2022.04.09
久々に遠方に採集に出られそうなタイミングが来ました。
この数週間、親の車が借りられる日と天気の都合が合わず採集に出れていませんでした。
というか、日中晴れてても夜に少し雨マークとかついてるだけで行く気が失せてしまっていた……。
遠方と言っても県内ですが、今回は早春の山地にみられる蛾類を狙いにいってみました。
夜間ライトトラップやるだけでは勿体ないので、朝から行って別の虫探したり鳥見たりもしよう!
9時くらいに現地着。
山に入る前に今晩ライトトラップやる位置を決めるために周辺を歩きました。
今日は……暖かい。
この日の関東地方は例年に比べて気温が上がった日だったようで、標高1000mほどある現地でも既に13℃はありました。
残雪などというものはほとんど無く、大本命の虫には時期が遅いことを自覚させられます。
山の上の方(2000mとか)には雪が残っているのが見えるが、そんなところまで登ってライトトラップやる度胸はない……
しばらく周辺の林縁を歩いていると、地際を飛んでいる蛾がいることに気が付きました。
なんだろうこれ……
褐色っぽく見えるが、下翅は橙色____もしかして!!
カバシャク本州亜種
Archiearis parthenias elegans (Inoue, 1955)
カバシャクだ! うれしい!
シラカンバなどのカバノキ科が自生する山地で、春にのみ出現する昼行性の美しい蛾です。
長野では発生期に生息環境を訪れる機会がなかったためまだ出会えていませんでした。
(網持ってきてて良かった……)
カバシャクは丁度今くらいの時期に沢沿いなどで給水に訪れる雄個体がよくみられるようで、この場所でも複数頭が飛んでいました。
飛び方は不規則な上にめっちゃ警戒心が強かったので、採集は結構苦戦した(笑)
写真は到底無理だと思ったけど、こういう時こそP950の出番だったのではないか……?
他にもエルタテハやコツバメなど各種のチョウ類が給水に訪れていました。
樹木の緑はまだ少ないですが、すっかり春の雰囲気です。
以降は山に入り、さらに標高を上げつつ山地帯上部~亜高山帯に生息するオサムシ類を狙います。
歩きやすい道を歩く間は鳥用カメラ=P950もリュックから出して鳥も観察するようにしましたが、出番はほとんどなしでした。
(ここに載せたくなるような写真も撮れず)
当地はヒガラがとにかく多くて、ツピンツピンツピンツピンツピン……ってずっと囀っていました。
日中はもちろんのこと、日が暮れた後も鳴き声は聞こえ続け、夜間ライトトラップやってる間も、なんなら帰りの車の中でも鳴いていました(笑)
一応標高1500mくらいまでは頑張って登ろうと思っているのですが、1000m程度でも狙いの虫が出る可能性はあるみたいなので少し斜面に下りて材を探します。
こういう環境での採集経験は少ないけど、大体こんな感じの苔むした太い倒木が好まれる……はず。
何本か倒木を探って、ようやくこの材でオサムシを引くことができました。
クロナガオサムシ
Carabus (Leptocarabus) procerulus procerulus Chaudoir, 1862
普段みるクロナガオサムシより小ぶりで、腹面は赤みも強いが……標高が高いとこういう個体が出やすいの知ってんだからな。
騙されんぞ
___一応採集しとこ(やっぱりいつものクロナガだった)
この時期には平野部のオサムシは越冬明けしていましたが、夜間はまだまだ冷える山地のオサムシは未だ越冬中のようでした。
狙いの虫もほぼ同じ感じで越冬していると思われるので、さらに標高を上げて狙います。
目標の1500mくらいまで来ました。トゲフタオ回でも思ったけど最近どんどん体力が衰えて来ていて登山がキツい……何度も休憩はさんでようやく12時過ぎにようやく到着でした。なんか荷物が重いんですよ(だいたいP950のせい)
写真の場所は林床乾燥していてダメそうですが、この向こう側が北斜面の谷になっていてそこが今日の目的地です。
このくらいの標高まで来れば目標種も出やすくなるはず。後はひたすら朽木崩しです。
クロナガオサムシ
Carabus (Leptocarabus) procerulus procerulus Chaudoir, 1862
これは典型的なクロナガオサムシ。
標高を上げても本種は出てきますが、それに混じる形で異なる種が越冬している(と思います)。
シワヒサゴゴミムシダマシ
Misolampidius rugipennis Lewis, 1894
1本だけ異常にシワヒサゴゴミムシダマシが出る朽木がありました。
長野県での感覚だとそんなに少ない虫ではないですが、河川敷のアオゴミムシみたいな密度で見たのは初めてでした。
ヤマトクロヒラタゴミムシ
Platynus (Platynus) subovatus (Putzeys, 1875)
この材からはヤマトクロヒラタゴミムシやミヤマクロナガゴミムシ、タカオヒメナガゴミムシなどゴミムシ類も出ました。
ヤマトクロヒラタって材でも越冬するんだ……
そして遂に___
コクロナガオサムシ奥秩父亜種
Carabus (Leptocarabus) arboreus ogurai Ishikawa, 1969
なるほど……これは間違えないな!
