クシコメツキの「クシ」は爪にある
クシコメツキという虫をご存じでしょうか?

クロクシコメツキ基亜種
Melanotus (Melanotus) senilis senilis Candèze, 1865
クシコメツキ属(Melanotus)はコメツキムシ科コメツキ亜科に含まれる甲虫で、国内に40種ほどが知られています。
ただし南西諸島に分布する種も多く、本州ではうち18種が記録されています。
単色で大型、体は全体的に毛に覆われるこのコメツキたちは草原から森林までいろいろな環境で見つかりやすい仲間です。
クシコメツキの仲間は灯りに良く飛来するグループで、家の中で見つかることも珍しくありません。
クシコメツキ属を含むグループに共通する特徴は脚の爪がクシ状になっていることで、これが和名の由来です。
※厳密にはこの特徴をもつコメツキは他のグループにもいるようです。
そんなクシコメツキ類の中でも草原性種の幼虫は、土中で植物の根を食べ物として生活しています。ジャガイモやサツマイモなどの作物を食害することもあるようです。
硬くてクネクネした幼虫は農家からは「ハリガネムシ」とも呼ばれ、害虫として認知されています。
成虫の食べ物ははっきりしませんが、樹液や花の蜜に来るほか、アブラムシを捕食しているところが観察されています。
灯りに飛んできて家の中で出会うことも多いクシコメツキの仲間ですが、その同定はかなり難しいです。
どの種も黒色~褐色の地味な見た目で、特徴的な模様もありません。
場合によっては交尾器も確認しながら、顕微鏡下で慎重に形質を確認していく必要があります。
そこで本記事では、私がこれまでに集めた標本を用いて、本州を中心にみられるクシコメツキ属(Melanotus)の同定資料を作ってみました。
まだ標本が全然集まっていないため穴だらけですが、これから少しずつバージョンアップさせていければと思っています。
なおクシコメツキ属の同定に関する情報はmixiのコメツキムシ談話会のページに検索表を含む詳しい解説があります。
本記事はこの解説と「日本のコメツキムシ(IX)」(大平,1971)などを参考に作成しています。
「コメツキムシ談話会」コミュの#31コメツキ分類の目の付け所:写真解説
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3179298&id=37980681
クシコメツキの「クシ」は爪にある
クシコメツキ族(Melanotini)かどうか→爪と頭部を確認
オオクシコメツキ亜属とクシコメツキ亜属
オオクシコメツキ亜属の4種
ヒラタクシコメツキ
オオクロクシコメツキ
アカアシオオクシコメツキ
ハネナガオオクシコメツキ
クシコメツキ属の検索:褐色か黒色か
ハネナガクシコメツキ
褐色系クシコメツキ:細く両側平行な2種
ナガチャクシコメツキ
ナルカワナガクシコメツキ
褐色系クシコメツキ:幅広な3種
ルイスクシコメツキ
クシコメツキ
ヒメクシコメツキ
黒色系のクシコメツキ:中型の4種
クロクシコメツキ
クロツヤクシコメツキ
ヒラタクロクシコメツキ
エゾクロクシコメツキ
小型のクシコメツキ4種
コガタクシコメツキ
チャバネクシコメツキ
マルクビクシコメツキ
オオマルクビクシコメツキ
分かるようになるときっと楽しいクシコメツキ
クシコメツキ族(Melanotini)かどうか →爪と頭部を確認
まずはこれから調べようとしているコメツキがクシコメツキ属なのかを確定させなければなりません。
本属を含むクシコメツキ族の特徴は2つあります。
- 爪はクシ状
- 前頭横隆線は滑らかな弧状で完全、その下には前頭横溝が認められる
1個目は簡単ですね。足先の爪を見れば分かります(先述の画像)。
問題は2個目で、ここは顕微鏡でしっかり拡大して見ないとよく分かりません。
前頭横隆線はいいとして、その下にあるという前頭横溝は……水色で囲った部分を指すそうです(溝とは)。
この部分は種によって前頭部と上唇が接することで分断されたりなくなったりするようで、そこが判断のポイントとなるようです。
典型的なクシコメツキの例
ともあれ、上述の2点を満たすこんな感じの見た目のコメツキに出会ったら……それはクシコメツキ属の仲間です。
※南西諸島には別属のホソクシコメツキ属が分布することに注意してください。
オオクシコメツキ亜属と クシコメツキ亜属
クシコメツキ属はさらに2つの亜属に分かれています。両亜属の違いは……タマムシの同定でおなじみの前胸腹板突起に出ます。
ただし見方が独特で、側面から前胸腹板突起の曲がり方を見るのです!
オオクシコメツキ亜属(左)とクシコメツキ亜属(右)
