ふるい採集で土の中のアリなどを探すのは意外と楽しかった【シフティング】

アリ類といえば……?

この記事を読んでいる皆さんはアリってどんな虫のイメージですか?
アリ(アリ科)は膜翅目(ハチ目)に含まれ、日本国内には300種程度が生息しています。
といっても南西諸島に分布が限定される種が大半。『アリハンドブック 増補改訂版(寺山・久保田, 2018)』によれば本州では141種、埼玉県では88種が確認されているようです。
大抵の種は人間に危害を加えないこと(安全性)、社会性昆虫という特性(生態的魅力)、公園など身近な場所でもみられること(手軽さ)などのポイントから飼育などの面で一定の人気を持っているちょっと特殊な位置にいる昆虫、私はそんなような印象を持っています。
情報も蓄積され、小型種が多いにも関わらず図鑑なども充実したグループとなっています。
そんなアリ類の生息環境は多岐に渡ります
スウィーピングをやっても入り、ビーティングでも落ち、ライトやベイトなどのトラップでも採れます。
塵芥下を漁っても、石を起こしても、土を掘っても、材を割っても採れます。
自然度の高い地域は言うまでもなく、都市部のような植生の貧弱な環境にさえ適応し、いくつもの種が同所的にみられることも珍しくありません。
私自身いろんな種類に出会っていたはずですが、これまではほとんど無視してきたグループでした。
(自主的に採集したのはほんの数種)
理由はシンプル。見えなかったからです。
しかし今年の春にようやく顕微鏡(40倍までok)を買ったので、今なら小さなアリの同定や標本作成にもある程度対応できるようになった……はずです。
平野部の冬夜蛾がまだ本格化しておらず特にやることが思いつかなかった10月末~11月初旬。
アリ類は成虫が周年存在するため、一年中いつでも採集が可能です。
ようやくこのグループに真剣に向き合う時が来たようだ……

ウロコアリは探せばわりと簡単に採れる

2021.10.31(第一回)

とりあえず、多少しっかりアリが採れそうな環境へ行こうということで、まずは気軽に行ける近所の河畔林ポイントに来てみました。
エノキやクヌギを主体とする林で、シロダモやシラカシなどの常緑樹も多少混ざります。

記憶が正しければ、このエノキ倒木で夏にオオハリアリのようなものを多数見かけたはず。
だいぶ秋も深まってきたけど、まだ残ってるかな……?

ナカスジハリアリ
Brachyponera nakasujii Yashiro, Matsuura, Guenard, Terayama & Dunn, 2010
(なんだこのクソ長い記載者名…..)
夏のように元気に歩き回ってはいませんでしたが、倒木の樹皮を少しめくったところ数頭が確認できました。
オオハリアリは近年2種に分けられたようで、ここで見つけたものはナカスジハリアリでした。
真のオオハリアリが撹乱の大きい市街地や路傍などでみられるのに対し、ナカスジハリアリは撹乱の少ない安定した樹林と林縁にみられるというように生息環境が異なっているようです。
腹柄節(=胸部と腹部の間部分。本種は板のようになっている)を後方から見たとき上辺が平らに近いのが本種で、真のオオハリアリでは強く弧状のカーブがかかるといいます。
(上手く写真に撮れなかった…..)
名前から察せられるように彼らハリアリの仲間は毒針を持つグループの一つで、これを駆使してシロアリやトビムシなどの土壌動物を襲って食べています。
その針は種によっては人間にも有効で、オオハリアリの仲間に刺されると結構痛いようです。アナフィラキシー反応が出た例もあるそう。
そんなハリアリ類は本日の大きな狙いの一つでした。(過去に一種も採集していない)
オオハリアリの仲間は地上にもよく出て活動しているため見つけやすいですが、ハリアリ類はほとんど土中から出ない種が多く存在するため、然るべき手段を用いて狙う必要があるのです。

