フチグロトゲエダシャクの楽しみ方 ~採集編~

フチグロトゲエダシャク成虫オス チョウ目(鱗翅目)

フチグロトゲエダシャク Nyssiodes lefuarius (Erschoff, 1872)

フチグロトゲエダシャク(通称:フッチー)は早春に出現する昼行性のシャクガ科のガで、国内では北海道から種子島にかけて広く分布します。
日本の冬尺蛾』(中島・小林2017)によればどちらかといえば東日本に濃く分布しており、関東地方では群馬県を除くすべての都県で発見されているようです。

フチグロトゲエダシャク成虫のオス
フチグロトゲエダシャク成虫のオス

本種の出現時期は年により変動がありますが、関東地方の低地では2月中旬~3月中旬頃にかけて(という印象)で、日中暖かくなり春を感じるようになる時期に出現し、本格的な春を待たずに姿を消します。

フチグロトゲエダシャクのメス
メスは翅が退化しておりオスとは全く姿が異なる

フチグロトゲエダシャクは冬尺蛾(フユシャクガ)の仲間で、メスは翅が退化しています。
お腹が大きくアザラシのような見た目が特徴的です。

本記事ではそんなフチグロトゲエダシャクの採集についての情報や個人的経験などを中心にまとめてみようと思います。

フチグロトゲエダシャクの生息地探し

ガ類なので、まずは食草をヒントに生息地を探すところからのスタートですね。
フチグロトゲエダシャクの食草は多岐にわたり、ヨモギやヤハズエンドウ、ギシギシのような草本類からノイバラ、クズのような低木・ツル植物も利用するとされます。

フチグロトゲエダシャクの食草のひとつ、ヨモギ
食草のひとつであるヨモギ

フチグロトゲエダシャクは広食性ですが、草本類をメインに食べている草地の虫で、見つかる場所もやはり河川敷や堤防などの草地が多いです。日当たりの良い土手の南側が特にいいでしょう。

フチグロトゲエダシャクが生息する河川の堤防
こういう茶色い土手が特に好まれる印象がある(埼玉県)

フチグロトゲエダシャクの生息地(千葉県)
千葉県で出会った場所もイネ科の枯れ草が目立っていた

私は特にイネ科の枯れ草が目立つような堤防環境で見つけています。
こういう環境はどこにでもありそうですが、堤防の草地は菜の花畑になってしまう場合も多いです。経験的に菜の花が多い場所では見つからない印象を持っています。

こういう所にはいない

堤防が菜の花畑かどうかはある程度季節が進まないと分からないので、ポイント探しは春に行うのがオススメです(春になったらフチグロトゲエダシャクの発生はもう終わっているのですが)。

もちろん自分で見つける方がうれしいので自力でポイントを探してほしいですが、どうしても分からなければ有名な生息地を訪れて環境を覚えてくるのも手です。
関東地方では東京都の多摩川や神奈川県の相模川河川敷、埼玉県さいたま市の荒川周辺などは本種の生息地としてよく知られています。大きな河川沿いに生息地が多いですね。

フチグロトゲエダシャク成虫オスの活動条件

場所の検討がなんとなくついたら、次は発生時期にオスを探してみましょう。
フチグロトゲエダシャクは昼行性のガなのでライトトラップでは誘引できず、日中に探す必要があります。

成虫オスの活動条件については以下のようなことが知られています。

つまり、天気のいい日のお昼前後が狙い目です。
良さそうな河川敷や堤防をひたすら歩き回りながら、薄黄色の小さなガが飛んでいないか探しましょう。
同じ時期に見られるベニシジミと少し挙動が似ています。飛ぶスピード感もセセリチョウやシジミチョウ並みに速いです。

飛んでいるのを見つけたら全力で追いかけてネットインします。
早春の野原で走り回って小さなガを追いかけるのもけっこう楽しいです。

採集したフチグロトゲエダシャクの成虫オス
無事に採集できたフチグロトゲエダシャク

フチグロトゲエダシャクが飛ぶ気温:15℃以上あると良さそう?

