本記事は個人の趣味レベルでの昆虫採集でラベルを作成する場合を想定して作成しています。
結構いい加減なことが書かれているので、ちゃんと修正作業が終わるまでは下の文献をご参照ください。(より専門的な内容です)
昆虫標本におけるラベルの作り方
http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/publications/bulletin/018/018-6.pdf
昆虫に限らず生物の標本を作る上では欠かせないのがラベルです。
ラベルは標本に学術資料としての価値を与えるものであり、これがないものを標本とは呼びません(利用価値がないわけではない)。
昆虫標本につけるラベルは一般に以下の3種に分けられます。
採集地、採集年月日、採集者名など
「標本を得た状況に関する基本情報」を書く。
②同定ラベル(つけよう)
和名、学名と記載者名、同定者と同定年など「同定の結果」を書く。
③コレクションラベル(可能なら)
コレクション中の標本の個体識別を目的として、標本毎に固有の番号を振って書く。
しかし、ラベルに表記する内容や使用言語に関するルールははっきりと定められておらず、研究者であっても人によって異なるようです。
また大きさに関しても決まりはなく、以下のような記入できるタイプのラベルが市販されていますが……
これらは自由研究などで用いる分には良いでしょうが、本格的に昆虫採集をしてたくさん標本を作りたい方には向かないと思います。
大きすぎますし、手書きする労力や判読性を考えるとPCできれいに作れた方が楽です。
昆虫採集を始めたばかりの方には少し難しいかもしれませんが、自分がどのようなラベルを使っていくかということは最初によく考えるべきだと思います。
後々になって、管理しづらくて困るということにならないために……
10年前の私に何か助言するとすれば、
出来るだけコンパクトにしよう、です!
本記事では私が現在使用しているラベルの作り方を紹介します。
昆虫標本ラベルにおける曖昧なルールについてもその中で触れていき、より良いラベルの表記法を探っていく記事とします。
※私は専門家ではないので、情報の正確性は保証できません。
先述した3種類のラベルのうちデータラベルは標本にとって必須ですが、その他のラベルは付けない方も結構います。
データラベルに同定結果が示される形などもありますよね。
2023年現在の私は基本的に3種全てのラベルをつけることにしていて、表記法は英語(ローマ字)と日本語の両方を取り入れたラベルを使っています。
私のやり方はいろいろな人のやり方を参考にしながら作り上げたもので、これが間違いなく正しいと断言する事は出来ません……あくまで1つの例であるという前提のもとで読んでいただければと思います。
1. ラベルのテンプレートを作る
まずはラベルを作るための土台となる、テンプレートを作るところから。
使用するのはMicrosoftのWord(2016)で、表を利用します。
他にもExcelでのやり方やWordでタブ区切りを使う方法もあるようですが、これらのやり方に関してはよく知らないためここでは説明しません。
ここで作成するテンプレートによって、文字のサイズや種類が決まり、ラベルのおおよその大きさが決まります。
なお、私が使っているテンプレは以下のものになります。
ダウンロードして使用可能です。(これ古いです、記事修正後に直します。2023/11/11)
https://1drv.ms/w/s!AnrWaFOg-1B_hSf0UpndkFXvgl5B?e=DLM4FA
以降はこのテンプレの作り方を紹介していきます。
①白紙の文書を選択して新規作成
私は一気に数百単位のラベルを作るため、A4サイズでやっています。
細々作る場合はハガキサイズでやった方が良いと思います。
上の方のメニュー、レイアウトの「ページ設定」から、文字数と行数の指定で
「標準の文字数を使う」を選びます。
「フォントの設定」を選んで次に進みます。
②文字のフォントとサイズを指定
フォントを指定します。
フォントは完成するラベルの大きさや見やすさに多大に影響するためよく吟味しましょう。
