自由研究のテーマ選びに悩んでいませんか?
身近な生き物である昆虫は調べやすく、扱いやすいテーマです。
私は小学生のころから昆虫が好きでしたが、思えば自由研究のテーマとして扱ったことは一度もありませんでした。
理由はそう……何を研究すればいいか分からないから。
小中学生当時の自分に頼れる情報源はなく、毎回テーマをひねり出すのにひどく苦しんだ記憶があります。
大人になった今、当時の自分に昆虫を扱う自由研究をするにはどうすればよかったのか……助言をするつもりでこの記事を書いています。
本記事では昆虫の調べ方から結果のまとめ方まで、簡単なアイデアをご紹介します。
入選とか狙うガチ勢向けの内容ではありません。とりあえず面倒な宿題を突破できればいいという人向けの内容です。
昆虫を調べるといっても「種や個体数を調べる」とか「飼育観察をする」とかいろいろあります。
本記事では前者、いわゆる昆虫相調査に近いようなやり方を紹介します。
カブトムシなど特定の虫の飼育観察は自由研究の枠にはめにくいし、夏休みだけで完結しない場合が多いので(楽をしたい人には)オススメはしません……
昆虫の調べ方
対象とする昆虫をある程度決める
調べる場所は複数、または1カ所でエリア分けをする
調査を行う日と時間帯の決め方は対象の虫による
現地調査では写真とメモでたくさん観察記録をつける
調査結果のまとめ方
場所ごとの確認種を比較する
結果の「違い」に注目して考察をしよう
まとめ方の実例:近所のチョウ調べ
まとめ方の実例2:クビアカツヤカミキリの駆除と経過観察
まとめ ~昆虫の強みは「場所による違い」~
昆虫の調べ方
まずは自由研究の「方法」の部分を考えていきましょう。
対象を決め、それに合わせて調査方法を組み立てていきます。
対象とする昆虫をある程度決める
最初に、研究で扱う昆虫を決めましょう。
昆虫は種数が膨大すぎるため、「昆虫すべて」を対象に自由研究をやるのはかなりハードです。

筆者オススメはバッタの仲間(バッタ目)
「バッタの仲間」とか「トンボの仲間」とかある程度のグループで絞るのが良いでしょう。
ほとんどの場合、調査を行えるのは夏休み中(7月下旬~8月中)に限られると思いますので、真夏にある程度ちゃんと成虫がみられるグループを選ぶことをオススメします。
カマキリ類やコオロギ類は調査するタイミングによってはまだ成虫が出ていない場合もあることに注意が必要です。
チョウ類はいなくは無いですが、真夏の平野部ではそこまで種数が出ないかも。
バッタの仲間とトンボの仲間は観察しやすく、ネット上に図鑑サイトもあって調べやすいためオススメです。
図鑑を見ながら調査するグループを決めてもいいですね。本の図鑑を買うなら学研の図鑑LIVEが良いと思います。

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掲載種が豊富で、身近にいる分かりやすい昆虫はほとんど載っています。
ここに載っていないような種はもう、無視でもいいと思う……(自由研究でそこまで頑張ることない)
kindle版があるため、スマホに入れて現地で確認することも容易です。
調べる場所は複数、 または1カ所でエリア分けをする
調査対象をある程度決めたら、次は場所を決めましょう。
対象の昆虫がちゃんと生息していそうな場所で、可能であれば昆虫採集が禁じられていない場所を探します。(採集しないとしても捕獲確認用に網とか持って歩ける方が良いから)
公園や川沿いの緑地などがやりやすく、自宅の庭とかでできる場合もあるでしょう。
調べる場所は複数設定すると良いです。
自由研究をまとめる時、場所ごとの結果を比較することができれば考察が書きやすくなるためです。
いい場所が複数ない、巡るのが大変という場合は1カ所を複数のエリアに分割しても良いでしょう。
水辺エリア、林エリア、草地エリアみたいな大きな環境ごとに分けるのが分かりやすいです。
例として……これは私が家の近所でやっているチョウの調査ルートです。
ルートを大まかな環境の分かれ目ごとに区切って、区分ごとにチョウの種と数を記録しています。
こういった手法で場所ごとに記録を取っていれば、
- モンシロチョウのは畑の周りで多い
- 住宅街ではチョウの数が少ない
- 林の中で特異的に出る種がいる
など……いろいろな考察を立てることができます。
1カ所で虫を調べて「こんなものがいましたよ」と報告するよりも、場所ごとの比較を含めた方が深みのある自由研究にできると思います。
場所が決まったら次は調査の日程と時間を決めましょう。
調査を行う日と時間帯の決め方は対象の虫による
まず調査日ですが、大抵の場合は夏休み中のどこか1日~数日(各地点・地区で1回ずつ)になると思います。
複数箇所を回る場合、各地点の調査日の間隔はあまり空けないほうがいいです(多少なり季節変化があるため)
ただし、何回も調査に出る余裕があるなら時期を変えつつ各地点で複数回やってもいいです(7月末と8月中旬とか)。回数は多い方が調査結果が充実します。
時間帯としては「チョウの観察は午前中の方がいい」とか「夕方活発に動くヤンマの仲間がいる」とか、虫により適した時間はさまざまです。
カブトムシやクワガタムシは夜間の調査をやれた方がいいですし、キリギリスの仲間には昼行性のものと夜行性のものがいます。

