糖蜜採集が当たった日

ミツボシキリガ
本ブログで糖蜜採集に関する話は全然してきませんでしたが……2019年の晩秋頃に初めて糖蜜採集をやってからというもの、その楽しさと奥の深さにすっかりハマってしまいました(笑)
本来であれば過去のいろいろな体験談を踏まえて、糖蜜採集について私が知る範囲の事をまとめる記事を書きたかった……というか書いていて、先にそちらを上げたかったのですが、もう今季の糖蜜キリガ採集シーズンは終わりが近いので、もう少し経験を積んで次の秋頃に上げられればと思います。
本記事では直近で一番当たった、というか楽しかった糖蜜採集の採集記を書きました。
当たればこんなに楽しいぞ! というのがなんとなく伝わってくれればという気持ちです。


2021.03.01
この日の市民薄明終了時刻は18:10頃。
18:00時点での気象予報は……
気温: 10℃
湿度: 60%を超えている

「今日の糖蜜は当たるはず……」
いつもは500mlペットボトル一本分だけ作っている糖蜜を今回は二本用意し、より広範囲にわたって糖蜜を撒くことにしました。
糖蜜のレシピを参考までに以下に示しますが、私はなるべく安く、手軽に作る事を重視しているので内容や比率はわりと適当です。
最近はこのメンツに固定されてきました。

1: カルピス原液+水(3倍くらい)
1: 芋焼酎(25度)
1: 穀物酢



この日訪れたのは、目的のキリガが採れるなら多分ここが一番有望だろう、と前々から思っているポイント。
(条件が微妙で過去に2回くらい敗北している)
川沿いの林縁部で、ハンノキがそこそこまとまって生えています。
初夏には樹冠を飛ぶミドリシジミらしきものも目撃している場所なので、同じ鱗翅目であるあのキリガもきっといるはず。
その他は大きなエノキ何本か生えているため、ミツボシキリガも期待できる場所。
(でもここで出会ったことはない……)
少し離れるとクヌギやケヤキの多い場所もあるので、今回はそちらも含めて広範囲に糖蜜を撒いていきます。
普段、糖蜜の撒き始めはその日の日没時刻(この日は17:40頃)を目安にしています。
今回は糖蜜を撒く量も多いので、少し早め(17:30頃)に撒き始めました。
風は吹いたり止んだりで、風向きもバラバラだったので直感で撒く箇所を選びました。
全部で15ヶ所くらい撒きました。
端と端の距離はおよそ800mほどです。
これだけやって、外したら目も当てられないがそれは絶対にありえないという謎自信からのやりすぎ……
18:00を回った頃に糖蜜を撒き終え、市民薄明の終了時刻(18:10頃)まで少し待機。
※市民薄明の終了時刻は多くのキリガの活動開始時刻とほぼ一致します。
時刻になったら、設置した糖蜜を確認していきます。
ほんの15分前くらいに撒いた糖蜜には、既に4,5頭のフサヒゲオビキリガが来ていました。
やはり、これは当たる日の勢い……!
ミヤマオビキリガやカシワオビキリガなどのConistra属も続々と確認。
個体数もいつもより多く感じられました。
(ゴマダラキリガも1頭だけ来ていた)
チャマダラキリガ
チャマダラキリガ
Rhynchaglaea scitula (Butler, 1879)
この黒っぽいタイプのチャマダラキリガは初めて。
一番よく見るチャマダラキリガはこんなタイプ↓

近所におけるチャマダラキリガやクロチャマダラキリガは、コナラやクリのある環境で糖蜜をすれば時々出会える種です。
地域によってはクロチャマダラキリガが最優占種になるようですが、暖地性のキリガのためこの辺りでは多くはありません。
そのため格好いい変異個体に出会うのはなかなか難しいように思います。
スモモキリガ
スモモキリガ
Anorthoa munda (Denis et Schiffermüller, 1775)
ホソバキリガ
ホソバキリガ
Anorthoa angustipennis (Matsumura, 1926)
早春に羽化するキリガであるAnorthoa属の2種も来ていました。この日が今季初確認でした。
このスモモキリガは前翅中央あたりを横断する帯がはっきりしていて綺麗な個体でした。
広範囲に撒きすぎたせいで採集しながら見回るのに時間がかかってしまい、一番端の場所に着いた時点で18:40。
スタートから30分が経過しています。
普段の私の糖蜜採集ではこの辺りから飛来時間の遅い種が来始める頃で、

