2024.10.20
この日はいつもより調子のいい日でした。
「散歩行くか」
休日の習慣になっている散歩へ、いつものように出かけます。
そういえば……今日は何日だっけ。
もう、20日……20日!?
10月もう終わってしまうのか!!
10月も終わりが近づいてきて、だいぶ寒くなってきましたよね。
日中活動する虫を探せる時期も終わりが近いが……やり残したことが、ある__
ダラダラと1日を溶かしていていいのか。
散歩を始めてから数分でUターンし、準備して採集に出ました。
今日は車が使えない日なので、電車で出かけます。
1時間強+徒歩20分くらいで今回の目的地に着きました。
早速、気にしたい植物が生えています……

ヌスビトハギ(マメ科)
そうです。
今シーズンやり残した採集、埼玉県産ヌスビトハギチビタマムシを探しに来ました。
前回(→第一回チビタマムシ穴埋め採集)よりも山に近くて自然度が高いエリアを選んだつもりです。
ヌスビトハギは想像以上にたくさん生えていて、かえってルッキングに苦労するほどでした。
多く生息していれば食痕が目立つため容易に発見できる虫ですが、意地でも採りたい今回は低密度で生息している可能性も考慮しなければなりません。
つまり、ルッキング頼りではなくスウィーピングやビーティングも駆使して丁寧に探す必要がある、ということです。
とりあえずスウィーピングが良いかなと思って網を取り出しましたが、ものの数分で後悔することになりました。
こんな網では採集にならない
前回と違って今の時期はヌスビトハギの実がしっかり熟していて、ひっつき虫としての力を開放していました。
ちょっとスウィーピングをするだけで網はヌスビトハギまみれに。混ざって生えてるイネ科? のひっつき虫も非常に厄介。
という状況なので、すぐにビーティングに切り替えました。
ビーティングは折り畳み傘を使っているので、素材の都合上ひっつき虫がつきにくくて少し楽です。
(でも衣服にはめっちゃついてくるのでした)

しかし……大量にヌスビトハギが生えていても全くいません。
それらしい痕跡もゼロです。
ヌスビトハギがまとまって生えていれば、OKというものでもないようです。
不安になるけど、今日は徒歩採集なので見切りをつけて転戦とかは無理です。
林内でヌスビトハギを叩きながら歩くことおよそ1時間。
道路沿いで少し明るい環境に出ました。ここにもヌスビトハギが生えています。
小さい株が多く、ヤブマメも混じって生えている
叩けそうな株は積極的に叩いていきます
この株から、本日最初のチビタマムシが落ちました!
明らかにヌスビトハギから落ちたぞ……お前、分かってるよね?
見た目から、マメかヌスビトハギのどちらかです。
両種を見分けるポイントである小楯板も確認してみます。
(小楯板が見えないくらい小さいのがヌスビトハギ)
あれ?
小楯板が、見えない……
これマジでヌスビトハギチビタマムシじゃないのか!?
どう考えてもヌスビトハギから落ちたし、信じていいよね??
祈りを込めて採集ポイントを記録する
しかし、今叩いたヌスビトハギの近くにはヤブマメも生えていて……

葉を食べるマメチビタマムシの姿が
マメチビタマムシもいました。
ああ、そう……(諦め)
しかし、粘り強くルッキングを続けた先でついに光明が__
ヌスビトハギに、チビタマ(赤矢印)が!!
実がついていることからも明らかなように、この植物はヌスビトハギで間違いありません。
そして赤矢印で示した部分に……チビタマムシがついています!
これが意味するところは、一つしかないでしょう!!