ということでその採集に用いる道具を準備。
大体こんな感じで良いだろうか……
・ヘッドライト
・園芸用の篩(2mm目)と受け皿
・スコップ
・作業手袋
・吸虫管

※写真には入れてないが、採集したアリはエタノール入り小瓶に投入していくのが楽(破損リスクを抑え紛失しにくい)です。
※ふるいや受け皿の種類には人により好みがあり異なります。私は5㎜幅はデカいかなと思いました。
(受け皿とかは以前から持ってたやつを流用。これで十分戦えました。)
ここからは篩(ふるい)を使った採集をしていきます。
林床など土中で生活するアリを発見するためには、リターや土をふるいにかける採集法(シフティングがよく用いられます。
これでハリアリ類ともう一つの目標グループを探し当てます……!
一応事前に簡単な情報収集をして、ある程度シフティングで狙うべき環境を勉強しました。
意識すべき点を簡潔に述べると、
・落ち葉がしっかり堆積している
・落ち葉の下が乾燥しすぎていない
・倒木や朽木などの営巣環境がある

もちろん狙う種によりどういう条件の元で採れるかというのは異なると思われますが、概ね上述したような条件を満たす環境では多様なアリが生息すると思われます。
なお今回狙うような土中に生息するアリ達はそこまで深い場所にはおらず、A0層ともいわれる落葉層(地表面から数十センチの範囲)を中心にふるいにかけていけば良いようです。


先ほどナカスジハリアリを得た場所の周辺は朽木も多かったので、まずはここでやってみました。
この場所はリターのすぐ下が粘土質の固い土になっており、腐植がかなり少ない場所でしたが……

ふるった僅かな土中にもしっかりと土壌動物達の姿がありました。
ハネカクシやダニ類、クモ、トビムシ、小さなムカデなどなど…..
肝心のアリ類はというと、

ヒメアリ
Monomorium intrudens Smith, 1874
まず入ってくれたのはヒメアリでした。
これは今の私でも分かる種だ、ありがたい。
本種は土中性ではなく地上にもよく出てくるアリのようですが、シフティングでもよく採れました。
当然、地上で活動する種も営巣地が落葉層周辺であればシフティングでは一緒に採れる
何でもかんでも採集していると収拾がつかなくなるので今はまだこの辺は手を出さないでおく……

キイロヒメアリ
Monomorium triviale Wheeler, 1906
こちらも採集してませんが時折入ってきたキイロヒメアリ。かなり小さいです。

ガロアフサヒゲアリヅカムシ
Trisinus galloisi (Jeannel, 1958)
アリヅカムシの仲間も結構な頻度でみられました。
名前に反してアリと関係のない種が大多数です。
とはいえ彼らもこういう採集をしないとあまり目にしないグループ。
毎度しっかり同定ができるかは分からないが、大きさや形の異なる複数種が確認できたので、今後は少しずつ採集していきます。
いつかアリヅカムシ図説が出た時のために……

ナカスジハリアリはシフティングでも何度か出会えました。
今回の目標グループのもう片方が出たのは想像以上に早く、2回目にふるった土壌からでした……。
キタウロコアリ

キタウロコアリ
Strumigenys kumadori Yoshimura & Onoyama 2007
ハート型の頭部と長い大顎が特徴、ウロコアリの仲間です。
名前の由来のウロコは腹部の根元周辺についています。
動きは非常にゆっくりで愛らしい姿のアリですが肉食で、トビムシ類を好んで狩るといいます。
国内に30種程度が知られるウロコアリ属で、最も普通にみられるのがこのキタウロコアリとウロコアリのようです。
以前はウロコアリの仲間自体珍しいものなのかなと思っていましたが実際そんな事はなく、普段目につかないだけで土中にはわりと普通にいる種のようでした(都市公園のような環境にもいるという)。
確かに、いろいろな場所の土壌から少なからず落ちてくるのを確認しています。
私自身ウロコアリの仲間自体は過去に何度か出会っていますが、小さいので標本にできる自信はなく…..当時はスルーしていました。
そのため本日ようやく初採集となりました。
種としての真ウロコアリには区別が極めて困難な隠蔽種の存在可能性が指摘されており、ここで出会ったキタウロコアリも真ウロコアリと比べて頭部と胸部に生えている特定の毛が長くて縮れているとかいう微妙極まりない差しかありません。
女王アリではもう少し違いが出るようなのですが、この辺りのアリには女王と働きアリのサイズ差がほぼ無いようで私にはそもそも女王が見分けられません……
篩で落ちる個体数は多かったので4頭ほど持ち帰り、顕微鏡で見た感じ4頭とも同定に関わる毛が縮れていました。ここではキタウロコアリとしています。
(写真撮ってもちゃんと写らなかったので無し)
ただし真のウロコアリも分布域や生息環境はキタウロコアリと重なるので、場所を移すごとに極力採っていった方が良いのかもしれませんね……
ウメマツアリ

