2024.08.18
今日は曇りの予報で、気温もそこまで上がらないようだったので採集に出ました。
朝早くから出て、午前中には帰ってくるような計画での近場採集です。
これくらいなら今の私でも無理なくやれそうでした。
6時頃に家を出て、河川敷に向かいます。

ギンイチモンジセセリの夏型は銀色の筋が目立たない
河川敷ではギンイチモンジセセリの夏型が出ていました。環境省レッドリストにおける準絶滅危惧種ですが、この辺りではごく普通にみられるセセリチョウです。
春型の銀筋も美しいけど、夏型は裏面の金色が目立ってこれも好きです。
本日の目的地に着きました。
ヨシの多い場所に来た……つもり
手前を覆っているのは特定外来生物のアレチウリですが、その奥にはヨシ原が広がっています。
今回の目的はいろいろなハチを採ることです。
2021年以降、河川敷で採れるハチの仲間に興味を持つようになりました。
ギングチバチやハナバチの仲間を狙って草地のスウィーピングをする回をちょこちょこ行っています。
しかし、これまでヨシの多い環境でスウィープしてこなかったので、ここから数回にわたってヨシ原付近を攻めていくつもりです。
また、今くらいの時期からはムサシトゲセイボウという埼玉県にゆかりのある美しいセイボウが出現します。
河川敷の草地で採集される昆虫なので、近所にもきっといるはず……
これ書きながら今知ったのですが、ムサシトゲセイボウの寄主はミヤマカミキリみたいですね!
ミヤマカミキリか……近所では見たことがありません、キマダラミヤマじゃダメかな!?
というか、ヨシ原にはいない……?
そんなことは一切知らずに、草地でのスウィーピングを始めていきます。

マミジロハエトリ♂
Evarcha albaria (L.Koch, 1878)
マミジロハエトリの♂がいました。目の上に発達する白い毛が特徴的なハエトリグモです。
せっかく草地で採集するので、今日はついでに見られるクモにも目を向けようと思っています。
きれいな成体を中心に採集して、標本づくりもやってみます。
このマミジロハエトリが、自己採集ハエトリグモ第一号になりました。
スウィーピングではドウガネサルハムシ↓がよく入りました。
ドウガネサルハムシ。銅色のほかにブルーの個体もいる。
本種はブドウの仲間につくハムシです。辺りを見回すと確かにブドウの仲間がありました。

ヤブカラシ(ブドウ科)
ヤブカラシです。葉にはドウガネサルハムシのものと思われる大量の食痕がありました。
成虫の姿はパッと見た感じなかったのですが……

じっと見ていたら葉裏から出てきた
一応いるようでした。
写真を撮っていないので割愛しますが、クコにつくトホシクビボソハムシも多かったです。
そうこうしていると池につきました。
池の周りを中心にヨシが生えている感じです。

投げ込まれたスイレンとホテイアオイが目立ち、ゲンゴロウブナ(移入)みたいなのも泳いでいる
外来生物ばっかりで面白くない池だと思っていたのですが、案外トンボが豊富な環境でした。
シオカラ、コシアキ、ショウジョウ、アオモンイト、オオヤマ、ギンヤンマ、ウチワヤンマ。
そして……

チョウトンボ
Rhyothemis fuliginosa Selys, 1883
チョウトンボも!
本種は水生植物の多い池などに生息しますが、そういう池って大体は公園で採集出来なくて……私的にはあまり縁のないトンボでした。標本やり始めてからはこれが2回目の採集だったりします。
外来植物が繁茂する池というのは好ましくないことなのですが、こうやって豊富なトンボ類の生息に役立つ場合もあり……何も生えてないよりは(虫的には)マシな場合もありますよね。
この池にはまた違うタイミングでも来てみたくなりました。もう少し何かいそうな気がします。
池の周りの砂地にはノミバッタがいました。
……なんか派手じゃね?