アヤモクメキリガ
Xylena fumosa (Butler, 1878)
アヤモクメキリガが既に来ていました。
多食性ですが、主に草地環境にいるとされるやや少ない種。でも最近は増えているとか?
私が田畑に近い林縁環境でいつも糖蜜採集をするからなのか分かりませんが、今季の糖蜜ではハズレの日以外は必ず1頭は見かけているような気がします。
でも一ヶ所に2頭来たのは初めてだった……
(確認地点数で言えば、これで4地点目)
アヤモクメキリガ
この日は、というかこの場所はアヤモクメキリガが多かったようで合計で7,8頭ほど出会えました。
もう当分採らなくていいだろう……
その後もイチゴキリガやキバラモクメキリガなど、一通りのキリガを確認しつつ、反対側の端……つまりスタート地点に戻ってきたのが19:30頃。
自転車で行ったり来たりすれば良いやと思ってたけど、これはちょっと忙しすぎるかも。
あとは本命のキリガが来てくれることを神に祈るほかありませんが、絶対来ると思ってた同属のミツボシキリガがまだ来ていないのでなんか不安。
と思ってたら、

ミツボシキリガ
Eupsilia tripunctata Butler, 1878
「いるじゃないですか!!!」
スタート地点、一番端の木に撒いた糖蜜に来てました。
縁毛のギザギザは失われてるけど、私にとってはうれしいキリガです。

ミスジキリガ
Jodia sericea (Butler, 1878)
そんなミツボシキリガの真下にはミスジキリガが!
良好なクヌギ林で見られるやや少ない種で、オレンジ色の上翅に白い下翅が美しい種です。
越冬明けにしては綺麗な個体でうれしい。
広範囲に撒いた甲斐があった……
個人的にめちゃくちゃ好きなキリガなので、後日別のポイントに採りに行きました。
無事にきれいな複数個体に出会うことができました。↓
ミスジキリガ
ミツボシキリガや今回の目標種を含むEupsilia属も飛来が遅い部類(市民薄明終了から30分後〜)だと思っています。
本命が来るのはこれからかもしれない……!
再び、ハンノキに撒いた糖蜜をみていきます。
(2往復目)
チャマダラキリガ
チャマダラキリガ
Rhynchaglaea scitula (Butler, 1879)
ここで、非常に格好良いタイプのチャマダラキリガが来ていました。
こういうの見てみたかった……!
ヨスジノコメキリガ
ヨスジノコメキリガ
Eupsilia quadrilinea (Leech, [1889])
そういえば一往復目の時も来ていましたが、ボロかったのでスルーしたヨスジノコメキリガ。
この個体は綺麗だったので採集していきます。
ヨスジノコメキリガもまた暖地性種で、この辺りで採れるようになったのはおそらく最近のこと。
私も渓流沿いや低地の雑木林など、色々な所で出会っています。

イチゴキリガ
Orbona fragariae pallidior Warren, 1910
外横線がやけにカクカクした個体で、一瞬ハッとさせられましたが……イチゴキリガでした。
普通のイチゴキリガに比べて煤けた感じで少し色も異なる個体な気がします。
↓よく見るタイプのイチゴキリガ
イチゴキリガ
イチゴキリガ自体はこの辺りでは多くて、
『日本の冬夜蛾』でも長野県では市街地周辺の緑地でも採れる、とされています。
実際いろいろな場所での糖蜜採集で来るし、春の糖蜜採集では10頭くらい来ることも珍しくないですが、日本のどこでも普通にいるわけではないみたいです。
この日は20頭以上来てました。
ありがたみがない……
時刻が20:00を回る頃。
樹幹に撒いた糖蜜はほとんど乾いてしまい、早くから飛来していたConistra属やフサヒゲオビキリガの多くはどこかへ行ってしまいました。

しかし、よく見ると糖蜜を撒いた木の下にキリガが集まっています。
撒く際に下に飛び散った糖蜜が落ち葉や下草に付着し、そちらはまだ乾いていなかったらしく……樹幹から下の方に移動している個体が多くみられました。
以降は飛来したキリガを探すのも苦労しそう。
落ち葉の間にひっそりと隠れているイチゴキリガやフサヒゲオビキリガを見つけつつ、見落としがないように丁寧にルッキングを続けていると……