先述の通りフチグロトゲエダシャクの成虫オスは晴れの日に活動しますが、気象条件も重要です。
風に流されやすいため風が強い日は採集に向きませんし、ある程度の気温も必要です。

具体的に何℃から出てくるのかは分かりませんが、私が過去にフチグロトゲエダシャクを採集した日の気温グラフをいくつか並べてみます。
飛翔時刻の10時~14時頃の気温に注目して見てください。

2022/03/12: 1個体を採集
2023/03/11: 複数個体を採集
2026/02/23: 多数目撃
2026/03/01: 複数個体を目撃

これらをみると15℃以上あれば十分活動していそうな印象です。
チョウ類は大体13℃くらいから活動し始めるので、フチグロトゲエダシャクもそのくらいの気温から動いているかもしれません。

関東地方の場合、2月中旬~3月中旬くらいで最高気温が20℃近いような日は観察に適しています。なお、2026年は1月17日で既に採集されていました(早すぎ……)。

オスの行動を観察しながらメスを見つけよう

飛び回るオスと異なり、翅を持たないメスは簡単には見つかりません。
メスの発見には地際をゆるやかに飛ぶオスを追いかけて、メスの元まで連れて行ってもらうのがもっとも有効です。

あるいは、オスがメスを探すような怪しい飛び方をした場所付近に割りばしなどで作った旗を立てながら、範囲を絞って探していくのが有効とされています。

フチグロトゲエダシャクのメス発見時の状況
真ん中にメスが写っています

私がメスを見つけたのは1回だけですが、その時はオスが頻繁に地際を飛んでいるのが見られたエリアでした(多いときは1分に1回飛ぶくらい)。
ただ、どのオスも通過するだけなので半ばあきらめて座り込み、お昼ご飯を食べていたら数メートル先のメスが偶然目に留まり……という発見の仕方でした。

フチグロトゲエダシャクの生息地で一緒に観察できる昆虫

フチグロトゲエダシャクが観察できる時期には、同じ場所で出始めたチョウ類も観察できます。
私のポイントではもっとも多いのはモンキチョウです。

モンキチョウのオス
モンキチョウのオス

早春に出現する個体は模様の変異に富むので、たくさん飛んでいるモンキチョウを捕まえて比較してみるのも面白いです。

他には越冬明けのキタテハも多いですし、ベニシジミも出始める頃ですね。

ベニシジミ
ベニシジミ

素早く飛ぶベニシジミは時々フチグロトゲエダシャクと勘違いさせられてじれったいですが、春型の美しい個体を観察するにはベストな時期です。
こういう虫は季節が進むにつれてしっかり見られなくなるので、早春の内にじっくり観察・採集しておきたいですね。

春羽化のチョウとしては他に、モンシロチョウやヤマトシジミが見られることがありますが、これらが出てくるとフチグロトゲエダシャクの時期は終盤です。

モンシロチョウ
2026年は2月23日でも既に数頭が飛んでいた(モンシロチョウ)

このように、一緒に見られるチョウ類の出現状況から季節の進み具合を推測すれば、フチグロトゲエダシャクの発生時期が今どの辺りであるかを判断することができます。
貴重な判断材料なので、チョウ類の出具合も気にしておくと良いと思います。

チョウ類以外にも、越冬明けの昆虫が草地に出てきています。

ツチイナゴ
ツチイナゴ
ナナホシテントウ
ナナホシテントウ

こういった虫たちも、フチグロトゲエダシャクの採集の時が大体その年の初遭遇になるので、まとめて一気に春を感じられますね。

春を迎えに行こう

ということで、フチグロトゲエダシャクの採集についてのまとめでした。
ざっくりまとめると、

  • フチグロトゲエダシャクは早春に出現
  • 河川敷などの草地に出現
  • 晴天の日中が観察のチャンス

私の採集経験がまだまだ浅いのと、2地点しか生息環境を見ていないのであまり多くは語れませんでしたが……参考になれば幸いです。

フチグロトゲエダシャクは冬の寒さが緩むとともに現れ、われわれに春を知らせてくれる素敵なガです。

フチグロトゲエダシャクの標本
フチグロトゲエダシャクの標本

ぜひ、この春の妖精を探しに出かけてみてください。
西日本は特に、記録がない県も多いようなので……探し甲斐があります。

過去の採集記を以下に置いておきます。

枯れ草に産まれたフチグロトゲエダシャクの卵
枯れ草に産まれたフチグロトゲエダシャクの卵

なお、2026年に採集できたメスは交尾済みの個体で、卵を得ることができました。
飼育がうまくいったら、~飼育編~としてまた記事を書く予定です!

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