ウメマツアリ
Vollenhovia emeryi Wheeler, 1906
時折得られたこちらはウメマツアリのようです。
林内の倒木や落枝中に営巣する種で、河川敷など開けた環境には近縁種がいるとか。
ここはどちらかと言えば樹林環境なので本種だけのはず。
(混ざってたのかな……)
さらにここで新しいハリアリの仲間も!



ヒメハリアリ
Ponera japonica Wheeler, 1906
本種は林床を生活の主体とする種のようです。
働きアリの体長は図鑑には2mmほどと書かれているのですが採集個体には3mm近いものもあり別種かと思ってました。しかし複眼が大きく(ハリアリ類の女王は働きアリより複眼が大きい)、翅が付いていたような痕跡が見えたためおそらくこれが女王……?

トビイロケアリ(たぶん)
Lasius japonicus Santschi, 1941
樹木の根元付近で腐植をふるってみるとトビイロケアリらしきものが多数入ってきました。
採集してないのでちゃんと同定は出来てないけど、名前はよく聞く一般的な種ですよね。
(地上によく出て活動する種ですが木の根元などに営巣します)
ふるいの受け皿上を多数の個体が走り回っている状況を見て、私がアリに抵抗を感じるのってこういう部分だなあと再確認しました。
だからこそ動きが緩慢で大集団になりにくいウロコアリとかハリアリに惹かれるのだと思う……。
チビミズギワゴミムシ
チビカタキバゴミムシ
Badister (Baudia) nakayamai Morita, 1992
近所採集では初めてみるチビカタキバゴミムシが採れました。
おそらく本種も落葉層を利用している昆虫で、ふるいで採集されることが時々あるようです。
普段しっかり見ない環境で採集しているだけあって、アリ以外にも時折面白い虫が得られるのがふるい採集の良いところですね。


※ムナビロコケムシ、またはその近縁種のようです
こちらはサイズ感的に展足も同定も今の私ではダメだろうなという感じがしたのでスルーした甲虫。
ヒラタムシ上科図説は入手しているので、あれに載ってるグループからやりたいけどどれがそうなのか分かってません(いや何の意味もないよねぇ
いろいろ見れると段々楽しくなってきて、最初の位置座標内から動かずに夢中で2時間以上もふるい採集を続けていました。
しかし予報に反してここで雨が降ってきてしまったのでこの日は撤退。
ふるい採集は雨が降っていてもできるのですが、自身の雨対策をしていなかったので…..。
目的は果たせたもののなんだか不完全燃焼になってしまいました。
ただ確かなのは、自分がこの採集に今後ハマっていくことは間違いないです(笑)

???「いろんな土壌と環境で、 その場所だけのアリ相が生み出されてるんでしょ?」

2021.11.3(第二回)
もうハマるのは確定。
『日本産アリ類図鑑(寺山ほか, 2014)』をAmazonでポチったところで再び採集へ。


植生が変わればみられるアリも多少変わるだろうかということで、今回はほんの少し場所を変えてクヌギやコナラが多い雑木林的な環境に来てみました。

これは乾燥しすぎか……?
落葉層は前のポイントよりちゃんとあるのですが、ふるってもアリどころかその他の土壌動物がほとんど入らない場所ばかりでした。そうか、適当に土ふるってれば採れるというわけではないのだね……

