AIが考えた最強の糖蜜レシピで糖蜜採集を成功に導きたい!

チョウ目(鱗翅目)
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糖蜜採集の基本

糖蜜採集とは、人の手で作った甘い液体を木の幹や葉っぱに吹き付けて昆虫をおびき寄せる採集方法です。主にガ類に対して使われます。

糖蜜に集まったキリガの仲間
糖蜜に集まってきたキリガの仲間

糖蜜採集は主に冬に活動する冬夜蛾(キリガ)の仲間を呼び寄せるために行われる手法です。
彼らが好む樹液や花の蜜などを人工的に再現した糖蜜を作成し、日没直後に巻いておくことでキリガを集められます。

具体的な手法は尾長さんのブログを参考にされるのが良いかと思います。

糖蜜採集のレシピをAIに考えてもらう

糖蜜採集のレシピは人によりさまざまなものが使われ、何がベストなのかもはっきりしていません。よく使われる組み合わせは以下の3つです。

  1. 糖分(カルピス、リンゴジュースなど)
  2. 酒類(焼酎、ビールなど)
  3. 酢(穀物酢、米酢など)
一般的な糖蜜の材料
一般的な糖蜜の材料(筆者は今までだいたいこの3点セットを使ってきました)

どれもスーパーやコンビニで手に入る材料で、手軽に作れるこのレシピがよく使われます。
ただ、これらの材料が何にどう寄与してガ類が集まるのか……ということはあまり考えられてきませんでした。

そこで今回は、AI(ChatGPT)に最強の糖蜜レシピを考えてもらい、それが従来の糖蜜と比較して有効に働くのか、比較実験をしてみました。

まずは糖蜜の材料についてのAIの見解をまとめます。

糖類はリンゴジュースが有効らしい

糖蜜のベースとなるジュースとしては、AIによればリンゴジュースがもっとも有効であるとのことです。

糖蜜の核となるリンゴジュース
糖蜜の核となるリンゴジュース

ガ類が特に強く反応する匂いは、以下の3つだといいます。

  1. 樹液臭
  2. 熟果臭
  3. アルコール発酵臭

リンゴジュースはこのうち、熟果臭を持ちます。
カルピスなどの乳酸菌飲料の主たる匂いは乳酸発酵臭であり、ガ類の誘引にはそこまで有効に働かないのだそうです。

ちなみに私が今までカルピスを使ってきたのは、原液を1回買うと長く使えるのでコスパが良いのと、カルピスとリンゴジュースで一度だけ比較検証したときカルピスが勝利した経験があったからでした……

果実臭が含まれているリンゴジュースの方が誘引に有効というのは何となくしっくりきますね。
ではオレンジジュースや他の果実ジュースと比較した時の強さは何でしょうか?

そのポイントは、発酵させた時の違いにあるといいます。
後述しますが、AI曰く最強の糖蜜には発酵させるという工程を経ることが重要だそうで……リンゴジュースはこの発酵とどうやら相性がいいようです。

一方でオレンジジュースやレモンジュースなどは酸が強く、発酵の邪魔になることがあるようです。
なお熟果系で最強なのはやっぱりバナナらしいのですが、ガ類用の糖蜜に気軽に混ぜられる材料じゃないので採用を見送りました。

焼酎は使ってもあまり意味がないらしい

次は酒類の話ですが、私がコスパ重視で好んで使ってきた焼酎は大して効果がないとバッサリ切られてしまいました(笑)

大きな理由は焼酎が蒸留酒であるというところに起因するようです。
蒸留酒はビールや日本酒などの醸造酒と比較して発酵臭がかなり減るのだそうです。

私は普段から酒飲まないから全然匂いの違いとか分かっていなかったのですが、焼酎ってガ類的にはそんなに臭くないんですね……

酒類のオススメ、梅酒
酒類のオススメ、梅酒

ということで酒類としては梅酒やビールの方が良いのだそうです。
梅酒にはアルコールに加えて果実臭があり、ガ類の誘引に有効に働きます。
ビールには麦の発酵臭がしっかり残っており、糖蜜にアルコール発酵臭を追加することができます。

お酢は入れないか、少量でいい

スタンダードな糖蜜の材料として、3つめのお酢については……別になくてもよいような感じでした。

お酢に含まれる酢酸発酵臭は糖蜜を自然な発酵臭に近づける上で有効な場合もあるようですが、入れすぎると酵母発酵を弱めたり腐敗臭寄りの匂いになったりするそうです。

もし入れるなら、500mlに対して小さじ1くらいの量で充分なのだそうです。
なお穀物酢と比較して米酢は発酵臭がありより有効、黒酢は長期発酵に伴う熟成臭がありさらに有効ではあるとのことでした。

ここまでは、従来の糖蜜材料に関するAIの考えでした。
ただ、これで終わりではなく……AIはさらに新しい材料の提案もしてきました!