ポイントは上反する(曲がる)位置が前脚基節の位置を超えてからか、直下かです。
オオクシコメツキ亜属(Spheniscosomus)では基節を超えた後もまっすぐ伸びますが、クシコメツキ亜属(Melanotus)では基節を超えてすぐ上に曲がっていきます。
→オオクシコメツキ亜属(この直下)
→クシコメツキ亜属
オオクシコメツキ亜属の4種
ここでは本州に分布するオオクシコメツキ亜属の4種をご紹介します。
まずは前胸腹板突起の曲がり方を見てヒラタクシコメツキの可能性を検討します。
ヒラタクシコメツキと他のオオクシコメツキ亜属の違い
ヒラタクシコメツキは同亜属の他種と比べて、前胸腹板突起の上反が強い(よく曲がる)ことが特徴です。
ヒラタクシコメツキ Melanotus (Spheniscosomus) koikei Kishii & Ôhira, 1956
体長16 mm前後(15-18 mm)の種で、体は黒褐色。黄褐色の毛に覆われます。
北海道から九州にかけて分布します。クシコメツキ属の中でも特に花によく集まる種だそうです。
毛に覆われていると分かりづらいですが、体背面はろう状の光沢がありヌルッとした感じのツヤがあります。ふつうに見られるそうですがまだ数頭しか見られていません……(調査不足)。
交尾器の先端がよく伸びて細くとがるのもポイント
ろう状の光沢(ヌルッと感)はスレた個体の方が分かりやすいかも
ヒラタクシコメツキでない場合は、次に体色を見ます。
脚や触角を含め全身が黒色であれば、オオクロクシコメツキです。
オオクロクシコメツキ Melanotus (Spheniscosomus) cribricollis Faldermann, 1835
体長17 mm前後(17-18 mm)。体は黒色。灰色の微毛に覆われます。
本州から九州にかけて分布します。
触角や脚まで真っ黒なクシコメツキ属は本種のみで、分かりやすい種ですが逆にクシコメツキっぽさがないように感じるところがあります。
平野部の人家周辺など人為環境以外ではほとんど見られないといいます。
実際に私が得ているのは近所の小規模な緑地や雑木林で、山地の方では見たことがありません。
オオクシコメツキ亜属の残りはアカアシとハネナガの2種です。
どちらも脚と触角が赤褐色です。2種は体形や体表の違いで見分けることができますが、私はどちらも持っていません。
よって今は簡単な紹介に止めておきます。
アカアシオオクシコメツキ Melanotus (Spheniscosomus) cete cete Candèze, 1860
体長17 mm前後(15-19 mm)の種で、体色は黒色、淡黄灰色の体毛で覆われます。北海道から奄美大島まで分布する基亜種と、トカラ列島に分布する吐噶喇列島亜種がいます。
以下の3点でハネナガオオクシコメツキと区別されます。
- 上翅の条線は深く間室は膨隆する
- 体はやや幅広く、ろう状光沢をほぼ欠く
- オス交尾器の中央片は先方に徐々に細まる
昼行性でクシコメツキ属の中でもよくみられる普通種、らしいのですが私はまだ出会えていません。
このグループをちゃんと採集し始めたのが2025年からなので、過去にさかのぼればきっとどこかで出会っているのでしょうね……。
(ちゃんと標本を採ることの大切さが身に染みる……)
ハネナガオオクシコメツキ Melanotus (Spheniscosomus) japonicus Ôhira, 1974
体長17 mm前後(14-19 mm)の種で、体色は黒色、淡黄灰色の体毛で覆われます。北海道から九州にかけて分布しています。
以下の3点でアカアシオオクシコメツキと区別されます。
- 上翅の条線は浅く間室は平滑
- 体はやや細長く、ろう状光沢が強い
- オス交尾器の中央片はやや太く、先端付近で急に細まりとがる
本種も昼行性で大きさも体色も前種とほぼ同じですが、やや山地性の傾向があるようです。
コメツキムシ談話会のページに2種の写真が掲載されていますが、わりと難しそうです……
ここまででオオクシコメツキ亜属は終わりです。
クシコメツキ属の検索:褐色か黒色か
ここからはクシコメツキ属の各種を見分けていきます。
最初に、特徴的な形態のハネナガクシコメツキを区別します。
本種は上翅はもちろん脚も触角も長く独特の見た目をしています。
本種をハネナガクシコメツキ亜属として独立させる考え方もあります。
厳密には、前胸腹板の会合線を確認します。
標本がなければ作ればいいのさ(雑イラスト)
ハネナガは溝が前端部に少し出るだけだそうです。
標本写真を見た方が早いと思うので、コメツキムシ談話会のページから画像をお借りします。
(表示されない場合は以下のリンクから)

