2024年もまもなく終わりですね。
例年、このブログでは12月31日に「今年の振り返り」として記事を更新しています。
今年は少し余裕があるので、前倒しでこの記事を書いています。
今年は以下のような内容で振り返りを行います。
最も印象的だった4種
まずは「今年の4種」ということで、今年が初採集だった昆虫の中から印象的な種を紹介します。
昨年末からの体調不良を今年もしっかり引きずりまして、遠方にはほとんど出られない1年になりました。
そのかわり近所の虫をしっかり見た1年で、TOP4は全て近所で出会った虫になりました。
4位:クビアカツヤカミキリ Aromia bungii (Faldermann, 1835)

2024/07/20
7月、近所の公園で樹液に来ていたクビアカツヤカミキリを発見しました。
これを「うれしかった虫」のように紹介するのもアレなのですが……まあ印象的ではあったなということで4位にランクイン。
私が住んでいる市には今年初めて侵入したようで、最前線の個体だったと思われます。
同地ではソメイヨシノからフラスが出ており、来年以降の発生が注目されます。
余力があったら駆除に協力したいです。
3位:ルイスホソカタムシ Gempylodes ornamentalis (Reitter, 1878)

2024/06/29
ルイスホソカタムシは近所の公園でクヌギの衰弱木に来ていた個体を見つけました。
別の目的(後述)があってクヌギの衰弱木を眺めていたのですが、まさかこの虫が近所にも生息しているとは思わず驚きました。
確認してみるとやはり埼玉県での記録はなかったようで、別の場所で採集された方との共著で短報となりました。
加藤・永井, 2024. 埼玉県で採集されたルイスホソカタムシ. さやばねニューシリーズ(55):51-52.
2位:シンジュキノカワガ Eligma narcissus narcissus (Cramer, 1775)

2024/11/01
よく通っているお散歩コースのニワウルシで、本種の幼虫や蛹を複数発見しました。
今年は本種を始めとする偶産蛾の当たり年だったようで、埼玉県内でも各地で見つかっていたようです。
(参考)矢口ら, 2024. 埼玉県におけるシンジュキノカワガ(幼虫)の記録. 月刊むし (646):37.
持ち帰った幼虫は無事に蛹になり、12月に一部が羽化しています。
12/03羽化個体
成虫は大型の美しいガで、地味に憧れていた昆虫だったので出会えてよかったです。
果たして来年以降も近所で発生するのか、気になりますね。
1位:トガリバシラホシナガタマムシ Agrilus tokyoensis Kurosawa, 1985

2024/06/29
今年一番うれしかった虫はもう……一切の迷いがなく選べます。トガリバシラホシナガタマムシです。
さいたま市秋ヶ瀬公園での撮影記録が知られていながら、県内ではずっと見つかっていなかった幻のタマムシでした。
そんなタマムシが近所で見つかったという連絡を受けたのが6月の半ば。
私もなんとか後に続きたい……! という気持ちでまずは発見地を見させていただいて、環境を把握。
その翌週に「ここなら」と選んだ場所でめでたく遭遇を果たしたのでした。
そんなわけで、公式の採集記録として世に出すことができました。
永井・加藤・進藤, 2024. トガリバシラホシナガタマムシを埼玉県で採集. 月刊むし(646):2-3.
トガリバシラホシはタマムシを採集し始めた当初からの大きな目標でした。
近所で見つけられたことが何よりうれしかったです。
ご近所採集編
かつてないくらいご近所採集に力を入れた年だったので、新しい発見もありました。
いくつか抜粋してご紹介します。
近所で新たに出会えたタマムシたち

マスダクロホシタマムシ(2024/06/29)

ムツボシタマムシ(2024/06/01)
今年近所で新たに出会えたタマムシは、マスダクロホシ、ムツボシ、ヒメヒラタ(材から羽化)、ムネアカチビナカボソ、クリタマ、クロナガ、トガリバシラホシナガ、タゾエナガ、ブドウナガ、ヤナギチビの10種でした。
これらを加えると、近所(自転車で気軽に行ける範囲)でこれまでに採集したタマムシは44種です。
この1年で、「近所でも採れそう」と思っていた種がだいぶ確保できました。
あと追加できそうなのはヒメアサギナガ、ヒコサンナガ、ダイミョウナガと__クロマダラですか?(笑)
トガリバシラホシを召喚できた以上、クロマダラの召喚も夢ではない気がしてきました……!
地味に当たりだったかもしれないダルマメバエ
2024/04/29
ダルマメバエという、格好いいハエが採れたのは春のお散歩でのことでした。
フタモンカタコハナバチに寄生する種で、珍しいようで『ハエハンドブック』では発見難易度★★★★とされています。
なんかふつうに採れたけど、埼玉県での記録はどうだろう……? という種でかなりラッキーだったと思います。
近所にも現れたクロマダラソテツシジミ

