「幹掃き採集」によって樹皮の割れ目で越冬する昆虫を採ろう

幹掃き採集とは読んで字の如く

幹掃き採集をご存知でしょうか? 
今坂正一さんが考案し、氏のHPでも紹介されている採集方法です。
幹掃(みきは)き採集 – 今坂正一 & E-アシスト
樹木の幹をホウキなどで掃くことで、樹幹で生活する昆虫を効率的に採集するというものです。
この方法で、樹幹生活をするメツブテントウの仲間や樹幹に生えるシダ植物を利用するトホシニセマルトビハムシなど、なかなか採りづらい昆虫が効率的に採れるという事が明らかにされました。
私はこの幹掃き採集の要領で、クヌギのような樹皮の割れ目で越冬する昆虫を効率よく採集できるのではないかと考えました。

クヌギ
クヌギの木は樹皮に割れ目が多く、昆虫の越冬場所として機能していそうですが……めくれる樹皮はなく、目視で探すのはなかなか大変です。
そこで今回は以下のように道具を準備しました。
P2016528.jpg
ホウキの代わりにブラシを
掃くための道具として、今回はホウキよりもハードなブラシを用意しました。
樹皮で越冬する昆虫は割れ目にしっかり入り込んでいるため、これを掻き出すにはある程度の硬さが必要かなと思います。
樹皮をブラッシングしつつ、落ちる虫を広げた折りたたみ傘で受けていきます。
というような採集を近所でやってみたので、今回はその報告です。
何でこれをやるかというと、ダンダラチビタマムシが採りたいからですね。
チビタマムシの仲間は全てが成虫で越冬すると言われていますが、越冬個体に出会う難易度は種ごとにかなり異なります。

もっとも簡単に出会えるヤノナミガタチビタマムシ
樹皮めくりで出会える種が多いですが、中には樹皮めくりでもめったに出てこない種がいます。
先述のダンダラチビタマムシやクズノチビタマムシは、ケヤキなどの樹皮めくりではまず出てこない種です。
彼らのような一部のチビタマムシには何か別の越冬場所があるはず……ということで少し探してみることにしたのです。
ダンダラチビタマムシは冬季にクヌギの割れ目で得られたことがあると以前教えてもらったので、まずはそれを自分でも見つけたい!
ということで、夏季にダンダラチビタマムシを得ている近所のポイントで幹掃き採集にチャレンジします!
そもそもクヌギの幹で越冬昆虫を探したことがまったくないので、虫が採れるのかすら疑問でした。
樹皮をブラッシングすること数分……

ちゃんとチビタマムシが落ちた!!
これはナミガタorヤノナミガタチビタマムシですね。
探してもなかなか見つけられないけど、クヌギで越冬する個体もいるのですね~
一本の木から複数個体が落ちることもまあまあありました。

でも全部ナミガタ系か……
とりあえずクヌギがチビタマムシの越冬場所としてちゃんと利用されていることが確かめられました。
ダンダラチビタマムシが落ちることを期待して、幹のブラッシング作業を続けます。

ヒシモンナガタマムシ
Agrilus discalis E. Saunders, 1873
しばらくやっていると、1頭だけヒシモンナガタマムシが落ちました。
樹皮めくりでもたまに採れるナガタマムシですが、これが出ると少しうれしいですよね。
クヌギから落ちた記念という事で持って帰ろう!
タマムシとしてはもう1種、

マルガタチビタマムシ
Trachys inedita E. Saunders, 1873
マルガタチビタマムシも落ちました。付近に本種がよく採れるムクノキが生えているので、この辺りでは越冬個体も多いのでしょうね。マルガタは合計5頭が得られました。
甲虫としては他にも、

アオアトキリゴミムシ
Calleida onoha Bates, 1873
アオアトキリゴミムシが落ちました。以前エノキの樹皮から得たことがありますが、樹皮めくりではあんまり出ないレアキャラだと思います。

Siagonium属のハネカクシ
アカモンヒラタハネカクシでしょうか、平べったいハネカクシの仲間も落ちてきました。
甲虫は他にヒメカメノコハムシやウスキホシテントウ、モンクチビルテントウなども採れました。クヌギの樹皮を利用して越冬する虫は意外と多くて驚きました。

よく見るとウスキホシテントウが越冬している(中央)
甲虫以外ではカメムシも落ちました。

ナカボシカメムシ
Menida musiva (JakovLev, 1867)
ナカボシカメムシやツヤアオカメムシなど大きめのカメムシ類は、キヅタが絡んだ樹皮をブラッシングしたところ落ちました。
樹皮というより絡まったツタを利用して越冬していた雰囲気ですが、ツタの利用者も一緒に落とせるのはこの採集法の強みですね。
それと、この時期ならではのこんな虫も!

クロバネフユシャク
Alsophila foedata Inoue, 1944
冬尺蛾のクロバネフユシャクも落ちてきました。寄主植物のクヌギなどの樹皮で日中は休んでいます。
何気に1頭しか採集したことのないフユシャクでしたが、ここでは2頭を確認。目視でふつうに探すのとどっちが効率いいだろう……?
クヌギの樹皮から採れた昆虫はこんな所でした。
近くにハンノキも生えていたので、ついでにハンノキでも幹掃き採集をやってみました。

ハンノキもクヌギ同様の縦割れ樹皮
ハンノキからもやはりクヌギと同じようにナミガタ系のチビタマムシが採れました。この辺のチビタマムシは樹種へのこだわりとかないんですね……
そして、この日の大当たりはこのハンノキから採れました。

アリヅカウンカ
Tettigometra bipunctata Matsumura, 1900

アリヅカウンカはその名の通り、アリとの関係性が深い__と考えられているウンカの仲間です。
現時点で生態はほとんど分かっておらず、ケヤキなどの樹皮下で越冬する成虫がみられたり、林縁の下草からまれに得られたりしている程度です。
なかなか狙って採れない虫という事で、ずっと気になっていた存在でした。いいものを引けました!
これに満足する形でここでの樹皮掃き採集は終了しました。
結局ダンダラチビタマムシは得られず。クヌギの樹皮を好んで利用していると思うのですが……そんなに個体数が多いわけでもないので、簡単には採れないのですかね。
このあとの時間は、林縁でクズノチビタマムシの越冬成虫探しを試みました。

1時間くらい落ち葉や土をふるって、心が折れた
めっちゃ頑張ったら1頭くらい見つかるかもしれないけど、それで見つけても「ここが本来の越冬場所だ」とは言えないわけで……
同じくクズにつくマルカメムシも成虫で越冬しますが、あれすらも簡単に見つかるわけではないのでクズノチビタマムシ探しはもっと過酷に感じます。
という感じでチビタマ探しの壁の高さを思い知った日でした。
しかし幹掃き採集はけっこう楽しめたので、今度は別の時期や環境でも試してみたいです。
幹掃き採集はスプレーイング採集よりも環境負荷が小さいことが魅力で、キノコの生えた立ち枯れとかでも有効な採集方法だと思います。
幹だけじゃなくて岩壁のような環境を掃くのも面白いかもしれませんね。

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