ゴールデンウィークということで、春に出現する昆虫類も出そろう時期になってきました。
晴れても暑すぎるということは少なく、暖かい日差しが心地よい季節。
こんな時期には、野外に出かけたくなるものです。
今回は家の近くのよく通っている河川敷周辺を巡りながら、春の昆虫たちに会いに行きました。
低地の昆虫採集にもいろんな楽しみ方があることを知っていただければと思い採集記を書きました。
2024.04.25
ひどい夢を見た。
1つ目はひたすら吐き続ける夢。
あまりの気持ち悪さに夜中に目が覚めた。
なんならガチでやらかしたかと思うような感覚が口の中にあったが、セーフだった。
うがいしてから再び寝ると、次は高校の頃の先生にひどく怒られる夢を見た。
なぜか自暴自棄になっていて、卑屈なことを言っていたと思う。
……そんな感じで、最悪の気分で目覚めたこの日は、むちゃくちゃ天気のいい朝でした。
「採集に、出たい……!」
と、強く感じられました。
気分は悪かったのですが、日光浴をしていると次第に体調の悪さも気にならなくなりました。
一時的なブーストがかかっている感じ。ここで動かねば…無作法というもの…
採集道具一式を背負って、9時頃に毎年お世話になっているポイントへ行きました。
今日はクヌギのスウィーピングで各種のタマムシを狙いつつ、春らしい昆虫を探します。
スウィーピングをしよう
私の昆虫採集は樹木の枝葉を網ですくう「スウィーピング」が主体になっています。
これはコナラです
スウィーピングが主体になるのは、私がいちばん好きなタマムシの仲間が樹木につくためです。
もちろん、春になり樹木の枝葉が出てくる4月頃からタマムシの仲間は出現しています。
コナラやクヌギなど、ブナ科の樹木につく種が多いため、それらを中心に網で枝葉をすくっていきます。
クヌギの花
この時期、クヌギやコナラの葉っぱをすくうと咲き終わった花が大量に入ってきます。
虫もこの花の中に埋もれてしまい、見つけづらくなるので悩ましいです。
小さなタマムシの仲間は大抵、網の一番底に落ちているか側面に止まっています。
クヌギの花は手で揺すって中の虫を落としながら取り除いていきます。
うまくすくえていれば、ナガタマムシの姿が見つかるはずです。
やった!
順調に採れている感を演出しましたが、この1頭目が出るまでに30分ほどかかっています(笑)
朝の林縁では特に、日当たりのいい枝先が限定されます。
タマムシを狙う上であたりはつけやすいですが、すくい方が悪いとなかなか入らなくてしんどいです。
今日ダメかも……という不安の中で最初に現れてくれるナガタマムシは、どんなにふつうの種類でもたまらなくうれしいものです。
タマムシ好きですからね!(笑)
アサギナガタマムシ
Agrilus moerens Saunders, 1873
最初に入ったのはアサギナガタマムシでした。
本種は芽吹いたばかりのやわらかいクヌギやコナラの葉っぱを好む? ようで、春のスウィーピングで特によく採れる印象があります。
この日に採集したアサギナガタマムシ。
左2頭は♂、右2頭は♀です。
アサギナガタマムシは雌雄で体色が異なる傾向があり、♂の前胸背は側部〜全体が金色に輝きます。
一方で♀は全体が濃い青色です。どちらも美しいです。
クヌギやコナラに花が残っているこの時期のスウィーピングでは、カスミカメムシの仲間が大量に入ります。
その中で大型で分かりそうな仲間は勉強のために持ち帰ってみました。
左:クヌギカスミカメ
Castanopsides kerzhneri (Josifov, 1985)
右:カイガラツヤカスミカメ
Cimidaeorus hasegawai Nakatani, Yasunaga, & Takai, 2000
カイガラツヤカスミカメは存在は認識していましたが採集するのは初めてです。
本種はオオワラジカイガラムシを捕食するようで、どことなくオオワラジカイガラムシ♀に似たような形、体色をしています。