※ハネナガクシコメツキ
引用:「コメツキムシ談話会」コミュの#31コメツキ分類の目の付け所:写真解説

ハネナガクシコメツキ Melanotus (Melanotus) matsumurai Schenkling, 1927
体長は16 mm前後(14-20 mm)。体は全体が暗褐色で、体背面は黄褐色の毛で覆われます。
北海道から九州にかけて分布し、山地にみられる種のようです。
「高地性」と書かれることもあるくらいなので、しっかり山奥に行かないと出会えないのかもしれません。
ハネナガクシコメツキを候補から除外したら次に確認するのは体色です。基本的に褐色か黒色かを確認しますが、上翅の表面を見ても色が読み取りにくいことが多いです。
そこで……翅を開いて透かしてみるのがオススメです。

クシコメツキ亜属の大きな分岐点、色と透け感の違い
透かしてみると色が分かりやすいのと、「透けるかどうか」も同定のポイントです。
褐色系のクシコメツキは翅に透明感があり光を通しますが、黒色系のクシコメツキは透き通りません。
※もし翅が赤褐色~暗褐色であっても、全く透けなければ黒色系として先に進んでください。(この例外があるのは10 mm以下の小型種のみ)
ちなみに体色の違いは、活動時間の違いを反映します。
褐色系のクシコメツキは夜行性で灯りによく飛んでくるグループです。一方黒色系のクシコメツキは昼行性で、草の上に日中止まっているところを見ることが多いです。
褐色系のクシコメツキの場合はこのまま進んでください。
→黒色系のクシコメツキ
褐色系クシコメツキ:細く両側平行な2種
褐色系のクシコメツキは次の分岐で体形を確認します。
細く両側平行な種(ナガチャ、ナルカワナガ)とそれ以外を区別するポイントです。
→体形が幅広の種
ナガチャクシコメツキとナルカワナガクシコメツキの2種は体長と触角節の比によって区別されます。
14 mm以下であればナガチャ、16 mm以上であればナルカワナガです。
ナガチャクシコメツキとナルカワナガクシコメツキの違い
触角は第2節+第3節に対する第4節の長さを比較します。
手前2節が第4節より長ければナガチャ、短ければナルカワナガです。
ナガチャクシコメツキ Melanotus (Melanotus) spernendus spernendus Candèze, 1873
体長は14 mm以下(12-14 mm)。赤褐色で細長く平たいクシコメツキです。北海道から九州にかけて基亜種が、屋久島に屋久島亜種が分布しています。
あまり灯火に飛来しないようでやや採りづらい種のようです。私は夜間ルッキングで葉上に止まっている個体を得たのが唯一です。
ナルカワナガクシコメツキ Melanotus (Melanotus) narukawai Kishii, 1996
体長16 mm以上(16.5-18 mm)。ナガチャクシコメツキよりも大型で暗色の種のようです。私は未採集で、原生林環境に生息する珍しい種なのだそう。
褐色系クシコメツキ:幅広な3種
ここからは体形が幅広の種です。
まずは前胸背の点刻間を見ます。
微細構造(細かいシワ)があり光沢を欠くものがルイス、光沢があればその他で先に進みます。
これはイラストでどうこうできる領域でないので、コメツキムシ談話会のページからルイスの前胸背画像をお借りします。
(表示されない場合は以下のリンクから)

