この回は数少ない2020年の趣味採集の中でも特に思い出深かったので今更ながら採集記を書きました。
この地域での採集をやり始めて3年目、2020年度がここで採集を行える最後の1年となります。
これまで、大学入学時に買った2万くらいのショボい自転車(ママチャリ)で頑張っていろいろな方面へ行き、採集を行ってきました。
しかしどれだけ採集を重ねても『ここは絶対にママチャリでは突破できない』と思っていた場所がありました。
先輩方との街灯巡りで、その場所を突破した先の世界へ連れて行っていただいた事はありますが、車に乗っていてもその膨大な距離感というか、超えなければならない壁の厚さに圧倒されるばかりでありました。
そんな訳で自分の中では『あの場所』を超えた先は異世界みたいな扱いになっていましたが……2019年には裏ルートみたいな行き方で一度だけ訪れています。
めちゃくちゃキツかったのを覚えていますが、到達した場所は普段訪れる採集地のどことも異なる、まさしく異世界のような雰囲気で……見慣れない昆虫と植物に圧倒されながら楽しい採集ができました。
エサキキンヘリタマムシは6~8月頃に山地の河畔林(大抵は上流域)でみることができる非常に美しいタマムシの1種です。2019年の夏、幸運なことに近場でこの虫に出会うことができたので、その時の出来事をまとめて書きました……
そのときの採集記が↑ですが、中でも印象的だったのは『エサキキンヘリタマムシ』でした。
この虫との思い出はそちらの記事に書いた通りで、大好きなタマムシの一つなので、2020年にももう一度会いに行く機会を作りたい! と思っていました。
そして迎えた2020年。
卒論の調査を近所の山地でやる事にした私は、移動の便を考えてついに車を購入する事にしました。(超今更……)
親といろいろ相談して……
保険とかで色々お金がかかるとか、卒業後に置く場所がないとか言われ……
バイト先の人に中古車を紹介していただいて、こんなのどうだろうと親に提案すれば「それはやめとけ」と言われ……
……。
若干面倒くさくなってきた頃……ようやく全てを解決する車を見つけました。
自 転 車
諸々込みで8万くらいのクロスバイクを買いました。
維持費も自動車に比べれば遥かに安いし、これなら文句も言われまい!
これまでのボロいママチャリとは別格の機動力で、自転車を押しながらでなければ登れなかったキツい坂もクロスバイクでは乗ったまま突破する事ができました。
実質、自動車みたいなものである。
「どこにでも行ける……!」
よく行く採集地や調査地を訪れる度に、移動の楽さに感動するとともに謎の自信が湧いてきました。
今なら『あの場所』
超えられるかもしれない……!!
『あの場所』をクロスバイクで突破できれば、エサキキンヘリタマムシなどがいるあの異世界により簡単に到達できるし、帰りもめっちゃ楽に違いない……!
2020.06.21
長引く梅雨に翻弄され、趣味の採集どころか卒論の調査すら行くタイミングを作るのに苦労した覚えがありますが……ついに『あの場所』超えをやる日が来ました。
前に裏ルートで行った時は自転車1時間弱に加え3時間以上の登山があったことを考え……朝5時に下宿先を出発する事にしました。
序盤はよく行く採集地までの道のりとほぼ同じ。
とはいえ坂道は普通にキツく、時々休憩を挟みながら焦らずに進んでいきます。
しばらくして、『ここから先は自転車では行ってない未知の領域』というところまで来ました。いつもならここから脇道に逸れて歩きながら採集を始めていた……
しかしまだまだ先は長い。
ここでしっかりと休憩を挟み、以降の過酷な道のりに備えます。
そしていよいよ『あの場所』へ……!!!
