冬に一日かけて本気で生き物観察したら何種類に出会えるのか!?

「本気」の数字が見たい

YouTuberの鷹切美鶴さんを知っていますか?
彼は直翅類などを中心とした昆虫類や両生・爬虫類の採集、観察動画をよく上げている生き物系YouTuberさんです。
彼の投稿動画の中でも人気の企画に「24時間本気で生き物採集」というものがあります。
24時間かけて生き物採集を行い、観察できた生き物(動物全般)の数をカウントするという企画です。
100万回再生を超える動画もあるような人気企画で、鷹切美鶴さんはこれを夏だけでなく冬にも行っています
彼が過去に投稿した24時間採集動画(冬)での、カウント数を以下に示します。
10種(2022)
8種(2023)※昆虫のみ
19種(2024)

この数字を見てどう思いますか?
俺ならもっとうまくやれる__そう思った方も少なくないのでは?
私も動画を見ながら、「あの分類群でもっと種数を伸ばせる」とか「あの採集方法は外せない」とかいろいろ考えていました。
そうこう考えるうちに、こういうのは自分で実際にやって示すべきだろうという結論に至りました。
ということで今回は、
丸パクリ企画!
24時間本気で生き物観察したら何種類に出会えるのか!?
@埼玉県の平地
 
やってみました!

24時間生き物採集のルール

まずはこの企画のルールについて説明します。
基本的には鷹切美鶴さんの過去動画を参考に同様の条件を設定しています。
1. 探索の場所は自由
移動方法や探す環境に制限はありません。
2. カウント対象はすべての動物
植物は対象外です。
3. 生体をカメラで写せればカウントする
私の場合は写真を撮れればOKということでいきます。
死体と、卵でのカウントはなしとします。
4. 持ち帰って同定してもよい
写真のみで分からない場合は持ち帰って同定し、カウントに加えることを可能にします。
その場合でも写真は現地で撮っておきます。
5. 種まで同定したもののみをカウント
鷹切美鶴さんの過去動画を見ていると「●●科の一種」とかでカウントしている回もありますが、今回はマイルールで禁止にします。
6. トラップ類の使用はあり
過去動画を見た限りトラップを使用した回はないのですが、使用可能と解釈します。
7. 24時間以内に切り上げてもよい
みっちり24時間やるのはしんどい、というのもあるのでここは本家の過去事例に従います。
今回は朝から夜までの12時間強くらいでやってみました。
ルールについてはだいたいこんなところかな、と思います。
では……始めましょう。

朝は野鳥観察からはじめる

2025.01.02
行動開始は朝の7:00頃。ちょうど日の出直後くらいの時間です。
まずはいつも散歩で通っている近所の川にやってきました。

水際の草はあえて残したのか、刈られていない
この川周辺で、まずは鳥類を中心に探します。
冬の生き物観察を行う上で、観察しやすい野鳥はたくさん見ておきたいところです。
朝は野鳥の活動が活発なので、午前中いっぱいくらいは鳥を中心に見ていきます。
カルガモ
1. カルガモ Anas zonorhyncha Swinhoe, 1866
川なので、ここには水鳥のカルガモがいます。
カモの仲間の多くは冬に日本にやってくる冬鳥ですが、カルガモは季節に関係なく見ることができる身近なカモです。
ちなみに写ってる2羽は♂と♀です。
両者はお尻の辺りの羽の色が異なっていて、手前の黒い個体が♂、奥の褐色の個体が♀です。
まだ朝早いので薄暗く、写真は撮りづらいですが他にもいくつか野鳥がいました。

2(左上). キジバト Streptopelia orientalis (Latham, 1790)
3(右上). ヒヨドリ Hypsipetes amaurotis (Temminck, 1830)
4(左下). シジュウカラ Parus major Linnaeus, 1758
5(右下). ムクドリ Spodiopsar cineraceus (Temminck, 1835)

記事が長くなり過ぎないようにある程度まとめて紹介する形式を取ります。(紹介する順番≠見つけた順番)
どれも街中で一年を通して見られる身近な野鳥です。
ほか、川岸の草地にはスズメやハクセキレイが降りていました。

6(左). スズメ Passer montanus (Linnaeus, 1758)
7(右). ハクセキレイ Motacilla alba lugens Gloger, 1829