2024/08/09
クロマダラソテツシジミはもともと南アジアや東南アジアなどの熱帯、亜熱帯に分布していたチョウでした。
1992年に沖縄で初めて侵入が確認され、その後2007年には本州(兵庫県・大阪府)に侵入。植栽のソテツを利用して徐々に分布を北に広げているようです。
そんなクロマダラソテツシジミがとうとう埼玉県の近所でも見つかりました。
(県内では数年前から一部地域で確認されていたらしい)
やはり民家のソテツを利用して発生していたようで、発生源も特定しています。
今年は東北地方(福島県)でも見つかっているようで、今後どこまでいくのか……注目される昆虫です。
クワコとスゲドクガの飼育

羽化させたクワコ(2024/07/17)
去年やったキョウチクトウスズメの飼育が案外うまくいったことで自信をつけ、今年は苦手意識があった幼虫飼育に挑戦した年でもありました。

クワコの幼虫を見つけたので飼育して成虫を羽化させてみた【カイコの原種】
クワコ幼虫の発見5月4日に河川敷に出かけた時のことです。道沿いに生えているヤマグワにクワコの幼虫がいました。若いクワコの幼虫はアゲハの幼虫に似ているクワコ Bombyx mandarina mandarina (Moore, 1872) はカイコガ科のガの一種で…

スゲドクガの幼虫が採れたので飼育して成虫を羽化させました
2024.08.24ことの発端は、とある日の採集で。このようなオギの多い河川敷でスウィーピングをしていた時のことです。何やら見覚えのある毛虫が網に入っていました。この黄色い毛虫は……スゲドクガ Laelia coenosa sangaica Moore, 1877ですね…
幼虫で採集したクワコとスゲドクガを育てて、無事に両方とも成虫にすることができました。
幼虫飼育もうまくいけば楽しいですね。今後も何か見つけたら積極的に育ててみようと思います。
似たもの同士を見分けるために
今年は近所で身近な虫に触れる機会が多くあったので、このチャンスを利用して苦手意識のある一部昆虫を深く調べてみました。
その結果は、以下のような記事にまとめた通りです。

ホソヒメヒラタアブとミナミヒメヒラタアブの比較(ヒメヒラタアブ属の同定)
最もよくみるハナアブ明るい草地に咲いているハルジオンなどの花には多くの昆虫が訪れています。その中でも一番よくみるのは以下のような虫ではないでしょうか。これはミナミヒメヒラタアブというハナアブ科の昆虫で、花によく訪れています…

セボシジョウカイとよく似た別種オカベセボシジョウカイの比較
それ、セボシジョウカイですか?こんな虫を見たことはありますか?春から初夏に草地や林縁部でよく見かける、オレンジ色のこの虫は……セボシジョウカイ Lycocerus vitellinus (Kiesenwetter, 1874) かもしれません…
こうやってまとめることで自分自身も理解が深まるし、迷った時に自分で参照できるのでやってよかったなと思います。
今標本を集めている途上ですが、クシコメツキ類とかキンバエ類とかでもやりたいですね。
県内採集編
今年は県内採集(車・電車)に出かけた回数も少なく……たったの5回でした。
それでも、県内では未見だったヒラタチビタマムシとヌスビトハギチビタマムシを確保できたのはうれしかったです。

ヌスビトハギチビタマムシ(2024/10/20)
ちなみに5回の内訳は、
・ヒラタチビ回
・ヌスビトハギチビ回
・ドウイロチャレンジ、ライトトラップ(敗北)
・秩父樹皮めくり、篩(敗北)
・県内トゲフタオリベンジ(敗北)
こんな感じで、後半はほぼ苦行で敗北していました。
来年はもっと楽しい虫とりがしたいです……
なお項目立てて紹介しませんが、1度だけ県外にも採集に出ています。
体力が途中で尽きて、全然ダメだった回です↓

挑むことに意味がある
休職から復帰して3カ月ほどたちました。当初は週に2、3日は調子が悪くて休んでいましたが、最近は会社に出れる日が多くなりました。先月はようやく欠勤ゼロを達成。中で仕事する分には問題なくやれています。調子が良い日も多くなり、週末も半日ほどなら近所に採集に行ったり出かけたりできるようになってきました…
今年の採集に関してはこんなところです。
体の調子は戻り切っていないけど、近所でそこそこ楽しめた1年でした。
来年はもうちょっと遠くに行きたい!
標本整理の追いつきとデータ公開
去年から(一昨年からだっけ?)取り組んできた全標本にコレクションラベルをつけ、データベースに登録する作業がついに今年、終わりました。
今年は半年ほど休職していて、作業時間が取れたのが大きかったですね。
ナガタマムシの標本箱
標本の整理が完全にリアルタイムに追い付き、データベースも完成。
これにより、標本データを個人収蔵.comを使って外部に公開できるようになりました。データを公開し、現在も利用者を募っています。
(昆虫標本データを公開しました。標本を活用してくれる方に無料で提供します。)
実際に標本を受け取ってくれる専門の方も現れまして、一部の標本は既に託しています。
送った標本を改めて同定してもらい、その結果を基に報告すべき種は報告する、というような段階を踏んでいる所です。
これまでの標本を「集める」段階から「活用する」へ舵を切れた年だったなと思います。
後述しますが、短報もいくつか発表することができました。
初めての短報投稿
今年の個人的に大きな成果として、初めて短報を書いて記録を報告したことが挙げられます。