「なんか……楽じゃね?」
物凄く急な坂道が襲いかかる……と思っていたのですが、実際は緩い坂道で、今のクロスバイクでは難なくぶっ飛ばす事ができました。
ただ長いだけ。本当にそれだけで……
「ああ……超えた、超えたのか。」
難なく『あの場所』を突破し、その先に到達したのは出発からちょうど1時間経ったくらいの6時頃でした。ちょっと気合入れすぎたかな……
※ブログ書く気なかった時期の話なので、写真全然撮ってません。
↑の写真は場所バレしそうな写真をトリミングしたやつ。
標高が上がった事により少し涼しく、澄み切った空気を感じられます。周囲にはエゾハルゼミの鳴き声が響き渡り、高く登り始めた陽の光に照らされて山の中は徐々に明るくなってきています。
既にめちゃくちゃ心が躍るシチュエーションではあるのですが、もちろんここがゴールという訳ではなく、ここから山を登って前回のエサキキンヘリポイントに向かいます。
山を登るといっても今回は舗装された道をクロスバイクで行くことができる。
道中も採集しながら進んでいこう!
まず目についたのはヤマボウシ。この場所に2本だけ生えていて、ちょうど花が咲いていました。
ヤマボウシには未見のサビナカボソタマムシがつくので、一応……めちゃくちゃ丁寧に掬っておく。
網の中を覗くまで忘れていましたが、ヤマボウシの花には意外と多くのカミキリムシが集まります。
時刻はまだ6時30分とかだったんですが、普通に複数のカミキリが採れて驚きました。
何種類かのトラカミキリ類が網に入っていて、その中には初めて見るものも混じっていました。
カンボウトラカミキリ本土亜種
Rhabdoclytus acutivittis inscriptus (Bates, 1884)
他種と比較して細長い体型が特徴的なトラカミキリ。幼虫がブナやミズナラの材を食べるみたいで、それらの樹種が少ない近所ではこれまで出会う機会に恵まれませんでした。
ここでは2頭が得られました。
サビナカボソの不在を確認して次へ進みます……
ヤツメカミキリ
Eutetrapha ocelota (Bates, 1873)
この写真の後ろにぼんやり写ってますが、ウワミズザクラ? か何かのサクラの木があって、太めの枝が折れて部分枯れの生じた木でした。
まさしく、サクラ類で発生するヤツメカミキリが採れそうな木だなと思い葉を掬ったところ採れたのが写真の個体です。
ヤツメカミキリは林縁の下草とかに止まってるところを見つける事がなぜか多くて……こういう生態通りの採り方をした事がなかったので、思った通りの環境で採れてちょっと嬉しかったです。
Pidonia 属のヒメハナカミキリの仲間。
多分セスジヒメハナカミキリ。
この場所は道沿いにノイバラが沢山あって、ちょうど花の時期だったようで沢山のPidoniaがみられました。
これはノイバラじゃないけどちょくちょく咲いていた花。
この花からはアオバホソハナカミキリが採れました(初採集だった)。
Pidoniaは全然同定出来ないので少ししか採集してこなかったけど、セスジ、ナガバ、ニセヨコモン、チャイロ辺りの各地でよく見かけるものに混じって初見のツマグロヒメハナカミキリが採れてました。
これはツツキクイゾウムシの仲間。
この仲間は針葉樹などの枯れ枝を掬うと偶に採れます。
保育社の原色日本甲虫図鑑IV巻にはこの仲間が9種載っていますが、『稀』と記載されているものがその内の6種、『少ない』が1種です。
つまりほとんどが少ない種だと思われます。
見かけたら採集しておいた方がいい虫ですね……これは該当する種が見つからなくて同定諦めた気がする。
ここで……シナノキを発見しました。
あると信じてたぞ……!!
シナノキは多くの格好いい蛾やカミキリムシの寄主植物となる『いい木』です。
何よりシナノキチビタマムシがつく。
そこそこ生えていたので片っ端から掬っていきました。
キモンカミキリ
Menesia sulphurata (Gebler, 1825)
まずはキモンカミキリが採れました。近所でもオニグルミやサワグルミのスウィーピングで時々採れるけど、数頭しか出会えてないので普通に嬉しい。
シナノキにもつくんですね……たまたま居ただけか?
ハンノアオカミキリ基亜種
Eutetrapha chrysochloris chrysochloris (Bates, 1879)
美しいハンノアオカミキリも採れました。
いろいろな所で出会っている普通種ですが私にとってはまだまだ嬉しい種。
クリイロチビケブカカミキリ
Terinaea atrofusca Bates, 1884
クリイロチビケブカカミキリも採れました。本種は過去にどこかで出会った事があった気がする(中信とか?)
