのも納得です。
オオブタクサの茎からも発生した例が知られています。乾燥した植物があれば広く使いそうです。
参考→https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjeez/15/4/15_4_269/_pdf/-char/ja
ここまでやって大体15:30くらい。
日も傾いてきたので採集は終えようかと思います。

本日の成果(抜粋)
結局ジガバチモドキは3頭採れたのですがいずれも既採集のヒメジガバチモドキでした。
その他はカメムシも少し採りました。大きいのはクモヘリカメムシ、小さいのはスカシヒメヘリカメムシです。
こうやって成果を見ると、ますます自分が何屋なのか分からなくなってきますね(笑)
カテゴリーに縛られずに自由にやる採集の楽しさに気づいてしまったので、今後もずっとこういう感じです。
今年もぜんぜんタマムシ採りにいかなかったなあ……
帰宅後は少し休んで、日が暮れてからもう1度採集に出ます。
先日上げた記事(ゴモクムシ)の資料集めのため、近所でゴミムシ採集をやり始めているのです。

夜間ルッキングは久々
夜間ルッキングは丸1日採集を終えてそのまま河川敷などでやる、というのが基本だったため体への負担が大きく、ここ数年は全然できていませんでした。
しかし自転車で5分くらいのご近所にも面白い環境があることが分かったため、ここでなら無理なく夜間ルッキングを行えそうです。
雑木林の中でさっそく見つけたのは、

ルイスオオゴミムシ
Trigonotoma lewisii Bates, 1873
ルイスオオゴミムシです。数年前まで個人的に全く縁がなかった虫ですが、この林に生息していることを今年の春に知りました。
今でも出会えるとうれしい虫です。しっかり採集しました。
林内にはただのオオゴミムシも多いです。

オオゴミムシ
Lesticus magnus (Motschulsky, 1861)
草地で見かけることもありますが、基本的に林の中で出会うことが多い印象のゴミムシですね。
林の中だけでなく、林縁部や耕作地帯を通る道でもルッキングを行っていきます。

ケウスゴモクムシ
Harpalus griseus (Panzer, 1796)
今晩もっとも多かったゴミムシはケウスゴモクムシだったように思います。
頭楯の剛毛をライトで照らしながらよく見ると、ヒメケゴモクムシと見分けることができます。
一応、ヒメケゴモクムシも1頭だけ採れました。

ヒメケゴモクムシ
Harpalus jureceki (Jedlička, 1928)

頭楯の剛毛(4本)
外見上はほとんどケウスゴモクムシと一緒ですが、頭楯の剛毛はやはり多いです。
詳しくは先日あげた記事(主に本州でみられるゴモクムシ26種の同定【Harpalus属】)をご覧ください。
この日はケウスゴモクムシ30頭見て1頭ヒメケが混じるような感覚でした。
この日以降も数回夜間ルッキングを行っていますが、やはり1回につき1頭拾える程度で多くはないゴモクムシの印象です。
このポイント(林の周り)にはアオオサムシも多く生息しています。今晩は1頭だけ見かけました。

アオオサムシ関東平野多摩川以北亜種
Carabus (Ohomopterus) insulicola kantoensis Ishikawa & Ujiie, 2000
ここのラベルのアオオサムシ、そういえば採ってなかったのでちゃんと採集しておきました。
当地におけるオサムシはアオオサムシだけで、マイマイカブリはいないかなと思っていたのですが……!

マイマイカブリ関東・中部地方亜種
Carabus (Damaster) blaptoides oxuroides (Schaum, 1862)
幼虫いたし、しかもマイマイ(カタツムリ)をカブっていました。
野外でカタツムリを捕食しているシーンを見るのは2度目です。
前に見た時は大きなヒダリマキマイマイの殻の中に幼虫が完全に侵入しているような状況で、「マイマイカブリ」的ではなかったですが……今回はまさしくな感じですね。
幼虫がいるということは成虫もいる、ということでこの日は出会えませんでしたが後日成虫も見ることができました。

貴重なご近所ラベルとして採集
耕作放棄地の脇で、妙なゴモクムシが採れました。

上翅に虹色光沢があるのでHarpalus属ではない
実はこのゴモクムシは今日林内でも採っています。というか、今晩1番初めに出会ったのがこの虫でした。
つい最近、Harpalus属の特徴として覚えたばかりだった「上翅に虹色光沢がない」を一発でブチ破られたので驚きました。
Harpalus属じゃないにしても見覚えのないゴモクムシだったため、持ち帰って調べました。

フクハラツヤゴモクムシ
Trichotichnus (Trichotichnus) fukuharai Habu, 1957
Fauna japonicaを使って調べてみたところ、フクハラツヤゴモクムシに落ちました。
体長は12 mmほどあり、このグループの中ではかなりの大型種です。
ほとんど情報がない種で、埼玉県下での記録があるのかどうかさえ不明です。
まあなかったとしても、これを単体で報告するのは何となく気が引けますね。
このポイントのオサムシ科をひたすら集めて、まとめて報告できたらいい形になるかなと思っています。
したがって、1種につき1頭は標本を採るようにしています。
この日の夜間ルッキングはこのくらいで終了しました。

クビキリギスも出ていました。これから成虫越冬ですね。
という感じでこの日は朝の散歩に始まり、日中は河川敷採集、夜は夜間ルッキングと一通り晩秋にできる昆虫採集を楽しめた1日だったかなと思います。
薬を飲み続けていればとりあえず動ける体ではあるので、ちゃんと病院に通いながら来年こそはもっと虫とりができるようにしていきたいです。
勉強したいグループもたくさんありますし!

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