キイロホソゴミムシと河口のヨシ原に棲む生き物

2025.05.05
ゴールデンウィーク真っ只中ですが、今日は仕事で都内へ。
作業自体は昼までの1時間ほどで終わるため、午後からは何かしようと考えていました。
干潟にシギ・チドリの観察に出かけるのも良いかなと思っていたのですが、連休+潮干狩りシーズンであることを思い出し断念。
そういえば、東京湾ならではのあのゴミムシにまだ会いに行っていないことを思い出し……河口に向かうことにしました。
今回の目的、キイロホソゴミムシは日本固有種であり、なおかつ東京湾と外房の河口部のみで確認されている希少なゴミムシです。
本種の生息地としては千葉県の小櫃川河口部や、東京と神奈川の県境にあたる多摩川の河口部がよく知られています。
今回は多摩川の河口部でキイロホソゴミムシを探してみることにしました。
多摩川の河口部(東京都側)には大きなヨシ原が残されており、このどこかには生息しているのだろうと思われました。
(環境写真撮り忘れました)
今の時期は新しいヨシもだいぶ伸びてきていて、ヨシ原に棲む鳥であるオオヨシキリが「ギョシギョシ」とさえずっています。
少し暑いですが、初夏のヨシ原は気持ちがいいですね。
ところでキイロホソゴミムシの採集といえば秋~冬にかけて越冬中の個体を探すのが一般的ですが、果たしてこの時期にもちゃんと採れるのでしょうか?
季節が変わってもやる事はきっと同じだと思うので、ヨシ原に分け入って積もった枯れ草を起こしていく作戦でいきます。

入りやすく、枯れ草がたまっている場所でやっていく
最初に入った場所ではケオビアリモドキが採れました。
ケオビアリモドキ
ケオビアリモドキ
Anthelephila imperatrix LaFerté-Sénectère, 1849
アリモドキ科の中でも特に「アリっぽさ」が強い本種。趣味の採集では初めての出会いでうれしかったです。
枯れ草を起こしてみてまず感じたのはヨコエビがめっちゃ多いということですね。
あとは……
クロベンケイガニ
クロベンケイガニ
Orisarma dehaani (H.Milne Edwards, 1853)
近所の河川敷にあるヨシ原では絶対に出ないようなカニもすごく多くて、海が近いことを感じさせられます。
地表には本種が空けた巣穴が無数に見られました。
しばらく枯れ草起こしを続けていると、ゴミムシの仲間も出てきました。

これは……今日の目的の一つかも!
ハマベミズギワゴミムシ
ハマベミズギワゴミムシ本土亜種
Bembidion collutum semiluitum Bates, 1883
まだ精査していませんが、ハマベミズギワゴミムシで合っていると思います。
(似たような種類がいくつかいる)
本種は主に感潮域のヨシ原に生息するゴミムシで、東京都のレッドリスト(2020)で準絶滅危惧(NT)とされています。
感潮域のヨシ原という限られた生息環境を要求する虫ですが、生息地での個体数は少なくないようです。
現に、

探せばいっぱい出てくる
濃い場所では少し探しただけでも枯れ草の下から多数の個体を見つけることができました。
本種の分布は河口部に限らず、わりと川の上の方までいるみたいです。海なし県である埼玉県でも記録があります。
たださすがに私が住んでいる近所の河川敷にはいないようで、初採集です。
ひとまず海の要素を感じられるゴミムシが採れたので良かった。あとはキイロホソゴミムシを召喚するまで……!

干上がった場所にも気を配っておく
本流に近い場所にはこういう干出地もありました。
もしかしたらキバナガミズギワゴミムシがいるかも……と思いながら水際も眺めていましたが、アトモンミズギワゴミムシがいただけでした。

良い感じに見えるゴミ溜まり
そういえば埼玉では数日前にけっこうな雨が降っていたような。その影響かは分かりませんが塵芥がかたまった場所がありました。
期待に反してゴミムシはあまり出ずでした。キイロホソゴミムシは上流から流されてくる虫ではないものね……
その後も場所を変えながらヨシの根際をガサガサしていました。
ムネアカマメゴモクムシ
1頭だけ見つけたムネアカマメゴモクムシ

これはコホソナガゴミムシかな
ゴミムシがいないわけではなくて、ミドリマメゴモクムシやマルガタツヤヒラタゴミムシは多く見つかりました。
しかしキイロホソゴミムシは出ず。むしろここは他のゴミムシが居すぎなようにも感じる。
時刻は14:30。
まだ頑張れるが……このまま近辺でやっていても採れる気がしない。
ということで。