人によって全然違うし、私もこの記事書き直すたびに違うフォントになってる気がします……
私が今使っているフォントは、
英数字 「Fira Sans Condensed」 4pt(6行ラベル時は3.5)
日本語 「メイリオ」 4pt(6行ラベル時は3.5)
②同定ラベル
和名 「メイリオ」 4pt
学名 「Times New Roman」 太字 4pt
同定者(同定年) 「Arial」 4pt
③コレクションラベル
英数字 「Segoe UI」 4pt
です。
フォントの種類によって文字幅が変わります。フォントの選定にあたって留意したことは以下3点です。
・細いフォントは印刷時に擦れやすいので文字が太めの方がいい
→太字体にするのもありです。文字の潰れには注意しつつ……
・印刷して、読みやすい(重要)
→いくつかのフォントをためしつつ、読みやすいものを選ぶと良いと思います。私は柿添・丸山(2021)「昆虫標本におけるラベルの作り方」で紹介されていたいくつかのフォントと、ネットで「読みやすいフォント」言われるものをいくつか試して今の形になりました。
・大文字のI(アイ)と小文字のl(エル)など似た形の文字をちゃんと区別できる
→このブログのフォントはダメですね(笑)
私はラベルの行数によって文字サイズを変えています。
5行なら「4」、6行なら「3.5」を使用してラベルを作ることで、行数の異なるラベルでもほとんど同じ大きさのものを作ることができます。
③レイアウトから用紙サイズをA4に。
用紙サイズはお好みで。私はA4サイズの紙を使っています。(紙については後述)
④「余白」を開け、印刷範囲の限界で設定します。「OK」でページに戻ります。
プリンターと接続した状態で1mmとかにすると自動で調整してくれました。
印刷範囲の限界は使用するプリンターによって変わります。
印刷したラベルをカッターで使って切るのであれば、余白は大きめに取った方がいいかもしれません。
⑤画面上のメニューバーの「挿入」から「表の挿入」を選び、列を13、行を32とそれぞれ入力。A4サイズなら大体このくらいです。
行数や列数は、データの量や文字数、用紙の大きさに応じて足したり削ったりすることが多いので、変更する前提でこの設定です。
「文字列の幅に合わせる」を選択し、OKでページに戻ります。
⑤画面に作られた表を選択した後、右クリックで罫線を変更。「枠なし」を選択します。
この時もしページが真っ白になっていたら、「グリッド線の表示」を選択することで仮の罫線を表示させることができます。
さらにもう一度表全体を選択して、今度は「表のプロパティ」を選択します。そこから表の「オプション」 を開き、セル内の配置を
上 0.7mm、下 0mm、左 0.7mm、右 0mm にします。
これでラベル作りのテンプレートの完成です。
このテンプレートからはデータラベルと同定ラベルの両方を作ることができます。
念のため、もう一度wordファイルのURLを貼っておきます。
以下からダウンロードして利用できます。
ご自分の使いやすいようにように改造していただければと思います。
(1ページ目がフォントサイズ4で5行のラベル用、2ページ目がフォントサイズ3.5で6行のラベル用となっています。)
https://1drv.ms/w/s!AnrWaFOg-1B_hSf0UpndkFXvgl5B?e=DLM4FA
なお、本テンプレートの作成に関しては以下の文書を参考にし、一部を変更しています。
山岸健三 昆虫採集と標本整理 (昆虫の生物多様性調査と環境評価のために:2006年版)
http://www-agr.meijo-u.ac.jp/labs/nn006/entomol/manufacture-specimen.pdf
2. データラベルを作る
ここからはデータラベルの作り方(書き方)を紹介します。
保存したテンプレートファイルを右クリックし、「新規(N)」という所から開きます。
こうすることで、上書き保存してテンプレートが消えてしまうのを防ぎます。
例として、今回は東京都八王子市高尾町の高尾山で2014年8月1日にアオタマムシを採集したことにしましょう。
この情報からデータラベルにすると、以下のどれかになります。
