昆虫標本の写真撮影
趣味で昆虫標本を集めていると、「標本の写真をきれいに撮りたい」と思う場面が訪れます。
ひとつは、短報などを書くことになった時。標本の写真を載せるのが基本ですので、何らか用意しなければなりません。
また、報告に用いないとしても標本写真を撮りためてデータ化することで自分だけの図鑑を作ったり、同定資料を作ったりできます。
きれいな標本写真を撮ることは、標本の利用価値を伸ばす上で大きく役に立つのです。
マダラコガシラミズムシの標本写真
そんな、標本の撮影ですが……皆さんはどのようにやっていますか?
高価なカメラを用いて、大掛かりな装置と照明を組んで、画像は編集ソフトで編集して……とか、こだわればいくらでもやれる世界です。
しかし私は……なるべく少ない労力で見やすい標本写真が撮れればいいかなの気持ちで、コンデジ(TG-4)を使って簡易的に撮影を行っています。
画像の編集は基本的に行っていません。
そんな私のやり方をご紹介してみるのもいいかなと思って、この記事を書くことにしました。
標本撮影で用意するもの
カメラ:OLYMPUS STYLUS TGシリーズ
カメラアクセサリー:LEDライトガイド
背景:白色半透明なケース
照明:ほとんど使いません
カメラスタンド:机に固定するタイプ
昆虫標本写真の撮り方の実例
簡単に鮮明な写真を
標本撮影で用意するもの
まずは使っている道具をそれぞれ紹介します。
カメラ:OLYMPUS STYLUS TGシリーズ
撮影用のカメラとしてはOLYMPUSのコンデジを用いています。生物屋界隈ではよく使われているToughシリーズのカメラです。私はTG-4を使っています。
最新機種はTG-7です。

OM SYSTEM/オリンパス Tough TG-7 ブラック
防水15m、防塵、耐衝撃2.1m、耐荷重100kgf、耐低温-10℃、耐結露といったタフ性能を実現。水中から山岳まで様々なアドベンチャーシーンで活躍します。
このシリーズのカメラがオススメされる理由は、野外でラフな使い方に耐えられる性能を持っていることだけでなく、被写界深度合成機能を持つことが挙げられます。
深度合成前(左)、深度合成後(右)
深度合成とはピント位置をずらしながら撮影した写真を合成して、手前から奥までピントが合った1つの写真を作る機能です。
標本をきれいに撮影する上で欠かせない機能で、これをもつカメラの使用が標本撮影の上では推奨されます。
カメラアクセサリー:LEDライトガイド
TGシリーズを使用して標本写真を撮影する場合、必須になるのがLEDライトガイドです。
LEDライトガイド
カメラのLEDライトを拡散させるためのアクセサリーで、標本を均一に照らすことができます。
TG-2からTG-7まで、同じLEDライトガイドリングが使用できるようです。

JJC LEDライトガイドリング Olympus Tough TG-7 TG7 TG-6 TG6 TG-5 TG5 TG4 TG4 TG-3 TG3 TG-2 TG2デジタルカメラ用 マクロリングライトフラッシュ オリンパス LG-1 交換用 クローズアップマクロ撮影用, MRL-TG1-U3
LEDライトガイドリングは、Olympus Tough TG-7、TG-6、TG-5、TG-4、TG-3、TG-2、TG-1デジタルカメラ用に設計されています。 Olympus LG-1ライトガイドの代替品です。
これ純正ではないですが、性能は変わらないと思います。
ガイドなし写真(左)、ガイドあり写真(右)
ガイドなしとガイドありでは写真の仕上がりや撮りやすさの差は歴然なので、これは絶対に買いましょう。
背景:白色半透明なケース
標本写真の背景となる「白バック」を作る上で私が使っているアイテムが……半透明なケースです。100均に売っているような適当なケースで、タッパーなどでいいです。
私が使っているのは小さなカードケース
このケースの中に適当な白い紙を入れ、ケースの上に虫を置いて写真を撮っています。
こうすることで、ライトを当てることで生じる影の位置をずらし、影を目立たなくすることができるのです。
紙に置いて撮った(左)、ケースに置いて撮った(右)
たったこれだけで一気に本格的な白バック感を演出できるので、オススメです。
なお、この手法が使えるのは小型種の標本だけです。
既に針に刺さっている蛾類など大きな標本を撮影する場合は、別な方法で背景を用意する必要があります。
PEF板と白い紙(ケント紙です)
私が用いているのは、ドイツ箱を買った時に付いてくるPEF板と、台紙を作るときに使うケント紙の組み合わせです。
単にPEF板に刺すだけだと、背景にペフ板の凹凸が写ってしまい気になるので、PEF板に紙を載せてその上から標本を刺して背景とします。(つまりペフ板は白でなくてもいい)
背景道具の準備はこんなところです。用意するのはそんなに大変ではないと思います。
照明:ほとんど使いません
撮影する上での照明(ライト)ですが、私はほとんど使っていません。
カメラのLEDライトで照らせばそれで十分きれいに撮影できますし、過剰に照らすと青いゴーストが出やすいという欠点もあります。
カメラのライトのみ(左)、横からさらにライトで照らした(右)
明るい方が良いのは確かなのですが、TGシリーズの性能的に限界があるためここは我慢します。
(照明の調整とかめんどくさいし、ない方が楽でもある)
ただし針刺しの標本については別途ライトを使います。
針刺し標本の撮影はどうしても被写体まで距離が空いてしまうので、カメラのライトだけでは明るさが足りません。
そのため標本の下を照らし、影を消すためにデスクライトを使っています(ホームセンターなどにある適当なもの)。
カメラスタンド:机に固定するタイプ
これはごく最近導入したものですが、カメラを固定するための道具です。
深度合成は撮影に時間がかかるため、その間の手ブレがやはり影響します。
手持ちで押さえつけて撮ってもわりとちゃんと写真は撮れますが、こういうアイテムが1つあるだけでより鮮明な写真を撮ることができるためオススメです。