明らかに小柄で細身な体型、上翅までしっかり赤みを帯びている。
旧名:チチブホソクロナガオサムシとは正しくこの虫ですね。埼玉県民として長らく会いたかった虫なのでうれしい。
一緒に出た普通のクロナガオサムシ(左側)との比較。明らかに小さく赤い。
本亜種は奥秩父に限らず、奥多摩などの東京都や群馬県、長野県、山梨県一部にまたがる関東山地と山梨県側の御坂山地辺りまでが分布域となっているようです。
概ね標高1000m前後より上の山奥にみられ出会いづらいですが、亜高山帯でコップ埋めると結構落ちる事もあるようです。
ちなみに私は2021年に同種の別亜種(東北地方南部亜種)、いわゆるトウホククロナガオサムシに出会っています。確かに一般的なクロナガより小柄ですが……奥秩父亜種と比べても本当に同種かよと思うくらい印象が違います。こちらの見た目は完全にタダクロナガ寄りですね。
クロナガ/コクロナガの違いは上翅の側縁部にある丘孔点列と呼ばれる(上翅の縁、ツヤのある点列)部分にあり、これが末端付近まであればクロナガ(左)、途中で消失していればコクロナガ(右)となります。
コクロナガの採集で本日の目標を半分クリア。
同種の追加と別のオサムシを狙って引き続き材を探します。
北向き斜面には部分的に雪も残っており、材の湿度もしっかり保たれていました。
(一部凍ってる材もあったが大抵は普通に崩せた)
コクロナガに関してはポツポツと得られ……最終的に5頭得られました。
ホソアカガネとかホソヒメクロ(アルマン)とか、他種も居ていいエリアだと思ったのですが得られず。
今回は単に北向きの斜面でやっていましたが、沢沿いとかでやる方が良かったのかも……?
(↑標高の事しか考えてなかった人)
確かに、アルマンとかよく考えたら沢沿いのトラップで採集されてるイメージあるわ……
ルイスオオヒラタハネカクシ
Piestoneus lewisii Sharp, 1889
広葉樹の浮いた樹皮を剥がしたら出てきた初見のハネカクシ。ほとんど針葉樹材を崩していたので副産物はほんとこれくらいでした。
ルリクワガタ類の産卵痕もありましたが、今回は最後までオサムシ狙いに徹したので狙えませんでした。
薄暗くなる前に山を脱出したかったので、15:00頃には撤退。
日没まで時間があったので少し休憩しつつ、ライトトラップの予定地周辺で少し石起こしをしました。
おそらくクロツヤシデムシ / Pteroloma koebelei Van Dyke, 1928。
ここで初見のツヤシデムシを採集。最初はヒラタマルゴミムシでも出たのかと思った……
ハラクシケアリ隠蔽種群
Myrmica ruginodis Nylander, 1846(s. l.)
現物を見たことはなかったが、これが多分ソレなのだろうと思って採集しました。(思った通りだった)
ハラクシケアリの仲間は非常に闇の深いグループで、国内には形態による同定ができないほどよく似た5種が少なくとも存在しているとされます。アリ類にはこうした闇深いグループを包括して実質的に一種として扱う隠蔽種群という概念があります(その辺にいるクロヤマアリとかもそうみたい)。
さて、そろそろいい時間になってきたのでライトトラップを設営します。
今回は車移動で荷物を気にする必要はなかったので、初めて2灯流でやってみました。(20Wと30W)
2020年初夏に買ったバッテリーの持ちが最近悪くなってきて、原因がバッテリーなのかライトなのか分からず、結局両方新しく買いました。
(原因は両方にあったっぽい?)
新しく買ったこの組み合わせ(20Wと27000mAh)では3時間ほど点灯可能です。
ちなみに最初期の組み合わせ(30Wと20100mAh)では最大4時間半以上点灯できた。現在どちらもAmazonでは買えない。
今晩の目標種は日没から比較的早い時間に飛来するとされているので、序盤だけ2灯で頑張って火力を上げてみます(上がるのか?)。
(一応糖蜜もやりましたが、何も来なかったため割愛)
この日の日没は18:12、市民薄明の終了は18:38でした。
ライトトラップ開始直後にムラサキミツボシキリガが飛来。たまたま近くにいたのだろうか。
ヨスジキリガ
Eupsilia strigifera Butler, 1879
続いてヨスジキリガが来ました。
長野の下宿先付近では糖蜜だけやってると滅多に採れない印象でしたが、春のライトトラップでは結構来るものなのか?