対岸のヨシ原に来ました
大きく場所を変えて、対岸側(神奈川県)のヨシ原に来ました。
神奈川県側はヨシ原の規模が小さく、探すならココしかないなという感じです。

ここはチャバネクビナガゴミムシが出る
探し始めてまず気づくのは、出てくるゴミムシがさっきまでとは異なることでした。
ここでは先ほどは見なかったチャバネクビナガゴミムシが非常に多い代わり、他のゴミムシがまったく見られません。
(ハマベミズギワゴミムシは1頭だけ出た)
東京都側で探した場所よりも周りのヨシの草丈が高く”深い”感じのヨシ原だったので、構成種が変わったのか……それとも海により近づいたから?
何にせよこっちの方が自分のイメージに近いというか、採れそうな気はしました。
チャバネクビナガゴミムシはヨシの茎によく登るタイプのゴミムシで、キイロホソゴミムシも多分似たような生活様式の虫だと思ったからです。
神奈川県のヨシ原に入ってから10分ほど。
枯れ草の下から初めて見るゴミムシが走り出しました。

「いたっ! これだ!!」
キイロホソゴミムシ
キイロホソゴミムシ
Drypta fulveola Bates, 1883

紛れもなく今日の本命、キイロホソゴミムシでした。
関東地方の河口部、
ヨシ原に限って生息するこの虫は、その生息地が局限されることもあり環境省のレッドリスト(2020)で絶滅危惧IB類(EN)とされています。
ただし生息地での個体数は多く、正しい場所に入ればこのように10分で見つけることができる虫のようです。
わざわざ採りに来てもすぐに満足して帰る、という採集者もいるみたいですから……(笑)

お腹側は青光りしているのも美しい
今はバリバリ活動している時期ですが、動きは意外と落ち着きのある印象でよく止まってくれて写真は撮りやすかったです。
チャバネクビナガゴミムシとか全く止まってくれないから……

採れた場所の環境

そんなにギッシリ積もっているわけでもない
やはり枯れ草の下から出てきましたが、ここ自体はそんなにいい場所ではなくて追加は得られませんでした。
しかし少し移動して枯れ草が多く積もっている場所に来ると、しっかり追加を得ることができました。


このあたりは枯れ草も多く、複数頭のキイロホソゴミムシが出た
探しているうちに気が付いたのですが、彼らは必ずしも枯れ草の下の地面に潜んでいるわけではないようでした。

枯れ草の中も歩いている
積もった枯れ草の中を歩いている個体を2, 3回見かけました。
こういう枯れ草の中を歩いて、ウンカやヨコバイなどを捕食しているのでしょうかね。

ウンカかヨコバイかの幼虫は確かにいっぱいいる
本種が野外で何を主に食べているのかは不明ですが、飼育下ではウンカやヨコバイなどの半翅目を捕食する様子が観察されています。
当地では確かに半翅目の幼虫が多くいて、餌資源は十分にあるように感じられました。
ほかに気になったことと言えば……

分かりにくいですが、ザトウムシが写っています
このザトウムシが無数にいました。東京都側のヨシ原でもたくさん見たような気がします。
調べたところ「ヒトハリザトウムシ / Psathyropus tenuipes Koch, 1878」という種のようです。
本種はザトウムシとしては唯一の海岸性種で、環境省のレッドリスト(2020)で準絶滅危惧(NT)だそうです。
確かに、普段ヨシ原でザトウムシとか見ないよなと思ったけど、これも貴重な感潮域の生物だったんですね……

泥に刺さっていた魚。トビハゼかと思ったけど何か違いそうだ……
ヨシノボリみたいなやつもいました。
水のないところで出会うと本来の形が分からないですね……

すっかり夕方に
そんなところで、キイロホソゴミムシについては満足したので採集を終えることにしました。
飽きるほど大量には見られませんでしたが、採集・観察するには十分な数でした。

クロトゲハムシ
Hispellinus moerens (Baly, 1874)
帰りがけにイネ科(オギかな)の葉でクロトゲハムシを見つけました。
好きなんですよねトゲハムシ。しっかり神奈川県ラベルを確保しました。
また、夕方になるとヨシ原の中でカヤヒバリが鳴き始めました。
見たことがない直翅なのですが、高いヨシに阻まれてしまい、探すことは断念。
普段見ないような感潮域の生き物がいろいろ観察できて充実した1日でした。
キイロホソゴミムシ
河口部のヨシ原は開発でいきなり消滅する恐れがあるだけでなく、人間活動の影響を受けやすい繊細な場所でもあります。
そんな場所でたくましく生きているキイロホソゴミムシの姿を見ることができて良かったです。これからも世代を重ねてくれますように!
今回は5月の上旬というよく分からない時期に本種の採集を試みましたが、7月頃訪れればヒヌマイトトンボも合わせて観察できるかもしれないし、9月頃ならイズササキリもいけるかもしれません。
キイロホソゴミムシの成虫は真夏にはいないかもしれませんが、夏以降のヨシ原観察も楽しそうですね。
ただジメジメした湿地は夏は暑くて、やっていられないかも……(笑)

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