ヌスビトハギチビタマムシ
Trachys tokyoensis Obenberger, 1940
ということで、無事にヌスビトハギチビタマムシを見つけることができました。
小楯板の小ささはこの写真からでも分かりますね。ちゃんとヌスビトハギの葉をかじっています。
1頭見つけるのに、ここまで苦労させられるとは思いませんでした。
あとはこれを逃がさないように回収するだけです。
毒瓶を直接あてて採ろう。
あっ、となりの草が当たって__ポーン
弾け飛んで、消えました。
とんでもないことをしてくれたな。
もうこの道も終盤に差し掛かっているというところで、唯一の個体を吹っ飛ばしてしまいました……。
ここから……さらに丁寧にルッキングを続けます。
道の反対側にもヌスビトハギが生えていたので、戻りつつしっかり見ていきました。
しかし……いません。
理想的な「食痕がびっしりついた葉」はなく、見つかる食痕(らしいもの)もごくわずか。ここは密度が低いエリアのようです。
この葉、食痕が怪しい
1頭目をロストしてから約1時間。
必死に捜索を続ける中で写真の株を見つけました。これは……低いけどちゃんと立ってるのでヌスビトハギですね。
かなり「それっぽい」食痕がある気がして、この葉をよく見ると……いた!
よし! 見た感じヌスビトハギチビで大丈夫そうだ!!
今度こそヌスビトハギチビタマムシを確保しました。
これで今日の目標は達成です……1頭目をロストした時はもうダメかと思いましたが、何とか採れてよかったです。
こんどは写真も撮らずに採集した
いたのはやはりこの食痕の位置でした。
やはり食痕を頼りにしたルッキングが本種には一番有効そうですね。
このあと、ロストした個体がいた株を再び見た所……なんと近くの草の上に戻ってくれていて無事2頭目も確保することができました。
これらの個体は帰宅後に改めて同定し、ヌスビトハギチビタマムシであることを確認しています。
今日採った2種の比較
分かりにくいですが、ヌスビトハギチビタマムシの小楯板は非常に小さくほとんど見えません。
腹面の違いも見てみましょう。
厳密には「縦隆線」の並び方が違う
前胸腹板突起の違いも、何となく分かるでしょうか。
マメチビがストレート、ヌスビトハギチビは末広がりな感じです。
あ、ちなみに……この日の最初にマメチビとともに採っていた個体(ヌスビトハギのビーティング)もヌスビトハギチビタマムシで合ってました。
つまり、ロストした個体の代わりを必死に探す必要はなかったわけですね(笑)
何はともあれヌスビトハギチビタマムシが無事採れたら、あとはハイキングです。
ビーティングやりまくれば何か採れるかもしれませんが、そこまで欲を出さなくてもいいかなと思いました。
理想のヌスビトハギがあるじゃないかー!
道中、完全にそれな食痕がバリバリ入っているヌスビトハギを見つけました。
これは絶対チビタマムシの仕業ですね。最初からこういう株が見つかってくれれば苦労しなかったのに……
とはいえ、葉を見た限りではチビタマの姿はなく、
どこにいるか分かりますか?
なぜか茎にしがみついている1個体を見つけたのみでした。
なお、この近辺にはキイチゴ類も生えていました。

ナガバモミジイチゴとかかなあ
これに若干ながら食痕があるような気がして、念のため叩いてみるとやはりヒラタチビタマムシが落ちました。

ヒラタチビタマムシ
Habroloma subbicorne (Motshulsky, 1860)
別の市町村で前回採ったため2地点目ですが、これはこれでうれしいですね。
チビタマ穴埋め採集をする上では、このポイントに来るのが正解だったということか……
採集としてはこれで終わりで、あとは事故なく帰れればいいよねなどと、浮かれ切った自分にこのあと災難が。
川です。つまりは……
帰り道、川を渡って道をショートカットしようと試みました。
しかし飛び石の感覚はかなり広く、ギリギリ届くかどうか。
調子に乗って飛んでみたらまったく届かず、川にダイブしました……(笑)
足が濡れちゃったとかのレベルではなく、胸までしっかり水に浸かってしまってほぼ全身びしょ濡れです。
(水深はけっこう深かった……)
落ちた時コンクリに手をついたことで擦り傷を負い、けっこうな出血もありました(まあまあ痛かった)。
ヌスビトハギチビタマムシが採れてるから許せたよねとか、
スマホもイヤホンも冠水したけど生きてたとか、
COOLPIX P950持ってきてなくて良かったわとか……「幸いなことに」な情報をかき集めて何とか気を保つことができました。
川岸で服や靴を乾かしがてら、捕虫網についたひっつき虫の除去作業を行いました。
去年SNSで紹介されていたテクニックを使いました。
ウェットティッシュで絡めとる
多くのひっつき虫はウェットティッシュで簡単に除去できます。
特に捕虫網についたひっつき虫にはこれが効果大で、あっという間に大部分を除去できました。
あっという間に終わってしまったので、濡れた服が全然乾いていません(笑)
今日は電車移動なのでもうあきらめて、やや濡れたまま電車に乗って帰りました。
(もちろん、座席に座ることはできなかった)
この日は寒かったので、上に何か羽織りたかったのですが上着も濡れてしまったのでシャツ1枚で耐えるしかありませんでした。
体温はみるみる奪われ、家に着くころには鼻水ズルズルになっていたのでした。
終わりは盛大にやらかしましたが、課題だった県産ヌスビトハギチビタマムシが採れてホッとしています。
ひとまず今季のタマムシ採集はこれでおしまいになると思います。
採集としては、気まぐれでライトトラップしたり糖蜜やったりはあるかもしれません。振り返りはまた、年末にでも。
今年の採集データをこれからいったん整理して、冬にかけて標本化作業を進めていくつもりです。
並行して、いくつかある報告の準備も進めます。
タマムシに関してはチビタマムシの穴埋めがしっかり決まったおかげで、より充実した報告が作れそうです。
ドウイロチビタマムシは__
第三回、樹皮めくり編があれば狙うかもしれません。

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