この後も複数の飛来がありました。
シーベルスシャチホコ
Odontosia sieversii japonibia Matsumura, 1929
美しい春のシャチホコ、シーベルスシャチホコも早くから複数飛来。カンバ類のある環境にみられます。
個体変異の大きさに定評のある種ですが、この日来た個体はみんな上の写真のような感じでした。
(これはこれで、格好良くていい!)
エグリキリガ
Teratoglaea pacifica Sugi, 1958
19:10頃。エグリキリガが飛来(1頭のみ)。
確かにウラジロモミらしき樹木が周辺にポツポツ生えていたので来たら嬉しいなとは思っていました。
19:20。エグリキリガを回収した所で、幕を見てみると少し大きめのヤガが止まっていました。
___来たんじゃないか!?
エゾモクメキリガ
Brachionycha nubeculosa jezoensis Matsumura, 1928
来た!これだ!!
これが今回の採集の大きな目標であったブラキオニカ___Brachionycha属の一種です。
日本国内に3種が知られる本属はいずれも春(早春)の山地に出現し、中でもエゾモクメキリガは分布域も広く採りやすいとされます。(『日本の冬夜蛾』での珍品度:★★)
しかし長野での採集ではタイミングの問題か一度も出会えておらず、今回ようやく初採集となりました。
冬夜蛾を採り始めたばかりの頃は全く魅力を感じなかったのに、今はこの蛾が格好良く見えて仕方ありません。
20:00。更に初見の冬夜蛾が飛来。
__!!
これは!!
ゴマフキリガ
Orthosia coniortota coniortota (Filipjev, 1927)
「シナノキ発見器さん!」
本種の寄主植物はシナノキ。
ゴマフキリガは春出現のOrthosia属の中では寄主植物の関係でやや採りづらく、初見でした(この後もう1頭来た)。
本種がこの貧弱ライトに飛来したということはすなわち、直近にシナノキが生えていることを意味します。
昨夏いろいろな場所へ出かけて一度も見つけられなかったシナノキ、ここまで来れば生えているのか……
この界隈にはまた来ることになりそうです。
20:22。2頭目のエゾモクメキリガが飛来。
さっきの個体とは少し違った雰囲気。本種は模様の変異が大きい種です。
本属のキリガのモコモコ度合いは、他の冬夜蛾とは異なる独特な印象を受けます。
本当にいい蛾だ、埼玉にも居てくれて良かった……
21:10。
しばらくエゾモクメの追加はなかったですが、ここでようやく3頭目が来たようだ……
これもまたさっきとは随分違った印象の……
ちょっと待って___違い過ぎない!?
タニガワモクメキリガ
Brachionycha permixta Sugi, 1970
よく見るとこれはエゾモクメキリガではなく、
同じBrachionycha属の別種……タニガワモクメキリガでした。
本種はブナやカエデなど生える山奥の落葉広葉樹林で、山の斜面に残雪のある3月の寒い時期から現れるとされます。
『日本の冬夜蛾』での珍品度は★★★★で、エゾモクメキリガよりは産地が限られる種です。
(ただし産地での個体数は少なくないような印象)
埼玉にはいない虫と勝手に思っていましたが、今回訪れてた奥秩父の界隈ではちゃんと得られるという事を今年になって知りまして……この春は一度狙ってみたいと思っていた虫でした。
今回の採集も元々はタニガワモクメキリガ狙いのものでしたが実現が遅くなり、半ば諦めていました……しかし飛来した個体は非常にきれいでうれしかった。
時刻はいつのまにやら22:00を過ぎ、成果的にも満足したので撤退しようかと考え始めた頃。
エゾモクメキリガ
Brachionycha nubeculosa jezoensis Matsumura, 1928
唐突にエゾモクメキリガのラッシュタイムに入ったようで、ここから終了の23:00頃までに5,6頭ほどの飛来が立て続けにありました(全て♂でした)。
綺麗な個体を選んで少し採集。今回は採集した蛾が久々に多くて展翅が不安になり始めました……
左上: アオヤマキリガ
Orthosia aoyamensis (Matsumura, 1926)
右上: エゾミツボシキリガ
Eupsilia transversa transversa (Hufnagel, 1766)
左下: シロヘリキリガ
Orthosia limbata limbata (Butler, 1879)
右下: スギタニキリガ
Perigrapha hoenei Püngeler, 1914
今晩はブラキオニカ以外にも色々な冬夜蛾の飛来があり、個人的にはあまり縁がなかったアオヤマキリガが来たり、越冬明けにしては綺麗なエゾミツボシキリガが得られたりもしました。