しばらく探すと、大きめの倒木のそばに多少湿った土壌がありここでいくつかの生物を得ることが出来ました。

アメイロアリ
Nylanderia flavipes (Smith, 1874)
あ、これは知ってる……アメイロアリ、でいいはずだ。
本州平野部の林床環境における最普通種の1つだそうです。林縁部でやった前回は出会わなかったけど、林内中心に攻めたこの日は確かに何度も見た気がします。
写真撮り忘れてたけどキイロシリアゲアリも結構入ってきました。
全体的に滑らかな質感の群れてるアリが自分は苦手なんだろうな、振り返るとそういうのはほぼ避けて採っている……
その他、キタウロコアリ? やヒメハリアリも少々。この辺りは樹林のレギュラーメンバーなのか。

ヒメクビナガカメムシ
Hoplitocoris (Pseudenicocephalus) lewisi (Distant,1883)
結構な頻度で入ってくるのがこのヒメクビナガカメムシの幼虫。アリ類を好んで食べる種のようです。
過去にゴミムシの採集(石起こし、洪水採集)で何度か目にしている気がするカメムシなのですが一度も成虫を見たことがありません。
調べて納得。成虫は初夏に出る虫だそうで。
その頃に落葉をかき分けたらすぐ採れるかも。覚えておこう……
斜面はあまり落ち葉が溜まらないので、林縁の方がいいかなと思い徐々に林縁側に移っていく。

こちらの立ち枯れの根元でケアリ類(多分トビイロ)がみられたため、土壌をふるってみる。
ナカスジハリアリ(だろう種)に混じり、ここで1頭だけ新たなハリアリが落ちました。
トゲズネハリアリ

トゲズネハリアリ
Cryptopone sauteri (Wheeler, 1906)
黄褐色で中型のハリアリ。複眼は極めて小さく地中生活者っぽさが出てて格好いいです。
本種は普通にみられる種のようですが、よく似たやや少ない種がいます。
さらに、複数落ちているウロコアリ属(キタか真)の中には大あごの短い個体が混じっていることに気づきました。
イガウロコアリ

イガウロコアリ
Strumigenys benten (Terayama, Lin & Wu 1996)
この仲間はかつてアゴウロコアリ属という別属に分けられていましたが現在は統合されています。
もちろん初見の種で、林縁から公園緑地などの開けた環境に生息するとのことです。
何頭か落ちてくれたのでとりあえず2頭採集していきました。
しかしなんと、持ち帰ったもう一頭はさらに異なる種のウロコアリでした……!


セダカウロコアリ
Strumigenys hexamera (Brown, 1958)

頭部や触角に特徴的な模様というかゴツゴツした突起がありますが、これはへら状の体毛だそう。
地表で待ち伏せをし、自身の頭の上に偶々乗った微小な土壌動物を大あごで捕らえて食べるというユニークな生態が知られる種です。アリハンドブックではやや稀~稀(△)とされています。
これは一度見てみたいと思っていた種でしたが、まさか気づかずに採っていたとは……(笑)

何らかの雄アリも出ました。
全然知らなかったのですが、雄アリは働きアリや女王アリと姿がかなり異なる種も多いようです。
アリかどうかすら自信持てなくて、初回時(10/31)は別なハチだと思ってスルーしてました……
一緒に落ちたメンツから考えるとヒメハリアリ辺りかなと思いますが、この辺の同定はコロニー単位で出せないと今の私にはキツいです。