シナノキなどの枯れ枝から発生するようです。
とりあえず現時点ではこれだけ。
ハンノアオカミキリやキモンカミキリが含まれるトホシカミキリ族(Saperdini:サペルディーニ)の多くの種は、活動が活発になる時間が夕方であると言われているので、また後でもう一度掬いに来てもいいかもしれない。
シナノキチビタマムシは採れませんでした。
分かってたよ……
タマムシ的にアツい木がありました。
幹が切られていて、ひこばえがワサッと生えてるこの感じ。
樹種はミズナラ。こんな木からはホソアシナガタマムシが無限に採れたりするけど……
採れませんでした。
しかし網には妙なカミキリムシが入っていた……
クリイロシラホシカミキリ
Nanohammus rufescens Bates, 1884
「これはあれだ……」
太いミズナラの樹幹部に居るとかいう……
名前だけ聞くとSaperdiniみたいなこのカミキリ。ミズナラの他にもトチノキやクリなどの樹幹でみつかるとか。
なんでスウィーピングで採れてんだ!?
渋い魅力のあるカミキリムシですね。
真剣に探してみたくなったけど、周囲には太いミズナラはなく、出会えたのも結局この一頭だけでした。
クワサビカミキリ
Mesosella simiola Bates, 1884
網にはさらにもう一頭、クワサビカミキリが入っていました。
クワサビカミキリをあんまり採ったことなかったのと、掬ったのがミズナラだったこともあって
「これか! クリサビカミキリこれか!」
ってなってたけど普通にクワサビカミキリでした。全然違ったわ……
ちなみにこの他にキッコウモンケシカミキリも入ってました。
カミキリにとってすごい良いミズナラだったみたいですね、
タマムシは何一つ採れなかったけど。
エゾサビカミキリ
Pterolophia tsurugiana (Matsushita, 1934)
これはまた別の場所でスウィーピングした時に採れた初見のエゾサビカミキリ。
ヤナギ類につくサビカミキリのようで、この後も何度か採れました。
2019年頃までサビカミキリ類とか何も分からん人間だったんですが、ちゃんとみれば同定できる分Pidoniaとかと比べれば全然良心的なグループで、分かるようになれば結構好きになれました。
分かりにくいけどこれはヤマブドウで、一部のツルが枯れています。
掬うのが難しいけど頑張って掬ってみたところ……
アカネカミキリ
Poecilium maaki viarius (Danilevsky, 1988)
アカネカミキリが採れました。
ブドウ類で発生し、普通にみられるという種ですが……私はこれまで縁がありませんでした。やっと採れた。
ブドウ類のツルでは本種やアカネトラカミキリが歩き回ってる光景が見られることがあるようです、私は見た事ありませんが……!
(この後、似たような枯れツルで1頭追加を得た)
しばらくして、林縁にさりげなく混ざっていた若いシナノキを掬った時、またしても初めて見るカミキリムシが入っていました。
チチブニセリンゴカミキリ
Niponostenostola niponensis niponensis (Pic, 1901)
この辺の『ニセリンゴカミキリ』の仲間は初遭遇でした。か細いリンゴカミキリ類と違って結構な重量感がありました。
これもSaperdiniに含まれるトホシカミキリの仲間です。
あれだね?
今日はそういう日なんだね?
登ってきた道が開けて、谷に面した場所に出ました。
この辺りからは2019年の採集でも訪れているのでよく覚えています。
あの木でルイスナカボソ採ったよねとか。
今日は採れないね、おかしいね。
道の谷側に咲いているノイバラの花に、今まさに大型のカミキリムシが飛来しているのが見えました。
「あ、アオジョウカイか」
…………。
「アオジョウカイじゃなくない!?」
フタコブルリハナカミキリ
Stenocorus caeruleipennis (Bates, 1873)
南信に移ってからは年一回、一頭のペースで出会えているフタコブルリハナカミキリ。
今年も出会えました。スカイブルーの上翅が綺麗だ……
ここまで、もう十分過ぎるくらい多くのカミキリムシを見ることができたので、ここからは本題のエサキキンヘリタマムシに挑みます。
これは前回1頭採れた木……
……まあいないか。次。
これは複数頭見かけた木だけど……
……ここもいないな。まあ本命は次だから。
(写真撮ってない)
2019年の採集で一番多くエサキキンヘリをみたケヤマハンノキ。
今年もちゃんと戻ってきたぞ……!