シロヘリキリガもきれいだったし、スギタニキリガも埼玉では初見だったけど……展翅が追いつかなくなりそうなので今回は見送り。
左: オカモトトゲエダシャク
Apochima juglansiaria (Graeser, 1889)
右: トビモンオオエダシャク屋久島以北亜種
Biston robusta robusta Butler, 1879
この春まだ出会えていなかったオカモトトゲエダシャクとトビモンオオエダシャクも飛来。埼玉県内でのライトトラップ経験が浅いので、この辺りも県内では初遭遇です。
出会ったのが今日でなければ採集していたんですが……
カンバムジハムシ
Gonioctena (Gonioctena) rufa (Kraatz, 1879)
ライトに来たのかたまたま近くにいたのか分かりませんが、カンバムジハムシも得られました。
カンバ類につくがさほど多くない種だったはず。
暖かい日の夜だったこともあってかライトに来る蛾も多く、楽しい夜でした。
(あんまり幕に止まってくれず、大体の蛾は周辺の地面とかに止まっている)
最初の1時間は2灯で頑張ってましたが、バッテリーの消費が思いの外早かったため以降は20Wの1灯に切り替えてなんとか23時過ぎくらいまで粘りました。
私は基本的にチャリ採集が多いのでこれまで持ち運びやすい簡易的な機材でライトトラップをやってきました。
車を使う採集はそんなに多くできないので、発電機とかはまだいいかなーと思っていますが、クレナータとかその辺りの規模の機材は持っておいてもいいな……と今回思いました。(でもまだ買ってない)

今回は日中の採集では山地らしいコクロナガオサムシが見れ、夜は目標だったBrachionycha属_特にタニガワモクメキリガに無事出会えて非常に満足度の高い採集でした!
Brachionycha属の最後の一種、タカセモクメキリガもなんか奥秩父界隈のカラマツ林に生息してるっぽいんですが……それを狙いに行くほどの熱意はまだ今の私にはありません。
片付けて駐車場所まで戻って来ると、既に0時近くになっていました。
そんな時間に真っ暗な山の方から歩いて来た人間が余程不自然だったのか、近くにいた若いお兄さんに声をかけられました。
「心霊(スポット巡り)ですか?」
「あー、いや___」
この時の私は充実した成果に機嫌が良かったので、いつもの3割増くらいのテンションで答えた___
「虫とりです!!!」

コメント
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自分クレナータで一、度ブラックライト1灯(ワット数不明)の方と、一緒に焚いたことがありますが、ブラックライトの方がクレナータの3倍くらい集まりが良かったです。ご参考まで。
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ブラックライトの方がライトの直近に虫を寄せやすいみたいな話があった気がします。
(そのため水銀灯などのライトと併用してブラックライトを使う方も多くおられます)
クレナータ等で遠方から呼んで、ブラックライトで近くに寄せる……というような使い方になるのかなと思ってます。
とはいえ、火力の強いブラックライトとポータブル電源の組み合わせもありといえばありな気もしますね。
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初コメです。
自分が大学生の時、初めて読ませていただきました。当時は高校生のガチ昆虫採集記(違っていたらすいません)というタイトルだったと思います。
大学生の頃は更新されるのが楽しみで講義中によく読ませてもらっていました!笑
自分も昆虫採集が好きで、よく虫取りをしている大学生でした(主にクワ・カブですが)。
久しぶりに、まだブログを書いていらっしゃるのかなと気になって調べてみました。
昔と変わらずとても楽しそうに昆虫採集をされていて、懐かしい気持ちが溢れました。
ここ数年は虫取りができていませんでしたが、今年はゆるくクワ・カブ取りにいこうかなと思います。
主様、これからも応援します!また読みきます!
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コメントありがとうございます!
そのタイトルをご存知という事はかなり前の(色々な意味で)悲惨な採集記を読んでいただいていたのですね……(笑)
私も今は社会人になり、いろいろ変わりましたが昆虫採集はまだ変わらずに楽しめています。
色々な虫とその採集に興味を持ってもらえたらなという気持ちでこのブログもなんとか続けています。
クワガタ採集にもいい時期になりましたね。
ブログ更新はめちゃくちゃ不定期ですが、ネタは大量にあるので……また是非見に来てください。
ます!