アミメアリ
Pristomyrmex punctatus (Smith, 1860)
この場所にはアミメアリもいたのですが、特に土中性の種ではないので採集せず写真も撮ってませんでした。
(上の写真は別場所の採集個体)
頭胸部に網目状の独特の模様を持ち、胸部には長いトゲが発達します。
基本的に女王アリが存在せず、働きアリが産卵して増殖するようです。
さらには一定の巣を持たず移動を続けるなど、身近なアリながら他種と異なる性質を多数持っています。
私がアリ採集をやろうと思うきっかけを作ってくれたのも本種、アミメアリでした。
顕微鏡で拡大してみた時、その格好良さに気づかされました……それが全てのきっかけです。

樹林から少し離れ、林縁の藪みたいな環境へ。
枯れ草が積み重なった場所も散見されます。ゴミムシとかには良さそうだけど、アリ的はどうなのだろう……?
あまり良さそうなイメージはなかったが、初心者だしいろいろ試そうということでふるったこの場所が凄かった…..!


コツノアリ
Carebara yamatonis (Terayama, 1996)

細かい土の中からギリギリ見出したコツノアリ。働きアリの体長は1㎜ほどしかなく…..日本のアリの中でも最小レベルに入ってきます。
照葉樹林の林床に生息するアリだそうで、アリハンドブックではやや少ない種(△)とされています。
というかここ、照葉樹林か…..?
さらに、少し大きめで赤褐色のアリが入る。
____ッ!! 
これ! まさか!!!

しっかり勉強してきたわけではなかったが、何か明らかに只者でないオーラを放っているのを感じた。
トゲズネハリアリより赤みが濃く、腹部は細長く、そして何よりも……特徴的な大あごをもつ。
ノコギリハリアリ
ノコギリハリアリ
Stigmatomma silvestrii Wheeler, 1928

これだ、これだわ!
間違いないノコギリハリアリだ……!!
土中で生活するアリで、発達した大アゴを駆使して自分より大きなジムカデ類などを襲って食べるといいます。

このアリの存在を知ったのが確か去年の春くらいだったのですが、図鑑とかで見れば見るほど魅力を感じるようになり、ふるい採集をやっていく上でいつか出会えればと思っていた一つの大きな目標でした。
ネットで検索しても具体的な生息環境についてはよく分からなかったのですが、アリハンドブックに記載されている生息環境には「平地」が含まれていました。
もしかすると近所にも? と思っていた、思っていたが……。
こんなにも早い段階で、しかもマジで近所で採れる虫だったとは思いませんでした。
後に日本産アリ類図鑑を読んで主に平野部の照葉樹林に生息し、山地の夏緑樹林でも採れることがある種(=幅広い環境に生息)と知りました。
アリハンドブックではやや稀~稀(△)とされている本種ですが、ちゃんと調べると私が思っていたよりは採れる種のようでした(ありがたい)。
頑張れば手の届くところにいる、アリ界のスター枠みたいな感じだろうか……。
採集環境を以下に示します。



思ってた環境とは全然違っていた……
枯れ草が溜まった場所でもOKなのかというとそうでもないようで、後述する種を含めいろいろ得られたのはほんのわずかな範囲(50cm×50cmくらい)だけに限られました。
同じように見えてアリ類に都合のいい何かがこの場所にあったのだろうか。
ノコギリハリアリ以外ではこんなアリも出ました。


カドフシアリ
Myrmecina graminicola nipponica Wheeler, 1906
本種もまた林床性のアリで、ササラダニ類を好んで食べるようです。
多少自然が残っている場所であれば普通にみられる種のようですが、ゴツくて格好いいアリですね。

ウロコアリ
Strumigenys lewisi Cameron, 1887
この場所でもキタor真ウロコアリが結構出てきたので、体色の淡い一頭を試しに採集してみました。
中胸部の毛は直線的で短く、こちらは真ウロコアリのようでした。
このポイントは前回キタウロコアリを採集した場所とは1kmも離れていません。混在しているかどちらかが誤同定か……
ちなみに『日本産アリ類図鑑』では体色はキタウロコアリで黄色、真ウロコアリで黄褐色と書かれていますが、ネット上でほぼ逆の事を述べている方もいるので体色に関しては参考に出来なさそうです……

ヒメハリアリの巣を掘り当てた図。
ヒメハリアリとウロコアリ類だけはこの界隈において安定して見つかる林床性種です。
ノコギリハリアリは最初に2頭が採れましたが、その後は近辺を何度ふるっても全く追加はなく一時間以上が経過しました。
後半は採集に夢中になりすぎて足腰にだいぶ負担をかけてしまったので、体を破壊する前に撤退。
十分すぎる成果でした。
林床に出現するアリの種も少しずつ分かってきた気がする……!