ドライイーストで発酵を促す

糖蜜採集でガ類をしっかり誘引するためには、単に甘い液体を作るだけではなく匂いを重視する必要があります。
そこで登場するのが、ドライイーストです。

糖蜜の発酵を促すドライイースト
糖蜜の発酵を促すドライイースト

ドライイーストに含まれる酵母は糖を分解してアルコール発酵を起こします。
この発酵の際に樹液のような発酵臭が産まれ、強い誘引源になるというのです。

ドライイーストは500mlの糖蜜に小さじ一杯くらいの量を入れて使います。
発酵には時間がかかるため、ドライイーストを使用する際は糖蜜採集の前日には準備を始める必要があります。

ドライイーストはスーパーの製菓コーナーに売っています。

アーモンドエッセンスで花の香りを再現する

AIにけっこうオススメされたのが、アーモンドエッセンスです。

花の香りを与えるアーモンドエッセンス
花の香りを与えるアーモンドエッセンス

一般的な糖蜜は樹液の再現液になりがちで、ガ類をよく集める花の香りがありません。
アーモンドエッセンスは、そんな糖蜜に花の香りを補うために使えるといいます。

アーモンドエッセンスに含まれるベンズアルデヒドはバラ科の花のような香りがあり、野外でキリガを集めまくっているウメの花の香りを再現するのに役に立ちます。

アーモンドエッセンスはスーパーではふつう売っていないのでAmazonなどで買うことになります。一回の糖蜜で使う量は数滴でいいみたいなので、500mlのボトルを買っておけば生涯使えると思います……(笑)

最強の糖蜜、モラセス

糖分としてはリンゴジュースで十分だと思いますが、ドライイーストによって糖が分解されることを考えるとさらなる強化も検討できます。

糖類としてよく強いといわれるのが黒砂糖ですが、黒砂糖よりもさらに強力であると言われるのが……モラセスです。

モラセス
モラセスはドロドロの液体です

モラセスはサトウキビやテンサイから砂糖を精製する際に出る副産物で、「糖蜜」とも呼ばれます。
もはや甘いというべきか分からないほどの濃い、強烈な香りを持っています。

500mlの糖蜜でもこれを小さじ二杯ほどいれるとほぼモラセスの匂いになるほどです。
AIにオススメされたので買ってはみましたが、このドロドロの液体は取り扱いが面倒なので、ふつうに黒砂糖を使ってあげればいいような気もします。

材料についてのお話はここまでで、以降は実際にAIが考えたレシピを作っていきます。

AIが考える最強の糖蜜レシピと作り方

ここまでの内容を踏まえて、AIに最強の糖蜜レシピを考えてもらいました。
その内容は以下の通りです。

<糖蜜500mlを作る場合>

材料量(目安)匂いのタイプ
リンゴジュース400ml熟果臭
モラセス大さじ2樹液臭
ドライイースト小さじ1発酵臭
アーモンドエッセンス2滴花蜜臭
梅酒小さじ2果実発酵臭
酢(黒酢または米酢がよりよい)小さじ1(任意)発酵後期臭
AIが考える最強の糖蜜レシピの材料
AIが考える最強の糖蜜の材料たち

かなり複雑な構成になっていますが、いろいろな匂いの源を混ぜることで幅広いタイプのガ類を集められるというのがAIの考えのようです。

実際にこのレシピで糖蜜を作るときは、以下の手順で行います。

  1. リンゴジュースを400mlほど入れる
    (2倍くらいに水で薄めても問題ないと思います。)
  2. モラセスを大さじ2ほど入れる
    (黒砂糖で代用しても良い)
  3. ドライイーストを小さじ1ほど入れる
  4. アーモンドエッセンスを入れる
    (2滴で物足りなければ数mlぶちこんでもいいでしょう)
  5. よく混ぜて、6時間~24時間ほどかけて発酵させる
  6. 使う直前に梅酒を小さじ2入れる
  7. お好みで酢を小さじ1ほど追加

作り方のポイントは、材料をすべて1度に混ぜるのではないというところです。

梅酒にはアルコールが含まれています。このアルコールは酵母の発酵を邪魔するため、発酵が終わってから(糖蜜を使う直前に)入れることがポイントです。
ビールなどを使う場合も同様ですね。

また、梅酒に含まれる果実臭が長時間の発酵によって失われるのを防ぐ目的もあるといいます。
フレッシュな果実の香りを活かして糖蜜を完成させるわけです。

一般的な糖蜜の作り方と異なるのは、やはり発酵させるという過程を経ることですね。
糖蜜採集前の準備がやや面倒になりますが、これでより良い成果が上がるなら……!