ルイスクシコメツキの前胸背
引用:「コメツキムシ談話会」コミュの#31コメツキ分類の目の付け所:写真解説

ルイスクシコメツキ Melanotus (Melanotus) lewisi lewisi Schenkling, 1927
体長17 mm前後(18-22 mm) 。大型のコメツキで、暖地に多い種のようです(筆者未見)。前胸背の微細構造を見ることでクシコメツキと区別できますが、その他はそっくりのようです。
ルイスが除外できたら褐色系の残りはクシかヒメクシです!
この2種は触角節の比とオス交尾器の形状によって区別されます。
クシコメツキとヒメクシコメツキの違い(触角)
触角2節+3節が4節とほぼ同じ長さならクシ、4節よりも長ければヒメクシです。触角そのものの長さはヒメクシコメツキの方が短く、オスであっても前胸背板後角を超えないようです。
クシコメツキとヒメクシコメツキの違い(オス交尾器)
ヒメクシコメツキの交尾器側片は三角形状部が短く、中央片先端も急に細まります。
クシコメツキ Melanotus (Melanotus) legatus legatus Candèze, 1860
体長16 mm 前後(14-20 mm)。体は暗褐色で淡黄褐色の体毛で覆われます。前胸背には光沢があります。
都市部から山間部までどこでも普通にみられる種で、日中のスウィーピングはもちろん、ライトトラップでも常連です。
北海道から南西諸島までの広範囲に分布する基亜種のほかに、沖永良部島、伊豆諸島、熊毛諸島トカラ列島にそれぞれ別亜種が分布しています。

夜間に葉上に止まっていた個体(宮城県:2025.06.16)
ヒメクシコメツキ Melanotus (Melanotus) legatoides Kishii, 1975
体長14-16 mm。触角第2節+第3節が第4節よりも長いことと、オス交尾器の形状の違いによってクシコメツキと区別されます。
原色日本甲虫図鑑(III)とコメツキムシ談話会のページとで形質の説明が食い違っているのが気になりますが、ここではコメツキムシ談話会のページを正とします。
北海道から九州にかけて分布します。
褐色系のクシコメツキはここまでで終了です!
ここまでに紹介した種については、コメツキムシ談話会のページでも各種の解説がなされています。
しかし、これ以降の黒色系の種については同ページにも詳細な解説までは書かれていません。
黒色系のクシコメツキ:中型の4種
ここからは黒色系のクシコメツキを解説します。翅が透けないこれらのクシコメツキは、まず大きさで大別できます。
12 mm以上の中型種と、10 mm以下の小型種に分かれます。
触角節の比にも違いがあるので、ここも確認して次に進みましょう。
→小型の4種
体形でさらに2タイプに分かれる
中型の4種については、分厚く紡錘形の2種(クロ、クロツヤ)と平たく細長い2種(ヒラタクロ、エゾクロ)にさらに分かれます。
まずはクロとクロツヤを見分けましょう。この2種は前胸背を見ればおおむね分かります。
クロクシコメツキとクロツヤクシコメツキの違い(前胸背)
クロクシコメツキは前胸背の点刻が大きく密ですが、クロツヤクシコメツキでは点刻が小さく、間の光沢が目立ちます。
オス交尾器の形状もかなり違うため、あわせて確認できれば確実です。
クロクシコメツキとクロツヤクシコメツキの違い(オス交尾器)
クロクシコメツキ基亜種 Melanotus (Melanotus) senilis senilis Candèze, 1865
体長15 mm前後(10-17 mm)。 黒色で、灰白色の毛で覆われます。北海道から奄美大島にかけて基亜種が分布し、屋久島と口永良部島に屋久島亜種が分布します。