ここで採れるかどうかで答えが分かるわけだが……
採れませんでした!
発生してませんでした!!
おわり!!!!
……標高が高めな場所だからなのか、発生が他地域より遅れているのではないかと思われました。
(純粋に運がなさ過ぎて、たまたまこの日は出会えなかっただけなのかもしれないけど……)
やっちまった……完全にやらかした……
ただでさえ忙しい時期に、まだ内定も決まってなかったこの時期に……無理矢理時間を割いて採集に来た結果がこれか。
2020年、もう一度ここに来る時間を作れるのか……?
ケヤマハンノキの樹冠に広がる虚無から視線を落として地面をみると、何故かクワガタムシ♀が歩いている。
そんなとこ歩いてたら車に轢かれますよ……なんかデカくないかこのクワガタ?
ヒメオオクワガタ
Dorcus montivagus montivagus (Lewis, 1883)
「これ……ヒメオオじゃないの!?」
コクワとかノコギリにしてはデカ過ぎるし、前胸の形も違う気がするし、何より……脚がやたら長い。
人生初のヒメオオクワガタでした。よく考えたらここは居ないわけない環境だったのですが、ちゃんと探した事ありませんでした。
言うまでもなく、雄が採れていればもっと嬉しかったけど見つけられませんでした。
飼育して採卵するのもなんだか難しそうだったので今回は諦めて普通に標本にしました。
なおケヤマハンノキの下にいたのは、スウィーピングをした際に木から落ちたためと思われます。
別の木からはアカアシクワガタが落ちました。
(ヤマハンノキにクワガタがつく事をこの日初めて知った)
とにかくエサキキンヘリは諦めて、もう一つの目的を果たしに行く。
これはサワシバ。よく似てるミズメは枝から葉っぱが2枚ずつくっついて出ます。
とあるナガタマムシの寄主植物ですが……
採れませんでした(さすがに当然)。
ただしミドリツヤナガタマムシが入ったので喜んで採集していく(確かこれがこの日初めてのタマムシだった)。
実はエサキキンヘリが発生してるかしてないか微妙なこのタイミングでここに来たのは、前回未到達の場所でサワシバをたくさん掬いたかったからだったのですが、結局この日は新たに良さげなサワシバを見つけることができませんでした。
立派なサワシバって全然ないんだよね……
そんな感じで、行ける所まで行ってこの日のノルマを全て達成したのがお昼頃。
この日は頑張って簡易的なライトトラップの道具を持ってきていたので、せっかくなら夜まで粘って採集したい。
この辺でやろうかな、と、路肩のちょっと開けた草むらを歩いていた時……足元を見覚えのある蝶が飛んでいました。
ギンイチモンジセセリ
Leptalina unicolor (Bremer et Grey, 1852)
何気に長野県に来てからは初遭遇だった、
ギンイチモンジセセリ(長野県NT)でした。
畦畔草地や河川敷の草原では全然見かけなかったのに、まさかこんな山奥の小さな草地で出会うとは思わなかった……確かにススキは多少生えてたけど。
ホソツツタマムシ(未見)が頭をよぎったので、この草むらで死ぬほどスウィーピングしたらヒメカメムシ(長野県NT)が多数網に入りました。
こんな所にもいるんだ……
そしてこんな所でもいないんだ……
まだまだ時間があるので、来た道を戻りながらスウィーピングなどを行っていく。
ヒオドシチョウ
Nymphalis xanthomelas ([Denis et Schiffermüller], 1775)
ここで非常に綺麗なヒオドシチョウが採れました。
春先に越冬明けのボロい個体を見ることは多いですが、夏場は意外と出会えない蝶な気がする。
成虫越冬するタテハチョウって大体みんなそうだと思うけど……
ルイスナカボソタマムシ基亜種
Coraebus rusticanus rusticanus Lewis, 1893
ここでようやくルイスナカボソタマムシが採れました。
めげずにケヤマハンノキ掬い続けてよかった……好きです(直球)。
ここで、見落としていたシナノキを発見……よく見たら葉っぱの大きさが全然違う。オオバボダイジュか?