オオワラジカイガラムシ(たぶん)
捕食者が被食者の姿をまねることで自分のエサとなる生物を欺く手法ですね。
コルリアトキリゴミムシ→カミナリハムシ類にもこういう関係があるかも的な話があった気がします。
このような擬態手法を隠蔽型動物擬態というそうです。
この場所のスウィーピングではドロバチの仲間も2頭入ってきました。
左:アトボシキタドロバチ
Allodynerus delphinalis delphinalis (Giraud, 1866)
右:サイジョウハムシドロバチ
Symmorphus apiciornatus (Cameron, 1911)
2頭は別種でした。
アトボシキタドロバチが属するキタドロバチ属のハチは、腹部にダニを収納する構造を持っています。
その中にはコナダニの仲間が収まっていて、営巣する際に巣の中にコナダニを放ち、幼虫の天敵である寄生者を駆除させるというのです。
幼虫が羽化すると、またダニはハチの中に収まり、次の世代へ……という風に深い関係が知られている種です。
ダニはハチの幼虫から吸血もするため、互いに利益を得る相利共生の関係が成立しているようです。
すごいですよね。
この関係性も、それを解明した人も……
春に日なたで飛んでいる虫
網を地面に置いて中身を確認していたとき、地表付近を飛んでいる虫がいることに気が付きました。
地表がやや露出する日当たりのいい林縁部
目で追いながら、飛ぶ虫の姿を見極める……
やはりこれは……
Nomadaだ!
ヒメキマダラハナバチ
Nomada flavoguttata (Kirby, 1802)
ここで出会ったのはヒメキマダラハナバチでした。
見た目が異なりますが同種の♂♀でした。
Nomada属=キマダラハナバチ類は、自身より毒性の強いアシナガバチ類に擬態していると思われるミツバチの仲間です。
模様がオシャレで好きなんですよね。
同定は難しいけど、やりがいがあります。


よく出会うダイミョウキマダラハナバチと、ギンランキマダラハナバチ
ダイミョウキマダラハナバチや全身赤いギンランキマダラハナバチはちょっとした草地や樹林があれば生息しているようで、気にしていると見かける機会は多い種です。
ダイミョウキマダラハナバチについてはここでも何頭か見かけました。
キマダラハナバチの仲間も多くは春に出現する昆虫で、先述したように日当たりのいい林縁などで地際を飛んでいます。
見つけるとうれしくなる虫の一つです。
辺りには菜の花も咲いていて、モンシロチョウが飛んでいました。
その中に、飛び方がやや直線的で小ぶりな個体が……!

ツマキチョウ
Anthocharis scolymus Butler, 1866
ツマキチョウの♂です。
表面のオレンジもきれいだけど、裏面の複雑な模様も好きですね……
他のシロチョウ類が夏や秋にも出現するのに対し、ツマキチョウの成虫が出現するのは春だけです。
春になったら出会いたくなるチョウですね。
写真の個体は少しくたびれていたのでリリースして、その後に飛んできた♀を採集しました。
♀の翅端は雄のようにオレンジ色にはなりませんが、ほんのり黄色味があることに初めて気が付きました。
安定のクヌギポイントにて
場所を少し変えて、クヌギの多い林縁に来ました。
このポイントでは毎年フチトリヒメヒラタタマムシが採れていて、なおかつミツボシナガタマムシやクヌギナガタマムシなど近所ではかなり得難いタマムシが採れた実績もある、有望なポイントです。
この構図は去年もやった気がする。
ちなみに今日は11m長竿+直径80cmの四折枠で、現状最大のコンビです。
この組み合わせは初めてなので、練習も兼ねています。
昨年はまだ9mだったので、高枝がかなりすくいやすくなりました。
80cmの枠は超大型な分、一度に広い範囲をすくえますが……枝とぶつかりやすく結局浅いスウィーピングになっている感も。
私の現時点での評価は、
60cm四折>80cm四折>80cm樹脂
です。
とはいえまだ上手に使いこなせていない感があるので、もう少し練習したいところです。
長竿や網の使用感レビューはまた別記事で書く機会を設けるつもりです。