ノミバッタ
Xya japonica (Haan, 1844)
ただのノミバッタでした。
白斑が目立つ「マミジロノミバッタ」というのがいて、もしかしてそれか? とも思ったのですが違いました。
マミジロノミバッタは名前の通り目の周りに白い模様が太く目立つようです。
マミジロはもっと河原的な環境でみられる虫のようですね。そういう場所に行った時は気にしてみます。

コカマキリはまだ幼虫でした
池の周りでのスウィーピングも行っていきます。
この界隈では春のライトトラップでイチモジヒメヨトウやハイイロボクトウを採集した実績があるので、面白い環境だろうとは思っています。ただヨシがヤブの奥で遠く、ほとんどすくえないのが現状でした。


イチモジヒメヨトウ(左)とハイイロボクトウ(右)。ヨシ原でみられるいいガです。
ここでのスウィーピングでは大型のヒメバチが採れました。
マダラヒメバチ
Ichneumon yumyum Kriechbaumer, 1895
マダラヒメバチは大型で模様もしっかり特徴があるタイプのヒメバチで、アゲハの幼虫に寄生するそうです。
同定が難しいというか不可能なレベルのものが多いヒメバチの仲間でも、ちゃんと正体が分かるとうれしいですよね。
ここで採れたヒメバチはもう1種います。
キオビメンガタヒメバチ
Metopius (Metopius) rufus Cameron, 1905
キオビメンガタヒメバチは顔面に盾の形の隆起がある特徴的なヒメバチで、この時期にやる河川敷のスウィーピングではけっこう採れやすい種です。
キオビコシブトヒメバチと呼ばれていたこともあって、他のヒメバチと比較して腰があまりくびれないことも特徴ですね。
近くの植物に止まっているハチが目に留まりました。

これは初めて見る種のツチスガリだ!
初見のアカアシツチスガリ / Cerceris albofasciata (Rossi, 1790)でした。
脚は♀で赤くなり、♂では黄色です。この個体は♂ですね。
カメノコハムシ類を専門に狩るハチのようです。この辺だとヒメカメノコハムシとかがメインのエサになるんだろうか。
池周りでの成果はこんなところで、ここからは湿地周辺の道沿いでスウィープしながら歩きます。
草は朝露でビショビショになっていて、網もすぐに重く振りにくくなりました。
網に入ったハチも張り付いて飛べなくなっている
一応、ハチは採れるのですがこんな状態のものが多いです。
この状態で写真を撮っても何だかわからないし、かといって網の内外で飛び回る個体を撮るのも無理だし……とことん観察難易度の高いグループだなと痛感させられます。
そういう事情があり、持ち帰った個体をまとめて撮影した画像がここから続きます。
まずは推しのジガバチモドキを
これらは全て同種で、ヒメジガバチモドキに落ちました。
ジガバチモドキはギングチバチ科のハチで、竹筒や枯れ草の髄部などの既存孔を利用して泥で部屋を作ります。
クモを狩って部屋に運び、子育てをする亜社会性のグループです。
なんか好きなんですよねこの仲間。この仲間にも埼玉県にゆかりのある「コウノスジガバチモドキ」というのがいて、それがいつか採れないものかと心待ちにしています。
この日は5頭のヒメジガバチモドキが採れましたが、1日でこの数は初めてでした。
この場所は本種の発生に適した環境だったのかもしれません。
水たまりの跡が多数あり、巣材の泥集めはしやすい
おそらく時折草刈りが行われていて、営巣できる既存孔は多そう
こんな環境なので、確かに良いのだろうなと納得がいきました。
ジガバチモドキ以外のギングチバチもいくつか採れています。
模様の目立つホソギングチバチ属
ホソギングチバチ属(Rhopalum)は山で出会ったことはありましたが、低地では初めて見ました。
全く同じような模様を持つ種がいくつも存在するグループなので、無理に同定はしないことに。
キアシマエダテバチ(左)と同じグループのハチ(右)
これもギングチバチ科で、キアシマエダテバチは分かるのですがもう1種が分かりませんでした。
彼らが属するアリマキバチ亜科のハチはアブラムシやヨコバイ、キジラミなどの半翅目を狩ります。
アリマキバチ亜科はもう1種採れた
これはたぶんイスカバチ属(Passaloecus)です。
さっぱり分からんですね……
同定に使っている顕微鏡が2万くらいの安物で、倍率も40倍までしかないので……これを改善しないと同定に限界があるのかもしれません。
顕微鏡を改善しただけで急に分かるようになるとも思えないですが……
ギングチバチ科以外のハチも採れています。
コキマダラハナバチ
Nomada sheppardana (Kirby, 1802)
夏以降に採れるこんな見た目のNomada属はほぼコキマダラハナバチですよね。
というかこの時期はこれ以外採ったことがありません。
でも「秋Nomada」という概念がハチ屋にはあり、得難い種類がいるようなのでコキマダラと思っても注意してはいます。
ツチスガリ、と思いきや……
これは初めて見るハチで、最初は真っ黒なツチスガリかと思いました。
正体はアリバチ科のヤマトアリバチモドキでした。
♀は見たことがありましたが、♂がこんな姿をしている虫だとは知りませんでした。
今日のハチ的な成果はこのような所でした。
あ
朝露でぬれた重い状態で網を振り回していたら竿が折れてしまいました。
そもそも長竿で草地スウィーピングをやってること自体おかしいのですが、竿は余っているので買い足さずに消費していきたいところです。
(この竿も短くすればまだ戦える)
持ち方を変えて採集は続行
ハチ以外には、少ないながらハエも採ってみました。
分かりそう、と思ったハエだけを持ち帰る
オレンジ色の腹部が目立つ左のハエはマルボシヒラタヤドリバエの仲間(Gymnosoma属)です。カメムシに寄生するハエですね。
右のハエはヒョウタンハリバエ/Cylindromyia (Malayocyptera) pandulata (Matsumura, 1916)で良さそうです。
こん棒状の腹部が特徴的で、ネット上ではコンボウナガハリバエとよく誤認されています。
ハエ目からはもう1種、ハナアブです。
シマアシブトハナアブ
Mesembrius flaviceps (Matsumura, 1905)
美しいシマアシブトハナアブが採れました。
本種は水辺に多くみられるハナアブで、ハエハンドブック(熊澤・須黒,2024)では発見難易度★4つになっています。見かける機会の少ない種でしょうか?
今年は家の近所でも見かけたし、仕事でいった良い湿地でも本種がオモダカの花によく来ているのを見ました。
昆虫をあとひとつだけ紹介しておきます。
エサキトゲアシハナカメムシ
Blaptostethoides esakii (Hiura, 1960)
ヨシにつくハナカメムシのようです。
本種はかつては九州(鹿児島)以南に分布が知られていた種でしたが、近年本州においても見つかるようになってきています。
埼玉県では2017年にはじめて記録され、その後栃木県や東京都でも記録されているようです。
本種については「田悟(2024). ネッタイヒメクロミバエとエサキトゲアシハナカメムシの採集例と若干の考察. 寄せ蛾記(191):30-32.」が詳しいです。
最後に、今日見たハエトリグモの仲間を紹介します。