まだ序盤も序盤ですが、証拠レベルの写真撮ったら「はい次!」みたいな感じになっちゃっててダメですね(笑)
焦りが写真に表れています。今日は回りたいポイントが多くあるので、きれいな写真にこだわっている余裕がありませんでした。(特に序盤)
ジョウビタキのオス
8. ジョウビタキ Phoenicurus auroreus (Pallas, 1776)
ジョウビタキの♂もいました。
本種は代表的な冬鳥のひとつで、川沿いやちょっとした草地、庭先など身近な場所にもよく現れます。
(冬鳥:越冬のために秋頃から日本にやって来る鳥)
私がまだ野鳥のこと全然知らなかった小学生くらいの頃でも、よく目にするこの鳥の名前だけは調べて覚えていました。
ドバト
9. ドバト Columba livia var. domestica J.F.Gmelin, 1789
電線の上にはドバトが。いつもは下の草地に降りていますが、今日はまだ寒いからか動き出さないようです。
ドバトは先ほど載せたキジバトとは異なる種類のハトで、外来種とされています。
キジバトと比べるといる環境が街中や駅など人工的な環境に偏っているため、今日回る予定のポイントではこの川沿いで確実に見ておきたかった種でした。
この川で見られる鳥は他にもコガモやカワセミなどがいましたが、今日に限っていない……昨日はいたのに!
そのかわり、昨日はいなかった鳥がいました。
コサギ
10. コサギ Egretta garzetta (Linnaeus, 1766)
コサギです。この川沿いを転々と移動しているようで冬は散歩中に時折見かけます。
全身が白い色のサギの仲間としては小型で、足先が黄色いことや冬でもクチバシが黒いことですぐに分かります。
脚を水中に突っ込んではガサガサ動かして、エサを探すような動作をよく行っています。
川沿いではまず10種の野鳥に出会えました。まあ順調でしょう。
この川には魚類も数種類生息していますが、今日はコイがいただけでした。

11. コイ(型不明) Cyprinus carpio Linnaeus, 1758
前日はオイカワとか泳いでるの見ていたんですが、やっぱ朝早すぎるのがダメだったかなあ……
川沿いはこれで切り上げて、次は樹林と池がある公園に向かいます。
道中の街中や農耕地でも野鳥を中心にアンテナを張り続けます。

12(左). ハシボソガラス Corvus corone Linnaeus, 1758
13(右). ハシブトガラス Corvus macrorhynchos Wagler, 1827

電線上に2羽のカラスが止まっているなと思ったら、両者別種でした。
ハシボソはクチバシから頭にかけてのラインが滑らかですが、ハシブトでは明確な段差ができます。
クチバシそのものの太さや鳴き声も違うので、合わせて確認できればOK!
(今回は一度に両方鳴いてくれたため気が付けました)
さらに移動していると、街中に植栽されたサザンカの中から「キュルキュルキュル……」と鳴き声が。
メジロ
14. メジロ Zosterops japonicus Temminck & Schlegel, 1845
いたのはやはり……メジロでした。
冬はこんな感じで、ツバキやサザンカの木に好んで集まります。蜜が好きなようです。
冬夜蛾の仲間とかもそうですが、メジロも冬に咲く花の受粉に貢献している生き物の一つですね。
シメ
15. シメ Coccothraustes coccothraustes japonicus Temminck & Schlegel, 1848
シジュウカラの群れの中に少し大きいのがいるなと思って見てみたらシメでした。
シメもこの辺りでは冬になるとやってくる冬鳥です。
木の高いところに居がちなので写真撮りづらいイメージで、ここで出会えたのはラッキーでした。
モズ
16. モズ Lanius bucephalus Temminck & Schlegel, 1845
農耕地の草の上にモズが止まっていました。
秋に高鳴きを行う鳥で、その時期は鳴き声からよく見つかるのですが、今の時期は大人しいため見つけづらくなります。
ただし大きい鳥なので、目立つところに止まっていれば存在感がありますね。
第2ポイントの公園に着きました。
ここでも樹林や水辺の鳥を中心に探していきます。

17. シロハラ Turdus pallidus Gmelin, 1789
ここではまず、シロハラに出会えました。シロハラも冬鳥です。
渡ってきた直後の秋は警戒心が高く観察しづらいですが、今くらいの時期になると徐々に人前に姿を現すようになってきます。
林床をゴソゴソして虫やミミズなどを食べている鳥です。
同じ仲間のツグミも既に渡ってきていますが、まだ警戒心が高いようで今日は観察できませんでした。