夜間調査をやれば確認種を伸ばせるグループも多い
対象の虫やグループの生態をある程度調べた上で調査に臨めるとより良い結果が得られるでしょう。
調査する時間も場所・地区間である程度は統一しましょう。
ある場所では日中調査して、ある場所では夜間調査した……みたいなやり方では結果が時間帯に左右されてしまいます。

時間を気にする昆虫の例、ヒグラシ
セミを相手にするのであれば日中でも朝と夕方で構成種がガラッと変わるのは想像できると思います。
面倒ではありますが、場所ごとの結果をしっかり比較するには各地である程度同じ条件の調査をすることが大切です。
ここまでで調査の計画はできたかな、というところでいよいよ現地調査に出かけます。
現地調査では写真とメモでたくさん観察記録をつける
ここからは現地で何をすればいいかの話です。
虫取り網などの捕獲道具とカメラ(スマホで良い)、メモ帳と筆記用具などを持って事前に決めたエリアなりルートなりを歩きます。
(各調査地や環境ごとの写真を撮っておくと役に立ちます)
環境が分かるような写真を
調べる対象の昆虫を見つけたら、種名を(できれば個体数も)分かる範囲で記録していきましょう。
現地で種が分からない昆虫に出会ったら、写真を撮るか持ち帰って調べます。
また、現地で気がついたことをなるべくメモしておきます。
- 草が刈られていてバッタが全然いなかった
- 花壇があってチョウがたくさん集まっていた
- 池の水が干上がっていた
こういう現地に行って初めて分かるような環境の特徴が、結果に大きく影響することも多いです。
現地でしっかり環境を記録しておくと、最後に考察をするときに「この場所ではこういう環境があったため種数が多かった/少なかった」みたいな話をしやすくなります。
現地調査が無事に終わったら、調査結果を整理してまとめていきましょう。
調査結果のまとめ方
まず調査結果を場所ごとに整理しましょう。
確認種と個体数をまとめた表を作ると、結果の比較がやりやすいです。
Excelとか使えるならこの後の分析が楽でしょうが……基本は手書きかな
とりあえず場所ごとの確認種数と総個体数を比較して、それぞれ上位と下位を把握しておきましょう。
場所ごとの確認種を比較する
調査結果を眺めながら、以下に示すような観点で特徴を拾っていきます。
- 共通種
複数の地点で共通して確認された種 - 固有の種
特定の場所でのみ確認された種 - 希少種
都道府県や環境省レッドリストの掲載種 - 外来種
国外から持ち込まれた種
調査結果の洗い出しはこのくらいで十分です。
あとはここまでで引き出した情報を使って考察を組み上げましょう。
結果の「違い」に注目して考察をしよう
確認種や個体数が複数の場所でまったく同じになるということはなかなかありません。何らかの「違い」が生じているはずです。
考察ではこの違いをもたらしているのは何であるかを考えて、述べることができれば良いわけです。
確認種数に着目する場合、その差が生じた要因はイメージしやすいことが多いです。
水辺の環境が豊かだったからトンボが豊富だったとか、樹液が出る木が多かったからクワガタがよく採れたとか。

