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ズミチビタマムシとの邂逅
2022.07.12ゴオオオオ……という凄まじい音で目を覚ますと、まだ朝の5時でした。音の正体は雨。外は大荒れの天気です。4日間の中で今…
本記事はこの記事の続きです。
2022.07.13
泊まったホテルに門限があり、朝6時まで出られなかったので6:00ジャストを狙ってチェックアウト。
目的の山へ向かいます。
3日目になる今日からは新潟県での採集となります。
目標は現在までに新潟県でしか見つかっていないとあるタマムシ。産地として知られるこの地域で、少なくとも生息環境は学んで帰りたい!
7:00頃に現地について山登り開始。
どうやら山を登った先に目的のタマムシの発生地があるようです。
目標種の寄主(の可能性が高いとされる)はカバノキ科のサワシバ。樹木を気にしながら沢沿いの山道を登ります。
ハイイロヒョウタンゾウムシ
Catapionus gracilicornis gracilicornis Roelofs, 1873
登り始めて少し、初めて見るゾウムシをみつけました。
格好いい模様のゾウムシだなと思ったんですが、これは本種の本来の姿ではなかったようで……
乾燥するとこんな感じになりました。上翅が濡れてたからあんな見た目になっていたようです。
本種は北海道と本州北部に分布する虫で、単為生殖を行うことが知られます。
新潟県では両性生殖の集団がいるようなので♂が出現する可能性がありますが……これはどっちだろう。
タマゴゾウムシ
Pimelocerus orientalis orientalis (Motschulsky, 1866)
アザミか何かの葉上には初めて見るタマゴゾウムシが。
(名前の由来はよく分かりません……)
今年はこの時の他に北海道や福島で本種に出会っていて、何となく寒冷地の虫というイメージを持ってしまいましたが、分布は南西諸島までしているようです。
所属はアナアキゾウムシ亜科。大きめのアナアキゾウムシたちと同じ属ですね。
その後もしばらく登山を続ける___
あれ? これ場所間違えてないよね??
何というか、サワシバが出る雰囲気を全く感じられらない植生景観が続く。
例によって事前の情報収集が足りてないので、今いる場所が本当に正しいかどうかの自信がなくなってきました。
道中ポツポツとサワシバが生えているという事もなくて、もしかして本当にピンポイントな場所に発生木があるだけの環境なんだろうか?
だとしたら……これ、行く意味あるのか?
(行った所で、なんか今回は採れない気もする)
先に進んでも、今後のために得られるものが無いかもしれない___
そう思い始めると足取りも重くなり、沢沿いを外れて目の前が完全に針葉樹林になるくらいの所で引き返してしまいました。
もう少し他の場所の環境を見て、次に繋がるヒントを得たい……
ヒコサンナガタマムシ
Agrilus yamabusi Miwa & Chûjô, 1940
山を降りた所で、エゾエノキからヒコサンナガタマムシを得ました。
ここまでにも結構スウィーピングしてたんだけど、ようやく1つ目のタマムシでした。
車で移動しながら、良さげな環境で停めてスウィーピングを繰り返していきます。
ここでようやくサワシバを発見……しかし小さい。
めちゃくちゃ掬いましたが、何も採れることはなく……
それからだいぶ山を登った所で、景色が少しずつ変わってきました。
この辺りはブナが多く生えていました。もしかして他のタマムシ屋さんってこっちで採集してるのか?
(沢沿いではないから全くサワシバの気配は感じないけど……)
ブナ、ってことは……。
ここで採れるかもしれない虫がいる。
林縁のブナを見上げた時、少し違和感がありました。
そうだ思い出した。確か……
この細身なシルエットは!!
気になった部分を中心に少し掬ってみると、まさしく想像した通りの虫が入ってきました。
ホソクリタマムシ
Toxoscelus matobai Tôyama, 1985
ホソクリタマムシはブナで得られることが知られるものの、珍しい種でタマムシ大図鑑では珍品度★★★★(少ない)となっています。
クリタマムシに比べると明らかに細いです。
多分同属の種はみんなそうだと思うのですが、少なくとも普通のクリタマムシについては寄主のクリやコナラの生枝に産卵し材部を幼虫が食べる事が知られていて、発生木では幼虫が入った部分の枝先だけが枯れるという特徴が現れるという話をどこかで見た気がします。
そしてこの場所のブナには……
こんな感じで、明らかに不自然な枯れ方をしている枝が数多くみられました。
このサインを参考にスウィーピングを続けた所、割と簡単に追加を得る事ができました。
これがホソクリタマムシの仕業と断定はできないけど、そうなのだとしたら。
運と体力、物量の勝負になりがちなスウィーピングにおいて、クリタマムシの仲間はある程度的を絞る事ができる数少ない相手なのかもしれません。
低めの木からも追加を得て、計3頭になりました。
同地と思われる場所でホソクリタマムシを得ている方もTwitterで見かけていたので、ここは濃いポイントなのでしょうね。
考えてみれば枯れ枝のサインを参考に狙う事ができるのは、相応の発生数がある場所に限られそうですね。