池の水凍ってんだけど
池の水はほぼ凍っており、期待していた水鳥の仲間の姿はありませんでした。
そのかわり、氷の上にも鳥の姿がありました……!
セグロセキレイ
18. セグロセキレイ Motacilla grandis Sharpe, 1885
セグロセキレイは日本固有種として九州以北に分布する鳥です。
飛んで移動する力はあるのに、この国の環境を好んで居ついているのかなとか考えると愛着がわいてきませんか?
なかなか止まってくれないのでいつも写真撮影に困らされる鳥です。今日もすぐ飛んで行ってしまいました……
それから池の周りを見渡していると、存在感のある物体が木の上に鎮座していました。
アオサギ
19. アオサギ Ardea cinerea jouyi A.H.Clark, 1907
アオサギです。ここ最近見てなかったのでちょっとうれしい。
この公園をねぐらにしているのかな、ずいぶん前に来た時もそういえば同じ辺りでみた気がします。
池のほとりに大きなカメラを構えた人がいたので、何かいるのかなと思っていたら「ピピピーー!」という高い鳴き声が。
これは__
カワセミ
20. カワセミ Alcedo atthis (Linnaeus, 1758)
みんなのアイドル、カワセミさんでした。
カワセミは昔は珍しい鳥だと思っていたものですが、鳴き声を覚えてから見つける機会が一気に増えましたね。
美しい姿をしていながら、身近な川や公園でも見られるありがたい存在です。
この公園での探索はこれくらいで切り上げました。
今日会えるかどうかは運次第と思っていたシロハラやセグロセキレイがちゃんと見られて、最初の川にいなかったカワセミにここで出会えたのもうれしかったです。来てよかった。
ここからは、さらに移動して別の公園へ向かいます。
道中の農耕地では、アオジとカワラヒワが見られました。

21(左). アオジ Emberiza spodocephala Pallas, 1776
22(右). カワラヒワ Chloris sinica (Linnaeus, 1766)

アオジは関東辺りだと夏は山地で繁殖し、冬になると平地に降りてくる漂鳥ですね。
平地では冬の間だけ見られ、冬ならではの鳥と言えます。
そうこうしているうちに第3ポイントの公園に到着。
この公園にも樹林や湿地、池など多様な環境があり、豊富な野鳥が見られました。

23(左上). エナガ Aegithalos caudatus (Linnaeus, 1758)
24(右上). コゲラ Yungipicus kizuki (Temminck, 1836)
25(左下). ガビチョウ Garrulax canorus (Linnaeus, 1758)
26(右下). ヤマガラ Poecile varius (Temminck & Schlegel, 1848)

かわいいけどせわしなく動き回って撮影者を泣かせるエナガ、身近なキツツキの仲間であるコゲラ。
特定外来生物のガビチョウ、熱心に何かを割って食べようとしていたヤマガラ。
ガビチョウはヤブの中で大きな声で鳴いているイメージですが、人が多い公園では人前にも出てくることが多くなりますよね。
撮りこぼしそうだった樹林性のコゲラやヤマガラがここで見られてよかったです。
タシギ
27. タシギ Gallinago gallinago (Linnaeus, 1758)
湿地にはタシギの姿がありました。
長いクチバシを泥の中に突っ込んでエサを探していました。
格好いいですよねタシギ。景色に溶けこみやすいので見つけるとうれしくなります。
そのほか、ダイサギとカシラダカが見られました。

28(左). ダイサギ Ardea alba Linnaeus, 1758
29(右). カシラダカ Emberiza rustica Pallas, 1776

カシラダカは本州では冬鳥ですね。
周辺に林がある農耕地で、地面に降りているのをよくみます。
(気づかずに飛ばして、木の上とかに逃げた所で確認するんですよね)
公園編はこれで終わり!
最後に近くの農耕地と林縁を少し見ていきます。
ホオジロ
30. ホオジロ Emberiza cioides J.F.Brandt, 1843
ここで、今日これまで見ていなかったホオジロがやっと撮れました。
ホオジロは平地でも年中見られるありがたい鳥で、開けた草地に多いです。
野鳥の体重はほんとに軽くて、こうやって穂先に止まっても全然バランスが取れるくらいなんですよね。
この軽さが長距離の移動を可能にしているんでしょうね。
カケス
31. カケス Garrulus glandarius (Linnaeus, 1758)
林縁にはカケスもいました。
警戒心が高いので写真撮るのが難しい部類ですが、なんとか見えました。
ここでルリビタキっぽい声が林内から聞こえていたのですが、姿を捉えることができませんでした。
あと、この近くにある水路で魚類を探そうと思っていたのですが、全く魚の姿がなかったため諦めました。