左側から、
・座標も取れた場合(6行)
・座標を取り損ねた場合(5行)
※座標入れても地名が短い場合(5行)
フォントサイズを6行のラベルでは3.5、5行では4とすればラベルのサイズはほとんど同じくらいになります。
(実際はこのように異なる行のラベルを並べて作ることはなく、行数が異なるラベルはページ毎に分けて作っています)
今回の例での完全なラベルは一番左のもので、
[JAPAN: Tôkyô-to],
Mt. Takao, Takao-machi,
Hachiôji-shi,
01.VIII.2014, N. MYÔJI
35°37’31” N 139°14’37” E
八王子市高尾町 高尾山
このようになります。
ある程度行で区切りながら情報を入力していきます。
地名の読み方(ローマ字での表記法)に関しては、以下のページを利用して調べることが出来ます
47都道府県 – 郵便番号一覧、住所・地名の読み方
http://memorva.jp/zipcode/
一行ずつに分割して説明していきますが、何行目には何を書くor書いてはいけない、といったような厳密なルールはありません。
データラベルで満たされるべき条件は最低限の情報と手書きの場合絶対にボールペンで書かないことくらいのはずです。
ボールペンを使用して書いた文字は劣化して読めなくなる事があるため推奨されません。手書きなら鉛筆やシャーペンの方がいいです。
ただし最近のボールペンはインクの耐久力が上がってそんなに劣化もしなくなったようです。とはいえ鉛筆で書くに越した事はないでしょうね……
必要な情報を揃えた上で、なるべくコンパクトに収まるようにうまく改行していきます。
・一行目
[JAPAN: Tôkyô-to],
最初は国名、都道府県名です。
基本的にはこれで一行消費することになると思います。
国名だけは全て半角大文字にする、というルールがあるようです。
ただ、実際にフェアとかで標本を見たところ、最初の文字だけが大文字になってる標本も多かったのであんまり浸透してないルールなのかもしれません……
そのあとにコロン : を半角で入れます。
コロンの後ろには、半角スペースを入れます。
ラベルでは、記号( ,.:など)の後には半角スペースを入れるというルールがあるみたいです。(年月日のみ例外)
また、意味の切れ目となる箇所にはカンマ , を打ちます。
次に都道府県に当たる場所。
東京都→Tôkyô-to
埼玉県→Saitama-ken
のように日本語読みをそのままローマ字変換して入力。
-kenの部分は、-prefと入力する人もいますが、私は普通に日本語の読み方のままやっています。
(prefecture=県 という意味です)
prefで統一すると“都道府県”の違いがうまく表現できません。する必要あるかと言われると微妙ですが……
コメント欄の方で指摘していただいた通りで、
英語で地名を表記する場合、小地名から書いていくのが基本です。
ただし、標本の整理をしやすくするために国名と都道府県は先頭に出すのだそうです。
しかし日本では英語で大地名→小地名の順に書いていくラベルも結構見かけます。
むしろそっちの方が多いような気さえします。
日本語と英語の両方で表記するラベルの場合であれば、日本語の順番に英語を合わせるためにそのようにするものなのかなと思いますが、詳しい事は分かりません。
・二行目
ここからは小地名→大地名の順(日本の表記と逆)です。
Mt. Takao, Takao-machi,
詳細地名②(固有名詞等あればそれも)
記号の後には半角スペースを。
山や川、浜辺や林道など様々な固有名詞が存在しますが、それぞれ人によっては英語表記したりしなかったり複雑です。
この辺りは国土地理院に従っておけば間違いではないはずです……
地名等の英語表記規程 平成28年3月 国土交通省国土地理院
http://www.gsi.go.jp/common/000138865.pdf
嫌になる程細かく規程が書かれています。
実際、厳密に従おうとすると「これでいいのか?」と思うような表記も多いです。
私は行政区分の表記は無視して、地名の英語表記例や追加・置換方式の使い分け、分かち書きの部分を参考にするようにしています。
