2025.08.02
埼玉県の寄居町には「川の博物館」という博物館がありますが、今年はそこで昆虫メインの特別展「昆虫いろいろ」が開催中です。
令和7年度 特別展
『昆虫いろいろ~標本から見える昆虫の世界~』
2025年7月12日(土)〜9月15日(月·祝)地球上でもっとも多様化した「昆虫」。本展示では、美しい昆虫標本や拡大写真を展示します🐝
また、県内で絶滅が危ぶまれる昆虫や、外来の昆虫なども紹介します。https://t.co/9fvc62M2eZ pic.twitter.com/wTvW99cCFU— かわはく(埼玉県立 川の博物館) (@kawashirou) June 28, 2025
この特別展とあわせて実施されるイベントがいくつかあり、今日(8月2日)は「埼玉県で昆虫を調べる」という講演会がある日です。
事前に予約だけはしていたので、よっぽど体調悪くなければ行こうと前から決めていました。
めっちゃ調子がよければ早朝から現地入りして涼しいうちに採集を__なども考えましたが、無理でした。ふつうに二度寝しました。
はじめての「かわはく」へ
そんな訳でお昼前くらいにつくように川の博物館に向かいました。
公共交通機関による博物館へのアクセスは絶妙に悪く、最寄り駅(鉢形駅)から20分くらいは歩く必要があります(バスありません)。
※熊谷方面から秩父鉄道で来る場合、桜沢駅で降りて歩く方が速いことがある(30分くらい歩く)。
駅からの道は木陰がほとんど無くふつうに炎天下だったのでキツかったです。
Googleマップの最短ルートでは南側に案内されますが、入場口は北西部にありそこからしか入れません。
駅から北側をまわって向かう方が速いみたいです。
北西部に駐車場と入場門があり、門で入場券を買います。(一般410円、学生200円)
今回私は講演会に申し込んでいたことで入場料が無料になりました(ありがたい)。
事前情報を何も入れずにここまで来ましたが、博物館と名前はついているもののレジャー施設みたいな雰囲気の場所なんですね。
水遊びに来ている家族連れが多く見受けられました。
敷地内には水車がいくつか稼働しており、もっとも目立つ「大水車」は直径24.2 mで2025年現在は日本一の大きさなのだとか。
※一時は他県に負けてたけど、改修に合わせてちょっとデカくすることで1位を取り返したという背景がなんか面白い
大水車の下にいると水しぶきがかかってめっちゃ涼しいです。夏に来るには最高の場所ですね。

展望台から見下ろすとこんな感じ。左に写っているのが大水車です。
そんな感じで水車を通り過ぎて進んだ先に、本館の建物があります。
特別展はここでやっています。
特別展に入る前の部屋では「昆虫選手権」をやっていました。
8種の昆虫の中から1位を決めようというもので、直近の開票結果ではオオスズメバチが1位だったような気がします。
県の蝶ミドリシジミくんを差し置いて1位になるなんて……
特別展「昆虫いろいろ」会期中、
リバーホールでは「昆虫選手権」を開催しています。
好きな番号に投票して、あなたの #推し を一位に✨しましょう‼️開催日:7月19日(土)~9月15日(月)
場所 :本館1階リバーホール
参加費:無料 pic.twitter.com/8orb6uG8UB— かわはく(埼玉県立 川の博物館) (@kawashirou) July 26, 2025
このメンツなら私が投票先に迷うことはないですね!(笑)
投票を済ませたら特別展の会場へ。
写真撮影は大丈夫とのことです
いろいろなテーマごとに並べられた標本が目を惹きますが、壁に貼られている標本写真も美しいです。
私はブログやっているので写真を多く使用しますが……昆虫の魅力を伝えたいと本気で思うなら、それに足る機材をそろえる必要があるのでは……? と常々感じています。
採集の妨げになるほど大きなカメラをフィールドに持ち出すのは気が引けますが、標本撮影に投資するのはアリかもしれません。
フィールドに出れない分、室内作業を楽しむ方向に舵をきるのもまあ、いいではないか……
逆だったかもしれねえ……
博物館とかの展示物であっても稀に間違いが生じている場合があります。もともとの同定ラベルが間違っていることもありますからね……
こういう場で間違いを見つけて後で答え合わせする(実は〇箇所の同定が間違っていました、みたいな)経験を積みまくれば、同定能力を高められそうですね。生物分類技能検定2級の昆虫パート対策にいかがですか……(笑)
まあ↑のやつは冗談としても、こういう展示の場で昆虫のリアルな姿や形を見ておくことは勉強になりそうです。
展示に使われる虫は親しみやすかったり顕著な特徴を持つ種が多いので、生物分類技能検定で狙われるような虫もかなり多いはず。
分類技能検定の昆虫対策?の話を今年書こうかなと思っています。最新の過去問をこのあいだ買ったところです。
伝説の1頭、秋ヶ瀬のキイロモモブトハバチ
キイロモモブトハバチといえば今年の6月に偶然にも採集できた虫(→採集記)ですが、県産の標本は↑のやつ(1985年、秋ヶ瀬)が唯一だったらしい……?