で、肝心のスウィーピングの成果ですが……

網の中にいる虫の写真を撮るのはむずかしい
最初に入ったのはオオウグイスナガタマムシでした。
他のナガタマより少し大きめで、背面から見ても目立つ腹部の白斑が大きな特徴です。
同地で採れたウグイスナガタマムシと並べると……
上:オオウグイスナガタマムシ
Agrilus asiaticus Kerremans, 1898
下:ウグイスナガタマムシ
Agrilus tempestivus Lewis, 1893
大きさもそうですし、前胸背の雰囲気など細かいところも違うことが分かりますね。
ウグイスナガタマムシには目立つ白斑は出ませんが、「白斑が消えたオオウグイス」が出るので気をつけなければなりません(笑)
オオウグイスが網に入った時、同時に縁の赤いあのタマムシも入っていました。

フチトリヒメヒラタタマムシ
Anthaxia rubromarginata Miwa & Chûjô, 1935
「やった! うれしい!」
フチトリヒメヒラタタマムシはやや少ないタマムシで、クヌギのスウィーピングをがんばっていると時折採れます。
この場所では毎年1頭は採れていて、非常に心強いポイントになっています。
がっちりゴム化したので24時間放置して、乾き気味の所を展足。
なんとか破壊せずに済んだ……
今年は(体力的な意味で)いつもより頑張れないので不安でしたが……無事に出会えて本当にうれしいです。
タマムシ以外ではこんなものも。

クリベニトゲアシガ
Atkinsonia ignipicta (Butler, 1881)
これはクヌギの葉をすくっていると時折得られる小蛾類です。
標本にするのは難しいからとスルーしていたのですが、最近小蛾類の展翅を練習し始めた所なので、試しに採集してみました。
小蛾類の採集におけるポイントは「生かして持って帰る」ことですね。
ふつう、鱗翅目の採集では暴れないようにその場で〆ます。
しかし、小蛾類の場合は持ち帰るまでに袋や三角紙の中で擦れてしまいます。
そのため小蛾類をプラケースなどにしまって持ち帰り、家で〆てすぐに展翅する、というのが基本戦術になるようです。
そのやり方で展翅してみました。
展翅はまだ満足なレベルには達していませんが、本種の特徴であるトゲトゲの脚がよく分かる標本ができました。
もっと練習して、いろんな小蛾類を標本にしてみたいです。
(スウィープしてると、けっこう格好いいのが入って来るんですよね)
また、草地にはチカチカと特徴的な飛び方をする蝶の姿がありました。

ギンイチモンジセセリ
Leptalina unicolor (Bremer & Grey, 1853)
ギンイチモンジセセリの春型です。
河川敷の界隈には、本種が食べるオギ(イネ科)がたくさん生えていて、ギンイチモンジセセリもいろいろな所で見ることができます。

今日はほかの場所でも何度か見つけた
本種の春型は特に名前の由来である裏面の「銀一文字」の模様がハッキリとしていて美しいです。
ススキやオギのしげる環境で発生しますが、全国的に生息地は限られていて、埼玉県と環境省のレッドリストでともに準絶滅危惧(NT)に指定されているチョウです。
写真記録か標本記録はマメにやるように心がけています。
何が「いい採集ポイント」を作るのか
そんな感じで、今年もこのポイントで今年も無事にフチトリヒメヒラタタマムシに出会うことができました。
クヌギナガやミツボシナガはもう2年以上採れていないので、かなりの強敵ですね……(笑)
良いタマムシがよく採れるこのポイントの「強さ」って何なのか、何年も通う中で見えてきたことはあります。
挙げてみると、
- 樹木全体の日当たりの良さ
- 風がよく通る地形
- 網が届く枝の数
など。
あとは……
けっこう立派な枯れ枝もあります。
タマムシ類が発生するにはこういう枯れた(弱った)木が必要なので、これがあってこそ多数のタマムシが育まれるのでしょう。
(この周りの数本のクヌギだけでこれまで9種※のタマムシを採集しています)
※フチトリヒメヒラタ、アサギ、アオグロ、ウグイス、オオウグイス、ホソアシ、クヌギ、ミツボシ、ダンダラ
しかし、この枯れ枝もいつまで発生環境になっているか分かりません。
木材の腐朽が進めば今みたいにはタマムシが採れなくなるでしょう、既にピークは過ぎている感じはあります。
今年もう1度ここに来ておくべきか、なy
↑こういうのが良くないと思うな、良くないわ
場所を変えて、クヌギのほかにエノキやマグワなどの樹木もある林縁に来ました。
日当たりが良いです
まずはクヌギから。
けっこう上手にすくえたかな、という感覚がありました。