このオオバボダイジュが絶妙な位置に生えていて、広範囲の葉に陽の光がよく当たっていました。
別にシナノキチビが採れるかとかは思ってないけど、『良さそうな木』だなとは思いました。
そんな予感は的中し、
シナカミキリ
Eutetrapha sedecimpunctata sedecimpunctata (Motschulsky, 1860)
その名の通りシナノキなどで発生するシナカミキリが採れました。
黄色とオレンジの中間みたいな色が目を引くSaperdiniの一種。
本種は2018年に北信でライトに飛来しためっちゃボロい個体を得ているので厳密には初採集ではないけど、実質初見みたいなものなので嬉しいです。
こちらが2018年の個体。
ギリっギリでシナカミキリと分かる斑紋が見えた。
さらに今回のオオバボダイジュには立派な枯れ枝もついていたので、そちらも掬ってみました。
ピックチビコブカミキリ
Miccolamia tuberculata Pic, 1918
「これは……!!!」
そうだ、いたではないか……!
オオバボダイジュやシナノキにつくチビコブカミキリの仲間が……!!
カッコウカミキリを除けばチビコブカミキリの仲間としては本種が初。
かなり小さいけどゴツゴツした体が魅力的で、出会いたかった虫でした。
この他にはクリイロチビケブカカミキリの追加が何頭も得られました。
この近辺、特に水が流れている場所の近くなのですが、やたらと体に纏わりついてくる虫がいます。
こいつです。ヌカカです。
本当にちょうどこの採集の前日くらいに、『網戸を貫通して侵入してくるスケベ虫』として嫌われるヌカカという生物がいることを知りまして……ヤバそうな虫だな(他人事)などと思っていたら、こんな環境にいる虫だったとは。
ヌカカというのはめちゃくちゃ小さいハエみたいなもので、単体では特に気になるものでもないのですが……少ししゃがんで採集品の整理などしようものならもう尋常じゃないくらいの数が集まってきて、一気に蚊柱ならぬヌカカ柱を形成します。
しかもしっかりと吸血をしている。
もちろん私もちゃんと虫除けスプレー(サラテクト)使ってましたが、ヌカカに対しては全く効果がないようだ……
体が小さいので衣服の内側にも侵入してきて、顔や首、腕はもちろんのこと背中や腹にいたるまで全部やられました。それはそれは酷いことになった。
そしてヌカカに吸血された場所が尋常じゃないくらい痒い。
蕁麻疹のごとく腫れるし、腫れも1ヶ月くらいは引かなくて本当に嫌でした。
これまでメマトイが一位だったガチで無理な昆虫ランキングが更新された。
ヌカカは許せねえ……許せんなぁ!?
そんな感じでヌカカの猛攻を受け、全身が痒いし、定期的に耳の中に入ってきて「プウゥン」ってなるし、少しずつ心が削られていくのを感じた。
もはや座って休憩とかも全くできず、この後ライトトラップの時間になるまで歩き続ける……採集を続けざるを得なかった。
ちょうどこのオオバボダイジュがあった辺りが一番ヌカカが多かったのも中々に辛かった。
ムツモンオトシブミ
Leptapoderus praecellens Sharp, 1889
イタドリの葉上には初めて見るムツモンオトシブミがいました。斑紋にはいくつかのタイプがあるようで、これは4紋型。
ヤマハッカやヒキオコシといったシソ科などの草本植物につくようです。これは真剣に探さないとなかなか出会えなさそう……
さらに歩いている最中に目線より少し高い位置に交尾中のアオジョウカイのペアが……
「アオジョウカイじゃなくない!?」
(二回目)
低い所に下ろしてみると、やはりフタコブルリハナカミキリのペアでした。
一年一頭のジンクスは消滅しました。
ドウボソカミキリ
Pseudocalamobius japonicus (Bates, 1873)
何を掬って採集したのか全く思い出せないけど、ここでドウボソカミキリが採れました。
ミヤマドウボソカミキリは何度か出会ってますが、純粋なドウボソカミキリは今回が初採集だった気がします。
多分このくらいのタイミングだったと思うのですが、通りかかった車が私の目の前で止まりました。
中から人が出てきて、こちらに向かってきます。
なんかヤバい人だったらどうしよう……と内心ビビりましたが、虫屋さんでした(カミキリ屋さんだったっぽい?)。
その方はこの日採集でここに訪れたわけではなかったようですが、少しお話しました。
私「今日はなんだかカミキリがいろいろ採れてます」
おじさん「なにか良いのは採れた?」
良いもの……?