東京都→Tokyo Metropolisとかは流石に、違和感しかないな……
日本語と英語を繋ぐことの難しさがあるので英語化を一切行わずに全てローマ字表記でゴリ押しする(Ara-kawaとかTakao-sanとか)のが一番楽なのは間違いないでしょうね。
私は詳細地名に関しては英語(mountainとかriverとか)を使う事が多いです。
・三行目
Hachiôji-shi,
詳細地名①
地名の頭は大文字です。
ここでも、cityとかtownではなく-shi, -machi, -chôなど日本の地名をローマ字表記で用います。
【長音のつづり方】
今回の場合、八王子(はちおうじ)
“おう”という読み方に合わせて、oの上に長音記号の ^ をつける必要があります。
しかし、そう上手くいかない例もあります……
大分(おおいた)をどのように表記するか。
①Oita
②Ôita
③Ooita
④Ohita
①「おいた」との区別ができないが、この表記が使われる事も多い(Tokyoとか)
②「おういた」との区別ができないが、これが基本。
③日本人なら「おお」と読めるが、外国人には「うーいた」と呼ばれる可能性あり、OOITAみたいに大文字表記ならok。
④「おお」と読むことは出来るが、今回の場合「おひた」との区別ができないのでNG。
この場合は①か②が適切になりますが、Ohが使われる例もありますし、③④が絶対にダメとも言い切れません。
ヘボン式とか訓令式とか色々ある中でどのルールに従うか、ですね。
(私は②です)
参考↓
ローマ字の長音のつづり方
http://xembho.s59.xrea.com/siryoo/hikion.html
長音記号を付ける場合は、つけたい文字を入力する前に「ctrl」と「^」キーを押して、記号をつけたい母音(a, i, u, e, o)を打つと記号がつきます。
大文字の場合は「ctrl+^」に加えて「Shift+母音」で打てますが、小文字の時と上に付く符号が異なる(~になる)ことがあります。その場合は「挿入」の「記号と特殊文字」から探して挿入します。(挿入した文字はフォントを変更して周りと合わせる)
※拡大表示や文字サイズの関係でちゃんと打ててるのかどうか確認しづらい時があります。
改行について。
①
Mt. Takao, Takao-machi,
Hachiôji-shi,
と、
②
Mt. Takao,
Takao-machi, Hachiôji-shi,
どちらの書き方でも意味は同じですが、ラベルの横幅がより狭くなるように改行するなら①です。
※文字数、詳細地名の数により変わります。
・四行目
01.VIII.2014, N. MYÔJI
私のラベルの最新型は①採集年月日と②採集者を並べるようにしました。
この辺りからはどこで改行するか、何を先に書くかが人により複雑に分かれます。
採集者名は下の行(標本に通した後でも見えやすい位置)にあった方が良いみたいな話をどこかで聞いた気がする……
①採集年月日
年月日は記号と数字の間に半角スペースを入れません。
ただし入れる人もいれば、ピリオドすら使わずに半角スペースのみ、というのも。
お好みでいいと思います。ピリオド+半角スペースであれば読みやすいですが、ラベルの幅が大きくなってしまう可能性もあります。
8月を表す「VIII」というのは、vとiの半角大文字を使って表します。
(I, II, III, IV, V, VI, VII, VIII, IX, X, XI, XII)
i, v, xの大文字で表記。
「Ⅷ」というような環境依存文字は使いません。
使うと印刷した時にフォントの違いから違和感が出ます。
②採集者名。(苗字 名前→MYÔJI Namaeという人が採集したとしましょうか)
Nの所は名前のイニシャルの一番最初の文字を、
姓はMYÔJIの所に当てはめます。
Nの後にピリオド+半角スペース+姓(MYÔJI)
苗字の部分は全て大文字にすると「採集者名」って伝わりやすくなるようです。
人によってはここで大文字を使うことでラベルの幅に影響が出る場合があるので余裕があればでいいんじゃないでしょうか……(私は余裕があったので大文字にしましたが)