お、これは今日初めてみる種な気がする。
他のキリガとは翅の畳み方が異なる個体を見つけました。
特に思い当たる種がいないなあと思いつつ、ひっくり返してみると……
ウスミミモンキリガ
ウスミミモンキリガ
Eupsilia contracta (Butler, 1878)
「あああああーー!!!!!」
みつけた……!!
やっぱりここだったんだ!!
まさしくこの日の目的だった、
ウスミミモンキリガでした。
寄主植物であるハンノキの林には多いとされる種ですが、ハンノキ林自体がそんなに多くないため分布は局所的なようです。
過去に埼玉の河川敷でも採集していますが、その時よりもだいぶ綺麗な個体でした。
この冬の間、近所でハンノキの生えている場所を何ヶ所か訪れ……敗北を重ねながらポイントを見定めていましたが、その努力がちゃんと実ってくれました。
条件や場所を合わせて、狙ったキリガがしっかりと採れたのが本当にうれしかったです。
糖蜜採集でちゃんと当てられる楽しさというものを初めて感じられた瞬間でした。
とはいえ……この日確認できたウスミミモンキリガはこの1頭のみ。
しかも、この辺り……? と目をつけていた場所からは500m以上離れた場所(ケヤキの多い林縁)で採れました。
どこかにハンノキもあったのだろうか。
ほんと、広範囲に撒いた甲斐があった……
とりあえずこの日の目標は達成しました。
しかしまだ飛来が続いていそうな感じがするので、引き続き見回りを続けます。
そういえば、糖蜜『当たってる』って言ってるけど、「糖蜜に蛾が集まってる写真がないのはなんで?」と思った方もいるんじゃないでしょうか。
『集まって』ないからです……
私の撒き方の問題によるところが大きいのだと、この日は痛感したのですが……樹幹だけでなく下の落ち葉や周囲の低木草本に相当飛び散ってしまっていて、そちらにかなり分散してしまうのです。
なので『いかにも』って感じに一ヶ所にキリガが集結してる写真は撮れませんでしたが、
全体の飛来数は余裕で3桁を超えていました。
(この日の糖蜜に飛来した冬夜蛾は17種で、これも自分史上最多でした。)

これはおそらくこの日一番多くのキリガを集めた木。ツル植物のキヅタが巻き付いています。
地表に散ってたり葉っぱの裏に隠れたりしていて分かりにくいのですが、少なく見積もっても20頭程度のキリガが来ていました。
(写っているのはごく一部です)

別の場所では、飛来が遅めなイチゴキリガやキバラモクメキリガなど大型種ばかりが残留しているちょっと変な光景も見られました。
ミツボシキリガ
スギの葉っぱに撒いた糖蜜は樹幹に比べて乾きにくかったようで、本日2頭目のミツボシキリガが来てくれていました。
わりと綺麗な個体でうれしい。
クロチャマダラキリガ
クロチャマダラキリガ
Rhynchaglaea fuscipennis Sugi, 1958
一瞬なんだか分かりませんでした……
これはクロチャマダラキリガの変異の中でもあまり多くないとされる『前翅の外横線内側と後縁が黒褐色になる変異』タイプの個体です。

キマエキリガ(右写真)に雰囲気似ているので『キマエ型』みたいな呼び方があった気がする。
まさか長野にいる内にこの格好良い変異個体に出会えるとは……
チャマダラキリガにせよクロチャマダラキリガにせよ、全体の飛来個体数は僅か(3,4頭程度)でしたが、この日は変異個体に恵まれた日だったと思います。
……そんな感じで、この日はかなり長い時間飛来が続いていたように思います。
最後に3頭目のミツボシキリガを確認して、撤収したのは21時頃でした。
夜間に気温の下がりやすい長野県の糖蜜採集でここまで長期戦になったのは初めての事でした。
この日の気温と湿度は以下の通りです。

改めて見たら18時時点では湿度60%超えてなかったようです。
超えたらもっと凄かったのか……?
自分の中では飛来のピークタイムに湿度が50%を切っていると爆死という感覚がありますが、それより上は経験不足で正直よく分かっていないのです。
とはいえこの日の糖蜜採集が当たり、飛来が長く続いた理由はグラフを見て何となく予想できます。
この地域、この時期としては異常に暖かい(+湿度も高い)夜だったからなのでしょう。
春先は気温が高い日は多いのですが、湿度というのが結構重要かつなかなか思い通りにいかない要因だと思っていて、、、
その話は、またいずれということで……
糖蜜採集は同じ場所でやっても結果が変わるし、その原因は繰り返し採集を行うことで一つずつ腑に落ちていく感じがして、あれこれ考えるのも楽しいのです。
地域や環境、時期が変われば『当たり』のレベルも全然違うと思うので、『本物の当たり』はこんなものではないと思われてしまうかも知れませんが……目的の種に出会えて、かつ多くのキリガに恵まれたこの日の糖蜜採集は私にとって『当たり』の日だったのは間違いありません。
副産物の少ない冬の採集のお供に糖蜜採集は非常に有効だと思うので、今後もいろんな所でやっていきたいなと思っています。
最近の私は完全に糖蜜採集がメインになってしまってるけど……(笑)

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