ダンダラチビタマムシ
Trachys variolaris Saunders, 1873
「今のスウィープうまくできた」って時にダンダラチビタマムシが網に入ることが多い気がします。
網で散々すくった後の枝先に本種が止まっているのを、今まで何度も目にしているからです。
何が足りてないのか?
- スウィーピングの強度?
- 振動の与え方?
- 有効にすくえた範囲?
スウィーピングもただすくえば良いというものでもなくて、考える必要のある要因はいくつもあります。
こういった要素を検証していくために、同じポイントに通って採集し続けることにも意義があると思っています。
例えば前回と網の枠の大きさや長さが変わった時、採集成果が前より良くなっているか? という疑問を検証しながら採集ができます。
その上でスウィーピングのやり方や道具を見極めていくことができます。
足りないのは技量か、道具か、ポイントの衰退か……
いろいろ考えながら試していくことも、昆虫採集の楽しみだと思います。
私は今年どのくらい採集に出られるか分かりませんが、作戦を考えることはできますからね!(笑)
思いついた作戦を試せる場所を多く持っていることが、「いい採集ポイント」を作る方法だと思います。
エノキのナガタマムシなど
話を採集に戻します。
ダンダラチビタマムシが入った網にはアサギナガタマムシも2頭ほど入っていました。
となりにエノキが生えているので、これも含めて再度すくってみます。
網の中に大きなナガタマムシのシルエット!
これは!!

ムネアカナガタマムシ
Agrilus imitans Lewis, 1893
エノキにつくムネアカナガタマムシです。
大型で胸の赤色も美しい種で、伐採木にもよく来ます。
何度も見ているタマムシですが、毎年1頭目が採れるとうれしいものです。

ヒシモンナガタマムシ
Agrilus discalis Saunders, 1873
同じくエノキにつくヒシモンナガタマムシも採れました。
こちらは成虫越冬するタマムシなので冬でも出会うことができます。
しかし今年は冬季採集をまともにやれなかったため、昨シーズン以来の再会です。
他にはニホンケブカサルハムシも多数入っています。
ニホンケブカサルハムシ
Lypesthes japonicus Ohno, 1958
翅端部がえぐれていたら別種です。
本種には今まであまり縁がなく、去年が初採集でした。
今でも「採れるとうれしい」存在だったのですが……こんなにふつうにいたっけ?
最近増えたとかじゃなくて? 気づかなかっただけ??
また、ヒトツメアトキリゴミムシも多く入っていました。

2頭だけ採ることに
春に花すくいとかやるとよく採れるような印象を持っています。
家の近所でもミズキの花などから複数採れています
今回はクヌギの近くにフジの花が咲いていたので、それに来ていたのかも。
オニグルミがあったら リンゴコフキ・チャレンジ
また場所を変えて、オニグルミが生えている場所に行きました。
ここで、道端の草に特徴的な模様のイモムシがいることに気づきます。

アヤモクメキリガ
Xylena fumosa Butler, 1878
並んだ白紋が特徴的なアヤモクメキリガの幼虫です。
日本最大の冬夜蛾なだけあり、幼虫も大きく育ってきています。
ヤハズエンドウについていました。
後日ほかの場所でも、ヤハズエンドウについている個体を複数見つけています。