ふるい採集や樹皮めくりで越冬する昆虫を探す

この時点で時刻は11時くらい。
野鳥観察はまだ続きますが、ここからは徐々に昆虫類の観察にシフトしていきます。
冬の生き物の過ごし方は種類によってさまざまです。
野鳥のようにふつうに活動しているものもいれば、多くの昆虫のように落ち葉の下や朽木の中で冬眠しているものもいます。

ふるい採集をやってみる
まずは近くの林縁でふるい採集を試みました。
落ち葉や下の土をふるって、中にいる昆虫類を探し出します。

32(左). トビイロケアリ Lasius japonicus Santschi, 1941
33(右). オオヒラタシデムシ Eusilpha japonica (Motschulsky, 1862)

越冬中のトビイロケアリと、オオヒラタシデムシが出てきました。
アリはもう少し出ると思ったのですが、思いのほか落葉層が乾燥していてこれだけしか出せませんでした。
昆虫以外ではもう一種、

34. ヒカリギセル Zaptyx buschii (Küster, 1844)
キセルガイの仲間が出ました。これも動物なのでカウントの対象です。
サイズ感と殻口の形状をみるに、よくみられるヒカリギセルで良さそうです。
ふるい採集の成果は思ったよりショボかったので、今度は樹皮めくりにシフトしました。

樹皮めくりでお世話になるケヤキ
写真のケヤキにあるようなめくれ上がった樹皮の下は、多くの昆虫やクモの越冬場所になっています。
このような木の樹皮をめくることで、冬でも手軽にいろいろな生き物を観察できるのです。
ムクノキがある場所で、特に多くみられるのが……

35. ナミガタチビタマムシ Trachys griseofasciatus Saunders, 1873
ナミガタチビタマムシです。小さくて地味ではありますがこれでも立派なタマムシの仲間。
チビタマムシの寄主植物であるケヤキやムクノキがある場所であれば、樹皮下で冬に彼らの仲間を見つけることは難しくありません。
チビタマムシの他にも、いろいろな甲虫が見つかります。
例えば、

36. モンクチビルテントウ Platynaspidius maculosus (Weise, 1910)
モンクチビルテントウが出ました。
本種は外来種のテントウムシですが……冬にテントウムシの仲間を見つけるとちょっとうれしい、ですよね?
ほかには、

37(左上). トホシクビボソハムシ Lema decempunctata Gebler, 1830
38(右上). ヨツボシオオキスイ Helota gemmata Gorham, 1874
39(左下). ヒメカメノコハムシ Cassida piperata Hope, 1842
40(右下). ハギキノコゴミムシ Coptodera subapicalis Putzeys, 1877

個々に紹介しませんが、樹皮下で成虫越冬する甲虫類は他にも多くいます。
もちろん、甲虫以外にも樹皮下で冬を乗り切る者たちがいます。

41. ヒラフシアリ Technomyrmex gibbosus Wheeler, 1906
42. マダラマルハヒロズコガ(幼虫) Ippa conspersa (Matsumura, 1931)
43. キンイロエビグモ Philodromus auricomus L.Koch, 1878
44. キハダカニグモ Bassaniana decorata (Karsch, 1879)

樹上性のアリ類や、クモ類が出てくることも多いです。
ほんとはもっといろいろなクモが出たのですが、今回は分かりそうなやつだけ写真撮って調べました。
樹皮めくりは昆虫の越冬場所を奪う採集方法ですので節度は守るべきですが、やってみるとどんどん生き物が出てきて楽しいと思います。
樹皮めくりはいったんこれで終了して、最後に林縁の倒木を調べてみることにしました。

根っこについている土を掘ると虫が出ることがある
こんな感じの根際と、倒木の樹皮下を調べて以下のような生き物を発見しました。

45. ヒゲジロハサミムシ Anisolabella marginalis (Dohrn, 1864)
46. アカシマサシガメ Haematoloecha nigrorufa (Stål, 1867)
47. オカダンゴムシ Armadillidium vulgare (Latreille, 1804)
48. ムーアシロホシテントウ Calvia muiri (Timberlake, 1943)