AI糖蜜と従来糖蜜の効果を比較してみる

前項まででご紹介したAI糖蜜は果たして従来型の糖蜜(糖:酒:酢=2:1:1)よりもガ類を誘引できるのか……ということで比較実験を行いました。

1回戦(不完全な糖蜜での検証)

初回の比較実験は2026年3月8日に実施しました。
もっと冬の早い時期からやり始めるべきなのですが、なんせこの検証を思いついたのが3月7日だったもので……

アーモンドエッセンスやモラセスは購入が間に合わなかったので、最初は以下の材料でAI糖蜜を作成しました。

初期のAI糖蜜材料
オレンジジュース+ドライイースト+梅酒

この頃はまだリンゴジュースの方が良いという意見になっておらず、オレンジジュースを使っていました。
また、梅酒を最後に入れるという順番の配慮もしていなかったため、発酵が進みにくかったと考えられます。

材料を当日の午前に買い集めて準備したため、肝心の発酵もちょうど6時間くらいしかできていませんでした。
という感じで穴だらけの糖蜜ですが、まずはこれを従来型の糖蜜と比較してみます。

従来型の糖蜜は以下のように作っています。

  1. カルピス(原液を4倍くらいに薄める):2
  2. 麦焼酎:1
  3. 穀物酢:1

日没は17:45くらいだったので、その時間に合わせて近所の雑木林へ。
ここから市民薄明が終了するまでの約30分間で各500mlの糖蜜を撒いていきます。

ちなみに採集時の気温は7℃くらいと低めで、風は適度にある感じでした。

糖蜜の効果比較実験
2つの糖蜜を近い位置に塗り分けて設置する

2種類の糖蜜は、同じ木の近い場所に分けて設置します。
糖蜜は設置場所により誘引数が変わりやすいので、効果比較をする上ではなるべく近い場所に設置することが重要です。

今回はAI糖蜜を右側、従来糖蜜を左側に分けて設置し、どっち側にガが来たかをカウントしていきます。

市民薄明終了後から設置した糖蜜を巡回し、飛来が落ち着くまでの約1時間半での成果は……

種名AI糖蜜(未完成)従来糖蜜
ナワキリガ24
カシワオビキリガ3
フサヒゲオビキリガ1
ミツボシキリガ1
ホソバキリガ3
ブナキリガ1
スモモキリガ1
クロチャマダラキリガ1
合計3種6個体6種11個体

種数でも個体数でも、従来糖蜜の方が勝りました。

従来糖蜜に集まる4種のキリガ
1カ所に飛来した4種が全て従来糖蜜側に寄ったこともあった

さすがに今回は従来糖蜜の方がマシだったようです。
今回のAI糖蜜は発酵が不十分だったり梅酒の香りが落ちていたりしそうなので、負けた要因がけっこう明確なのが救いでしたね。

材料をそろえて、リベンジです!

2回戦(完成したAI糖蜜の力は……)

2回戦はその翌週、2026年3月14日に行いました。
場所は前回と同じ近所の雑木林で、気温は12-11℃と暖かい夜でしたが……風が全然なくてハズレ日だった印象です。

そんな中での糖蜜勝負の結果は……

種名AI糖蜜従来糖蜜
ナワキリガ11
カシワオビキリガ82
ヨスジノコメキリガ1
合計2種9個体3種5個体

そもそもの出現数が少ないという所はありますが、個体数ではAI糖蜜が勝ちました。
種数では従来糖蜜の勝ちという事で……悩ましい結果ですね。まだ検証を重ねる必要がありそうです。

この2回に共通する傾向として、カシワオビキリガがAI糖蜜に寄りやすいことが挙げられます。
自然界では樹液に飛んできているイメージのカシワオビキリガが好んで集まるという事は、ドライイーストの発酵臭がこの蛾には有効に働くのかもしれません。

3回戦(カシワオビ特化タイプじゃね……?)