ほぼ同地で冬に見たアヤモクメキリガの成虫
成虫も冬の糖蜜採集で出会えます。
幼虫の確認は本種の発生環境の具体的なヒントを得られる気がして、これも大切だなと思わされます。
そういえば、クヌギのスウィーピングでもカシワキボシキリガの幼虫が入っていました(去年、幼虫の姿を覚えた)。
幼虫がもっと分かるようになれば、新しい鱗翅目の生息地確認につながるかもしれません……
それで、この場所のオニグルミをすくったところ……グンバイムシが採れました。
たぶんこれが「クルミグンバイ」だと、信じて持ち帰りました。
左:クルミグンバイ
Uhlerites latiorus Takeya, 1931
右:ヒメグンバイ
Uhlerites debilis (Uhler, 1896)
クヌギから採っていたヒメグンバイと大変良く似ていて困惑しましたが、クルミグンバイで良さそうな感じです。
最近グンバイムシやナガカメムシを勉強しようかなという気持ちが湧いてきて、日本原色カメムシ図鑑の3巻を買ったところです。
スウィープしているといろいろな所で見る虫なので、ちょっとずつ採集して勉強します!
オニグルミからはリンゴコフキハムシ(コフキケブカサルハムシ)も採れました。
リンゴコフキハムシは真っ白な粉で覆われているハムシですが、あの粉が非常に脱落しやすくて、標本にする頃には真っ黒になってしまいます。
わりときれい目の個体がいたので、久々に「リンゴコフキ・チャレンジ」をすることにしました。
目標はシンプル。
「粉をよく残した状態で、リンゴコフキハムシの標本を完成させる」
です。
感覚的に、小蛾類と同じような戦法でいけるような気がしたのでやってみました。
- プラケースにいれ、生かして持ち帰る
- 帰宅後に〆る
- そのまま展足へ
1. プラケースにいれ、生かして持ち帰る
小蛾類の時と同じで、ケースに小分けで持ち帰ります。
いきなり毒瓶に入れるのがNGなのは言うまでもないですが、小分けするにしてもチャック袋だと失敗します(経験あり)。
背中をモノに触れさせない状態を作る必要があるので、ケースに入れます。
ケース内で壁に止まっていてくれれば、転がらない限り擦れません。
帰宅後に〆る
持ち帰ったらそのケースの中に薬品を染み込ませたティッシュを入れ(フタの間に挟むように)、〆ます。
挟むのがポイント。
毒瓶に単体で投入するのでも良い。
ここでティッシュを豪快に投入すると擦れますね(経験あり)。
そのまま展足へ
〆終えたら、硬直が解けるまで少し(2日くらい)おいて……
そのまま個別で展足します。
できるだけ背中には触れないように、足だけを付箋に貼り付けて展足……
タトウに包むと擦れる(経験あり)ので、独立して乾燥させます。
乾燥したら台紙への貼り付けまで先にやってしまいます。
という流れを経て、完成したリンゴコフキハムシの標本がこちら。
よし、ちゃんと白いぞ!
今までで一番きれいに標本にできました。
ただ台紙に貼り付ける寸前で落っことして、左の触角が少し消えてしまった……
今回でうまくいくやり方はつかめたので、今度はカツオゾウムシやホソアナアキゾウムシなど他の”粉虫”でもやってみたいです。
(脱線おわり)
格好の採集ポイント
明るい草地にはアゲハの姿もよく見られました。
タイミングよく目の前に来たので、1頭を採集。
きれいなベニシジミもいたのでこれも採りました。