ヤハズハエトリ♂
Mendoza elongata (Karsch, 1879)
まずは一押しのヤハズハエトリから。
ヤハズハエトリは大型で美しい模様を持つハエトリグモの仲間で、ススキなど大型のイネ科草本が茂る草原にいます。
このクモの存在は昔から知っていて、一度は乾燥標本を作ろうと持ち帰ったこともありました(失敗した)。

こちらは♀
似ている種が数種いますが、ハエトリグモハンドブック(須黒,2022)があれば問題なく同定できます!

メガネアサヒハエトリ♂
Phintella linea (Karsch, 1879)
これもお気に入り。メガネアサヒハエトリの♂です。
非常に美しいクモですが各地でふつうにみられる種のようです。ありがたい……
残りはまとめて。
左:ネコハエトリ
右上:クワガタアリグモ
右下:アオオビハエトリ
アリグモもハエトリグモの仲間なので、ハエトリグモハンドブックに載っています。
この辺りのクモに手を出そうと思えるのは、ハンドブックのような使いやすい文献があるからこそですね。
他のクモは……まあ、分かりそうなのをちょっとずつやっていきます。
というところで、この日の採集は終わりです。
結局6:30~11:00くらいまで採集を続けていました。
疲れを残さない程度で引き上げましたが、多くのハチやハエトリグモに出会えたため成果は十分あったように思います。
なお、持ち帰ったクモのいくつかは乾燥標本にしようと試みました。
「ぷくぷく標本」の要領で、腹部がつぶれないようにしたかった、ですが……
左:ぷくぷく標本の工程を経た
右:ふつうにエタノールにつけた
※乾燥させる前です
ぷくぷく標本のやり方だと模様が褪せてしまいました。
漂白剤につける時間とかによりこの辺は変わりそうなので、要検証です。
ちなみに、このあと乾燥させるとふつうに腹部はつぶれました。
クモの乾燥標本はやはり難易度が高そうです。足もすぐクシャってなっちゃうし、格好良く作るには修行が必要ですね。
ちょっとずつ採っては練習していこうかなと思います。
失敗したら全部エタノールに漬けます……(それはありなのか)
狩りバチとハエトリグモ
採集記・記録+膜翅目(ハチ目)
コメント