(他に県産標本の存在知っている方がいたら教えてください)
県内の記録は2例しかないと思われるフチトリヒメヒラタタマムシ
私がここ数年で採った分はまとめて寄せ蛾記に投稿中ですが、次号では載らないと思うので……まだ先の話ですね。
写真撮ってなかったですが、謎に展翅されているナガタマムシの標本がちょこちょこありましたね。どういう技術なんだ……(笑)
こういう所にこの展示を作っている自然の博物館の学芸員、半田宏伸さんの色が感じられますね。
半田さんはハチ類を専門にされている方なので、ハチ標本のラインナップは充実している、はずです……私詳しくないのであんま分からないですが!
当たり前のように流してしまったけど、微小なセイボウやカマバチがしっかり展翅されて標本になっているのも技術の高さを感じますね。
埼玉県にフォーカスしたコーナーもありました。
埼玉県で絶滅が危惧される昆虫や、埼玉県の地名に由来する名前の昆虫など。
県の絶滅危惧種であり、「武蔵」の名を持つムサシトゲセイボウ
もうそろそろ本種が採れ始める時期でしょうか。
寄主植物という概念がないこのハチを採るにはがんばってスウィーピングをし続けるしかありません。
過去に何度も近所で採集を試みていますが、未だに手が届かない種です。
頑張れるかな今年は……厳しいです!
県内では絶滅したとされるツヤキベリアオゴミムシ
先日、「しみじみ観察メモ」のティーノさんに本種の生息地に連れて行っていただきました。
そこでいろいろと、本種の生息に必要な条件や探し方のヒントを教えていただきましたが……埼玉県で見つけられたら超うれしいですよね。

千葉県のツヤキベリアオゴミムシ
埼玉県で再発見される可能性は全然ありそうなので、チャレンジはしてみたい。
が……体が全然ついてこないです!
今年がビッグチャンスとか言われても!!!!
ほかにも現在の埼玉県では大変貴重な水生昆虫の標本などもありました。
実物を見ることで、かつては間違いなく生息していたのだと実感すると……いろいろな思いが込み上げてきます。
いなくなってしまった虫たちのこと、時々でいいから……
思い出してください
特別展以外も見よう
特別展を見終えたら常設展も見に行きました。2階に上がって上から見ていくという妙な順路になっているのですが、これにはちゃんと理由がありました。
展示室の中に川が流れている!
「川の博物館」なだけあって、「川」が展示物の一部として存在しているというダイナミックな光景でした。
無論対策はなされているのでしょうが、博物館の中にこれあるのなかなか怖くないですか? 湿気とか……
どこかに川魚の展示もあったらしい
(見落とした……!)