昆虫がその場所の環境を反映することもある
共通種の存在は異なる場所や環境の共通点を示すことがありますし、固有の種の存在は他の場所にない特徴がその場所にあることを示しています。
これらを念頭に置いて、昆虫から環境の共通点や違いを引き出しましょう。
希少種が生息していた場合は、それらを守っていくためにどんなことが求められるかを考えられます。
外来種が見つかったのであれば、広がりの程度やどんな問題が予想されるかを考えてみましょう。
このように、昆虫を調べることでその結果からある場所が持っている特徴や他の場所との違い、将来に向けた課題などを述べることができます。
それらを最後にまとめれば、自由研究はそれらしい形に仕上がります!
まとめ方の実例:近所のチョウ調べ
筆者が実際にやっている近所のチョウ類調査をもとに、それらしい結果レポートをざっと作ってみました。
(いつかちゃんとした版を作ります)
●目的
近所のチョウ類相の把握と変化の追跡
●方法
期間:2025年3月~8月まで(継続中)
場所:埼玉県の某所(下図)に12の区分を含むルートを設定
回数:これまでに24回(およそ週1回のペース)
時間:各回9:00~12:00の間で実施
記録:区分の左右と上5 m範囲内で出現したチョウ類の種名と個体数を記録
調査地
各区分
●結果
・確認数:全地区で合計31種1197個体を確認
・確認種数は
地区S9で最多(23種)
地区S3で最少(3種)
・個体数は
地区S5で最多(314個体)
地区S1で最少(5個体)
・全ての地区で確認されたのは2種
(ヤマトシジミ、モンシロチョウ)
・確認地区が1地区のみなのは2種
(ヒカゲチョウ、ミズイロオナガシジミ)で、いずれも地区S7で確認。
・希少種としてコチャバネセセリを確認。
(埼玉県RDB(2018)準絶滅危惧種)
・外来種としてアカボシゴマダラを確認。
(特定外来生物)
●考察
種数がもっとも多かった地区S9は耕作放棄地と林の間を通る道(林縁環境)
→森林性、草地性のチョウ類がともに確認された。
地区S9
同様の林縁環境である地区S6、S10でも確認種数が多く、21種を確認(2位)。
→当地では林縁環境でチョウの多様性が高い傾向がある
地区S9の花(クサノオウか?)
地区S9は春~初夏にかけて林縁に多くの花が咲いていたことから、チョウが特に集まりやすかったと考えられる。

個体数1位、モンシロチョウ
個体数がもっとも多かった地区S5はモンシロチョウが多く、184個体が確認された。
→S5は開けた農耕地を通る道で、モンシロチョウが特に好む環境であった。
個体数2位は地区S6(201個体)で、約半数をヤマトシジミが占めた
→地区S6は明るい林縁で、路傍に食草のカタバミが多数生育していた
地区S3は道路沿い
種数最少の地区S3は道路沿いで路傍に植物が少ない環境(除草剤使用あり)
個体数最少の地区S1は交通量の多い道路沿いで、路傍に植物がほとんどない環境(除草剤使用あり)
→住宅地や道路沿いなど植物が少ない環境ではチョウが少ない

住宅街の地区S12で発見されたモンシロチョウの蛹
ヤマトシジミやモンシロチョウは道路沿いや住宅街でも共通して確認
→年に複数回発生で増えやすく、路傍や庭先の僅かな植生で発生可能

地区S7ではヒカゲチョウ、ミズイロオナガシジミが唯一確認された
→樹林内を通る唯一の環境で、薄暗い環境を好むヒカゲチョウと森林性のミズイロオナガシジミを確認

希少種のコチャバネセセリはS6からS10にかけての樹林周りで確認された
→クマザサやアズマネザサなど林床のササ類を食草として発生している種。平野部の産地は貴重で今後の動向に注視する必要がある。

外来種のアカボシゴマダラは5地区で確認され、樹林まわりに多い傾向
→競合するかもしれない在来のゴマダラチョウやテングチョウも確認されているが、それらより多い。要監視。
●まとめ
- 近所には森林性、草地性のチョウ類が豊富に生息している
- 当地では特に林縁部が多くのチョウ類の生息場所として重要な役割を果たしている
- モンシロチョウとヤマトシジミの2種は幅広い環境を好み、優占する傾向あり
- 希少種コチャバネセセリと外来種アカボシゴマダラの増減には注意が必要
何だか当たり前のことを述べているように思えますか?
感覚的にそうだろうと思うことを根拠とともに明らかにしていくことも重要な意味があります。
この当たり前は将来の環境変化で変わってしまうかもしれないし、違う傾向を示す場所があるかもしれません。
そうなったとき比較の対象としてこういう当たり前を示す研究が活きます。
まとめ方の実例2 クビアカツヤカミキリの駆除と経過観察
もう一つ、別のタイプの実例を紹介します。
こっちは昆虫観察に近いタイプです。カブトムシなど何らかのターゲットを決めてその生息地に通い続けることで、彼らの発生ピーク、活動時間、特に多い場所などの情報を集めて効果的な捕獲方法などを考えていきます。
●目的
近所で発生したクビアカツヤカミキリ(特定外来生物)の殲滅
●方法
期間:2025年6月~8月
場所:埼玉県の某所
回数:8回
時間:12:00~15:00頃(晴れた日の暑い時間)
対象:クビアカツヤカミキリ(特定外来生物)
記録:発生地の公園内で駆除した個体数を性ごとに記録