アゲハとベニシジミ
※ベニシジミの写真は別の場所で撮影
春型のアゲハは翅のオレンジや青の斑紋が夏型よりも鮮やかで美しいです。
ベニシジミも夏は黒っぽくなりますが、春と秋に出る個体はオレンジ色が鮮やかです。
アゲハについては、夏型の1個体しか標本を持っていなかったので数年前から積極的に狙うようになりました。
長竿とアゲハの相性が悪く、振り逃がしたり、長竿を折ったり……(笑)
最近はリハビリのお散歩の際に「お散歩ネット」という小さな虫とり網を持ち歩いているのですが、これが扱いやすくアゲハにも相性が良いことが分かりました。
お散歩で採集できたアゲハチョウ類(展翅中)
今年はお散歩ネットのおかげでアゲハやアオスジアゲハも複数採れています。
長竿を犠牲にする必要なんてなかったんだね……(笑)
少し歩くと、栗の木が伐採されて枝が詰まれている場所がありました。
何か虫が来ていそうな雰囲気です。
ちょっと時期が早いかな
パッと見は何も居なさそうでしたが、じっくり見ているとホソアシナガタマムシが見つかりました。
運よく素手で採集できました。
左からアサギナガタマムシ♂、同種♀、ホソアシナガタマムシ♂
アサギナガタマムシがスウィーピングでよく採れるのに対し、ホソアシナガタマムシは伐採木に来ている個体に出会うことが圧倒的に多いです。
ともに代表的な「青いナガタマムシ」ですが、ホソアシナガタマムシの方が複眼が大きいことで容易に見分けることができます。
ヒメアサギやニセホソアシなど似た種をさらに知りたければ……タマムシハンドブックを買いましょう。すべて載っています。
伐採木には他にシラケトラカミキリも来ていました。

シラケトラカミキリ
Clytus melaenus Bates, 1884
この辺りだとエグリトラカミキリよりこちらの方がよく見かける気がします。
さらに、ギングチバチの仲間も飛来していました。
採りたかったのですが、枝に阻まれてうまくいかず……敗北。
金魚用の網を持っていたのでそれで網には入れた感じだったのですが、浅すぎて逃げたかな。
80cm枠ではどう考えても無理だし、お散歩ネットを持っていればいけましたかね。
未採集種っぽかった、くやしい(10分くらい待ったが、その後は来なかった)。
その場を後にしようとしたとき、足元を飛んでいるコガネムシが目に入りました。

ナラノチャイロコガネ
Proagopertha pubicollis (Waterhouse, 1875)
ナラノチャイロコガネはクヌギなどのスウィーピングで採れることもありますが、地表付近を飛んだりタンポポの花に来ているのを見たことがあります。

別の場所で出会ったヒラタアオコガネ
このくらいのサイズ感のコガネムシ類(ヒラタアオコガネ、ウスチャコガネなど)が楽しめるのも春ならではですね。
春のこうしたコガネムシは毛深くてかわいいです。
ナラノチャイロコガネの腹面。
拡大するとあんまりかわいげがないね……
ひととおりの採集ポイントを巡り終え、お昼過ぎ。
さすがに少し疲れてきたので、そろそろ帰ります。
帰りがけに、クワナガタマムシの確定ポイントを見つけました。
もはや近寄らなくても「いる」と分かる、切られたマグワ
一応クワナガタマムシの姿を見つけたのですが、元気に飛び回っていて採集や撮影はできませんでした。
過去に撮れた鮮明な写真があるので、かわりにそれを載せておきます。

クワナガタマムシ
Agrilus komareki Obenberger, 1925
今日はこのクワナガタマムシを合わせると合計で10種のタマムシに出会うことができました。
クワナガは採れませんでしたが、こんな虫がクワについていました。

ベダリアテントウ
Rodolia cardinalis (Mulsant, 1850)
イセリアカイガラムシ絶対殺すマン、ベダリアテントウです。
外来種ですが、悪い印象が今のところ全くないレアな例ですね。
イセリアカイガラムシは実家の庭にも発生しているので、ベダリアテントウの参上が待たれます。
ベダリアテントウはイセリアカイガラムシのいる樹木があるような都市公園ではよく採れますが、ふつうの野山ではあまり出会えない虫だと思います。
私は本種に去年初めて出会ったばかりで、その時は川沿いのヤナギから採れました。
クワナガタマムシが採れないかなとクワのスウィーピングをしていると、近くのヤナギの花が咲いていることに気が付きました。
マルバヤナギ(アカメヤナギ)ですね
分かりにくいですがちょうど花が咲いていたようで、すくうとヤナギならではの虫が採れました。
ゴマフヒゲナガ
Nemophora raddei (Rebel, 1901)
ゴマフヒゲナガは春にヤナギの花に来るかわいらしい小蛾類です。
早ければ3月から出ている虫なので、既に発生後期でスレ気味でした。
それでもたくさん入ったので、きれいめな個体は持ち帰り展翅の練習相手になってもらいました。
ふと、足元を見るとサシガメの姿がありました。


