大学生としての採集、最後の日

2021.03.20
明日は卒業式です。
私が大学生であることの証、学生証の有効期限は3/31までですが、卒業式と同時に学生証を返還することもできます。
その場合はその時点で大学生としての資格を失うとも言えます(厳密にはそうでないのかもしれないけど)。
つまり……明日学生証を返還する私は長野県で、大学生として採集できるのは今日が最後になるということです。
ネジロカミキリ
ネジロカミキリ
Pogonocherus seminiveus Bates, 1873
昼間も少しだけ外に出て、2020年に見つけていたネジロカミキリの発生を確認しました。
一か所でしか発生していないかと思っていたら近くの別の木でも見つかりました。このポイントならまだ当分は安泰かな……
今シーズンはオサ堀りをする気がなんか全然湧いてこなくて、昼はこのくらいしか出来ませんでした。
近所にいるオサムシで採りに行ってない種はまだいくつかあったんですが……
やっぱり今日も夕方以降の蛾類採集がメインになる流れでした。
幸運にも本日の条件は良好。
日中は曇っていたため湿度は大きくは下がらず、雨が降る直前のジメッとした夜です。
標高を上げても18時時点の気温は8℃程度ある。
ということで……最後の採集では標高を上げてシナノキ食のキリガを狙うことにしました。
近所でシナノキの生えている場所はごく僅かしか見つけられていません。
(『あの場所』を超えた先にはシナノキがそこそこ生えていますが夕方からサクッと行く気にはならない……)

新地開拓やり直し

2018.06.02この日は先週辿り着けなかったB谷の奥地まで行くため、早朝から採集に出かけました。市民薄明とともに出発しようとすると朝早くなりすぎて前日の疲れを引きずる事が心配だったので、日が出た後に出る感じで行きました…

この回で見つけてから何度も訪れたポイントがその一つ。
シナノキは一本しかない場所ですが、ここで多数得られたタケウチトゲアワフキはシナノキにつく半翅目。
……つまり半翅目より高い移動能力をもつ鱗翅目、シナノキ食いの蛾類も十分狙えるはず、という極めて安直な発想。

カバイロミツボシキリガ
カバイロミツボシキリガ
Eupsilia boursini Sugi, 1958
シナノキ食のキリガとしては、カバイロミツボシキリガには過去にこの場所付近で出会うことができています。
ということで今回の目標はまた他のシナノキ食キリガです。


少し早めにポイントに着いたので、周辺の根返りや斜面を適当に掘ってみたものの、コクロヒメゴモクムシが出ただけでした。

汚れた道具を川のそばで洗おうと、緩やかな流れのある場所へ。
道具を洗っていると、水の上で溺れている虫が……いや、溺れてない。

ユキクロカワゲラの一種
「水上も歩けるのか……」
さすがに水の流れに逆らって自由に歩けるほどではなさそうですが、自ら入水して水上を移動する様子が観察できました。
雪の上を歩くことが知られるユキクロカワゲラの仲間には、1月にも同じ場所で出会っています。

氷点下、雪の上を歩く虫たちに会いに行きました。

雪上昆虫とは雪上昆虫というのは、読んで字の如く雪の上で活動することができる昆虫であり、雪が積もったタイミングでなければ簡単には出会えない冬限定の昆虫でもあります…

しかしこの個体はそれよりも小型で、時期的にも別の種類になる可能性が高そうです。
今回みられた個体はこの一頭だけではなくて、足元の水際の枯葉や石上を歩き回る個体が無数に見つかりました。
雪の上で出会って感動していた一月の私は一体何だったのか……(笑)
数頭持ち帰って、今回は液浸標本にしました。
しょう
さて、そろそろ日没です。
今回の目標種は糖蜜でも灯火でも狙える虫なので、同じ場所でやって勝率を上げるか、あるいは……
標高少し上げたらBrachionychaとか狙えないだろうか。

残雪の残る山地帯で春に得られるというキリガの仲間で、ちょうど今発生シーズンでした。
標高でいえば1000mちょっと超えた程度のこの場所にいるかどうかはかなり微妙ではあるが……
以前来たときは雪が積もっていた場所ですが、すでに雪は溶けていて……正直まだもう少し標高が欲しい感じはするものの、やるだけやってみようかな。
今日は誰もいないし、普通は夜間に車が来るような場所じゃないので、ライトトラップを離れた場所に置き去りにしても問題ないだろう。
今日が最後。悔いなく終えるためにやりたいようにやればいい……
糖蜜をやりたいシナノキのポイントから15分程山を登った地点にライトトラップを設置することにしました。
つまり今日の採集を成立させるには……
・少し早めに糖蜜を撒いて、暗くなるころに山を登りライトを点灯させる。
・即Uターンして糖蜜ポイントに戻り、糖蜜を見回る。
・糖蜜を一通り見終えたら再び登山し、ライトトラップに専念する。
まあ、やれないことはないかな……?