林内であればいいということではないみたい

2021.11.06(第三回)

日本産アリ類図鑑が届いたところで、改めて分かったことがある。
アリは全体的に暖地性種が多く、林床性のものも照葉樹林内に生息する種がかなり多い
ということで今度は常緑樹の多い林内でやってみます。
といっても場所は初回の所と同じで、前よりも少し林内に入ります。

見た感じよさげですが落葉層は乾燥している場所が多く、どこでもアリが採れるわけではありませんでした。
朽木や倒木の周辺など若干湿ってる場所を求めてたくさんふるいました。

左:トゲズネハリアリ
Cryptopone sauteri (Wheeler, 1906)
右:イガウロコアリ
Strumigenys benten (Terayama, Lin & Wu 1996)
そんな努力の結果、まだ複数は得られていなかったトゲズネハリアリやイガウロコアリを複数みることができました。
トゲズネハリアリは林内の方が採りやすくなるのかなという印象を受けましたが、イガウロコアリは開けた環境にいるんじゃないのか……?
そして時折みかけるヒメハリアリに混じり、明らかに大型の個体を発見。
ああこれは、探していたやつだ…..!!
テラニシハリアリ

テラニシハリアリ
Ponera scabra Wheeler, 1928
林床や土中に一般的な種のようですが何故かここまで出会えていませんでした。
ヒメハリアリに似た色合いですがよりツヤが弱く、体長は3㎜を明らかに超えてきます

さらに、このような朽木のそばをふるった時たくさん入ったアリがいました。
アズマオオズアリ
アズマオオズアリ
Pheidole fervida Smith, 1874
林内の石下や朽木中に営巣する普通種で、働きアリ階級に顕著な二タイプがあることが特徴のグループです。
ゴミムシの冬季材割やアカマツの立ち枯れ樹皮下で見たことある、ような気がする。
名前通りの見た目なのは少数混じる兵アリだけ。働きアリ単体で見るとなんだか分かりませんでした。

(第二回時にしれっと出会っていた働きアリ)

チビミズギワゴミムシ
Polyderis microscopicus (Bates, 1873)
アズマオオズアリの得られた場所の周辺ではチビミズギワゴミムシが非常によく得られました。
洪水採集の時にたまに採れる印象しかなかったけど、本来土中にいる虫のようです。(ミズギワ…..?)
これ以外には特に何も得られず、違いを確かめるべくもう一度ノコギリハリアリの場所を訪れました。

ノコギリハリアリ
Stigmatomma silvestrii Wheeler, 1928
前にふるったのと同じ場所で再びノコギリハリアリ2頭を得ました。
しかしやはりその後の追加は一切なく、その他のアリも今回は全然ダメでした。
感覚を磨くためにはもっといろいろな環境でアリ採集をやっていく必要がありそうです(謎寒気)。

ウメマツオオアリ
Camponotus vitiosus Smith, 1874
帰りがけに、枯れ枝とともにリターをふるってみたらウメマツオオアリが得られました。
本種は樹上や地上の枯れ枝に営巣するタイプのアリで、小型の働きアリでは前胸が赤褐色になります。
と、こんなところで採集は終わりです。