左:キバネアシブトマキバサシガメ
Prostemma kiborti Jakovlev, 1889
右:ビロウドサシガメ
Ectrychotes andreae (Thunberg, 1784)
どちらもこの辺りでは時折出会うサシガメですが、ビロウドサシガメは埼玉県レッドデータブック2018で絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
県内でも生息地の確認が増えてきている虫のようで、もうVUは不適なランクになっているかもしれません。
川辺で枯れ草を起こしたりすると意外と簡単に見つかる印象です。
とはいえ、「VUとは思えないぐらいふつうにいる」というのは自分の印象の中の話でしかないので、まとめて観察記録を報告しようとは思っています。
「県内で採集したレッドリスト掲載のカメムシ目」とかでまとめて出せるかな……と思っているところです。
最後に、フチトリヒメヒラタタマムシのポイントにも寄って、ダメ押しのスウィーピングをしました。
タマムシは採れなかったけど、採っておきたいと思っていたあの虫が入りました。

ラクダムシ
Inocellia japonica Okamoto, 1917
ラクダムシは春にクヌギのスウィーピングを行うとポツポツ採れる虫で、特に珍しいとも思っていませんでした。
しかし……本種も埼玉県レッドデータブックで絶滅危惧II類(VU)の指定を受けています。
あんまり標本や写真をとってないけど、これも要報告の虫かもしれません。
採集してないのが悔やまれますが、冬季のケヤキやスギ・ヒノキの樹皮めくりでも散々見ているんですよね。
まさかVUとは思わなかったよ……
自由な採集が楽しい
これで今日の採集は終了です。
9時から13時半までの4時間半ほどの採集でしたが、大変な充実感と疲労感(笑)を得ました。