今にも雨が降り出しそうな空。左に写っているのがシナノキです。
ライトトラップのセットを上の方に置いたまま糖蜜ポイントに戻り、糖蜜を撒き始めま……
噴射器、壊れてんだけど(絶望)
何これ? は? ちょっと待ってチョットマテ……
レバーが完全に逝ってて全く噴射できなくなっていました。
今まで若干挙動が怪しい気がしてたけど……
よりによって今日壊れるか!? 最終日に壊れるか!?
噴射器を使わずとも糖蜜を撒けないことはないのですが、分量調節とか設置場所に若干の制約がかかります。 
迷っている時間はない。とりあえず今回はティッシュに染み込ませる作戦を取るしか……
(雨降ってきちゃった……)
蛾類の採集をやる上で、小雨は場合によっては味方になるともいわれます。
しかしこの日21時頃からは雨予報となっており、山奥のここではいつ本降りになって撤退を強いられてもおかしくない状況でした。
……撤退を考えるとやっぱライトトラップも糖蜜のそばでやった方がいいか。
降り始めた雨や慣れない糖蜜の撒き方に焦りながら糖蜜を撒き終え、山を登ってライトトラップの機材回収に走る(しんどい)
ああもう、グダグダだ……(笑)

※省略してたけど昼間、自転車がパンクしているのに気づき直しています(夕方から出ようとしてたら詰んでました)
なんだろう、今日採集しないほうがいいんかな……?
糖蜜のポイントに戻り、ライトを点灯してから糖蜜の見回りを開始します。
市民薄明終了から5分程経っています。ちょっとくらいの雨なら大丈夫なはず……!!
一本目の木を見てみると、

既に6頭のキリガが飛来していました。
やはり、これは当たる日の勢い……!!
ていうか……

ヨスジキリガ
Eupsilia strigifera Butler, 1879


ヨスジキリガが来てる!!!
ヨスジキリガは本州に産するEupsilia属(ミツボシキリガ等の仲間)の中で私が最後まで採れなかった種でした。
『日本の冬夜蛾』における珍品度は☆☆、飼育下ではクヌギを食べることが判明していますが、近所のクヌギ林での糖蜜には飛来しませんでした。
ただ、渓流沿いで良く得られるという話があり、今回の場所は確かに渓畔林的な環境でした。
クヌギは全くなさそうだけど、ミズナラとかあったし他のブナ科を利用しているのだろうか……
生息環境が分からず、もうほとんど諦めていたのでここで採れてくれてうれしかったです。
ちなみに日本産Eupsilia属もあとは北海道にいるアレ(伝説)を採ればコンプリートですが、採りに行く日は来ないでしょう。
(北海道に移住でもしない限りは……)
ヨスジキリガ
しかも一頭だけではなく、複数来てくれました。
(ライトトラップにも1頭だけ来てくれました)
カタハリキリガ
カタハリキリガ
Lithophane rosinae (Püngeler, 1906)
他にはカタハリキリガも複数来てくれました。
秋に羽化して成虫で越冬するキリガですが、写真の個体はかなり綺麗だったので採集していくことに。
順調かな、と思ったのですが期待していたシナノキの周囲に撒いた糖蜜は全然ダメでした。
(焦って撒いたせいで向きとか撒き方とかの考慮が足りなかったかも……)
今日より遥かに条件が悪かった時の糖蜜でもカバイロミツボシキリガは来てくれたけど、この日は一頭も飛来しなかった……

気象条件を見てみると湿度があまり上がっていないことに気づいた。
雨もちょっと強くなったりしたし、いろいろ良くなかった部分もあったのだろうか……

そんな感じで糖蜜は終わり、ライトトラップの方に移動します。
やたらとオカモトトゲエダシャクが飛来する日で、ヤガはカシワオビキリガやホシオビキリガが来ている程度……
雨も一時的に弱まってきて、微妙に飛来が続く(ほぼオカモトトゲエダシャク)ので粘ってはみる。
心が折れかけていた20:30頃でした……
ウスアオキリガ
ウスアオキリガ
Lithophane venusta venusta (Leech, [1889])
個人的に好きなキリガの一つ、ウスアオキリガが来てくれました。越冬後でもまだまだ綺麗だ。
本種の寄主植物の一つであるミズナラが生えるような山地帯で得られることが多い種です。
今日の場所なら来てくれると信じていたので、安心した……
過去にも先輩との街灯巡りや2020年春にやったライトトラップなどでちょくちょく出会えてはいたのですが、擦れた個体ばかりだったので美しい個体に出会えてよかったです。
なお、私が気づいていなかっただけで糖蜜採集中に既に複数飛来していたようで、この後に幕下の落ち葉に紛れる2個体を発掘しました。
21時前頃になると再び雨が降り始めてきたのでさすがに撤退することに。
結局目標だったシナノキのキリガ……モンハイイロキリガには出会えませんでした。
しかしシナノキ食いの虫なら今後またどこかで狙える機会が作れると思うので、いつかリベンジします。
なんとなく不完全燃焼感あるけど、自分としてはようやくヨスジキリガが採れたのでいい〆になったかな……
そんな事を思いながら幕を片付ける。
ウスアオキリガみたいに幕の下の落ち葉に潜り込んでる蛾がいないか、と落ち葉をかき分けてみると……一頭の蛾が。
ああアトジロエダシャクか、来てたんだね……などと思いながらつまみ上げてみるとアトジロエダシャクじゃなかった。ヤガでした。
これって……!
シロクビキリガ
シロクビキリガ
Lithophane consocia (Borkhausen, 1792)

シロクビキリガ……!!
そうか、そんなのもいたわ(存在忘れてた)。
寄主植物はハンノキ(飼育下)が知られ、この場所にはタニガワハンノキが大量に生えていたのでそこから発生したものと思われました。
ハンノキリガと雰囲気が似てますが、明らかに大型で迷うことはありませんでした。
これも初採集のキリガだったのでうれしい。
これで学生最後の採集は終了。わりと善戦したと思う……!
余韻に浸る暇もなく、強くなる雨の中帰宅。
今後もたまに過去の長野での採集記を書くかもしれませんが、基本的には新天地での採集記を中心に書いていこうと思います。
(そもそもそんなに採集行けないと思うけど、どうなるんだろう……)

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