3回戦は2回戦の翌日、2026年3月15日に行いました。
場所は地元の公園で、ハンノキが生えていたのでウスミミモンキリガが来てくれたらうれしいなというところです。

カルピスを使い切ったので、今回は従来糖蜜のベースにもリンゴジュースを使用しました。

気温は13-12℃、曇っていたため湿度も高く、前日より良いコンディションでした。
飛来もそこそこでした。

種名AI糖蜜従来糖蜜
カシワオビキリガ82
ミヤマオビキリガ23
キバラモクメキリガ1
ウスミミモンキリガ1
ナニワクビグロクチバ1
ブナキリガ1
スモモキリガ1
ホソバキリガ1
ミツボシキリガ1
合計5種13個体6種9個体

結果は2回戦の時と同様で、個体数では勝ち種数では負けるという形でした。
個人的には、ウスミミモンキリガがAI糖蜜を選んだ点は高く評価したいですね(笑)

AI糖蜜に来たウスミミモンキリガ
地元市では初めてのウスミミモンキリガでした

なお、AI糖蜜は少し余ったので近くに単独でも撒いておいたのですが……そちらにも2頭のウスミミモンキリガが寄っていました。カシワオビも2頭来てました。

AI糖蜜に集まるカシワオビキリガ
AI糖蜜に集まった4頭のカシワオビキリガ

3回の結果を比較してみると、カシワオビキリガは明らかにAI糖蜜を好んでいますね。
つまりカシワオビキリガが多く寄るため個体数では勝てるけど、種数は伸びないため負けるということ……

種の内訳を見ると、春キリガ(ブナ、ホソバ、スモモ)は全て従来糖蜜に寄っています
ここにも種ごとの好みの差が表れているような気がします。
お花の香りが足りないのでしょうか。従来糖蜜にはお花の要素は無いはずですが…

この日の糖蜜にはクチバ類やハマキガ、ナシケンモンも来ていたのでもう糖蜜キリガシーズンも終わりですね。従来糖蜜の材料も使い切ったし、今年度の検証はここで終わりになりそうです。

まとめ:好きな糖蜜を使おう

という感じで、AI糖蜜が絶対的に強いという結論は得られませんでした。
試行回数が少ないのではっきりした答えは出ませんが、何となく「どちらでもあんまり変わらないかもしれない」という感触を持っています。

それと、今回みたいな比較の仕方が妥当なのかも疑問が残ります。
分けて撒いた糖蜜の片方に着いたからと言って、その糖蜜だけの香りに誘引されたとは限らないですからね。
お隣の糖蜜の香りに誘引されて、たまたま違う方に止まっただけの可能性もありますし、複合的な香りがガ類をより集めた可能性だってあります。

その辺りが厳密でない、たかだか数回の結果だけで糖蜜の良し悪しは判断できないと思います。
来シーズンも余力があれば検証を重ねます。

そもそも、糖蜜採集において重視すべきなのは糖蜜の内容よりもその日の気象コンディションです。
同じ糖蜜でやり続けても日によって成果はガラリと変わります。従来糖蜜はAIからしてみれば改善の余地ありでしたが、あれでも大当たりを体験したことは何度もあります。

ガ類は糖蜜の内容にそこまでこだわっていないのだとしたら……糖蜜の内容を研究するのはあんまり意味がないかなと思いながらも、これで劇的に結果が変わったら面白いかもなという気持ちで今回やってみた次第です。

個々のエッセンスの働きなど、十分に検証できなかった部分も多いので、興味のある方にはぜひ検証の続きをやってみていただきたいです。

やるにあたって、私からのアドバイスを一つ。
ドライイーストで発酵した糖蜜ボトルは、泡がたくさん出て爆弾みたいになります。

泡立つ糖蜜
泡立つ糖蜜。一気にフタを開けたら大惨事です。

それだけならまだしも、この糖蜜の泡は噴射器を登って勝手に溢れてきます
ビニール手袋をしていないと確実に手がベタベタになりますし、移動中も噴射口をふさがないとダラダラ垂れるので大変です。

手間をかけた結果がこれかと思うとかなりウンザリします……
でも私はもう、モラセスやアーモンドエッセンスを買ってしまったので、効果の有無に関係なくこれからの糖蜜でもこれらを使い続けることになりそうです。

新しい糖蜜の材料たち
新しい糖蜜の材料たち……

今回の結果から、従来型の糖蜜を使う事でも問題なく戦えそうなことが分かりました。
したがって現時点で私から「この素材がオススメ」と言えることはないです……好きな糖蜜を使ってください

ただ、手軽に変えられる材料はAIの意見を参考に変えてもいいかもしれませんね。
焼酎をビールにして発酵臭を上げてみる? とか、梅酒の香りを使ってみるとか。

あとは、アーモンドエッセンスを主軸にして訪花性が強いガ類を狙ってみるのも面白いかもしれませんね。
キリガの採集だけじゃなくて、例えばセイボウを集めるためのアブラムシ甘露再現とかもAIに相談すればやってみれそうです(できれば今年やりたいと思っています)。

AIをうまく活用することで、新しい昆虫採集のやり方や楽しみ方が見つかるかもしれません。
ビッグデータを活用して、昆虫採集に新たな革命を起こしましょう!

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