今日採集したタマムシ類。まさしく「森の宝石」です。
出会いたかったフチトリヒメヒラタタマムシにも出会えたし、季節を感じられる春の昆虫をいろいろと見ることができて、楽しかったです。
最近は標本整理がようやく追い付いてきて、精神的に大きな余裕ができました。
今は標本作成にかかる時間や負担を考えて、採集対象をしぼる必要がなくなっています。
(休職してて体調さえよければ虫作業ができる、というのが大きい)
つまり、今までよりもっと自由に、自分の採りたい虫はなんでも採れるようになったのです。
標本作りが難しそうな虫に挑んだり、同定が大変そうな虫をじっくり調べてみたり……
これまでよりもっと深く昆虫採集を楽しめるようになってきました。
こんなにうれしいことはありません。
あとは、体の調子がよくなることを信じるのみです。
この採集以降は調子のいい日が多くなっていて、いい感じです。
仕事については休職の期限に間に合わず一度退職することになりましたが、同じ会社でパートタイマーとして再雇用していただくことになりました。
休み休みですが、少しずつ社会復帰をしていく所存です。
虫屋としてのフィールド復帰も、ね……
久々に採集結果まとめてみましょうか。
長い記事になりましたが、紹介出来なかった昆虫はけっこういました。
【結果】 ※色付きはレッドリストなどの掲載種
フチトリヒメヒラタタマムシ
Anthaxia rubromarginata Miwa & Chûjô, 1935
1♀
ヒシモンナガタマムシ
Agrilus discalis Saunders, 1873
1♀
ムネアカナガタマムシ
Agrilus imitans Lewis, 1893
1♂
オオウグイスナガタマムシ
Agrilus asiaticus Kerremans, 1898
1♀
ウグイスナガタマムシ
Agrilus tempestivus Lewis, 1893
1♂
ホソアシナガタマムシ
Agrilus ribbei Kiesenwetter in Kraatz & Kiesenwetter, 1879
1♂
アサギナガタマムシ
Agrilus moerens Saunders, 1873
2♂♂2♀♀
マメチビタマムシ
Trachys reitteri Obenberger, 1930
1♀
ダンダラチビタマムシ
Trachys variolaris Saunders, 1873
1ex.
ヒトツメアトキリゴミムシ
Parena monostigma (Bates, 1873)
2exs.
ナラノチャイロコガネ
Proagopertha pubicollis (Waterhouse, 1875)
1♀
リンゴコフキハムシ
Fidia atra (Motschulsky, 1861)
1ex.
ニホンケブカサルハムシ
Lypesthes japonicus Ohno, 1958
2exs.
チャバラマメゾウムシ
Borowiecius ademptus (Sharp, 1886)
1ex.
カシルリチョッキリ
Neocoenorrhinus assimilis (Roelofs, 1874)
2exs.
ケブカクチブトゾウムシ
Lepidepistomodes fumosus (Faust, 1882)
3exs.
ミドリサルゾウムシ
Ceutorhynchus filiae Dalla Torre, 1922
1ex.
ジュウジチビシギゾウムシ
Archarius pictus (Roelofs, 1875)
1ex.
Orchestes sp.
2exs.
ウスキホシテントウ
Oenopia hirayamai (Yuasa 1963)
1ex.
ベダリアテントウ
Rodolia cardinalis (Mulsant, 1850)
1ex.
セボシジョウカイ
Lycocerus vitellinus Kiesenwetter, 1874
1ex.
ツマキアオジョウカイモドキ
Malachius (Malachius) prolongatus Motschulsky, 1866
1ex.
ヒゲナガハナノミ
Paralichas pectinatus (Kiesenwetter, 1874)
1♂
アゲハ
Papilio xuthus Linnaeus, 1767
1♀
ギンイチモンジセセリ(国NT県NT2)
Leptalina unicolor (Bremer & Grey, 1853)
1ex.
ツマキチョウ
Anthocharis scolymus Butler, 1866
1♀
ベニシジミ
Lycaena phlaeas chinensis (Felder, 1862)
1ex.
ゴマフヒゲナガ
Nemophora raddei (Rebel, 1901)
3exs.
ハマキガ科
Tortricidae
1ex.
クリベニトゲアシガ
Atkinsonia ignipicta (Butler, 1881)
2exs.
コミミズク
Ledropsis discolor (Uhler, 1896)
1ex.
クルミグンバイ
Uhlerites latiorus Takeya, 1931
1ex.
ヒメグンバイ
Uhlerites debilis (Uhler, 1896)
1ex.
ナシグンバイ
Stephanitis (Stephanitis) nashi Esaki & Takeya, 1931
1ex.
ビロウドサシガメ(県VU)
Ectrychotes andreae (Thunberg, 1784)
1ex.
クヌギカスミカメ
Castanopsides kerzhneri (Josifov, 1985)
1ex.
カイガラツヤカスミカメ
Cimidaeorus hasegawai Nakatani, Yasunaga, & Takai, 2000
1ex.
キアシクロホソカスミカメ
Phylus miyamotoi Yasunaga, 1999
1ex.
ケブカキベリナガカスミカメ
Dryophilocoris miyamotoi Yasunaga, 1999
1ex.
ラクダムシ(県VU)
Inocellia japonica Okamoto, 1917
1♂
ミズアブ
Stratiomys japonica Wulp, 1885
1ex.
キアシブトコバチ
Brachymeria lasus (Walker, 1841)
1ex.
セグロカブラハバチ
Athalia infumata (Marlatt 1898)
1ex.
ニホンカブラハバチ
Athalia japonica (Klug, 1915)
1ex.
イヌノフグリハバチ
Athalia kashmirensis Benson 1932
1ex.
セリシマキモンハバチ
Pachyprotasis serii Okutani, 1961
1ex.
ハバチ上科
2exs.
アトボシキタドロバチ
Allodynerus delphinalis delphinalis (Giraud, 1866)
1ex.
サイジョウハムシドロバチ
Symmorphus apiciornatus (Cameron, 1911)
1♀
ヒメキマダラハナバチ
Nomada flavoguttata (Kirby, 1802)
1♂1♀
コハナバチ属
Lasioglossum sp.
1ex.

コメント