ヒゲジロハサミムシは倒木の内部や下の土からよく出てきます。
アカシマサシガメも倒木の内部で越冬しているところをよく見かけます。
オカダンゴムシ、ムーアシロホシテントウは樹皮下から出ました。
倒木はいろいろな部位が異なる生物の越冬場所になっています。
観察には多少の破壊を伴うので、YouTube向けではないですよね。
(そういう問題があって、多くの生物系YouTuberたちが樹皮めくりや朽木崩しを避けているのを感じる)

水鳥の観察なら「白鳥飛来地」へ

このあとはどうするかというと……第4の探鳥ポイントに行きます。
これで鳥ポイントは最後です。結構な距離の移動を伴うのでしんどいですが、「本気」と言った以上は徹底的にやります。
道中で思いがけずうれしい出会いがありました。

49(左). チョウゲンボウ Falco tinnunculus Linnaeus, 1758
50(右). ノスリ Buteo japonicus Temminck & Schlegel, 1844

チョウゲンボウとノスリ、どちらも猛禽類の仲間です。
たまたま見上げた空にチョウゲンボウが舞っていて、そのさらに上をノスリが旋回していました。
河川敷では比較的よく見る2種ですが、毎回必ずといった感じではないので見られるとうれしいです。
チョウゲンボウは近くで飛んでくれたので迫力がありました。
30分くらいの自転車移動を経て、最後の探鳥ポイントに到着しました。
この時点で13:00頃でした。このあとの予定考えると、ちょっと時間に余裕がなくなってきたか……?
到着と同時に、目の前を飛ぶ昆虫が見えたので追いかけました。

51. ナナホシテントウ Coccinella septempunctata Linnaeus, 1758
お昼の気温は13℃ほどあり、暖かかったからか動いていたようです。
成虫越冬する昆虫も、暖かければ案外真冬に飛び回ってたりしますよね。
期待していた鳥の方はどうかというと……ちゃんといました。
オナガガモ
52. オナガガモ Anas acuta Linnaeus, 1758
ここは河川の流れの緩やかな部分で、水鳥がいろいろ飛来するポイントになっています。
ご近所だけだと冬鳥のカモ類がどうしても貧弱なので、わざわざ遠くまで来ました。
でも来た甲斐はありまして、オナガガモに加えてさらに5種の水鳥を見ることができました。

53(左上). オオバン Fulica atra Linnaeus, 1758
54(右上). カワウ Phalacrocorax carbo (Linnaeus, 1758)
55(左下). カイツブリ Tachybaptus ruficollis (Pallas, 1764)
56(右下). ハシビロガモ Anas clypeata Linnaeus, 1758

こちらの4種はいずれも水鳥ですが、この中でカモの仲間(カモ目)はハシビロガモだけで、あとはそれぞれ別のグループですね。
オオバンはツル目、カワウはカツオドリ目、カイツブリはカイツブリ目です。
そしてもう一種が……
コハクチョウ
57. コハクチョウ Cygnus columbianus (Ord, 1815)
白鳥です。冬の水鳥といえば白鳥、なんてイメージがあるでしょうか。
ここはコハクチョウの飛来地としてよく知られた場所で、冬になるとコハクチョウが北の国から帰ってきます。
地元の人にも親しまれている場所で、この日は家族連れで観察に来ている人が多くいました。
白鳥まで見られたらもう、冬鳥に関しては満足です。
あとは残りの時間で冬の昆虫採集を行っていきます。

河畔林で越冬昆虫探し

大きく場所を変えて、河川敷の林に向かいます。
と、ここで予期せぬトラブルが……

58. メダカチビカワゴミムシ Asaphidion semilucidum (Motschulsky, 1862)
自転車がパンクしました(いつもの)
写真はパンクに焦ってるさなかに出てきたメダカチビカワゴミムシです。1月なのにふつうに出歩いてるな……
自転車のパンクは前輪で、空気も少しずつ抜けてる感じだったのでなんとかなると判断しました。
ここで中断して、今日の行程をもう一度最初からやり直すのはさすがにキツいです。
自転車を停めて林に入ってみると、なんとキタキチョウが飛んでいました
そんなに今日暖かいかな!?
止まったところに近づいて撮影を試みます。
キタキチョウ
59. キタキチョウ Eurema hecabe (Linnaeus, 1758)
やはり……キタキチョウです。
冬に成虫で越冬するチョウは他にも数種いますが、今日は1種もみられないと思っていたのでこれはありがたかったです。
朽木で越冬するやつとか越冬場所が分かりやすい種は良いんですけど、こういう枯れ草のなかとか葉っぱの裏とか雑な場所で越冬する昆虫は見つけるのも容易じゃないですよね。
(ツチイナゴとかクビキリギスを安定して見つけられる人はスゴイと思う)
堤防から付近を見上げるとトビも飛んでいました。

