春から夏にかけて、クヌギやコナラ、シラカシやスダジイなどブナ科の葉上では褐色の小さなクチブトゾウムシがよく見つかります。カシワクチブトゾウムシやその近縁種です。
この仲間の識別がよく分からなくなるので、備忘録的に比較記事を書いておきます。
(本州に分布する種のみを取り上げます)
カシワクチブトゾウムシの属とケブカクチブトゾウムシの属
まずは紹介する各種の所属を確認しておきます。
カシワクチブトゾウムシとよく似た種は2つの属に分かれています。
- Nothomyllocerus属(カシワ、ハリゲカシワ)
- Lepidepistomodes属(ケブカ、コカシワなど)
まずはこの2つの属のどちらであるかを確認しましょう。
最初からこの2択まで絞り込めている場合は、頭部を見れば一発です。
カシワクチブトゾウムシの属では口上板に鱗片がなく真っ黒ですが、ケブカクチブトゾウムシの属では若干の鱗片が乗ります。
肉眼でもギリギリ見えるので、野外でどちらの属か識別することもできると思います。
カシワクチブトゾウムシとハリゲカシワクチブトゾウムシ
口上板に鱗片がない場合、カシワクチブトゾウムシNothomyllocerus griseus (Roelofs, 1873)かハリゲカシワクチブトゾウムシNothomyllocerus illitus (Reitter, 1915)です。
2種を見分けるには上翅の背面を見ましょう。
見ての通り、ハリゲカシワクチブトゾウムシには針状の鱗片があります。
カシワクチブトゾウムシには特に立った鱗片はないため、表面を拡大して見ればすぐに分かります。
また、ハリゲカシワクチブトゾウムシの方が暗色になる傾向があります。
カシワクチブトゾウムシにも暗色の個体が出るためこれだけを当てにはできませんが、ハリゲのこの色はけっこう安定していそうです。この色を覚えておくと、スウィーピングで入ったこの手のゾウムシの中からハリゲを引き抜いてくることができます。
ハリゲカシワクチブトゾウムシは国内での分布は局所的であり、あまり得られませんが……公園のコナラから急に採れたりもするので居所のつかめない種です。
コカシワクチブトゾウムシとケブカクチブトゾウムシ
ここからは口上板に鱗片が乗る、ケブカクチブトゾウムシの属を紹介します。
この属の中ではコカシワクチブトゾウムシLepidepistomodes griseoides (Zumpt, 1937)とケブカクチブトゾウムシLepidepistomodes fumosus (Faust, 1882)が特に似ています。
2種の違いはいくつかあります。
まずは前胸背の後縁部を見ます。
中央部には小楯板に向かう張り出しがありますが、コカシワでは弱く前胸背後角を結ぶラインを超えません。
ケブカでは張り出しは明瞭で、後角を結ぶラインを超えてきます。
まあ、こんな細かいところを見なくても上翅の背面を見れば違いは分かります。
ケブカクチブトゾウムシには名前の通りの剛毛が発達しているため、ここを確認できればふつうは問題なく同定できるでしょう。
両種は大きさも重複しません(コカシワ:3.6-4.5mm、ケブカ:4.6-6.3mm)。
コカシワクチブトゾウムシはカシワクチブトゾウムシ(4.6-5.2mm)とも体長が重複しないため、明らかに小型な個体を選んで持ち帰れば引けるはずです。
ケブカクチブトゾウムシの属にはあと、クロホシクチブトゾウムシLepidepistomodes nigromaculatus (Roelofs, 1873)とコクロホシクチブトゾウムシLepidepistomodes kokurohoshi Kojima & Morimoto, 2006、イシカワクロホシクチブトゾウムシLepidepistomodes togashii Kojima & Morimoto, 2006(石川県のみ)が知られます。
クロホシクチブトゾウムシだけ持っているので紹介しておきます。
クロホシ系はみんな緑色の体色で、一見して別種と分かります。
クロホシ系は暖地に多そうな印象ですが、クロホシは一応埼玉県の近所でも採れているため、あとは採れていないコクロホシを何とか見つけたいですね。
シイ・カシの多い場所でこの仲間をもう少し探してみます。
以上、ごく簡単ですがカシワクチブトゾウムシシリーズの比較でした。

コメント
ちょうど気になっていたところだったので助かります!これからも応援してます!