対象種(クビアカツヤカミキリ)
市内では2024年に初確認。被害木の伐採や幼虫駆除が実施されたが、2025年も引き続き発生。
●結果
・駆除数:合計20♂♂12♀♀
・特に東側の道沿いで多く確認
・自分以外による駆除の痕跡も多くあった
・公園内のサクラはほとんど被害を受けていた
・捕獲に失敗し逃げられる事も多かった
・ほとんどがサクラ(ソメイヨシノ)の樹幹にいたが、クヌギの樹液を訪れる個体も確認
・6/30には早朝に調査したが確認できなかった
なんかそれっぽい折れ線グラフ
●考察
公園内では前年に引き続き発生を確認
→公園内の発生を食い止めるのは絶望的な印象
毎年の発生数をモニタリングしながら対策検討と効果の検証をしていくべき
駆除効果を上げるには
→捕獲効率を上げるポイントは①晴天時の昼間 ②長い捕虫網の利用 ③多くの市民の参加
特に発生初期の産卵前に徹底的に駆除しなければならない
調査地の公園以外の発生状況は不明
→分布が広がっている可能性も考慮して各地を点検した方が良い
●まとめ
- 引き続き駆除を続けていく必要がある
- 周知啓発により市民の参加を呼び掛け、高頻度な駆除ができるといい
- 近隣で発生しうる場所を点検し、早期発見につなげたい
1種の虫を徹底的に調べるやり方はとにかく現地作業の回数を稼いで、たくさん情報を集める必要があります。
昆虫の知識があまりなくてもやれる分、データ集めを頑張りたいところです。
市内全域とか範囲を決めて巡り、在不在を確認して分布図を作ってもいいでしょう。
外来種なら対策につながるし、希少種なら守るべき場所を洗い出せます。
カブトムシ生息マップとか作ってもいいと思うが……「それ何の意味がある?」とかツッコまれると痛いです。
まとめ ~昆虫の強みは「場所による違い」~
いかがだったでしょうか。
今回の記事では自由研究のためのアイデアとして昆虫の調べ方、まとめ方をご紹介しました。
考察の立て方とか、結果の解析手法とか……研究の妥当性とか考えるともっとちゃんとした方がいい部分はあると思います。
が、それは上級者向けの話ということで今回は触れないでおきます。自由研究のレベルですからね!
まとめてて思いましたが、この内容でも小中学生が単独でやるのはちょっとハードルが高いかも?
親御さんの協力があるとより安全に、より良い研究ができると思います。ぜひ力を合わせて自由研究とかいうくそ面倒な課題を撃破してください……
とはいえ昆虫が好きな方なら、今回紹介したような自由研究は楽しんでやれると思います。
昆虫(というか生物)を相手にする研究の良いところは、自由研究に求められがちな独創性を簡単に生み出せることではないでしょうか。
本やネットで書かれている科学実験を丸パクリして自由研究を作り上げてもオリジナリティは出しにくいですが……本記事とまったく同じやり方で昆虫を調べたとしても、場所が違えば結果もまったく異なるはずです。
なんなら毎年同じ場所でやっても変化する結果を比較することができ、自由研究のネタとして無限に使いまわすことができます(笑)
手抜きに見えるかもしれませんが、地域それぞれの自然の特徴や課題を明らかにしようとする研究には大きな意味がありますし、調べたことをきっかけに身近な自然への関心を深めることにもつながります。
ただ「宿題を片づける」だけではなく、そこから新たな学びを得られると良いですよね。
(自由研究って本来そういう目的で出される課題なのかもしれないが……)
今年の夏はガッツリ昆虫を調べて友達や家族を怖がらせましょう!

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