※leg.を使う場合。
N. MYÔJI leg.
採集者名の後に半角スペース+leg+ピリオド。
legはラテン語”legit”の略で…これは別につけないでもOKみたいなので、ラベル幅削減のために私は省いています。
英語表記で語句の後にピリオド . が付いている場合、その語句が省略されている事を表します。
Mt.→Mountain Riv.→River I.→Island などなど……
今回は採集者名の表記で名前(Namae)にあたる部分「N.」と略していますが、私は名前が短いので略さずに表記してます。本来であれば名前は略さずに表記したほうがいいのかもしれませんが、そうするとラベルの大きさに影響が出てしまう場合があるのでここは人によって省略があってもいいのでは、と思ってます。(さすがに苗字は略しちゃマズイと思いますが…)
イニシャルまで同じ名前の採集者を自身以外に知っているならやっぱり略さずに書かざるを得ないと思います……
【羽化に関しての表記】
幼虫や材などでの採集年月日を記し、さらに羽化した年月日を以下のように記せばいいみたいです。
06.XI.1967, N. MYÔJI
em. 03.VII.1995,
(意味は1967年11月6日採集、1995年7月3日羽化)
羽化日と採集日は同じ行に書くとややこしいので行分けした方がいいと思います。
em. はemerged (on等の前置詞) (羽化)の略。
略すと分かりにくいと感じるなら略さず書いても大丈夫だと思います。ラベルの幅への影響も無いことがほとんどでしょうし。
材からの脱出や割り出しみたいに真の羽化日がはっきり分からない場合でもemerge(現れる)で意味は通るようです。
幼虫、蛹どの段階で採集したかはあまり重要ではないっぽいので無理に書かなくても良いものと考えています……
どうしても書きたい時…コメント欄の方で教えていただいたやり方で書くのがやっぱり良さそうです。
教えていただいたものはラテン語だそうで、『ex 〜』の略語(〜から飼育した)になるようです。
(〜には段階を表す語が当てはまる)
e. l. →ex larva
(幼虫から飼育した)
e. p. →ex pupa
(蛹から飼育した)
って事だと思うので……
06.XI.1967, N. MYÔJI
e. l. 03.VII.1995,
(意味は1967年11月6日幼虫採集→1995年7月3日羽化)
こんな感じで使えば良さそうですね。
ただこれ日本人には略がキツくて伝わらない気がするので(私も全く意味が分からなかったので)、
ex l. か ex larva と素直に表記したほうがいい気がしますね……
正直使うかどうか結構悩むところなんですが、書くとしたらex larvaを使いたいですね。
結局、材採集の場合は表記できないんですが……
成虫から採卵→飼育して羽化の場合のe. o. (『ex ovum: 卵から飼育した』の略語)はちゃんと使った方が良さそうです。
親成虫からの飼育個体の場合、採集年月日を書くことができないので(採集した個体ではないため)、羽化日しか書けません。
em. とかだと野外で採集して羽化させたものとごっちゃになるので…
e. o. 03.VII.1995,
または
ex ovum 03.VII.1995,
このようにすれば良いはずです。
このパターンの虫にはもう一つ従った方が良さそうなルールがあります。
私はleg使わないので気にしない事にしたのですが、仮に普段のラベルでlegを使う方なら…採集した訳ではないのでこの場合leg. は使えないはずです。
こういう時、leg. の代わりにColl. を使います。
Coll. N. MYÔJI
leg. の時と語順が逆になってますが、同様にleg. も先頭に置く事ができるようです(coll. を末尾に置くのは見かけなかった)
Coll. N. MYÔJI、この状態だと、
collected by ○○(○○さん採集)
collection of ○○ (○○さんのコレクション)
と、二通りの解釈ができてしまうので、やはり
Coll. of N. MYÔJI
前置詞も含めてこう表記するのがのが一番、丁寧なのかな…?
ただ、こうすると幅的な問題で採集年月日と一緒に並べるのが難しくなりますね……
【採集方法の表記を加える場合】
マレーゼトラップ(MsT.)
ライトトラップ(LT.)など
採集方法等ををleg.の後に添える、という感じでいいみたいです。
leg.をいれないなら
例→N. MYÔJI leg. (LT.)もしくはN. MYÔJI (LT.)