SmallRig 56cm マジックアーム(クランプ付き)オーバーヘッドスマホマウント フレキシブルデスクカメラスタンド 多関節フリクションブームアーム(スレッドアダプター付属)POV撮影 ライト ウェブカメラ マイク アクションカメラ用 コンテンツクリエイター向け 4766
【より長く、より柔軟なマジックアーム】この 56cmのアームは、一般的なギアマジックアームよりもはるかに長いです。各ジョイントには独立した角度調整用のダブルボールクランプが備わっており、オーバーヘッド撮影、ライブストリーミング、vlog、ストップモーションビデオ、ビデオ会議に最適なアクセサリです。
手持ち撮影(左)、スタンド使用(右)
毛の鮮明さがだいぶ違う(右がスタンド固定)
ぱっと見は大きく変わりませんが、細かいところを見ると明らかに差が見えます。
昆虫標本写真の撮り方の実例
ここからは実際に標本写真を撮ってみます。
まずは近距離の撮影から。
直接置けない標本は立てかけても良い
標本に付着している糸くずなどは小さな筆やピンセットなどでなるべく取り除きましょう。
撮影用のケースの上に標本を置き準備します。
カメラをスタンドに固定し、撮影位置を調整します。
限界まで被写体の近くにするとライトが十分に当たらないことが多いため、若干離してズームで撮るのがオススメです。
なお私の使う撮影設定は以下の通りです。
発光:LED発光
露出補正:+1.7(明るすぎたら1.3にする)
ホワイトバランス:WBオート
深度合成+LED発光は基本として、露出はかなり上げ気味にします。
こうすることで全体が明るく、背景が白く飛びやすくなります。
ホワイトバランスはオートにした時が一番自然な色合いになる印象です。
設定を決めたら撮影に移ります。
TGシリーズのカメラでは「OM Image Share」というスマホアプリを使うことでカメラを遠隔操作できます。
(初期設定がいろいろ必要だったと思いますが割愛)
接続設定中の画面
カメラを起動し、「Wi-Fiスタート」を押して接続画面を表示させます。
続いてアプリを起動し、「リモコン」などを選択してカメラのネットワークに接続します。

スマホでのリモコン操作モードになった状態
スマホの画面を見ながら画角を合わせ、画面長押しでピントを合わせます。
あとは、撮影ボタンを押すのみ!
撮影された写真(ミヤマキンバエ)
撮影例(ツヤキベリアオゴミムシ)
針刺しの蛾類やハチを撮る場合は、PEF板と重ねた紙の上に標本を刺し、横からライトを当てて影をずらします。
この場合は立てかけて撮ることが多い
ライトが1つしかない場合、反射板としてアルミを添えながら撮るといい感じです。
反射板を添える様子
撮影例(キイロモモブトハバチ)
簡単に鮮明な写真を
いかがだったでしょうか。私はスタンドを買う最近まではずっと手持ち撮影でやっていたため、紹介したようなやり方で短報用の標本写真をいろいろ撮ってきました。
こんなものとか(いつか出ます)
TGシリーズのカメラがあって、家に半透明のタッパーと紙があれば簡単に真似できる手法だと思います。
写真がうまく撮れなくて短報に使えない、いつもひどい写真で出してしまう……という状況に陥っている人の参考になれば幸いです。
なお、この手法で撮影した写真は後から明るさの設定をいじって上げることでほぼ完全に白バックにもできます。
編集前(左)、明るさ+15(右)
これも凄いきれいな白バックという訳ではないので……画像編集とかもちょっと勉強してみようと思います。
※追記
背景の完全な白バック化については、WindowsPCに元からある「フォト」で簡単にできました。
編集から背景を選択すると、あとはAIにおまかせ……
できました


コメント