今日なに採ったっけ?(記憶喪失)
そもそもこの人的にいいカミキリって何だろう?
「Lemula……ニセハムシハナカミキリとか?」
「いやいや、全然そんなのは採れてないです!」
「でもSaperdiniがいろいろ採れてて僕は楽しめてます」
「そうかそうか……いいねえ」
「ヒゲナガシラホシとか採れた?」
「いや、採れてないですねえ……」
「この辺りはハルニレとかも無いですし、いるんですかね」
厳密じゃないけど、そんな感じの話をした気がします。
私はこの日の採集をすごく楽しんでいたのですが、名前を挙げられたカミキリについては尽く採れてなかったのであんまり楽しさを伝えられず微妙に悔しかった……
時刻は16時。空はあいにく曇ってきましたがこの後灯火やる事を考えればむしろ好都合。
時間的にもうそろそろSaperdini達の活動が活発になってくるだろうか……そんな事を考え始めた矢先。
クロニセリンゴカミキリ
Eumecocera unicolor (Kano, 1933)
シナノキを掬ってみたところ新たなニセリンゴカミキリが採れました。
チチブニセに比べると毛の模様が少なくシンプルな見た目をしている。
さらに飛翔するハンノアオカミキリを確認するなどして、いよいよという感じがしてきた16時30分頃。
先程シナカミキリが採れた木を中心に周囲のシナノキやオオバボダイジュをローテーションしながら掬う作戦に出ます。
やはりあのオオバボダイジュが一番集まりが良いようで、掬う度にチチブニセリンゴカミキリやハンノアオカミキリが網に入りました。
チチブニセリンゴカミキリ
Niponostenostola niponensis niponensis (Pic, 1901)
チチブニセリンゴカミキリがこのポイントにおける最優占種でした。

シナカミキリの追加も僅かながら得られました。
そして……。
ヒゲナガシラホシカミキリ
Eumecocera argyrosticta (Bates, 1884)
「あーー!!」
「なんだ、いるじゃないか!!!」
おじさん、ヒゲナガシラホシ採れました。
貴方のおかげかもしれません……ありがとう。
ヒゲナガシラホシカミキリはハルニレのある場所で採れるSaperdiniというイメージを持っていましたが、実際そうでもないようで色々な広葉樹で発生するようです。(とはいえ山奥に行かなければ出会えない場合がほとんど?)
思えば過去の採集経験もケヤキのスウィーピングだとかヤマボウシの花掬いとかだった。いやこれは意味わからんな……
雄と雌で模様が大きく異なることが知られる本種。
どちらかといえば雄の方が多いようなのですが、私が以前採ったのも雌で、今回も雌。
雌の方が斑紋があって美しいので嬉しいのですが……雄が未見なので雄が採れてくれれb
ヒゲナガシラホシカミキリ♂
Eumecocera argyrosticta (Bates, 1884)
「採れた!!!(豪運)」
斑紋もなく地味なイメージを持っていたのですが、よく見たらほんのり青みがかっていてとても綺麗でした。
これはこれでいい。
さらに、ピックチビコブカミキリの採れた枯れ枝で追加を狙っていると奥の方から歩いてくるカミキリが見えたので網に落としてみる。
エゾトゲムネカミキリ
Oplosia suvorovi (Pic, 1914)
初見のカミキリムシでした。
モモブトカミキリの仲間に近いっぽい?