60. トビ Milvus migrans (Boddaert, 1783)
飛ぶ高さが低すぎてまともに写真撮れなかったけど、まあギリ分かるかな。
鳥はここまでで打ち止めです。ここからはほんとに昆虫オンリーになります。
すでにけっこうな種数に達していますが、ここから昆虫だけでどこまで伸ばせると思いますか……?
昆虫を求め、河畔林内に入っていきます。



朽木や根返りを崩していこう
ここからは、朽木などを崩して越冬昆虫を探していきます。
朽木を崩す場合、ボロボロに朽ちたやわらかい部分だけを探れば問題ありません。
ある程度残してあげた方が、越冬昆虫の逃げ場にもなります。
__まあ、河畔林のような環境は河川改修であっさり更地にされてしまうため、朽木崩しを手加減しても仕方がないような気もしています。
今日もまた、立ち入り禁止になった場所を確認しました。
あれは近いうちに絶対伐採されますね。悲しい……
河川敷のような湿った環境で朽木崩しをすれば、必ずと言っていいほど出てくる昆虫がいます。
アオゴミムシ
61. アオゴミムシ Chlaenius pallipes (Gebler, 1823)
それがこの虫、アオゴミムシです。
ゴミムシは汚いイメージを持たれがちですが、よくみると美しい種も多くいます。
アオゴミムシの仲間が出す独特の香りが癖になる採集者も多いとか……私も例にもれずです(笑)
アオゴミムシが属するオサムシ科の甲虫は多くが成虫越冬で、冬季に朽木を崩すだけでもさまざまな種類を観察できます。

62(左上). ニセコガシラアオゴミムシ Chlaenius (Achlaenius) kurosawai Kasahara, 1986
63(中上). キンナガゴミムシ Poecilus (Poecilus) versicolor (Sturm, 1824)
64(右上). タンゴヒラタゴミムシ Anchomenus (Anchomenus) leucopus (Bates, 1873)
65(左下). アシミゾナガゴミムシ Pterostichus (Argutor) sulcitarsis Morawitz, 1862
66(中下). オオホシボシゴミムシ Anisodactylus (Pseudanisodactylus) sadoensis Schauberger, 1932
67(右下). オオホソクビゴミムシ Brachinus scotomedes L.Redtenbacher, 1868

一気に6種を紹介。
中上のキンナガゴミムシなんかは非常に美しいゴミムシで、出てくるとうれしくなりますね。
個人的にかなりうれしいゴミムシも出ました。
オオトックリゴミムシ
68. オオトックリゴミムシ Pseudoodes vicarius (Bates, 1873)
それがこのオオトックリゴミムシ。
良好な湿地環境に生息するゴミムシで、近所ではまだ2回しか出会ったことがない虫でした。
環境省のレッドリスト(2020)では準絶滅危惧(NT)とされています。
それが今日は2頭も出てきて驚きました。増えているのか?
なお、朽木崩しで出てくるのはゴミムシばかりではありません。
コクワガタ
69. コクワガタ Dorcus rectus rectus (Motschulsky, 1858)
小さいですが、立派なコクワガタの♂が出てきました。
朽木からはこのようにクワガタの成虫が出てくることもあります。

70(左). モトヨツコブエグリゴミムシダマシ Uloma (Uloma) bonzica Marseul, 1876
71(右). ヒメナガニジゴミムシダマシ Ceropria induta induta (Wiedemann, 1819)

朽木まわりに多いゴミムシダマシの仲間も冬場は材中から出ることが多いです。
左のエグリゴミムシダマシの仲間は幼虫から成虫に至るまで基本的に朽木の中にとどまって生活する昆虫です。
甲虫以外ではカメムシの仲間などもよく出てきます。

72(左上). ツチカメムシ Macroscytus japonensis Scott, 1874
73(中上). クロモンサシガメ Peirates turpis Walker, 1873
74(右上). ツマキヘリカメムシ Hygia opaca (Uhler, 1860)
75(左下). ミナミアオカメムシ Nezara viridula (Linnaeus, 1758)
76(中下). ツヤアオカメムシ Glaucias subpunctatus (Walker, 1867)
77.(右下) ヤマトゴキブリ(幼虫) Periplaneta japonica Karny, 1908