意味: ライトトラップで採集
私はライトトラップの時だけは表記に加えますが、ベイトとかそれ以外では特に書いてません。
・五行目
35°37’31” N 139°14’37” E
採集地の座標です。(私は60進数表記)
座標を入れることで採集地情報ががより具体的になります。
現在私が生活してる長野県だと、○○市○○(かなり広範囲)とか、○○村(以降の地名無し)とかそういうのが結構多いので、座標をちゃんと表記しないと採集地の情報がかなり曖昧になってしまうことがあります。
また、中途半端な英語表記が意味正しく伝わらなかった場合でも座標があれば正しい場所や環境が伝わる(はず)なのでそういう意味での保険として……でもあります。
座標につける記号(度分秒)は直後にスペースを空けません。
ただし座標と方角を表すアルファベットの境目には半角スペース。
※上の例で言うとNの前後とEの前は半角スペースです。
度、分、秒を表す記号( ° ‘ ” )は、Wordで普通に打つと( ° ’ ” )になり、少し違う形の記号になりますが意味は同じです。
採集中に座標を調べるには、FieldAccess2というスマホアプリを使うと、写真やメモも同時にできるので便利です。
・六行目
八王子市高尾町 高尾山
漢字表記の採集地名です。
市町村以降の地名と、固有名詞(日原林道、多摩川右岸、etc)があればスペースで区切って併記します。
ローマ字から日本語の地名に変換する手間があったり、読み方が同じで別の場所を指す地名が存在したりするため、漢字の地名表記があるとより親切です。
私もつい最近になって併記し始めたばかりですが、マウントの時に必要なラベルが探しやすくてやっぱり圧倒的に楽でした。
ラベルの行数は情報量や文字数で変化します。
川岸とか、羽化とか山とか島とか色々入れようとすると、すごい縦長になります(汗)
ラベルが横や縦に長くなりすぎたりしないように地名の所はうまく改行しなければなりません。
自分的な目安は、
採集地名(大地名)↩️
採集地名(小地名一式)・採集年月日・採集者↩️
羽化日(あれば)↩️
緯度経度↩️
漢字表記
こんな感じでしょうか。
↩️記号のある所では必ず改行、無いところはうまく改行して幅を縮めています。
年月日と採集者名で一行使う事がほとんどですが……
どうしても縦に長すぎて気持ち悪ければ文字サイズを小さくしたり、2枚目のラベルを作ればOKです。
(ただし同定ラベルとはまた別にすること)
一個作ったら後は必要分だけコピーペースト。
データラベルの場合、幅や高さが同じラベルが同じシートに並ぶようにページ分けしながら作っていくと、無駄なスペースも少なく印刷した後のカット作業も非常に楽です。
↑何を言ってるのか分からないかも知れませんが、色々やっているうちに楽な方法が段々と分かるようになります。
プレビューに表示されてるラベルの文字の最後の方が若干見切れてると思いますが、セル内の余白を0にした影響でそうなっているだけで実際はしっかり設定通りに印刷されるので大丈夫です。
3. 同定ラベルを作る(編集中)
ここからは同定ラベルの作成に関して。
同定ラベルの作成においても、まずテンプレートをいじって同定ラベル専用テンプレートを作ります。
フォントサイズは4。行間は固定値で4.5。
日本語のフォントを「メイリオ」に。
英数字用のフォントはTimes New Romanにし、英数字部分は太字にしています。
私が作る同定ラベルは行数が5行でほぼ固定されており、幅の変動も少ないことからデータラベルと比較して判読のしやすさを重視する形をとっています。
det. N. MYŌJI, 2023
最初にセル内の上2行あけて3行目にこのように入力します。
学名のフォントは全てTimes New Roman(太字)ですが、この一行は文字フォントをArialにします。
学名部分とフォントを変える事で差別化を図っています。別にArialでなくても良いと思いますが、何となくちょうど良いので以前から私はこのフォントを使っています。
上に空けた2行のうち1行目には和名を、2行目には学名を貼り付けて同定ラベルを作成します。
そのため2行目だけ斜字体の設定にします。
一個作ったら、セルを表全体にコピーして保存。これが同定ラベル用のテンプレートになります。
実際に作る時は新規で開き、左上のセルから入力していきます。
学名の入力に関してはネット上からコピーするとか、文献に記されたものを手打ちするとか色々あると思います。
私は基本的にネットで1個1個調べて対応してきましたが……最近新しいやり方に行きつきました。