本種もオオバボダイジュなどで発生するカミキリムシで、結構少ない種類だったみたいです。
どのくらい少ないかというと、この日採った虫の中では一番『良いもの』になるみたい。
当時の自分はそんなこと知る由もなく……
さらに、このオオバボダイジュの真後ろにある小さなオオバボダイジュでもシナカミキリなどが採れていたのですが、Saperdiniとは異なる姿のカミキリが葉上に止まっていて……
モモグロハナカミキリ
Toxotinus reinii (Heyden, 1878)
2020年は何故かこのカミキリと縁があって、この時が確か2頭目だったと思います(最終的に異なる場所で計3頭出会った)。
カミキリムシとしては少数派である草本植物を寄主とする種で、幼虫がショウマ類の根を食べていることが最近判明したといいます。
成虫も葉っぱをかじるみたいで、林縁の植物上でみつかります。
近所ではサラシナショウマがある場所の近くで、下草をスウィーピングした時に出会いました。
しかしなんで今回の個体は樹上にいたのだろうか……
そんな感じで、オオバボダイジュの周りを彷徨いていたら日が暮れ、ライトトラップを開始。
(写真撮ってない)
オオミズアオが次々と飛来したのを思い出します。
(オナガミズアオも1,2頭混じっていた)
しかしこれといって面白いものは来ない……
そして何よりヌカカがうざい。ヌカカはうざい。
日が落ちた後は多少マシにはなったと思うのですが、ライトにガンガン飛来してくるのでライトトラップをやることによって結局ヌカカを集めてしまうというジレンマ……
幕の裏側に凄まじい数のヌカカが止まっていて、めくり上げると一気に顔面にブワァって来て……(崩壊)
ヌカカから逃れるため少し場所を移動して再開したところ、今度はハネナガブドウスズメが無限に飛来し、幕をめちゃくちゃ荒らされました……
唯一採集しようと思ったモンキシロシャチホコもスズメガの猛攻により幕から弾かれて擦れてしまい……
「ああもう……限界だ。」
この一件以降、ハネナガブドウスズメが少し嫌いになった。
スズメガみたいな大型蛾がライトに来てくれるのはもちろん嬉しいんだけど、あの日のレベルでたくさん来られるのは普通にしんどいです……
ヌカカに集られて神経質になってる身体にデカい虫が次々と突っ込んでくるわけなので、そりゃ無理だろうと当時を振り返りながら思う。
センモンヤガ
Agrotis exclamationis informis Leech, [1889]
結局、この日のライトトラップで採集したのは、この綺麗なセンモンヤガ一頭のみでありました。
ここまで道具を持ってきた甲斐があったと言える成果は、モンキシロシャチホコをスルーしたことで失われてしまった……
(本種はカンバ食いで、結構標高上げないと多分採れない)
ここまで触れなかったけど、こんな圏外の山奥で、真後ろにクマの死骸の跡が転がってるような場所でライトトラップやるのも疲れる。
(そんな場所でやってました)
周りの物音と獣の臭いには最大限の警戒をはらっていたし、クマ鈴を無限に鳴らしまくっていたが……ヌカカとハネナガブドウスズメがあまりにもあんまりだったために、定期的に叫ばなければ正気を保てないレベルまで心が壊れた……
次第にクマとか気にする余裕はなくなり、冷静に考えたら普通に危険だった。
ので、これ以上やっても得るものがないと判断した20時くらいで強制終了。
この日の採集を終えました。
あとは自転車にまたがって、登ってきた坂道を下るだけ。
あっという間に下宿先に着いていました。
満身創痍、という言葉がしっくりくるくらいに身も心もボロボロになって帰宅しましたが、やり切ったという達成感と充実感に心は満たされていました。
タマムシについてはあまりいい思いはできませんでしたが、この日はとにかくカミキリムシに愛された日だったなあという印象です。
何にせよ、普段と違う虫にたくさん出会えたのはやはり、あのエリアだからこそなのでしょう。
ずっと超えられないと思っていた『あの場所』は意外にも簡単に突破できる場所でした。
なんならクロスバイクに買い換える前のママチャリでも余裕だったと思うし、キツい坂道は序盤の『いつもの採集地』に行くまでの道だったということに気づかされました。
しかし本当に恐ろしいのはあのエリアに生息する『ヌカカ』という生物である。
この事を胸に刻みつつ、エサキキンヘリに再度挑戦する機会が訪れる事を願うのでした。


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