カメムシの仲間は倒木の樹皮下などに多くいます。
ヤマトゴキブリの幼虫は乾燥した立ち枯れの中から出てくることが多いですね。
他には、スズメバチの女王蜂が出ることもあります。

78(左上). キイロスズメバチ Vespa simillima Smith, 1868
79(右上). モンスズメバチ Vespa crabro Linnaeus, 1758
80(左下). クロスズメバチ Vespula flaviceps (Smith, 1870)
81(右下). コガタスズメバチ Vespa analis Fabricius, 1775

今日は珍しく4種のスズメバチが出てきました。
スズメバチの集団は晩秋に女王蜂を残して全て死亡し、残った女王蜂だけが朽木などの中で冬を越します。
春を迎えたら、女王蜂1匹から巣作りを始めるわけですね。
河畔林の中にもムクノキが生えていたので、少し樹皮をめくってみました。

82(左上). キイロテントウ Illeis koebelei Timberlake, 1943
83(右上). ウスキホシテントウ Oenopia hirayamai (Yuasa, 1963)
84(左下). キアシクビボソムシ Macratria japonica Harold, 1877
85(右下). ネコハグモ Dictyna felis Bösenberg & Strand, 1906

樹皮下からは2種のテントウムシとキアシクビボソムシ、ネコハグモが出ました。
この辺りも樹皮めくりではおなじみのメンバーですね。さっきの樹皮めくりでは出せなかったのでここで出てくれてよかったです。
あっという間に時刻は16:00。
日没まであと30分と少しというところです。
ほんとはマイマイカブリとか出したかったんですけど、今日は出なかった……
これからは夜の採集に入るため、また少し場所を変えます。

ハンノキやクヌギ、エノキからなる河畔林
やってきたこの場所はハンノキが主体となる河畔林です。
本題の夜間採集に入る前に、まだ少し時間があったためケヤキの樹皮をめくりました。

86(左). ヨツボシテントウ Phymatosternus lewisii Crotch, 1874
87(中). クロハナカメムシ Anthocoris japonicus Poppius, 1909
88(右). ヒメコバネナガカメムシ Dimorphopterus bicoloripes (Distant, 1883)

この悪あがき的な樹皮めくりでは、3種の昆虫を追加できました。
これで日中の昆虫採集は終了です。
ここから……まだ出来ることがあります。

糖蜜採集でキリガの仲間を召喚する


糖蜜を用意してきました
夜は糖蜜採集で夜行性のキリガの仲間を観察します。
キリガ(冬夜蛾)の仲間は冬を中心に活動するガで、日没に合わせて甘い糖蜜を林縁などにまいておくことで集めることができます。
糖蜜の中身はカルピス(原液3倍くらい)+麦焼酎+穀物酢です。それぞれを同じくらいの比率で混ぜてあります。

ツル植物がある場所では葉っぱに、なければ樹皮にかける
糖蜜をまき終えたら、市民薄明の終了時刻(ここで調べる→日本と世界の日の出日の入り時間 )まで待機します。
17:09。
あたりが暗くなったら、まいた糖蜜の巡回を始めます。
最初の糖蜜ポイントに来ていたのは__
ミツボシキリガ
89. ミツボシキリガ Eupsilia tripunctata Butler, 1878
ミツボシキリガ!
三つの白斑が集まった模様が特徴的なキリガです。
エノキを食べるため河川敷などで見つかりやすいですが、飛んでこない日の方が多いため今日来てくれたのはうれしかったです。
しかもめっちゃきれいな個体。これは採集していきました。
糖蜜採集は気温や風の強さなどの気象条件に結果が大きく左右される採集方法です。
この日のコンディションはどうかというと、気温は18時時点で11℃もありかなり暖かい夜でした。
しかし風が全くなかったため、糖蜜の香りが拡散しにくい状況だったと思います。
飛来の方も序盤はイマイチで、フサヒゲオビキリガとカシワオビキリガの2種が来ていただけでした。
ただし、開始から30分を超えたあたりで徐々に飛来が増えていき、結果的には多くのキリガを観察することができました。