記事中の方法で取得した学名は、標本作成と合わせて作っているデータベースにも入力しているのでこれをコピペする事でラベルを作成します。
和名は和名列のセルをコピーして1行目に貼れば良いですが、学名は少々厄介です。
斜字体になる部分とそうでない部分が混在するので、学名列を” ( “の区切り文字で大まかに分割してから……みたいな回りくどいやり方をしました。(そんな事しなくても作成は出来るが、作業時間の短縮のため)
1行目は和名。
2行目は属名+(あれば亜属名)。(斜体)
3行目は種小名+あれば亜種小名。(斜体)
4行目は著者者と発表年。(通常体)
5行目は同定者、同定年
私が作るラベルの“基本の形”はこれです。
亜属名までは入れない人も多いです。私も最近は幅に余裕がある時以外は基本的に省いてます。
学名の表記について、2,3行目にあたる学名の属名と種小名の部分は斜体にするルールがあります。
(斜体にする理由は学名とそれ以外の区別を明確にするためらしい)
なお学名の著者、発表年にカッコが付いているか付いていないか、というのはちゃんと意味があります。
普通のカッコ()が付いている場合は、属名が種の記載後に変更になったことを表しています。
普通の丸カッコ()以外に角カッコ[]の場合もあります。
角カッコは命名者が不明or匿名な場合に用いられるものだそうで……
私はかつてこの辺の事情を全然知らなくて、命名者表記にはカッコをつけるのが丁寧なもの(=だから無いやつも全部カッコつけちゃおう!!)とかやっていた時期がありました……(笑)
あとは必要数作ったりコピーしたりして、同定ラベルは完成。
画像のものは実際に私が標本につけるために作ったものです。
同定ラベルの場合は、行数が基本的に5行に固定されるので、ラベルの幅を意識して同じ幅のラベルが縦に並ぶようにすると無駄なスペースが省けます。
和名が長い種の場合はどこかで区切って和名を2行に、代わりに学名を1行にまとめることもあります。
それでもうまくいかない時はフォントを一部だけ3.5にするなどして対応します。
2023年の標本作成で発生したイレギュラーな事例をいくつか紹介しておきます。
横幅めっちゃデカいラベルを作るよりはマシ。そんな気持ちで収まりのいいラベルを目指しています。
①亜種和名を無理やり入れた
コクロナガオサムシ、だけだとパッと見ピンとこないので亜種名まで入れようとしました。
和名を2行にしたいが、学名が1行に収まらない。
そんな時、属名と同じ行に右寄せで亜種名をねじ込みました。
(こんな事してまで入れる必要ある? という感じですが……)
②亜種小名を命名者表記と同じ行に入れた
③最終奥義、6行ラベル

データラベルと同定ラベルを並べるとこんな感じです。
同定ラベルで特に、どうしても幅が大きくなってしまうことはありますが、ほとんどの場合は同じくらいの大きさのラベルが作れます。
5. さいごに
ラベル完成したら……印刷です。
ラベルに使用する紙はなんでもいいという訳ではありません。
100均で売っているハガキなどでもなんとかなりますが、紙が弱すぎて針に刺したラベルが回転することがよくあります。また印刷のクオリティも低いです。標本のためにもある程度きちんとしたものを選んであげましょう。
ケント紙か、専門家の方も推奨されている以下のようなものを使うのが良いでしょう。
★データラベル、コレクションラベルの用紙
左: A4版 右: ハガキサイズ
紙の密度(厚さ)や色に種類があるので、自分で調べる時は買い間違えないように気をつけましょう。
(私は過去に2回くらい買い間違えています……)
同じ白色に見える用紙にも実は「ホワイト」と「ナチュラルホワイト」の2種があります。
私は標本箱のペフ板と色が合う「ナチュラルホワイト」を使っています。
★同定ラベルの用紙
左: A4版 右: ハガキサイズ
同定ラベルについては紙の色を変えたり枠で囲うなどして他のラベルと識別しやすくするのが良い(一見して同定済みの標本である事が分かる)との事で、上のような色違いの用紙が推奨されていたので最近はこっちを使っています。
枠で囲う手法も最初試しましたが……幅違いのラベルが同じ列に並んだ時に枠だけデカいラベルが生成されてしまうのと、印刷時のインク無駄感が凄かったので諦めました。あと綺麗に切れなくて枠が歪になってしまったから(笑)
ラベルを一度にたくさん作って印刷する際はA4サイズを使えば良いですが、追加でちょっとだけ印刷したい時用にハガキサイズもあった方がいいですね。
私がラベル用に使用しているプリンターです(モノクロ印刷のみ)。
印刷するプリンターは顔料インクに対応するインクジェットプリンターを使用して下さい。