この日採集したアリたち。全7種です。
アリ類の標本は基本ハチと同様で、脚を下方向に伸ばして側面が見えるように標本を作ります。
もっと言えば腹柄節の下部が見えるようになっているのが理想。
ゴム化したら? 無理です・・・
私は管理上の都合から並べて乾燥させていますが、アリの標本作成では最初から三角台紙に張り付けて整形するのが一般的なようです。(ラベルつけるだけの状態にしておく)
その他もいろいろ通常の昆虫標本作成にはないルールがあるようですが、今のところそんなにガチでやるつもりはないので、紹介はまた、ガチでやる気になる日が来たらということで。
なお今回の3回に渡るふるい採集は、いずれも近所の河川敷界隈で行ったものです。
採集記が分断してて分かりづらいので、確認種を以下にまとめてみました。
●ノコギリハリアリ亜科(1種)
・ノコギリハリアリ属:ノコギリハリアリ
●ハリアリ亜科(4種)
・フトハリアリ属:ナカスジハリアリ
・トゲズネハリアリ属:トゲズネハリアリ
・ハリアリ属: テラニシハリアリ、ヒメハリアリ
●フタフシアリ亜科(13種)
・オオズアリ属: アズマオオズアリ
・ヒメアリ属: ヒメアリ、キイロヒメアリ
・カレバラアリ属: コツノアリ
・ウメマツアリ属: ウメマツアリ
・カドフシアリ属: カドフシアリ
・アミメアリ属: アミメアリ
・シリアゲアリ属: キイロシリアゲアリ
・ウロコアリ属: ウロコアリ、キタウロコアリ、イガウロコアリ、セダカウロコアリ
・アメイロアリ属: アメイロアリ
●ヤマアリ亜科(2種)
・ケアリ属: トビイロケアリ
・オオアリ属: ウメマツオオアリ
※『アリハンドブック 増補改訂版(寺山・久保田, 2018)』における発見頻度
赤色文字: △やや稀~稀   
青色文字: 〇普通  
黒色文字: ◎ごく普通or表記なし等
誤同定していなければ、合計で4亜科15属20種のアリに出会うことができました。
(厳密に言えば見て見ぬふりをしたクロヤマアリ類や黒色シリアゲアリもいるが…..)
やや少ない種も含んで中々幅広いグループのアリに出会えたのではないでしょうか。
20211109215113ea6.jpeg
定番の種を採るだけになると思っていましたが、想像をはるかに超えたメンツの濃さでビックリしました!
やっぱり河川敷はすごい!(洗脳済) 
今回は樹林周辺かつほぼシフティング一本体制で行いましたが、草地や裸地環境を好む種や樹上性の種などもいるので狙う環境や探し方を変えればまだまだ新たな種との出会いは見込めるでしょう。
裸地の地表歩いてる系アリ(主にヤマアリ亜科)は今はあんまり惹かれないんですが、今後そういうのも手を出していくのでしょうか、
新たな林床性種を求めて完全な照葉樹林を目指したりするでしょうか。
ようやくコロナも落ち着きが見え始め、ワクチン接種も終えたのでどこか遠くに……とは思っているのですが最近はいろいろタイミングが合わなくて遠方採集は全く行けてません。
10月とかやりたいことちゃんとあったんですけどもう11月も半ばですね……
関東平野部もそろそろ冬夜蛾の季節のはずです。
近所の冬夜蛾はほぼ未開拓な上に長野では出ない種が出そうなので、そちらも時間の許す限り楽しみたい。
後は越冬オサゴミ等の堀りとか材割採集も多少やるとは思うのですが、今年はいつもと違う楽しみ方が出来るような気がしています。
何故なら……
今後は別の採集中に出てきたアリ達にも、
ちゃんと目を向けられそうだからです!

コメント

  1. 博多権三 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    はじめまして.
    "ネット上でほぼ逆の事を述べている"者です.
    記事拝読しました.篩い採集を知らない人向けにとても分かりやすい解説だと感じました.写真もTGで撮られたような綺麗なものではっきりと写っており種同定も間違いないようです.羽アリはコツノアリのように思います.ご参考までに.

  2. 執虫 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    ありがとうございます。
    アリに詳しい方からそのように言っていただけると心強いです。
    羽アリはコツノアリですか! 大きさが働きアリと違ったのでそうとは思いませんでした……

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