展望台に落ちてたシロスジカミキリの翅。県の準絶滅危惧種(NT2)です。
そんな感じでいろいろ見ていたら講演会の時間になっていたので、いざ、会場へ__
人それぞれの「大切なこと」
今回の講演会「埼玉県で昆虫を調べる」では、県内で活躍されているアマチュア(在野)研究者のお三方(と研究仲間の数名)からのお話でした。
一人目の碓井さんのお話では地道な記録の蓄積と、それをしっかり公表することの大切さを伝えられていました。
現在の埼玉県においては10000種を超える昆虫類が記録されていますが、その多くはアマチュアの功績によるものです。
県内では古くから学校の生物部などが発行する部誌などによって分布記録などが出されてきて、その積み重ねが埼玉県動物誌、埼玉県昆虫誌につながってきた歴史があります。
記録の積み重ねを行うことの大切さはずっと変わらないものなので、これからも多くの人が参加してみんなで一緒に昆虫を調べていくことができればより良いですよね。
アマチュアが独自に調べる以外に、既存の調査やプロジェクトに加わるという選択肢もあります。
アサギマダラやウスバキトンボのマーキング調査に参加するとか、談話会で集めている希少種や外来種の情報を提供するとか、iNaturalistに観察記録を投稿するとか……
生き物観察をする上で必須ともいえるアプリ「iNaturalist」の紹介は以下に。

「iNaturalist」の使い方 〜生物写真・観察記録の整理と共有〜
写真も立派な「観察データ」野外に出て動植物の採集や観察を行う方々は、明確な目的がない場合でも何らかの観察記録を取ることが多いと思います。フィールドノートを書くとか、採集して標本を作るとかありますが……その中でもお手軽なのは「写真撮影」ですよね…
二人目の講演者、新井さんからはご自身が県内で発見した個体をもとに記載された新種や、県初記録の昆虫などについてのお話がありました。
埼玉県という私にとっての地元、足元にも新発見の可能性はまだまだ眠っている……そんなワクワクを感じさせてくれるお話でした。
まだ名前のついていない虫を見つけたとしても、自分で新種記載の論文を書くとかそうそう出来ることではないと思います。
また、不明な虫の正体をとことん追い求める精神がなければ、大きな発見につなげることもできないでしょう。
アマチュアとしての、昆虫との向き合い方の究極形を見せてもらったような気持ちです。
私が日頃「分からん……」と匙を投げてしまっている・スルーしてしまっている虫でも、本気で向き合う覚悟があれば世界は変わって見えるのかもしれません。
三人目の講演者、岩田さんのお話は特に人とのつながりにフォーカスした内容でした。
当日現地に来られていた研究仲間の方々も登壇して、それぞれどのように人と関わりながら虫を調べてきたのか、というお話もありました。
人といっしょに虫を調べることにどんな意義があるか……以下のような話でした。
- 人それぞれ視点が異なるので、複数人でフィールドに出ると新たな視点を知れる。
- 新たな視点によってお互いに興味の幅を広げることができる
- 多様な人と視点から情報が集まるようになる
- いろいろな分野から考察を行える
- 自分だけではできない研究ができる
人とのつながりが連鎖的にもたらす効果は、自分の趣味を豊かにしてくれるし、よりよい成果にもつながりますよね。
昆虫採集は自分一人だけでももちろん、趣味として楽しむことはできますが……人とのつながりを持つことが、視野を広げてより楽しむ上での大きな助けになります。
短報を書いて報告するとかも、最初からいきなり一人ではできないですからね……
現代はSNSとかブログとか、情報発信や交流のための手段は豊富ですから、これらを活用して人とどんどん関わっていきましょう__とか偉そうに言えるほど、私はそのあたり上手にやれていませんが!
今回の講演会の主題は「埼玉県で昆虫を調べる」でしたが、特に埼玉県に限定される内容ではなかったかなという印象でした。
今回のお話は自分たちの足元の昆虫を調べる上で、どんな地域でも共通する内容だったのではないかと思います。
まずは地域の生物を調べるプロジェクトなりコミュニティなりに「参加しよう」という意志を持つことが第一歩なのではないかと思いました。
そういう思いがあればしっかりした記録を取れるし、いろんな人と関わっていけるはずです。
地域への愛着があれば、そういう意志を持つのは難しくないですよね。
埼玉県の強みは既に情報がかなり蓄積されていることと、同好会(談話会)が盛んに動いていて人とつながりやすいことが挙げられるかなと感じました。
虫的な強みは何でしょうね。平地の虫から山地の虫まで、暖地の虫も寒冷地の虫もバランスよく楽しめること?