※プリンター買うのダルい場合はコンビニのレーザープリンターで印刷するという手段もある。
染料インク(左)と顔料インク(右)で印刷したラベル。少し水に濡らしてみただけでこんなにハッキリ差が出ました。
染料インクのプリンターで作ったラベルは、水に濡れるとインクが滲んで解読困難になります。
災害時に水没すればアウト。湿気などが原因で経年劣化する恐れもあるため推奨されていません。
(私が2021年まで作ってたラベル、染料インクで印刷してたことに今更気がつきました……)
印刷したラベルはカッターじゃなくハサミで切ってます。不器用すぎてカッターで真っ直ぐ切れないから(笑)
ハサミでも正直無理。不器用さではそこら辺の人に負ける気がしない。
ダイソーにはこんなものも売っていました(300円)。
これを使えばラベルも三角台紙のカットもめっちゃ楽になる……と思いましたがやっぱり使いこなせなかった。
ラベルを通したら標本が完成。ここまでやって、ようやくただの死骸に学術的な価値を与える事ができます。
平均台の2段目がデータラベル、1段目が同定ラベルの位置(らしい)。
その高さで合わせてラベルを通します。

これ東京都ラベルじゃないけど…

友情出演: トオヤマシラホシナガタマムシ
こんな感じになります。
ラベルの大きさは15×10mm程度になるので、14×6の台紙に貼るような虫との相性はバッチリです。
今回こうして記事を編集したわけですが…
やっぱり結論は一つ、
ラベルの作り方に絶対的な正解は存在しない。
個人的な好みや憶測でやってる部分もまだまだ多いので丸々全部鵜呑みにしないようにお願いします。
「私はこんな感じでやってます」と言うことで書いてきましたが…
もし、今回の記事の中に書いたことで、
・明らかな誤り
・もっと本気度が高そうな方法
・オススメなやり方
というようなことがありましたら、教えていただけると非常に助かります。
まだまだ情報を募集しています…
ともに、改善できるところはしたいと思います。
今後も、新しい発見等あったら加筆修正していくつもりです。
【参考文献等】
馬場金太郎・平嶋義宏 2000
新版 昆虫採集学 九州大学出版会
松浦 啓一 2003
標本学―自然史標本の収集と管理 (国立科学博物館叢書) 東海大学出版会
大阪市立自然史博物館 2007
標本の作り方―自然を記録に残そう (大阪市立自然史博物館叢書) 東海大学出版会
山岸健三 昆虫採集と標本整理 (昆虫の生物多様性調査と環境評価のために:2006年版)
http://www-agr.meijo-u.ac.jp/labs/nn006/entomol/manufacture-specimen.pdf
地名等の英語表記規程 平成28年3月 国土交通省国土地理院
http://www.gsi.go.jp/common/000138865.pdf
標本作成方法 – Information station of Parasitoid wasps
https://himebati.jimdo.com/寄生蜂の資料/標本作成方法/
昆虫標本におけるラベルの作り方
http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/publications/bulletin/018/018-6.pdf
同定ラベルをつけよう
丸山宗利 小型甲虫の台紙貼り標本とラベルの基本的な作り方と注意点 九州大学総合研究博物館(2014)
http://www.museum.kyushu-u.ac.jp/publications/bulletin/012/12-2.pdf
長島聖大 小型昆虫の三角台紙貼り標本の作製手順(ニッチェ・ライフ第4号)
http://niche-life.com/file/Niche004_02.pdf
ぷてろんワールド 標本を作ろう:続き
http://www.pteron-world.com/topics/specimen/specimen4.html
データラベルの書き方 – 虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」
http://lucanidae.blog.fc2.com/blog-entry-25.html
データラベルの作り方 – 虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」
http://lucanidae.blog.fc2.com/blog-entry-26.html

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