静岡県2例目、本州から約40年ぶりのクワゾウムシ
クワゾウムシは、自分にとって初めての短報の相手でした。
何本か短報を書いた今になって思えば、この虫はかなり初心者には重い相手だったと分かります。
(各地に存在する文献記録を誤同定か疑わなければならなかったため)
でも短報を書いてその虫のことに詳しくなるにつれて、思い入れの強い虫になりました。
永井・伊達, 2024. クワゾウムシの本州における記録の再検討と静岡県からの追加記録. 月刊むし(638):48–49.


埼玉県から新たに記録されたサトウナガタマムシ&トガリバシラホシナガタマムシ
サトウナガタマムシとトガリバシラホシナガタマムシは埼玉県初記録として報告しました。
「タマムシ」というジャンルで短報を書けたことがうれしかったし、それが地元埼玉のファウナ解明に微力ながら貢献できたことも達成感がありました。
永井・進藤, 2024. 埼玉県でサトウナガタマムシを採集. 月刊むし(638):51-52.
永井・加藤・進藤, 2024. トガリバシラホシナガタマムシを埼玉県で採集. 月刊むし(646):2-3.

国内3例目? フトタコゾウムシ
フトタコゾウムシは私が福島県で採集した個体を含めて報告しています。
SNS上でのつながりがあったからこそ成り立った短報だったなと思います。私一人では正体も分からずどうにもできなかったと思います。
永井・前原・藤澤, 2024. フトタコゾウムシを栃木県及び福島県で採集. さやばねニューシリーズ (54):21-22.
このほかに、共著に誘っていただいて報告した埼玉県のルイスホソカタムシを合わせると、今年は合計で5本の短報を出すことができました。
加藤・永井, 2024. 埼玉県で採集されたルイスホソカタムシ. さやばねニューシリーズ(55):51-52.
昨年までの0からいきなり5なので、大躍進の年だったと思います(笑)
ため込んでたネタで既に投稿したものや完成間近なものも少しあるので、それらも来年には公開できていると思います。
ブログに関する振り返り
去年書いた記事で、ブログに関して以下のような目標を立てていました。
・月1くらいの頻度で、可能な限り更新を続ける
振り返ってみると……できています! 月1回以上の更新!
8月なんて6回も更新していました。
これも標本整理が落ち着いたことの影響が大きいですね。
5月から職場に復帰していますが、それでも自由に使える時間が多くて好きな時にブログを書けるようになりました。
ネタに困らない限り、更新は続けていけそうです。
ただし現在絶賛ネタ切れ中なので、来年以降は月1ペースでの更新にならないかもしれません。
とはいえモチベーションは維持されているので問題なく続けることが出来そうです。
今年は標本データベースの作り方を書いたりとかラベル記事の改訂したりとかしましたが、それなりに好評いただいたようでアクセス数も多くなりました。
去年記録取ってないから具体的にどのくらい増えたのか分かりませんが、これを書いている時点でアクセスカウンターの数字は391963となっています。来年には40万アクセスに到達しそうですね。
良いお年を
思ったより長くなってしまいましたが、以上2024年の振り返りでした。
去年の今頃は1日中横になって過ごしていたことを考えると、この1年でだいぶ体の調子も良くなったのだなと実感します。
最近は休日に出かける頻度も徐々に高まりつつあります(1日寝てる日もあるけど)。
しかし、1年たっても万全な状態まで復活しないとは……いったい私の体はどれだけのダメージを抱えていたのだろうか?

来春からはふつうに採集に出られるくらいに復帰したいですね。
「元気になったら」で採集に誘っていただいてる話もあるので、そういうのもできるレベルまでの回復に努めます。
体調とかの前に体力の衰えも著しいと感じているので、何かトレーニングとかやった方がいいですね。
体に負荷をかけることを避けるクセがついてしまい、なかなか進んで出来ていません……
この冬は昆虫採集には全然行かない気がするので、鳥見とか他のことに力をいれる期間にしようかと思います。
そんな感じなので、春まではほとんど更新できないかもしれませんが……来年もよろしくお願いいたします。
今年1年、ブログを見ていただきありがとうございました。
良いお年をお迎えください!

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