私は最近、昆虫採集のモチベーションを失いつつありますが、やれることはいっぱいあるんだよねと改めて感じさせられました。
あてもなく
講演会を聞き終えたら博物館を後にして、その足で近くの荒川河川敷によって帰ることにしました。
こういう機会でもないと採集できないわと思って……最低限の採集道具は持ってきていました。
特に目的もないので、適当に草地や林縁でスウィーピングをする
この辺で採集した経験がほとんど無いに等しいので、普通種のチビタマムシとかでもちゃんと採っていくことにしました。
またこうして地道な記録の蓄積を行っていく、それでいいのだよね……
左からウメ、ヤナギ、クズ、ナミガタです
ヤナギチビタマムシは県内ではまだ1頭しか採れてなかったので地味にうれしいです。
河原にはシナダレスズメガヤがたくさん生えていましたが、クロケシタマムシにはまだ時期が早かったようでした。
オオイナズマヨコバイとルリキオビジョウカイモドキ
適当に河原でスウィーピングしていたら格好いいオオイナズマヨコバイや初見のルリキオビジョウカイモドキが採れました。
この辺りは近所の河川敷ではなかなか採れない(と思う)ので、ちゃんと採集に出た甲斐があったような気がしました。
川の水際まで来てみると、小さなシジミガムシの仲間がたくさん泳いでいました。
微小水生昆虫の話題もあったなあと思いながら、これも数頭採集。
ヒメシジミガムシでした
いつも交尾器抜き失敗して同定諦める虫だったのですが、今回は標本を破壊する勢いで強引に交尾器を取り出しました。
結果、ヒメシジミガムシと判明しました。
※環境的にはコモンかヒメのどっちかで、交尾器抜かなくても色模様で簡易的にあたりをつけられるらしい。
暗くなったらおわり
ノハラボタルやOulemaのアレなどを採集しつつ……手元が暗くなるまでなんとなく続けました。
この環境なら夜まで頑張ってライトトラップをすることでヒゲコガネとか狙えるんじゃないかと若干思いましたが、今の私にそこまでこなせる体力はありませんでした……帰ります。
「昆虫いろいろ」は2025年09月15日(月・祝)まで
今回訪れた特別展はまだしばらく続き、9月15日までやっています。
関連イベントとしてはバッタの観察会(要予約)なども予定されていますので、あわせて参加してみてはいかがでしょうか。
https://www.river-museum.jp/event/#recruit_e
(イベント予約は1カ月前から)
また、8月31日(日)にはこの展示を企画・監修した半田宏伸学芸員による展示の解説が聞けるようです(予約不要)。
昆虫あんまり詳しくない方や、展示の見どころが知りたい方はこのタイミングに合わせて行くのがオススメ!
展示解説書(1200円)
この特別展の内容を冊子にまとめた展示解説書も販売されています。
都合がつかず展示を見に行けないという方や、内容を後からじっくり振り返りたいという方にオススメです。
↓今はまだないが、特別展終了後(9/16以降)にオンライン販売が追加されるはず
https://kawahakums.base.shop/items/all
大前提:体が元気であるか
最近の私は外出てもやけに暑さやしんどさを感じるばかりで、趣味の昆虫採集がまともにできなくなりました。
これが精神的な病気的なものによるものなのか、単に疲れているだけなのかは正直分かりません。
先週は炎天下で屋外での仕事が続いたこともあり、とうとう熱中症になりました。体調がいっそう不安定になっています。
文京区でやっている玉蟲展も行くつもりでしたが体調の悪さを引きずってしまい断念しました。
体が元気じゃないと何もできないですね……この記事を書くのですら、けっこう時間かかってしまった。
今年は、というか今年もひかえめな活動を続けていきます……

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