日中、河川敷の草地で葉上にいた個体(埼玉県:2025.06.01)
初夏の畑地や草地でよく見る普通種で、クロツヤクシコメツキと混生する場合もあります。
前胸の点刻が大きくザラついた印象を受けるため、慣れれば野外で同定することも可能です。
クロツヤクシコメツキ Melanotus (Melanotus) annosus Candèze, 1865
体長15 mm前後(12-18 mm)。黒色で、黄褐色の毛で覆われます。北海道から九州にかけて分布します。

夜間、河川敷の低木葉上にいた個体(宮城県:2025.06.16)
クロクシコメツキと同じく昼間に草地で見つかる種です。日中のスウィーピングで大量に採れたと思ったら半分ずつクロ/クロツヤだったこともあります。
本種の交尾器は独特で、側片に本属他種にみられるようなとがった部分がなく「のっぺらぼう」になっています。
交尾器の形をみれば1発で同定できる種だと思います。
続いて、平たく細長い2種(ヒラタクロ、エゾクロ)です。
ヒラタクロクシコメツキとエゾクロクシコメツキの違い(触角節)
触角節の比を見ることで区別できますが、エゾクロクシコメツキは北海道特産種であるため本州であればまずヒラタクロクシコメツキと思っていいでしょう。
ヒラタクロクシコメツキ Melanotus (Melanotus) correctus correctus Candèze, 1865
体長15 mm前後(11-19 mm)。黒色で体背面の毛は光沢のある黄褐色です。北海道から九州にかけて基亜種が、屋久島と口永良部島には屋久島口永良部島亜種が分布します。

日中、林内の葉上にいた個体(埼玉県:2025.06.14)
山地で特に多い印象のクシコメツキです。スウィーピングで良く入るほか、林内の下草に止まっている所も度々目にしています。
細長い体形が特徴的なので、慣れれば現地で見てもそれと分かります。
エゾクロクシコメツキ Melanotus (Melanotus) ocellatopunctatus Lewis, 1894
体長は13 mm前後(12-15 mm)。体背面は灰色の毛で覆われます。今のところ北海道のみで見つかっている種で、大平,1971ではヒメクロクシコメツキという和名があてられていました。同報告では記載以降得られていないと書かれていましたが、現在はもう少し採れているようです。
今回の記事で紹介する18種のうち、唯一本州に分布していない種です。
小型のクシコメツキ4種
最後に小型のクシコメツキ亜属4種をご紹介します。
ここに含まれる種はかつては「コガタクシコメツキ亜属」というグループに分けられていて、いずれも体長は10 mm以下です。
便宜上、黒色系のクシコメツキということにしていますが……チャバネクシコメツキのように上翅が褐色の種もいます。
まずは体背面の毛の長さを見てコガタクシコメツキとそれ以外を区別します。
どうもここを見てもしっくりこないので、私がコガタクシコメツキと思っているものはもしかしたら間違いかも……?
もう1点、触角節の比にも違いがあります。
ここはちゃんと違いを感じるんだけどなあ
コガタクシコメツキ基亜種 Melanotus (Melanotus) erythropygus erythropygus Candèze, 1873
体長は9 mm前後(8-10 mm)。体は細長く両側は平行状で、腹節の末端2節はふつう赤褐色のようです。北海道から屋久島にかけて基亜種が分布し、佐渡島と対馬にそれぞれ別亜種が分布するようです。
触角の第3節が第2節よりわずかに長いことで小型グループの他種と区別されますが、これがとっても微妙で同定に悩まされる種です。
※これ違うかもしれません
コガタでなければ、上翅の色を見てチャバネクシコメツキの可能性を検討します。
チャバネクシコメツキの上翅は赤褐色で前胸背板と明らかに色が異なります。
チャバネクシコメツキ Melanotus (Melanotus) seniculus Candèze, 1873
体長は8 mm前後(7-9 mm)。上翅は赤褐色で、会合部沿いはやや暗色です。特徴的な色と体長から簡単に同定できる種です。
本州、四国、九州に分布します。
標本画像は「コメツキムシの部屋」から引用します。