90(左上). カシワオビキリガ Conistra ardescens (Butler, 1879)
91(中上). フサヒゲオビキリガ Incertobole evelina (Butler, 1879)
92(右上). チャマダラキリガ Rhynchaglaea scitula (Butler, 1879)
93(左下). キバラモクメキリガ Xylena formosa (Butler, 1878)
94(中下). アヤモクメキリガ Xylena fumosa (Butler, 1878)
95(右下). イチゴキリガ Orbona fragariae pallidior Warren, 1910

この場所では過去に何度も糖蜜採集をやっていますが、それでも出現率が低いアヤモクメキリガやイチゴキリガも来てくれたので、今日はけっこう当たりの日だったかもしれません。
1時間ほど巡回を続けて、この1巡を終えたら帰ろうかなという所で、さらに新しいキリガが来ていました。
ウスミミモンキリガ
96. ウスミミモンキリガ Eupsilia contracta (Butler, 1878)
やった、ウスミミモンキリガ!
幼虫がハンノキを食べるキリガで、ハンノキ林で糖蜜をしなければまず出会えない虫です。
環境省レッドリスト(2020)では準絶滅危惧(NT)です。
このポイントでの糖蜜採集では1度しか来たことがなかったので今日は来ないだろうと思っていたのですが……来ましたね。うれしいサプライズでした。
粘ればさらに種の追加が見込めそうな予感もありましたが、糖蜜採集はこのくらいで切り上げました。
パンクした自転車もなんとか頑張ってくれて、無事に家まで帰れました。

冬に活動するフユシャクの観察

まだ終わりません。
最後は車で近くの公園に向かいます。
この公園には道沿いに擬木の柵が立っており、その柵に夜間登る昆虫を観察できます。
チャバネフユエダシャク♀
97. チャバネフユエダシャク♀ Erannis golda Djakonov, 1929
早速、チャバネフユエダシャクの♀を見つけました。
本種は冬に出現するフユシャク(冬尺蛾)の仲間で、♀の翅が退化することが特徴です。
この公園では多くない昆虫で、私も過去に1度出会っただけだったのですが……今日はなんだか運が良いな!
ここでこの時期に観察できるフユシャクはもう1種いて、そちらは安定したポイントがあります。
ウスバフユシャク
98. ウスバフユシャク Inurois fletcheri Inoue, 1954
いました。ウスバフユシャクのペアです。
翅がある右の個体が♂で、左に♀がつながっています。
フユシャクは成虫で越冬するというわけではなく、冬に出現して繁殖を行う冬の虫です。
冬の生き物観察でこれは外せないだろうということで見に来ました。チャバネフユエダシャクも見られてよかったです。
最後に、街灯周りや擬木上で発見した昆虫を紹介します。

99. キノカワガ Blenina senex (Butler, 1878)
100. フクラスズメ Arcte coerula (Guenée, 1852)
101. ナミテントウ Harmonia axyridis (Pallas, 1773)

キノカワガとフクラスズメは成虫で越冬するガの仲間です。
フクラスズメは大きいので、人工物の隙間などに入り込んで越冬する姿がよく観察されます。
ナミテントウはゆっくりと擬木の上を歩いていました。
ここでは擬木の割れ目などで越冬する個体をよく見かけます。
という感じで……時刻は20:00。13時間ほどの活動で今日の全行程を終えました。
無事帰宅して、この日の採集は終了です。

結果発表

結果ですが……今日一日で101種の生き物を観察することができました
自分では50くらいかなと思っていたのですが、100まで行きましたね(笑)
分類群別の内訳は以下の通りです。
昆虫類: 56
鳥類: 39
クモ類: 3
魚類: 1
甲殻類: 1
陸産貝類: 1

自分が得意な昆虫類でかなり稼ぎましたが、野鳥だけでもまだ伸ばせる余地はあったし、魚類やクモ類にも伸びしろを感じますね。
ともあれ、こんな寒い真冬の平地でも、本気を出せば100種以上の生き物を1日で観察できることを証明できました。
ただし、100種まで観察するには記事中で示したようにさまざまな環境を巡り、採集方法も工夫する必要があります。
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冬にみられる生き物たち
それぞれの場所で冬越しをする生き物たちの様子や、それらを観察する方法がいろいろあることがこの記事で伝わったでしょうか?
ここで示したことを全部やる必要はないですが、何か一つでも興味を持っていただけたなら幸いです。
特に冬鳥やキリガ、フユシャクの観察は冬にしかできません
季節限定の生き物を探しながら、冬のフィールドワークを楽しみましょう!

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