真クリタマムシの枯れ枝サインとか、気にしてるつもりでも私には全然見つけられませんし……
(なので真クリタマムシはまだ2回くらいしか採ったことがない)
その後もブナのスウィーピングを続けたり路傍の枯れ枝をルッキングしたりしましたが、もう一つのブナ食いタマムシ___コガネナガタマムシには出会えませんでした。こっちの方がホソクリより多い虫のはずなんだけど……
その後も移動を繰り返しながら気になるところを見ていきました。
クロシジミ
Niphanda fusca (Bremer & Grey 1853)
道中で飛んでいたシジミチョウを何となくネットインすると何と初見のクロシジミでした。
本種はアリとの共生関係が有名な蝶で、孵化した幼虫した近くのアブラムシから分泌物を受け取り、それを利用してクロオオアリに巣へと運んでもらいます。自身の分泌物と交換する形でアリから餌をもらい巣の中で成長するといいます。
本種の生息地にはもちろんクロオオアリの存在が必要不可欠で、コナラなどの低木が生えるような疎林、二次草地といった人の手が入らないと中々維持されにくい環境に住む種であるため全国的に減少していて、環境省RL(2020)でも絶滅危惧IB類(EN)となっています。
埼玉県にも以前は生息していた虫で、大昔は近所の平野部にもいたほどだったようです。
しかし現在は絶滅(EX)となっています。RDBの文見たら悲しくなった。
埼玉県レッドデータブック2018 チョウ目チョウ類
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf
図鑑で見てた印象は名前の通り表面も黒っぽく、シジミチョウとしては地味なイメージが強かったですが……裏面の模様は他のシジミチョウには無い渋い格好良さがあり、大型で素敵なシジミチョウだと気づかされました。
ちなみに現場は山肌の斜面地で、思えば確かに明るくて低木の多い環境でした。
見たい場所はおおむね見れたかなというところで。
昨日の豪雨で土砂が溜まっていた
頑張ればいけそうな気もしますが、ここで無理してやらかしたくなかったので引き返します。
今日ここまで車と1台もすれ違わず不思議でしたが、これが原因だったのかも。
これは見るからにカラカネチビナカボソの物件(オニグルミ)でした
まだ少し時間があったので、最後にもう一本沢沿いを攻めて……
ヤマトアザミテントウ
Henosepilachna niponica (Lewis, 1896)
フキの葉についていたこれは……初見のヤマトアザミテントウのようです。
関東の太平洋側にはいない虫のようで、埼玉では代わりによく似たルイヨウマダラテントウがみられます。
(この辺りの分類は混沌としているようです。今年いくつかの場所で採ったので、一回採集品を整理してまとめる機会を設けたいですね)
結局、この日の採集ではサワシバをほとんど見つける事ができず、理想的な環境というのもイマイチピンと来ないままに終わってしまいました。これなら埼玉の方がまだ採れる気がするよ……(笑)
記憶が正しければ……この場所は副産物として得られるタマムシも豊富みたいな話があったような気がします。
この日私が得たタマムシはヒコサンナガ1、カラカネチビナカボソ1、ホソクリ3です。
初採集種があるから自分的には別に良いのだが……何かやっぱり力不足を証明するようで虚しい気持ちになりました。
夕方から雨の予報だったので、本降りになる前に引き上げました。
今日は車中泊なので銭湯に行ってゆっくりしました。
ーしばらく休憩してー
結構ガッツリ降っていた雨も上がった所で、今晩をやり過ごす場所を探しに行きました。
適当に見晴らしの良さそうな場所へ行って、ライトトラップしつつ夜を越すことに。
月がきれいですね(蛾屋語で、ダメですねとかそういう意味)
この日は確か満月かそれに近い日で、周りもめっちゃ明るくて悲惨なライトトラップになりました。
今回の遠征でほとんど活躍していないcoolpix p950に「月モード」があったのを思い出して、きれいな月の写真を撮ってみました。
さすが「月も撮れる」を売りにしているだけの事はある
かなり遠くに見える月も結構鮮明に撮れることに感動しました。
(このカメラには今年あった皆既月食の時もお世話になりました)

月も綺麗でしたが、この場所は夜景もかなり綺麗でした。
(場所割られそうですが、この日のライトトラップで得た虫がトゲアシクチブトゾウムシ↓だけなのでまあ、いいか……)
この時が確か初採集。格好良いゾウムシで好きです。
ライトトラップの電池が切れた事を確認し、眠りにつきました。
この場所は車通りも全く無くてほんとに静かで、1日目の車中泊より遥かに寝心地は良かったです。
……気分は最悪でしたけどね。
この後のくだりについて書く気だったんですが、3日くらいやっても全然うまくまとまらず……いろいろ溜め込んでしまってなお良くないなと思ったので触れるのをやめました。
気が向いたら書くかも知れませんが、このパターンは書かないな。標本整理に励みます……
翌日→

因縁の相手
↓前回2022.07.14日の出と共に起床、というか目が覚めました。……あんまり引きずってなさそうだ。もう動けるかな。初日の車中泊は何度も夜中に目が覚…

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