チャバネクシコメツキ
引用:コメツキムシの部屋_日本産コメツキムシ_チャバネクシコメツキ
残りはマルクビとオオマルクビの2種です。
マルクビクシコメツキとオオマルクビクシコメツキの違い(分からん)
上翅の会合部後方が抑圧されるか否か、が同定のポイントです。
一応、体背面の毛の色も違うようです(マルクビ:淡黄色、オオマルクビ:灰白色)。
マルクビクシコメツキ基亜種 Melanotus (Melanotus) fortnumi fortnumi Candèze, 1878
体長は8 mm前後(7-9 mm)。体は黒色~黒褐色で、体背面の毛は淡黄色です。
本州から九州にかけて基亜種が分布し、北海道に北海道亜種が分布するようです。さらに、北海道から九州に分布する種:Melanotus (Melanotus) caudex Lewis, 1879もマルクビクシコメツキだとされています(ホモニムってこと?)
春に草地で得られる小型のクシコメツキは基本的に本種だと思っていますが、大平,1971の交尾器の図を見ているとこっちがコガタクシコメツキのような気もしてくるし……確実な標本が両方そろった段階で最終的な判断を出したいですね。
オオマルクビクシコメツキ Melanotus (Melanotus) niponicus Ôhira, 1964
体長は9 mm前後(9-10 mm)。前種よりも大型の傾向があり、体も幅広くなるようです。
上翅の会合部後方は強く平圧されない点で前種と区別されます。
北海道、本州、飛島、対馬に分布が知られ、本州では山岳地帯から東北にかけての分布ということでどうやら山間部の草地に出る種のようです。(模式産地は長野県美ヶ原)
分かるようになるときっと楽しいクシコメツキ
いかがだったでしょうか。クシコメツキの同定で見る場所は相対的な体形の比較であったり、触角節の微妙な差であったり……解説を見ながらやっていても難しいかなと思います。
しかし、どこに住んでいてもこの仲間に出会う機会は必ずあるはずなので……違いが分かるようになるときっと楽しいはずです。
私は今はとにかく各地でサンプルを集めて、この仲間の理解を深めている段階ですが……新しい種が得られたらその都度、この記事にも反映してバージョンアップを行います。
クシコメツキを勉強しようと思ったきっかけは、まず「自分がちゃんと同定できるようになりたい」というのがありました。
それと……ネット上のクシコメツキ写真には同定がけっこう怪しいものが散見されたため、mixiのページ以上の資料が必要に感じたこともあります。

本記事が、身近な昆虫であるクシコメツキの仲間への理解を深める一助になれば幸いです。
コメツキムシ大図鑑、はやく出てほしいですね……(笑)
画像の引用などで問題ありましたら修正しますので、ご連絡ください。
参考
・「コメツキムシ談話会」コミュの#31コメツキ分類の目の付け所:写真解説
https://mixi.jp/view_bbs.pl?comm_id=3179298&id=37980681&conversion_from=login
・石澤,2016-.コメツキムシの部屋.日本産コメツキムシデータ.
https://elateridae.sakura.ne.jp/room_of_Elateridae.html
・大平,1971.日本のコメツキムシ(IX).クシコメツキ亜科.昆虫と自然6(9):21-24.
・黒澤ほか,1985.原色日本甲虫図鑑(III).保育社

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